タケル殿って変身してない方が強い気がする。
――――
――
「――君が先に仕掛けていいよ」
「んだと!?」
「だって、ボクの方が早いからさ――ファイヤッ!」
謎の人物に早打ち勝負を仕掛けられていた砂藤を咄嗟に救出する。
「すまん、助かった」
「マズいよ、どこの出口もあれに似たのが押さえてる。脱出はかなり絶望的かもしれない」
パーカーを来たマネキンのような何かに二人は脱出を阻まれ続けていた。
どれも一筋縄ではいかなく、むしろその辺のヒーローの数倍は強かった。
「緑谷、あの人の個性って何なんだよ?」
「ごめん、よくわからない。でも噂が本当なら――あの世とこの世を行き来できる、って」
「幽霊かよ!?」
二人は逃走の末、服飾品売り場(偽)に隠れる。
物理攻撃はほとんど効かず、逃走しようにも謎の存在に阻まれる。いくらハンデがあっても分が悪すぎるのだ。
「どうする? 何なら俺が囮になって」
「駄目だ。相手の数が分からない以上それは悪手だよ」
緑谷は冷静に状況を分析する。このまま正面突破を図ったとしても、相手がそこに集中してしまったら到底勝ち目はない。こんな時に索敵に秀でた障子が居れば、デコイを作れる八百万が居れば。
二人とも増強系ではこういった状況で取れる行動が正面突破(物理)しかない。
そこで彼はこの試験の構造に気付く。
「そういうことか……各個人の苦手分野をどう対処するかがポイントなのか。だとすると僕たちに不利な個性を持っている試験官が担当するのも納得できる。これが期末試験である以上どこかに突破する鍵があるはず」ブツブツブツ
「おぉ……ついにその状態になったか」
こんな状況でも考察が止まらないことにドン引きする砂藤。
「ッ砂藤くん……君の個性って、確か糖分を取るとパワーが上がる、だったよね?」
「あ、ああ。大体10gで5倍の感覚だな」
「それ、上限ってある?」
質問の意図が分からず砂藤は首をかしげる。
「一応ないと思うが……前に限界に挑戦したことがあって――」
その話を聞いて、緑谷は作戦を組み立てる。
恐らくこれで勝てるはずだ。
「うん、これでいける……砂藤くん、地下に行って砂糖をかき集めてきてほしいんだ」
「おう――ってまさか」
「そのまさか、だよ。限界まで増強して、暴れまわる」
「――うんうん、それで?」
「「っ!?」」
驚くべきことに、天空寺 タケルが上半身だけ透明化した状態で壁をすり抜けてきたのだ。
「っ後は任せて!」
「応ッ!」
緑谷は拳を構え、個性を発動する。
「ワン・フォー・オール・フルカウル――5%」
「おっ、いいね♪」
タケルはとびきりの笑顔でそれを待ち構えている。
「SMAAAASHッ!!」
しかしその拳はいとも簡単にすり抜けてしまった。
「くそっ!」
こちらの攻撃が当たらない間は向こうも攻撃することはできないはずだ。手数を増やして反撃する隙を与えない戦法を取る。
「もしかして、オレが霊体化している間は何もできないって思ってる?」
「!?」
考えを読まれたか、それともいつもの事なのだろうか。その笑顔のせいで考えが読めない。
「残念だけど――はっ!」
タケルが宙に目玉の紋章を描くと、衝撃波が発生する。
「っ!?」
緑谷は咄嗟に躱すも、陳列された商品たちがなぎ倒されていく。
「っずるい……」
「よく言われるよ」
このままでは負けると判断した緑谷は下の階へ逃げつつ、砂藤の方へ行かないように誘導していく。
「言っておくけど、オレの相棒たちがこのデパートを巡回してるんだ。君たちの作戦、上手くいくかな?」
もちろん想定済みだった。緑谷はそれでもなおクラスメートを信じる道を選んだ。
きっと彼なら突破してくれる、と。
――――地響きがした。
『――その時は、気が付くと意識が無くてよ。病院でこっぴどく叱られたっけな』
黒いマネキンもどきの足を掴んで引きずりながら砂藤が下の階から上がってきた。
口やコスチュームには砂糖やシロップが付着しており、目は虚ろで口は半開きだった。
「た、タケル殿……もうしわけ」
「ugaaaAAAaaaAAAAaaaa!!!!」
雄たけびを上げた砂藤によってそれが振り回され、投擲された。
「くっベンケイ!」
タケルは難なくそれを躱すも、続けて飛んできた拳を反射的に避けてしまう。
「やっぱり――霊体化にも限度があるんだ……!」
拳の一発一発が床をえぐっていく。揺れのせいで緑谷は身動きが取れなかった。
「個性だって身体能力の一つ。あなたはポーカーフェイスで常時自分が無敵であると錯覚させてるだけ……!」
建物が揺れる程の攻撃にタケルも全力で防御をしている。
本来は全力で暴れて消耗させ、確保するつもりだったが――これは想定外すぎた。ここまで高威力で、ここまで理性を失ってしまうとは。
「くっ!」
「GuooooOOOOOoooooOO!!!!!!!!!!」
砂藤の振り下ろした瓦礫が命中する。霊体化の上限がきたのか、タケルは紋章術で防御に徹していた。
一度、二度、三度――ぶつかるたびにシールドが削れていく。一撃一撃がオールマイトのスマッシュに匹敵する威力を持っていた。
右手で天候を変えると言われている威力に近いそれを防いでいるのは、ひとえに彼の技量があるかもしれない。
「OOoooOOOOOooooo!!!!」
大きく振りかぶった渾身の一撃がタケルの体を大きく吹き飛ばす。
偶然にも、脱出ゲートへ向かっていた緑谷の方に向けて。危うくぶつかるところであった。
「さ、砂藤くん!?」
「gAaaaaAAAA!!」
続けて標的にされたのは緑谷だった。
「見境なしかよっ!」
その攻撃を躱したところ、背後のタケルに攻撃が命中してしまう。
「うっ!」
\カイガン! オレ!/
土煙の中からぼんやりと輝くシルエットが浮かぶ。
\レッツゴー! カクゴ! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!/
パーカーを纏い、額から角の生えた仮面を纏った姿。全体的に無機質な印象を受けるスーツだった。
「……まさか、本気を出させられるとはね」
「まじでか……っ!」
前門の暴走砂藤、後門の試験官。
絶望的な状況だが、自然と笑みが浮かぶ。ヒーローは窮地でも笑うものだ。
「フルカウル――6,7……10%ぉ!!」
全身が軋んでいるが、我慢できるレベルだ。
限界を超える。
今の状況を突破するにはもっと速く、素早く動かなくてはいけない。
「GOoooooOOOO!!」
「はっ!」
(もう少し――)
二人が同時に接近してくる。
ギリギリまで引きつけて――
「そこだっ!」
攻撃がぶつかる刹那、避けた。
(相討ちにして――ダウンしたところで)
「確っ保ぉっ!」
砂藤の個性の限界は3分。
丁度、時間切れだ。
『砂藤・緑谷チーム。条件達成!』
しれっと原作キャラを強化したのである。
シュガードープ(