しかも類似品が登場しているので投稿した次第。
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御伽話のお城のような豪邸。
広大な庭の中心で、クロトはくつろいでいた。
ワインレッドの派手なシャツ、真っ白なスラックス、サングラス。完全にオシャレをしていた。
「――ッカァ! 私にふさわしい味だァ」
トロピカルジュースを飲み干し、満面の笑みを浮かべていた。
「クロト―! お友達、来たわよー!」
母親の声に、庭から広間までショートワープする。
「来たかァ……神の力を――求める者がァ」
「こーら! 変なこと言わないの」
叱られてクロトは縮こまる。並行世界の彼とは違い、しっかり者の母親に恵まれたため大きくひねくれずに成長することができている。
無論、この世界でもしっかりひねくれているし、並行世界の母親もしっかりものであったことは間違いはない。
ただ、時計の針が早く進んでいるのは、こちらの方である。
「な、なな……」
驚きのあまりフリーズしていたのは、麗日 お茶子。誰とは言わないが、某男子につられてやってきた一人である。
「豪邸やないかーい……」
「う、麗日さん!?」
あまりの格差に、彼女は静かに気を失った。
え、彼女が来た理由? 恋だよ。
「ようこそ! 我が屋敷へ……」
「いや、あんたのじゃないでしょ」
的確なツッコミが入る。
さすがはA組のツッコミ担当というべきか。
「何を言う。この屋敷は私の開発したゲームの印税で改装したもの……つまり――」
両腕を大きく広げ、大見得を切った。
「これは私の屋敷なのさぁッ! ブゥェヘヘヘヘ!!」
物につられてきたクラスメートたちは思い切り後悔した。
「……さて、時間もあまりない。早速始めるとしようか」
いまだに意識を取り戻さない麗日を引きずりながら一行は応接室へと向かうのだった。
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――――数時間後
「ふむ、こんなところか。ヒーロー情報学とやらも大したことはない」
クロトは一息をつく。
その隣には緑谷が全てをやり遂げた表情で息をついていた。
始めの方こそ耳郎、麗日も教えられていたが、瞬く間に成長を遂げた神の習熟度について行けず、二人とも端の方で大人しく勉強をするという事態になっていた。
「は、初めてだ……僕とこんなにヒーローを語り合える人になってしまうなんて――さすがは壇君だよ」
「全ては究極のゲームを作るためさァ……あらゆる知識を手に入れなければただのヒット作しか出来上がらないものだ」
男の友情みたいな物が芽生えているのを女子二人は冷たい目で見守っていた。
「すごいね……」
「本当にウチらと同い年なの……?」
しれっとパソコンを起動しゲーム開発を再開しているクロトは、確かに高校生には見えなかった。
そして長時間勉強したからか、耳郎は頭痛を感じた。
「ごめん、お手洗い借りてもいい?」
「部屋を出て右にでてすぐの所にある」
「……全然すぐじゃないし」
思っていた以上に歩かされ、耳郎は疲れ果てていた。
部屋の電気スイッチ、装飾、その他諸々がゲームのようにデザインされていた。
蛇口ではなくボタン式の水道だった。が、一回押しても水が出てこない。自動かと思って手を出すも反応しない。
「なんで……?」
ボタンは横に四つ並んでいる。
適当に押してみると水が出てきた。すかさず手を出すもすぐに止まる。
「うわ……組み合わせか。なんてもん作ってんの」
何とか長時間水を出すことに成功し、顔を洗えた。
すっきりしたところで鏡を見ると、背後に見知らぬ女の子が立っていた。
「(やば)ごめん、待ってた――!?」
しかし、誰もいなかった。
思わず目をこすった。やはり誰もいない。
「……気のせい、か」
きっと勉強をしすぎて疲れているだけだ。彼女はそう自分に言い聞かせた。
何事もなかったかのように廊下へ出ようとした瞬間。
『イベント発生無視とか……ちょー白けるんですけど』
「ひっ!」
気のせいなわけがなかった。恐る恐る後ろを振り返ると、鏡に映っていた女の子がそこに立っていた。
クロトとは似ても似つかない、可愛らしい女の子だ。もしかしなくても、血のつながりはなさそうだ。
「だ、だれ……?」
『そーそー、そうこなくっちゃ♪』
少女は楽しそうにくるくると回り、耳郎の手を掴んだ。
『さ! 私と一緒に遊びましょう!』
「ええ? そんな急に言われても――わっ!?」
あれよあれよという間に引っ張られていく。
「ってか、あんた誰なの!?」
連れてこられたのは、ゲームセンターを思わせる一室。
目の前に掲げられた大きなモニターには様々なランキング――名前からしてゲームだ――が所狭しと掲げられている。
少女はそのうちの一つ、一番上の名前を指さす。
『私は――“m”』
思わず鳥肌が立った。
エム、といえば世界最強のプロゲーマー。存在が都市伝説そのものだったが、なるほど、ゲーム会社のテストプレーヤーだったとは。
挑戦してみたい。
一ゲームプレーヤーとして、戦いたい。
「正直乗り気じゃなかったけど――ここまで誘われてやらないの、ロックじゃないよね」
『やったっ! 心が躍るなぁ!』
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(あれ……キリヤ、か?)
街中を歩いていた拳藤は、いつもと違った様子の同級生を見かけ歩みを止める。
その後ろ姿に何かあやういものを感じ、声を掛けるのを思わず躊躇ってしまった。
こっそり後をつけ――更なる偶然で物間とも遭遇したがうるさそうなので手刀で気絶させておいた――衛生省の管轄下にある建物までたどり着く。
(なんで衛生省に……?)
追いかけるのに夢中だったせいか、背後から忍び寄る人物に気付くことができなかった。
「――ッ!?」
首筋に強い衝撃を感じる。
意識が朦朧として膝をつく。
『――いやぁ手刀って地味に痛いんだよね。今度から控えてくれないかなぁ?』
(なんでこんな時に物間の声が……?)
脳裏に浮かんだ謎のイメージを最後に、彼女は意識を失った。
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――――衛生省
「すまないね、放矢 タイガくん」
高そうなソファに座っているのは、先日ラヴリカというヴィランの起こした事件の場に居合わせた少年、放矢 タイガ。
「お偉いさんが、なんの用なんです?」
「君、両親は、いるのかね?」
審議官の陽向はいたって穏やかに質問をする。
「……いません。俺が子供の時、ヴィランに襲われて」
「ああ、そう言えばそうだったね。資料を読んだんだけど、年のせいかどうも物忘れが激しくてね」
その様子は親戚のオジサンのようで、とても政府の高官とは思えなかった。
「そうだそうだ、君の御両親は悲しいことに、殺害されてしまったんだったね――確か、そのヴィランは“個性増強薬”を使っていた」
タイガの頬を冷汗が伝う。
「君は果敢に立ち向かい、妹を守り抜いた。ぜひとも後世に語り継ぎたい美談だ」
子供の“個性”はまだまだ未熟だ。いくら初期の出力が世代を経るごとに増しているとはいえ、強化された個性の大人に対抗出来たのは奇跡に近い。
「実はね、衛生省ではあらゆる病院のデータを保有していてね。その中に例のヴィランのデータもあるんだ」
「何が言いたいんです?」
「実はね、増強薬の注入器に第三者の血液が付着していたんだ」
本能的に、彼は個性を発動していた。
放矢 タイガ。個性:
手の平に弾丸を作り出し発射できるぞ! 射程距離と威力はトレーニング次第!
大きかった弾丸は、煙のように消えてしまっていた。
「なっ……」
「私の個性は認識範囲内の個性を抑制できる。暴力に訴えるのは良くないよ」
と、審議官はデスクの上にあったモニターを反転させる。
「まずはこれを見てくれたまえ」
『テスト、開始します。ベルトを装着し、ガシャットを起動してください』
アナウンスに従い、アロハシャツを着た男がベルトを装着し、緑色のガシャットを起動する。
\カメンライダー・クロニクル・・・・・・/
『ゲームエリアの展開を確認、異常は確認されません。変身シークエンスに移行してください』
ベルトのボタンがクリックされる。ゲームBGMのようなメロディが流れる。
スロットにガシャットが挿入される。
『! バグスターウイルスの活性を確認、直ちに離脱してくださいッ!』
画質が悪く、何が起こっているのかわからない。
しかしマイクは僅かな音を拾っていた。
べちゃり、と。
そして倒れる音。
「なんだよ、これ……バグスターウイルスって」
映像が切り替わり、LIVEと表示されたものになる。
オレンジのサイドテールの少女で、猿ぐつわをされながらもカメラを睨み付けていた。
その腰には、先程の映像と同じベルトが装着されている。
「さて、放矢 タイガくん。君の過去を暴き立てようとは思わない。我々の提案を飲んでくれるのならね」
「彼女にも同じことをさせるつもりか!?」
もはや目の前の相手に敬意を払うつもりもなく、胸倉を掴む。
「止めてくれないか。高いスーツなんだ」
審議官は冷静にその手を払いのけ、しわを正す。
「検査の結果、君が一番適合しているみたいでね。ぜひとも被検体になってほしいんだ。人類の未来のために」
自分か、見知らぬ少女か。
タイガの答えはすでに決まっていた。
「約束しろ……妹に手を出さないって」
「安心したまえ。私は国民の健康と平和を祈っているのだよ」
~その頃の爆豪たち~
「なあバクゴーここどうやって解くんだ?」
「アァン!? んなもん公式使えば一発だろうが!!」
ガリガリガリガリブクブクブクブク
「おお、そう言うことか」
「チッ進めらんねぇじゃねぇかよ……」
ズココッココカリカリカリ
「――アアアァッ! さっきから汚らしいぞげんこつ女ぁッ! 勉強するか飲むかどっちかにしやがれっ!」
サキは勉強の手を止める余裕などなかったのだった。