設定上この世界線の彼女は殆ど眼鏡をかけていません。
なぜかって? そっちの方が好きなんだもん(私情)
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――
時は7月から8月の辺り。雄英高校では夏の林間合宿(という名の強化合宿)を控えていた。
そんな折、I・アイランドでは
「楽しみだなぁ……マイトおじさまに会える」
彼に会いたい一心でプレオープンの招待状を渡していた。もうすぐ到着する時間のはずだ。
特殊なスマートフォンにボトルをセットした。それは瞬く間にバイクへと変形する。ようやくバイクの免許を取れたから自分で運転できる。
もうあの(自称)天才物理学者の後ろに乗る必要はない。そう思うと少しだけ寂しい気分になる。
溜め息を吐きつつヘルメットを被る――と、モニターにスマッシュの出現情報が表示された。
「んもう! タイミング悪いんだからっ!」
場所は入場ゲートの付近。どうかすぐに片づけられますように、彼女は祈りながらアクセルを捻った。
――――
――
「……まさか、ここまで足止めされてしまうとはね」
到着するや否やファンに取り囲まれてもみくちゃにされたオールマイトは、体中にキスマークが着けられてしまっていた。冷汗をかきながらそれを拭っていた。
さすがのNo.1ヒーローである。
「やれやれ、危うく間に合わなくなるところだった」
「オールマイトの娘さんみたいな人、ですよね?」
「ああ、今は亡き親友の忘れ形見さ……」
普段の明るい笑顔に陰りが見えた。
「もしかして、その親友って――」
――――きゃぁぁぁっ!!
悲鳴が上がった。
「っ! まさかこんなところヴィランに遭遇するとはね!」
すぐさま仕事モードになったオールマイトはその方向へ跳んだ。
上半身だけが異様に膨れ上がり、全身が怪物の様に変化した何者かが暴れていた。
彼に遅れて緑谷も後に続く。手助けというよりは一介のヒーローオタクとして事件解決を目撃しようとしたためである。
「――悪いけど今日はオフの日なんだけどね!」
\DETROIT SMASH!!/
天候を変えるともいわれる必殺の右ストレート。それは怪物には殆ど有効にならなかった。
「な、なにっ!?」
オールマイト――ひいてはワン・フォー・オールの一撃を防げた者は少ない。
十全に対策のなされた脳無、個性の特性上物理攻撃を無効化できるラブリカ、そして宿命の相手オール・フォー・ワン。それを除けば確実に終わらせることのできる相手なのだ。
「――そこまでよッ!」
バイクのエンジン音、そしてすれ違いざまに怪物が斬りつけられる。
ブレーキ痕を残しつつそれは止まり、運転手はヘルメットを脱ぎ捨てた。
「なっ……! メリッサ!?」
「うそっ聞いてた時間より早いなんて!」
予期せぬ再会となってしまいオールマイトもメリッサもテンパっていた。
「――ってよそ見している場合じゃないですよッ!」
緑谷の声ではっと我に返った時にはもう遅く、怪物の拳が目前に迫っていた。
\ギャオオオン/
間一髪、ドラゴン型のメカがそれを防いだ。
「っとにかく話は後! 少しだけ待ってて、マイトおじさま」
メリッサはバイクを降り、ベルトを装着した。レバーの付いた特徴的なデザインだ。
「まさか、それは」
「いいから見てて!」
そして青のボトルを振り、栓を開ける。それを察知したドラゴン型のメカ――クローズドラゴンはベルトのスロット部分に降り立つ。
\Wake up! クローズドラゴン!!/
ボトルごとそれを挿入し、すぐさまレバーを回転させる。
彼女の周囲にプラモデルのランナーのようなものが形成される。
「おっと」
たまたまいた位置が悪くオールマイトは慌てて後退する。
\Are you ready?/
「変身!」
\Wake up burning! Get Cross-Z Dragon!! yeah!!/
プレスされアーマーが形成される。ドラゴンのような姿だった。
その姿にオールマイトと出久は驚く。
「メリッサ……そのす」
「凄いパワードスーツ型のヒーロー!? さすがは最先端科学の集まるI・アイランドだ。そもそも個性が一般的な社会においてわざわざメカで武装するなんて手間をかけずに戦えるのにそれをするヒーローはかなり特殊な存在で――あ、壇君は例外だけど確かに戦闘向きでない個性の人でも戦うためにはこういった装備が必要なんだ。ともすると無個性や弱個性の人がヒーローになれないなんて先入観は近い将来なくなる? でもこういったスーツを開発して普及させるにはまだまだコスト面での不安が」ブツブツブツブツブツ
オタク特有の早口を無視してメリッサ――クローズは戦闘を開始していた。
「はっ!」
ドラゴンの炎に似たエフェクトが発生し、怪物は吹き飛ぶ。
攻撃の手を緩めず何度もパンチを繰り出す。
オールマイトのスマッシュにすら耐えきったそのボディはあっけなく吹き飛ばされる。
「ビートクローザー!!」
声に応じて武器が生成される。それにボトルを挿入し必殺技を放つ。
\スペシャルチューン!!/
「せやああぁぁっ!」
怪物が爆散する。その輪郭は揺らいで溶けるようにも見えた。
怪物を構成していた成分を抜き取ると、元はただの人間だった。
「……しばらく見ないうちに、随分と立派になったじゃないか」
「おじさまこそ、年取ったんじゃない?」
変身を解除し、メリッサは微笑んだ。
「HAHAHA! 年の事は考えたくないな!」
「はいはい、お小言は私の役目じゃないもの。セントが待ってるから早く行きましょ」
和やかに談笑している二人から緑谷はすっかりとおいて行かれてしまっていた。
「あ、あの……その人が」
「おっと、そうだった。紹介しよう緑谷少年。彼女はメリッサ、さっき説明した忘れ形見さ。メリッサ、彼は緑谷 出久、私の教え子さ!」
緑谷はその紹介に違和感を覚えつつ、お辞儀をした。
「初めまして、出久くん。私はメリッサ・シールド」
「!」
オールマイトが気を使ってごまかしたところを彼女は躊躇うことなく言った。
「み、緑谷 出久ですっ! よ、よよろしくお願いしま……す?」
残念ながら、オタクな彼はその情報だけで閃いてしまう。彼女の苗字から連想される人物が。
「シールドって、まさか……!」
もはや全世界で知らない者はいない。
自分の娘に人体実験を行い、世界各地でその科学力を悪用し続けた科学者。
「“悪魔の科学者”デヴィット・シールドの――」
初っ端から不穏な空気が流れだす。
次回からコントあらすじでも考えようかしら。