クロト神様のキャラクターってすごい。
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雄英高校,日本一のヒーロー育成学校であり,ヒーロー科は倍率300に迫る超難関高校である。
それゆえヒーロー科を早々に諦め,堅実に普通科を受験,体育祭でワンチャン狙いの生徒も数多くいる。
だが神は,そんなセコイことはしない。
「――お前らも知っているとは思うが,体育祭の成績優秀者はヒーロー科に編入できる。で,あの結果から編入してきたのが」
壇 クロトである。
前の入り口から超ドヤ顔で入ってきた瞬間。
\Booooooooo!!/
超絶ブーイングが巻き起こった。
「な,何であいつがっ!?」
「まじかよっ!?」
「そ,そんな……ヴィランに近そうなのに」
「てかあの個性なんだよっ!?」
しかし,相澤の眼力で静まった。
「当然,壇の行った行為は褒められたことではない。だがこの高校の1年では頭一つ抜けた実力がある。その証拠に――」
黒板に表示されたのはヒーローからのスカウト数。
一番は――お察しの通りのである。
「指名数は一番多い。というわけだ。諦めろ」
「ふっ……神であるこの私と共に学べることを,光栄に思うがいいッ!」
彼の手により半殺しにされ,三日三晩リカバリーガールの治療を受けていた爆豪は,怒りと驚きで体を硬直させていた。
「そういうのいいから早く座れ」
ふんぞり返って高笑いしていたクロトはしぶしぶ自分の席に戻り,ゲームの開発を始めた。
「時間が押しているが――お前らにはヒーローネームを決めてもらう」
歓声が起こった。
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「――あとは,再考の爆豪君に,ヒーロー科に来たっばかりの壇君」
審査役のミッドナイトに指名され,クロトはドヤ顔で前に立つ。
「失礼,私の神々しさに見合う名前を選定するのに少々手間取りまして」
“ゴッドヒーロー”
「私のヒーロー名は――壇,クロト神!」
「却下」
悦に浸っていた彼は一瞬で没にされた。
「却下ですか……ならば,私の真のヒーロー名を,教えましょう」
\ピロリロリロロアガッタビリー……/
「なぜ神の才能を持つ私が,サポート科を受験したのか」
\アドワナノー/
「あ,そういう前ふり要らないから,時間ないし」
「…………私のヒーロー名は――“無個性ヒーロー”ゲンム」
真っ白だったボードの裏には,ヒーロー名が書かれていた。
それも,無個性という自分自身の最大のコンプレックスをそこに記していた。
「え……無個性……???」
「それに,ゲンムっていや,あの日本一のゲーム会社の名前じゃ」
株式会社ゲンムコーポレーション。
日本一のゲーム会社である。
世界的大ヒットを巻き起こした“マイティアクションX”を始め,数々のRPGファンを魅了した“タドルクエスト”シリーズ,人々がハマりすぎて販売中止となった“バンバンシューティング”など多数のヒットゲームを生み出した大企業である。
クソを下水で煮込んだような性格の爆豪ですらゲンムコーポレーションのゲームをプレイしたことがあるのだ。
「まさか,壇君って」
「そう,私こそがゲンムコーポレーションのクリエイターにして,人々が熱狂するゲームの生みの親――壇,クロトだッ!」
\ええええええええっ!?/
休み時間ごとにクロトは質問攻めにあっていた。勿論,注目されることが大好きな彼はドヤ顔で質問に答えていた。
それを気に入らないように見ていたのは,爆豪。
無個性のくせにちやほやされるのが気に入らないのだろう。
とても素晴らしい個性を持ち,常に輪の中心だった彼は,無個性という路傍の石と同じ程度のモブキャラが,もてはやされている上に,体育祭では半殺しにしてきやがったのがムカついて堪らないのだ。
「よークソモブ」
放課後,教室で一人ゲーム開発を行っていたクロトに爆豪は挑戦しに行った。
端末に突き刺さっていた『ゴッドマキシマムマイティX』ガシャットを奪い取り,爆破するという,最大限の侮辱を行いつつ。
「こんな小細工で人気取って楽しかったか?」
「……そのガシャットは試作品のα版でね。まだまだ改良の余地があったが……私の貴重なガシャットをォ!」
直後に爆発付きのビンタを喰らって黒板に激突する。
もちろんけがをさせない程度の威力で。その辺がみみっちい。
「ブェッ」
だが撃たれ弱いクロトはそのまま死んだ。
\ゲーム・オーバー/
しばらくして紫の土管から生えてきた彼は,いつになく冷酷な表情であった。
「君は体育祭で私を3度も殺した。そして今も,私の貴重なライフを減らした」
\ガッチョーン……/
「残りライフ89……私のライフをここまで減らしたことに敬意を表し,新作ゲームのテストプレイヤーに任命してあげよう」
\デンジャラスゾンビィ/
「へぇんしぃん……」
白いガシャットを腰のバグヴァイザーに挿入し,起動させた。
\バグル・アップ/
「な,んなんだよ,お前」
\DANGER! DANGER! DEATH THE CRISIS! デンジャラス・ゾンビ WoOoooOOO!/
その姿は,体育祭のゲンムとは色が異なっていた。
真っ白で,死神のような姿。
時折痙攣し,ゾンビのようにうごめいている。
「ゲンム,レベル
「レベルなんてテメェのさじ加減一つだろうが!」
今度は本気の爆破を喰らって,クロトは教室のドアを崩しながら吹き飛んでいる。
だが煙の中で,逆再生のように復活する。
体育祭のゴッドマキシマムが神なら,デンジャラスゾンビはその名の通りゾンビである。
ライダーゲージは初っ端からゼロ。
常に死に続けている。
「ハァ……私に攻撃は無意味ダァ」
「ざけんな! 死ねッ!」
「私はもう死んでいる」
\ガシャコンスパロー/
咄嗟に窓から校庭に飛び降りる爆豪。
それを追う弓矢の攻撃。
「デンジャラスゾンビは,不死身のゾンビから逃げ回るホラーゲーム」
クロトも追って飛び降りたが,着地に失敗して再び蘇生する。
「うるっせぇ! そんなクソゲーじゃ赤字だな!」
攻撃してもだめなら逃げるしかない。
頭ではわかっていても彼のプライドが許さない。
神はそれを知って攻撃を――
「――やめろ。それ以上やるなら除籍にするぞ」
喧嘩を止めるのは教師の務め。
相澤は捕縛布でクロトを縛り付ける。
「神に気安く触れるなァッ!」
すぐさま分裂した。
「何っ?」
「ゾンビと言えば,増殖能力がつきものでしょう……?」
ガシャコンスパローを放り捨て,ベルトのABボタンを同時押しした。
「爆豪 勝己……君に神からの判決を言い渡そう」
\CRITICAL END/
「つまらない自尊心と共に,闇に消えるがいいっグッ?」
異変が起きた。
増殖したゲンムとクロトが苦しみだし,消滅してしまったのだ。
\ゲームオーバーウィンウィンゥィン/
「フォゥッ! ……やはり増殖機能と不死機能の並立は難しいか……だが私の才能に――不可能はなぁいっ!」
壇 クロトは神の才能の持ち主である。
それゆえ,どんなに素晴らしい個性を持った人間にもなしえなかったことが可能なのである。
人は,彼の事を神と――呼ばなかった。
だが,彼は自分自身が神であると確信していた。
「世界よ……私の恵みを受け取るがいいッ! グエッ」
「お前ら,とりあえず職員室に来い」
そんな神も,教師には逆らえないのだった。
続く……のか?