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――――期末試験当日
「皆、まずは筆記試験お疲れさま! ここからは実技試験の時間さ!」
相澤の襟巻(拘束具)の中から校長が飛び出す。
約一名が崩れ落ちそうになっていたものの、大半は消化試合に挑むかのようにリラックスしていた。
「入試みたいなロボ無双っしょ!?」
「サクッと終わらせちゃおっ!」
一部の能天気な二人は終わってもいないのにはしゃいでいた。
「残念、今年から内容を変更しているのさ!」
二人の時間が停止した。
「――お前らも知っての通り、最近じゃヴィラン犯罪も激化している。今まで通りじゃいけないって訳だ」
こっちの方が合理的だからな、相澤はそう付け加える。
「というわけで、試験内容は――二人一組で教師と戦う、さ!」
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・砂藤&緑谷ペア(フィールド:デパート)
「まさかこうなるなんてなぁ……」
砂藤はぼやきながらスタート地点に立っていた。
「きっとおもりはハンデだよ。じゃなきゃ、みんな逃げるしかないから」
いつものテープとは違う確保証明のアイテム。
緑谷はそれを握り締め、深く深呼吸する。事前説明では、自分たちの相手は外部講師が行う、とのことだった。
「作戦はさっきの通りでいいんだよな、緑谷」
「うん。きっと僕らが先制してくるとは思わないはず」
照明がちかちかと明滅した。
「――試験会場はここであってるかな?」
彼らと年の変わらない青年がふらりと現れる。首から入校許可証をぶら下げていた。
「まさか……あなたが?」
緑谷は彼の正体をいち早く見抜き、戦慄した。
完全に相性が悪い。
「うん、オレは天空寺 タケル。“不可思議現象研究所”ってところで、ヒーローの手助けをしている……探偵、かな?」
天空寺 タケル。個性:呪術
透けたり幽霊を呼んだり見えたり、オカルトっぽいことは何でもできるぞ!
「ヒーローじゃないって、なめられたもんだぜ」
砂藤は闘志をあらわにするも、緑谷の言葉に凍りつくことになる。
「違う、相性最悪なんだ――あの人は物理攻撃無効化の個性を持ってるんだ!」
砂糖・緑谷ペア――試験開始
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・壇&爆豪ペア(フィールド:建築途中のビル)
「やれやれ、よりによって君とペアを組むことになるとはね」
「うるせぇっ! こっちのセリフだ」
爆発と共に爆豪が怒鳴る。
他ならぬ彼が一番苛立っていたのだ。
「ふん……私の偉大さを、そろそろわかってもらいたいものだが」
「んだとゴラァッ!? 一撃で死ぬ貧弱ボディのくせによ!」
「こらこら、喧嘩しないの」
「「!?」」
突如として割って入った声で、二人の動きが止まった。
「どういう事だァ……我々の試験官は、オールマイトだったはず」
コートを羽織り、髪は寝癖の様にはねている。人相は逆光のせいでわからなかった。
「俺の名は葛城 セント。訳あって君たちの相手をすることになった」
彼は黒いバックルを腰に当てる。黄色いベルトが出現し巻き付く。
そして赤と青のボトルをシャカシャカと振る。
「さ、試験を始めようか♪」
突如として周囲に謎の数式が出現する。
「ンだよ……この個性」
「データが少なすぎるな。ぜひとも尊い犠牲になってくれないか?」
「ざけんなッ!!」
\マイティアクションX!!/
クロトはガシャットを挿入し、レバーを開く。
「グレードゼロ、変身!」
\ガッチャーン! レベルアーップ!! (中略)マイティアクショーンX!/
対して青年はボトルのキャップを開け、ベルトに挿入した。
\ラビット! タンク! ――ベストマッチ!!/
そしてベルトのレバーをグルグルと回転させる。すると前後にプラモデルのランナーの様にボディパーツが出現した。
\Are you ready?/
「変身♪」
二つのボディパーツがプレスするように合わさり、スーツを形成した。
\鋼のムーンサルトォ! ラビット・タンク!! イエーイ!/
「これはビルド。“作る・形成する”って意味の、ビルドだ。以後、お見知りおきを」
壇・爆豪ペア――イレギュラー発生。
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・切島&竜ヶ峰ペア(フィールド:市街地)
「サキ姉大丈夫か?」
『ああ、問題ない』
グラファイトモードになったサキは気丈に応えるも、明らかに試験勉強の負荷がかかっているように見えた。
彼らの試験官はセメントス、コンクリートを自在に操る能力の持ち主だ。
(っても、長期戦やったらきっと負担になる。俺がしっかりやらねぇと!)
実はこの試験、各々の相性を基準にペアが組まれている。
主に、弱点を補強できないような形で。
『切島・竜ヶ峰チーム。期末試験――Ready Go!』
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――――数日前
「……次に壇と爆豪ですが、オールマイトさんに頼みます。この二人は能力や成績で組んでいません。ひとえに中の悪さ――」
授業中だろうが口喧嘩になっているのを見ている教師陣は大きくうなずいた。
「それと、爆豪は“無個性”の人間を軽視している節があります」
「なるほど、つまり彼一人じゃ太刀打ちできなくなったとき、自分から助けを求めることができるか」
「珍しく理解が早いですね」
辛辣な一言にオールマイトの心が傷ついた。
「壇は自ら誰かに手を差し伸べることはないでしょう。あなただって気にしていたことだ。頼みますよ」
「うん……私にも考えがあるんだ――」
その提案に教師陣がざわつく。
「騙し討ちとは考えたな」
「だがこいつら並のヒーローじゃ脅威にならねぇぜ!?」
「そうよねぇ……それこそ、ランキングトップにせまる実力がなくちゃ」
懸念しているのは全員同じだった。
二人とも体育祭のトップに名を連ねる実力を持っている。特にクロトは出鱈目な力を発揮するためそこいらの二流ヒーローではあっさり負けうる可能性があるのだ。
「その点は安心してほしい――推薦する人物の実力は保証――して、あれこれどうやって再生するんだっけ?」
ノートパソコンを立ち上げ、“とあるヒーロー”の戦闘映像を見せる。
「彼なら、きっといい試練になるでしょう」
――そして現在に至る。
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場所は変わって衛生省。
『シミュレーション、開始します。ベルトを装着し』
「うるせぇ……」
タイガは目の前の台に載っているベルトとガシャット睨み付ける。
“バンバンシューティング”と言えばゲンムコーポレーション、幻の第一作と呼ばれるシューティングゲームだ。発売前に数々の問題が発覚したためお蔵入りとなった伝説のゲーム。
先週までの彼なら、そんなゲームをプレイできるとなったらうれしくて仕方がなかっただろう。
だが今はそんな余裕などなかった。
見知らぬ女の子と自分の過去を人質に取られ、こうして衛生省の手先に成り下がったのだから。
ベルトを腰に当て、ガシャットを銃の様に構える。
カメラに向けて、引き金を引くように。
\バン・バン・シュティング/
『ガシャットの正常な起動、及びゲームエリアの展開を確認。続いて変身シークエンスに移行してください』
「変身」
\ガッシャット! レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! What's your name? ……I'm a カメンライダー/
部屋に無数のモブキャラが現れる。
七面鳥のような頭部で、特殊部隊のような武装をしている。
『レベル1への変身完了。患者の体からバグスターウイルスを分離してください』
ザコキャラたちをヘッドショットで沈めていく。シューティングゲームは彼の得意なジャンルだ。
数十体を討伐し終えたころ、無数のウイルスたちが集結し、大きなクリーチャーに変化する。
「……フィニッシュは必殺技だ」
三頭身の体を回転させ、銃弾のような形状に変化する。レベル1必殺技の一つだ。
『ギャオオオオオオオ』
クリーチャーが爆散し、やがて本命の“ボスキャラ”が姿を現した。
『分離成功。レベルアップし、切除してください』
「ふん――第弐戦術」
\ガッチャーン! レベルアーップ!! ババンバン! バンババン! バン・バン・シューティング!!/
\ガシャコン・マグナム/
「散開シロ!」
ボスキャラ、リボルの指示でモブキャラたちが戦術的に動き始める。
ありがたい。セオリー通りに動いてくれるなら非常に読みやすいのだ。
\ズ・キューン!/
モード変形し、高威力の弾丸を牽制で振っていく。
弾幕で煙る視界を突っ切り、敵の懐に潜り込む。
\キメワザ! バンバン・クリティカルフィニーッシュ!!!!/
「喰らいな……」
ゼロ距離で引き金を引く。
「――BANG!」
勝利の余韻に浸る間もなく、シミュレーションが強制終了となる。
こんなにつまらない“ゲーム”は初めてだった。
~選考基準~
・砂藤&緑谷
二人とも増強系なので物理技しかない。なので幽霊に勝てないと推測。
というより追加二人分の余り