ひとまず閑話。死ぬ気でふざけた。
短編から連載に切り替えました,わーい。
神のヒーローアカデミア7 『転校生,来る!』
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「頼むッ! オイラの頼みを聞いてくれっ!」
雄英高校で一番,煩悩が大きい男,峰田 実。
モテたいという煩悩にまみれた理由でヒーローを志すろくでもない奴である。
「私の才能が必要になったか……どういった悩みだい?」
「オイラの為に――エロゲーを作ってくれっ!」
やはり彼の煩悩は尽きない。
「下衆な頼みだってのわかってる! だが――オイラはまだ18禁のアイテムを買えねぇっ! だから,お前に頼むしかねぇんだ! この通りだッ!」
額を床にこすりつけ,土下座をしてきた。
エロもここまで来ればむしろかっこよささえにじませる。
これを見守るのは女子陣。
そして登校してきたばかりで事情の飲み込めていないグループ。
見た目だけはイケメンなクロトが,この下衆な願いを受け止めるのか。
「よしてくれ,峰田くん。私はそんなにひどい人間ではないよ」
どの口が言うか。
クラスの心は一つになった。
「だが――すまない。私は低俗なゲームは作らない主義なんだ」
女子陣は,ほっと胸をなでおろした。
野郎どもは,内心がっかりとしていた。
「な,なんでなんだよッ! お前だって男だろッ!? “ゲーム病”になる前までに大人の階段上りたいだろッ!?」
バグスターウイルス感染症。通称『ゲーム病』
ヒーロー殺しステインの体を蝕んでいた病の名前だ。
本来ならば,さして注目されないはずの病が,一躍社会に知れ渡ることとなった。
それは――ヒーロー殺しという人間が持つ知名度が原因だった。
感染症に対する処理を請け負う衛生省は,この病が個性によって発生されたウイルスが原因であること,ゲンムコーポレーションと共にワクチン開発を行っていることを公表した。
同時に,この病は最終的に死に至る場合があることも公表した。
その日以来,TVの話題はゲーム病一色。
オールマイトの威光で低下していた犯罪発生率は軒並み増加。
ゲーム病を秘匿していたゲンムコーポレーションの株価は大暴落。
さらに――ウイルスの発生元を探ろうと必死で調査が行われていた。
話を戻そう。
「峰田君,誰にだってやりたくないことはあるんよ?」
「ならお前の胸触らせろようらら――ウヴェ!?」
セクハラ発言をした峰田に麗日 お茶子のタイキックが命中した。
ゲーム病で死ぬ前に女子たちの私刑にあって死にそうだ。
「クゥ……エロゲくらい作ってくれよ……神って言ってるくせにそんなものも作れないのかよ」
その言葉が,クロトのプライドに火を点けた。
「口先だけの……大ぼら吹きめ……!」
「――君は私をほら吹きと言ったァ……ならばァ,そうでないことを,証明して見せようじゃないか」
バッグの中からブランク状態のガシャットを取り出し端末に突き刺す。
次の瞬間,彼の手が閃くっ!
「さぁ見るがいいッ!」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・!
「限界を知らない――」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・!
「私のォカァミの才能を――」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・!
「私こそが――神だぁっ!!」
力強くエンターキーを押す。
ガシャットにゲームが記録される。
「さぁ峰田君,私からの神の恵みを受け取りたまえ――その名も“エロティック・パラダイス”」
「ォ……オオ!」
峰田はそれこそ天から授かったかのように受け止める。
背景に神々しい光と天使っぽい何かが幻視されるが,ただのエロゲーが中身なので下世話である。
「私に――不可能などなぁあぁぁいッ! ァゥ!」
\ゲーム・オーバー/
「「「ええっ!?」」」
ゲーム開発に死力を尽くし過ぎて,過労死してしまった。
「――おい,壇が死んだが何かあったのか?」
その瞬間,相澤が教室に入ると,皆が一瞬で席に着く。
「あと峰田,それ没収な」
「そ,そんなっ!?」
当たり前である。
いつものように,クロトも土管から飛び出して,着席する。
「さて,ホームルームを始めるが……その前に伝えなければあならないことがある」
全員が息を飲む。
この教師が特別に何かを伝えるということは,きっと除籍に関わる何かがあるはずだ。
「――突然ではあるが,このクラスに編入生が来ることになった」
「「「クソ胸が躍るイベントキタァァァァ!!」」」
次の瞬間,相澤の眼力ですべて静まった。
「じゃ,入れ」
「は,はいっ」
真新しい制服のスカートが揺れる。
その瞬間,男子の心が躍った。
柔らかそうな栗色のロングヘアに,あどけなさの残る可愛らしい顔立ちに,男子のボルテージは最高潮となったが,つつましい胸を見てそれが半減した。とある女子は小さくガッツポーズした。
「初めまして,竜ヶ峰 サキです。よろしくお願いします」
「えっサキ姉!?」「ゲンコツ女っ!?」
緑谷と爆豪の声がかぶる。
「若干,知り合いがいるようだな……ま,これで終わりにするから好きに質問するといい」
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緑谷 出久と爆豪 勝己は幼馴染である。
そして彼らにとって竜ヶ峰 裂姫(サキ)は姉のような存在である。
年齢が違うのにどうして同じ学年なのか。
それは彼女の本来在籍すべき学年には生徒が一人もいないということ。彼女は前の学校を中退したため実質1年生と学力が変わらないということ,その他の事情が考慮されたのだ。
それに,無資格でヒーロー活動をする独断性を危険視され,更生という意味でも強制編入させられたのだ。
まぁ,ヒーローを目指す彼らがそんな
「――てことは,サキ先輩は緑谷と爆豪の幼馴染ってこと?」
「と言っても,小学校低学年までだけどね。あと,先輩ってのはよしてよ,同じ学年なんだし」
幼馴染二人の反応は違った。
緑谷は,大人びた彼女と話すのに緊張して近寄れず,爆豪は昔の嫌な思い出から近寄ろうとしなかった。
「ケロ,さっき爆豪ちゃんがあなたの事を“げんこつ女”って言っていたのはどうしてなのかしら?」
思ったことを何でも言ってしまうカエル少女に,苦笑いして答える。
「はは,かっちゃんは昔から乱暴者で,すぐ弱い者いじめするからお仕置きを,ね」
「……昔から変わってないのね,爆豪ちゃん」
いつもなら『うるせぇ! 死ねッ!』などと反抗してくる爆豪だが,必死にこらえていた。
「てことは今もそうなんだ……でも,根はやさしいんだよ? 私が風邪で寝込んだ時は学年違うのにノートとかプリントとか届けてくれたし,誕生日にはプレゼントくれたし,バレンタインの時に義理チョコあげたら手作りのお返しくれるし――」
「やめろっ! これ以上俺の過去を暴露すんじゃねぇッ!!」
いつものように取り繕っても,クラスメイトから哀れみの視線を向けられる。
さりげなく好意を示して,察しのいい人なら『あれ,こいつ私の事……』となるべき事案である。
容姿端麗なので野郎どもが恋に落ちてもおかしくはない。
だが――気付いてないのである。
竜ヶ峰 サキという少女は,恋愛に対しては非常に鈍感なのである。
たとえ面と向かって好きと言われても,恋愛対象としての好きと捉えないくらいには鈍感である。
子供にしてはアピールしていた爆豪が可哀そうである。
「爆豪……今度,飯おごるわ」
「うるせぇクソが――切島」
人の事をめったに名前で呼ばない彼が,この有様。どれだけ彼女の存在が重いのかが分かる。
そして追い打ちのように,クロトから肩を叩かれる。
「安心したたまえ,爆豪君。現実に希望などなくても,私の作り出す世界にはある――神の恵みをありがたく受け取りたまえ」
爽やかなクロトスマイルと共に,ゲームの引換券が差し出される。
もう我慢の限界だった。
「俺に同情すんじゃねぇッ!!!」
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――
ヒーロー基礎学の時間。
実習の時はコスチュームに着替える必要がある。
数少ない女子も,キャッキャウフフのお着換えタイムが繰り広げられるのである。
「――あれ? サキ姉って“さらし”巻いてるんだ」
透明少女,葉隠 透が興味津々と言った風に(見えていないが)サキの胸元に触れる。
本来女子は,ブラジャーなる下着を用い,豊かな胸を支えるのである。
だが“さらし”は大きな胸を小さく見せるために巻くものである。
「ぁん!」
触られた瞬間,さらしの下から豊かな胸が出現した。
とんでもないマジックである。
あの量が一体,どのようにして収まっていたのか。
「――っ!!!?」
胸のつつましい仲間だと思っていた某少女は,劇的すぎるビフォーアフターに衝撃を受けた。
「ちょ……急に触らないで」
サキは恥ずかしそうに胸を押さえている。
だがそれでも隠しきれず,両腕の隙間から漏れ出していた。
本当にどうやって収まっていたのか不思議である。
「すご……どうやって収まっとったん?」
麗日は不思議そうにその胸に触れた。自分のそれに比べてとても柔らかい。
「私はどのようにして収まっていたのかが不思議でなりませんわ……その,私より大きいのに」
クラスでも1,2を争う豊かさの八百万 百も触っている。押さえつけられていたにしては形が綺麗に整っている。
「ちょ,触らないで……ぁん♡」
「アタシも触ってみたーい!」
「ケロ,私も気になるわ」
元気少女,芦戸 三奈も,カエル少女,蛙吹 梅雨もおさわりに加わる。
それほどに怪奇な現象である。
何故あの大きさが小ぢんまりとした形になるのか,雄英七不思議に加わりそうなほど不思議である。
「ご,ごめんサキ姉……」
とかいって葉隠もその輪に混ざる。
余談だが,誰かにくすぐられると,自分でやるよりくすぐったくなるものである。
それは,予測不能なため,脳が身構えられないからであるという。
つまり,透明な手に触られるとどうなるか。
「ひゃっ♡」
サキは腰が砕けて力なく崩れ落ちる。頬は紅潮し,息は上ずっている。
「こ,これ以上やったら怒るよ……? 私だって好きでこんな大きさになったんじゃないんだからっ! 走るとき邪魔だし,男子から変な目で見られるしいいことなんて――ぁあん♡」
プッツンしてしまったのは,クラス一お胸が慎ましい少女,耳郎 響香である。
持つ者の,贅沢な悩みに,怒りが大爆発したのだ。
「要らないらッ! それもぎ取ってウチにちょうだいッ! でなきゃ半分でもいいから分けてっ!? ねぇ!? 何なのこの差!? 年齢ッ!? たった一年でこんな爆乳になれるんですかッ!? どうなったら一年でこの胸の大きさになるか説明してくださいよッ!?」
「ちょ,響香ちゃ――あっ,もうやめっ! んっ!? やっ♡」
思い切り揉みくちゃにされ,次々と形を変えるサキの豊かなお胸。
コンプレックスを大爆発させられた者の,怨念の籠ったマッサージ。
さすがに,さすがに――引かれた。
ドン引きだった。
「やっ♡ これいじょうは――――――ああぁぁんっ♡」
学校では聞こえていけない類の喘ぎ声が更衣室に響き渡った。
――――男子更衣室。
この時点では気付かれていなかったが,二つの更衣室間には,先人の残したのぞき穴があった。
それゆえ,静かにしていればお隣の会話が駄々漏れなのである。
「お,おい峰田っ! 気をしっかり持てっ!」
男子更衣室は阿鼻叫喚の騒ぎだった。
先程記した痴態は全て聞こえており,煩悩の塊,峰田は鼻血を放出させた。真っ赤な滝が誕生したのである。
彼らは健全な男子高校生。
姿は見えずとも,イメージと声でも興奮してしまうことだってある。
鼻血ぶーなのは峰田に限らず,チャラ男代表,上鳴 電気を筆頭とした健全な男子グループ,生真面目な飯田や天然の轟も,鼻血こそ出ていないものの,鼻の奥にこみ上げるものを感じる程度には興奮していた。
「か,かっちゃん――!?」
そして,爆豪もまた,興奮していた一人だった。
その昔,幼いころは一緒にお風呂に入ることもある。その脳裏に焼き付いていた姿が――どのように成長したのかを考え,静かに出血していた。
「う,るせぇ……あんなゲンコツ女,誰が好きにな――」
『――――――ああぁぁんっ♡』
隣から,アダルトコンテンツでしか聞くことのできない嬌声が聞こえてきた。
もう我慢の限界だった。
「み,みんな――――ゥっ!!」
とっとと着替えて出ていった者たち以外,全員が撃沈した。
その日のヒーロー基礎学はクラス全員補習となった。
※読んでで鼻血ぶーになっても責任はとれません。あしからず