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『1-A男子,全員生徒指導室に来い』
急きょ全校放送が流れる。
彼らには,痛いほど原因が分かっていた。
葬式のような重い足取りで部屋に入ると,ご立腹の相澤と――無表情のオールマイト(マッスルフォーム)が待ち構えていた。
「――お前ら……なんで呼び出されたかわかってるか?」
全員俯いた。
「俺は連帯責任みたいな非合理的なことは嫌いだ。だから正直に答えろ――壇から秘密裏にエロゲーを受けっとたものは素直に挙手しろ」
ほとんど全員手をあげた。
あげなかったのは,生真面目な飯田や初心な緑谷,硬派な切島と言った面々のみである。
「よし,なら受け取った者のみ残れ――もちろん,壇もだ」
「なぜ私が――」
ゴキン! バキン!
オールマイトの拳からものすごい音が鳴っている。
さすがのクロトも,筋肉には勝てない。
勝てるわけがない。
「おじさんも男だから気持ちはわかるけど――――大人の階段上るのはまだ早いぞ,有精卵共!」
野郎どもの悲鳴が響き渡った。
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昼食。
食堂には頭にたんこぶのある生徒がちらほらいた。
なんだかんだで全校に浸透していたようだ。
「あっれれー? とっても優秀なA組も処罰をうけてるぞー!? おっかしいなー!? B組よりも優秀なはずのA組が罰せられてるなぁ!?」
A組をライバル視している物間 寧人もまた,たんこぶのある一人だった。
どんな神経で煽っているのだろうか?
取り合うのも面倒なので彼らは黙ってやり過ごそうとしていると,さらに大きく煽ってくる。
「返す言葉もない!? そうだよねぇ!? 君たちが原因――んぐッ!?」
彼の嫌味を止めたのは,耐えかねて拳骨を構えたサキではなかった。
「――悪ノリが過ぎるぜ物間ァ!」
丸サングラスをかけた柄の悪そうな――しかも最近まで見かけたことのなかった生徒だった。
「おっと失礼……自分,B組編入生の“二条 キリヤ”っていいます。以後,お見知りおきを」
サングラスを取ると,彼が大人びた風貌であることが分かる。
気絶した物間を近くの椅子にもたれかけさせ,自分も隣にどっかりと座る。
「おいキリヤぁっ!」
巨大な手の平をお盆代わりに二人分の食事を運ぶのは――B組委員長の拳藤 一佳。
オレンジ色のサイドテールを思い切り揺らしながらやってくる。普段はフレンドリーに絡んでくれるので,彼女のこんなに荒ぶった姿をA組の面々は見たことが無かった。
「おっサンキュー,一佳」
「ん,ああ……ロコモコ丼の大盛だよなーって違うっ!」
キリヤのペースに乗せられそうになったが,寸でのところでかわした。ポケットからはみ出ていた財布を抜き出して彼につき返す。
「これで払ってくれって――中身入ってないじゃんか!」
「あー悪い悪い。ほれ,釣りは要らねぇよ」
と,キリヤは500円玉を渡した。
「はぁ――って足りてないって! お釣りなんて出ないからなッ!?」
「あっれー? 乗せられちゃった?」
めっちゃいじられていたせいで,彼女の顔は真っ赤で,頬を思い切り膨らませていた。
「なに膨れてんだよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
「え,かわいい……私が? 冗談だろ」
「ああ」
それ以上に顔が赤くなり,頬も限界まで真っ赤になっている。
「ははッ! ノせられちゃった?」
彼女の手刀が落ちてくる寸前。
「聞いたぜ,午後はヒーロー科合同授業だろ? 急いで食っちまおうぜ♪」
彼女の攻撃の行き場がなくなってしまった。
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ヒーロー基礎学の時間。
規模の大きい実習は二クラス合同で行うこともある。
今回はサバイバル訓練。先日,他校と合同で行われた時は,色々あって失敗したためにもう一度行われていた。
それぞれランダムにヒーローとヴィランに分かれ,ヒーローサイドはゴール地点にたどり着くこと,ヴィラン側は戦闘不能,もしくは確保テープを巻きつけることが勝利条件だった。
途中までは,ゴッドマキシマムを使っている神が勝利するかと思われていた。
「おーおーこれが噂のゲンムか」
「って言ってる場合か!? 逃げるぞ!」
体育祭で直に脅威を見ていた拳藤は逃げることを勧めた。
『私を前に逃げ出すのはあまり得策とは言えないなァ』
「悪ノリが過ぎるぜ神」
キリヤはコスチュームからゲーマドライバ―,そしてガシャットを出した。
「なにっ!?」
「それ……あいつの?」
\爆走バイク!/
「0速,変身」
\ガッシャット! ガッチャーン! レベルアーップ! 爆走! 独走!! 激走!!! 暴走!!!! 爆走バイークッ!!/
「自分は“爆走ヒーロー”レーザー」
「なぜ君がガシャットを――説明しろッ!」
「そっちこそ,懺悔してもらおうか……お前のゲームで死んでしまった,すべての人に――ゲームの世界に捕らわれてしまった,自分の妹に」
1-B 二条 キリヤ。
個性:リプログラミング
ありとあらゆる個性を強化・弱体化できる! 効果は1週間ほど続くぞ!
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「思ったより,雄英って脆いんだな。たった一人の内通者で,ここまで簡単に侵入できる」
連続殺人犯・ヴィラン名はライト。
雄英の訓練場に人知れず侵入してきていた。
「――っ芦戸! くってんめェッ!」
切島は個性を発動し,殴りかかる。
「それに,個性にかまけてばっかの奴は――」
「ぐっ!?」
硬化の個性は万能だ。地味だなんだと言われていても,絶対的な防御力は強い。
「――基本的に弱いよな,特に異形型は」
右手で触れたすべての個性を封じる。
それにより切島の皮膚は普通の人間のように柔くなり,身構えられなかったせいでもろにパンチを喰らった。
幼少期から鍛えられていたライトの拳は,切島の体を浮かせ,いとも簡単に戦闘不能にさせた。
「なんでっ……個性が使えねぇ……?」
「俺が封じた。お前は異形型じゃないから殺さないでおいてやる」
彼は必死に手を伸ばした。だが恐怖で竦んだ。
個性を使えない,素の身体能力でどう戦えばいいというのだ?
盾にも鉾にもなる力は――今は無い。
「まっ……て――」
ヴィランに頭を蹴られ,彼は意識を手放した。
当分続く……。
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