最終決戦、開幕。
「心火を燃やして、世界を救うッ!」
ロボットのアームのような腕でパンチを繰り出す。
さっきは圧倒していたヘルブロスも、再び押し負ける。間髪入れずに足払いを掛け体勢を崩させる。
「どうしたどうしたァッ!?」
ヘルブロスも必死に抵抗するが、そもそもの動きが連携を前提としているため今一つ動きにキレがない。
対してグリスは個性のおかげでエンジンがかかり始める。
アドレナリンが過剰放出され、もはや戦うことしか考えていなかった。
\シングルアイス!!/
レバーを一回転させ、技を放つ。
巨大化した氷のアームで相手を挟み込み、錐もみのように吹き飛ばす。
\グレイシャルアタック!!/
攻撃の度に氷結が発生する。
それは轟 焦凍の攻撃にもよく似ていた。
やがてヘルブロスの歯車に霜が降り、動きが停止する。
「ここ、までか……?」
\シングルアイス――ツインアイス!! グレイシャルフィニッシュ!!!!/
「これがゼロ度の炎――俺の心火だァァァッッ!!」
炎のような氷が発生し、それを纏ったグリスは渾身のキックをヘルブロスに向けて放つ。
かみ合わなくなった歯車は、その形を保てずにバラバラに砕け散った。
変身を解除され、霜焼けで赤くなったブロス(兄)――フウは呆然と、目の前に立ちふさがるヒーローを見つめた。
南場重工の傭兵として戦った彼の半生はこの男の足元にも及ばないだろう。
「――ちったぁ身に染みたかよ」
「……十分です。私には兵器としても生きる価値がない」
彼は迷うことなくネビュラスチームガンの銃口を自分の頭に向けた。
「あなたのような素晴らしい男に出会えたこと、向こうで弟にも教えてあげよう」
引き金を引く直前で腕を蹴り飛ばされた。あまりにも強い蹴りで腕の骨が折れ、スチームガンを落としてしまった。
胸ぐらをつかまれグリスの無機質な複眼で見つめられる。
「ナニ勝手に死のうとしてンだ、コラ」
「使えなくなった兵器は廃棄されるものでしょう?」
「手前は人間だろうが……! 死んだ弟の分まで生きて見せろ!」
急に手放されしりもちをついた。折れた腕が鈍く痛んだ。
「ムショ出て行くとこなかったらうちに来い。面倒見てやっからよ」
グリスは変身を解除した。
その後ろ姿は、どんなヒーローよりも輝いて見えた。
――――
――
煙が晴れると、そこはパンドラボックスの展示会場だった。
「ここは」
『見事なもんだ! こんな短期間でパンドラボックスの謎を解き明かした――そして破壊兵器を無数に生み出した』
サポートアイテムと言えば聞こえはいいが、その本質はいかにしてヒーローを手助けし、ヴィランを無力化するか。ヒーローの暴力を手助けするアイテムだ。
『これこそお前らが信仰する科学ってやつだ! すべては破壊に行きつく! 愛だの平和だの言っても、結局は破壊に行きつくんだよッ!』
「ああ、お前に言われなくても知っているさ」
『ならば何故!?』
セントはその問いに答える。
「――信じているからだ」
彼は科学の負の側面を知っている。
誰よりも科学を愛し、誰よりも科学を憎んだ。
科学があったから彼の父は命を落とすことになった。科学があったから誰かを助けることができた。
「そもそも、物事には必ず“良い面”と“悪い面”がある。特定の面だけを見るってのが間違ってるんだよ」
\ワンサイド!/
ボトルが輝く。
スタークはそれを阻止しようと動くも、ビルドの周囲に出現した虹色の数式によって動きを阻まれる。
「俺は科学の全てを受け入れる。そして未来へとつないで見せる!」
\ギャクサイド!/
やがてそれはスタークを拘束し、がんじがらめにする。
『愚かな……人間風情がッ!』
「人間は愚かな生き物だ! だから――だからいつも、
\オールサイド!!/
そしてキックの予測線が生まれる。
ビルドは大きく跳躍し、その予測線に乗った。
\ジーニアス・フィニッシュ!!!!/
虹の輝きが、スタークを――エボルトを浄化し、消滅させる。
爆発は起きず、残されていたのは彼の使っていたトランスチームガン。
――そして真っ黒に染まった、不思議なボトルだった。
――――
――
―――― 一か月後
騒動が原因で、iエキスポは中止となってしまっていた。
同時に、セントとメリッサはブラッドスタークの残した実験施設を破壊する仕事を任命されていた。
\Dragoninc finish!/
クローズのキックで護衛のガーディアンが破壊される。
背後ではビルドが実験機器を破壊している。
「――これで、最後?」
「ああ、今把握できてる分は、な」
変身を解除し、メリッサは大きく胸をなでおろした。
さすがに働きづめで疲労がたまっていたのだ。気のせいか、ドラゴンのボトルが銀色に変化しているようにも見える。
「やっと……終わったんだ」
ビルドも変身を解き、手を挙げている。
彼女は笑みを浮かべ、豪快にハイタッチをした。
――――
「雄英の林間合宿、ヴィランに襲われたって……デクくん達、大丈夫なのかな?」
「さぁ?」
セントは先日届いた荷物を開封していた。
それは緑谷の腕から外すことに成功した例の腕輪だった。
「……随分冷たいわね」
「バカ、信頼の証拠だよ。俺たちが心配しなくたって、あいつらは乗り越えられるさ」
これが緑谷に力を与え、数々の奇跡を実現した。
そしてエボルトが遺した謎のボトル。これも浄化不能で、何に使用できるのかよくわからなかった。
「その心は?」
「当分ヒーロー活動せずに引きこもって研究を――ッて皆まで言わせるな」
と、彼はそれらをアタッシュケースに収納した。
これはi・アイランドの上層部が危険と判断し、封印するように指示を受けたのだ。
「さて――あとはエボルトのベルトを回収すれば」
「でも、どこにあるかわからないんでしょ?」
「……心当たりなら、あるさ」
二人はセントの父、タクミが眠る墓の前へやってきた。
「まさか……ここにヒントが隠されてるって言うの?」
セントは徐に納骨部の蓋を外し、骨壺を取り出した。
「え、ちょいくらお父さんのお墓だからって」
「おかしいと思ったんだ。父さんがわざわざ命日には墓参りに来るようにって、映像の中で言ってたの」
死後の世界など微塵も信じていないセントが毎年欠かさずに墓参りに来ているのは、ひとえに父の指示に従っていたからである。
「俺の仮説が正しければ――」
骨壺を開け、中身を出した。
遺骨が散らばると思われたが、出てきたのは赤いベルトだった。
「父さんは分かってたんだ。きっとこれの持ち主が地球に害をなす存在だってこと。だからフェイクの隠し場所を用意したんだ――決して盗まれない場所を」
他人の墓を――ましてや骨壺の中を見る無作法な人間はいない。どんな悪人だったとしても。
『――ククク……この時を待っていたァッ!』
ケースが破裂し、中からスライム状の物体が飛び出す。
「まさか――あのボトル」
それはベルトに取り付き、男の姿となった。
『信じてたぜぇセント。お前ならきっとあのボトルを破壊せずに保管してくれるってな!』
復活したエボルトは作戦の成功に歓喜し、高笑いをしていた。
「何で……斃したはずじゃ」
『俺がそう簡単にくたばるかよ』
\オーバー・ザ・エボリューション!/
最後の最後で、ミスをしてしまった。
未知の物質への好奇心が世界の破滅を導いてしまったのだ。
『お前らの大切な物から順番に破壊してやるさ! 自分の愚かさを呪いながら――破滅を待つんだな!』
\コブラ! ライダーシステム! ――レボリューション!!!!/
『変身っ!』
\ブラックホール!! ブラックホール!! ブラックホール!! ブラックホール!! ――レボリューション!!!! ファッハッハッハ!!!!/
巨大なブラックホールが集団墓地の一部を壊滅状態にする。
スペアのドライバーは出力が10%と言っていたのは、あながち嘘ではなかったようだ。
エボルトは姿を消した。きっとどこかを破壊しに行ったのだろう。
「セント!」
「ああ、分かってるッ!」
セントとメリッサがボトルを取り出す。
だがその直後に不思議な結界が出現した。
『――待っていたのは奴だけではない』
腕輪が一際大きく輝き、光線を放つ。
『エボルトを斃すには、奴の持っているドライバーごとでなくてはならない。あれが残り続ける限り奴は際限なく復活する』
セントの持つ金色に変色したラビットボトル、メリッサの持つ銀色のドラゴンボトル。
それらがジーニアスボトルを軸に融合し、一つのアイテムへと変化した。
『佳き組み合わせだ……ああ、そうか。そういう“力のあり方”もあるのだな』
女性の姿が浮かび上がった。
優しい顔をした、争いを好まなさそうな人に見えた。
腕輪は砕け散り、同時に女性も姿を消す。
「メリッサ――行くぞ」
「ええ、これで最後ね」
セントが腕輪の力で生まれたアイテム――クローズビルド缶を振った。
二人の周囲に数式が出現した。
「さあ、最後の実験を始めようか」
次回、セントとメリッサが合体(意味深)する!