神のヒーローアカデミア   作:鮫田鎮元斎

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 前回は真っ赤なお話でしたね。

 今回も真っ赤なお話です。


※グロ注意


神のヒーローアカデミア8 『やべー奴がきた』

――――

――

 

 無個性であること。

 

 それは,個性が当たり前なこの社会で,どれほどのディスアドバンテージがあるか想像できるだろうか?

 

 上野(かみの) 頼人(ライト)もまた,そんな無個性差別の被害者だった。

 

 ごく最近では,『個性因子』なるを調べるとどのような個性があるか診断できるのだが,彼の幼少期にはそのような高等技術は無かった。

 

 彼は当初,無個性と診断されていた。

 

 両親はともに異形型であるため,偶然に偶然が重なった結果であるともいえる。

 

 

 

 彼が小学校二年生の時,自分の個性の存在を知る。クラスメイトを殺害するという方法で。

 

 

 彼の個性は『神の右手』と名付けられた。

 

 右手で触れたありとあらゆる個性を封じ,もう一度触れると元に戻すという,とあるヒーローの個性の上位互換ともいえる強個性だったのだ。

 

 

 

 だが,その個性はあまりにも強すぎた。

 

 当時,彼をいじめていたガキ大将は異形型の個性で,偶然右手で殴ったら,ガキ大将は体を弾けさせて死んでしまったのだ。

 

 彼の個性は,単に個性を封じるだけではない。

 

 人間が本来持ちうる姿に戻す個性である。

 

 故に,発動型・変形型の個性は個性の使えないという本来あるべき姿の人間へ。

 

 異形型の個性は参照できる人間の姿が存在しないため,死に至ってしまうのだ。

 

 

 その事件は,事故ということで済まされた。

 

 しかし噂というものはとても恐ろしく,瞬く間に彼が殺したという噂が伝播した。

 

 もちろん,彼の個性は両親をも殺す危険があるので,直ちに政府の施設に隔離された。

 

 

 学校には異形型個性の生徒が少ないところへ通わされた。

 

 そこでも殺人鬼といじめられた。

 

 彼は生涯に渡り,いじめられ続けてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在,彼は不良街のような所にあるコンビニでアルバイトをし,生計を立てていた。

 

 シフト表にはほとんど彼の名前しかなく,ワンオペになることもざらにあった。

 

 時折,ヒーローが現れると,人が増えることもあったが,それは一時的な物であった。

 

 

 

 彼の持つ,異形型を殺す能力は,超常黎明期ならヒーローになれただろう。

 

 異常を受け入れた世界には,不要な存在でしかなかったが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おい兄ちゃん,いっつもあそこで働いてんだろ? だったら俺らに小遣いくれよ」

 

 退勤後,不良に絡まれた。

 

 どいつも異形型個性で,その容姿のせいで爪弾きにされたのだとわかる。

 

「俺らよぉ,こんな見た目だからどっこも雇ってくれないんだわ」

 

 鰐のような顔の男がライトの顔に煙草の煙を吹きかける。

 

 彼は煙たくて思わず目を細めた。

 

「ナニ睨んでんだよッ!」

「っ!?」

 

 腕が刃物のような男に叩かれた。傷口から血がにじだす。

 

 右手で触れれば。

 

 手袋を外して触るだけで,こいつらを殺せる。

 

 だがここで殺しをすれば――こんなゴミのような連中でも,殺せば,ヒーローとかいう偽善者によって成敗されてしまう。

 

 耐えるしかない。

 

 適当に金でも渡して,やり過ごすしかない。

 

「……あの,今,手持ちこれしか,なくて」

「おー物分かりがいいな……って小銭だけじゃねえかよッ!」

 

 コブラのような男に鉄パイプで殴られた。

 

 目から火花が出て,意識が朦朧とする。

 

 いっそのこと,ここで死んだ方が楽になれるか。

 

 彼は目を閉じ,なぶられるがままになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦う気のない相手にワンサイドゲームとか……白ける真似すんなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声がした。

 

 男とも女ともとれる,中性的な声だ。

 

 

「あんだテメェ!?」

「じゃますんじゃねぇぞコラ!」

「あまり俺らをイラつかせるんじゃねぇッ!」

 

 

 

 意識が朦朧としているが,助けようとしてくれているらしい。

 

 

 

「ははっ……心が躍るなぁ♪ ――俺が遊び相手になってやるよ」

 

 

 

 

 

 ぐちゃり,と果物を握りつぶすような音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

「は……?」

「こっちだ♪」

 

 

 

 

 

 骨の砕ける音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「な――」

「俺の勝ちだ♪」

 

 

 

 

 ぶちぶちと何かが引きちぎれるような音が聞こえた気がする。

 

 

 

 

 

 

「――おい,大丈夫か?」

 

 

 頬を叩かれた。

 

 意識が朦朧としていて言葉を紡げない。

 

 

「て……ぶく,ろ」

「これか?」

 

 

 右手がすっとした。

 

 自分の体に触れ,自分の体があるべき状態に戻した。

 

 体を切られ,鉄パイプで殴られた傷もすべて無くなった。

 

 

 鮮明になった視界で,不良たちの末路を見た。

 

 心臓のようなものが無造作に落ちていて,体が前衛芸術のように歪んでいる奴がいて,上半身と下半身がおさらばしている奴がいた。

 

 

 

「あんた……ヒーローに捕まるぞ」

「運命ってのは,パズルだ」

 

 

 会話のキャッチボールが成り立たないようだ。

 

 

「様々なピースが組み合わさって,漸く一つの結果が分かる。俺とお前が組めば――ムテキ,だぜ」

 

 

 耳元でささやかれた。

 

 この遺体たちを,右手で触れれば,すべてがはじけ飛ぶ。

 

 穢れた路地に触れれば,元のきれいな状態に戻る。

 

 

 よくよく考えてみれば,自分ほどヴィランに向いている人間はいない。

 

 

「俺は――人殺しだぞ……」

「さっき言ったろ。運命はパズルだ。お前にとって不要な存在(ピース)は全て排除すればいい」

「排除……」

「お前にとって,不要なピースは何だ?」

 

 

 

 ヒーロー。

 

 個性を尊ぶクソみたいな社会。

 

 そして――平和の象徴とか言ってるくせに,爪弾きにされた自分を助けないNo.1ヒーロー(オールマイト)

 

 

 

「出来ることなら――俺の住みやすい世の中を作りたい」

「ハハァッ♪ 心が躍るぜ♪」

 

 

 

 上野 ライトはその瞬間,ヴィランとなった。

 

 

 このヒーロー社会を崩す存在に。

 

 

「俺はパラドクス。よろしくな♪」

「……上野 ライトだ」

 

 二人は左手で握手をした。

 

 自分のヒーローを,殺さぬように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――昨晩,田等院市に在住の上野(かみの) リキさんとその妻の天子(あまこ)さんが殺害されました。警察は息子のライトさんが事情を知っているものとみてヒーローと合同捜査を行う方針で――え? はいっ……速報です。先程,“ひねくれヒーロー”アマノジャク氏の事務所が襲撃され,アマノジャク氏とそのサイドキックが殺害されました。アマノジャク氏は強力な異形型個性で知られており,それを殺害した犯人はそれ以上の個性を持っているものと思われます』

 

 

 

 悪意は,静かに動き出す。






明日は更新しないかもしれないです。

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