そして前振りしすぎたせいで映画の内容をやらねばいけない雰囲気に……
――――
――
空を覆わんばかりのコンクリート。
殴っても殴ってもすぐに元通りになる。
このままでは絶対に勝てない――切島の心は折れかかっていた。
『――っしゃんとしろ!』
「いてっ!」
硬化していない背中をサキ――グラファイトに叩かれて悲鳴を上げる。
『ここでお前が諦めれば、多くの民が傷つくことになるぞッ! 私たちしかここにはいないのだッ!』
「でも先生の個性には勝てねえんだぞッ!?」
『敵は必ずしも弱いとは限らないッ! この程度で諦めることは許されないぞッ!』
自分よりもはるかに辛い彼女の喝に気合が入る。
切島は思い切りコンクリートに頭突きをかました。額から一筋の血が垂れる。
「ああ――そうだな!」
再び硬化した拳でコンクリートを削る。すぐに再生するのも構わずに次々と拳を繰り出していく。
「こんなところでうじうじしてんのは――男らしくねえからなッ!」
『そうだ! その意気だッ!』
背後からグラファイトの裂撃が援護する。
削るよりも早くにコンクリートが生成される。生成されるよりも早く削る、砕く。
(――っ! 見えた!)
果てしない壁が割れ、光が差し込む。
『させませんよ』
二人の努力を笑うかのようにその隙間が塞がっていく。
「クソッ! ここまでか……!」
『歯を食いしばれッッ!』
背中に強い衝撃を感じた。咄嗟に硬化した両腕をクロスする。脆い部分から崩れ、セメントスの姿が目に入る。
「これでも――喰らえッ!」
拳を叩きつけるも、硬化は途切れてしまっていた。
「っ息が」
「……君たちは消耗戦に弱い。戦闘ってのは、自分の得意を押し付けるんだよ」
その後ろからグラファイトが飛び出す。赤いドレスを翻し、右腕と武器には漆黒の裂撃を纏っていた。
『言われずとも、知っている! ――奥義・ドドド黒龍剣!!』
うねる黒竜がセメントスに襲い掛かる。
「! まずい……」
咄嗟に防壁を生み出すも、それを呼んでいたグラファイトに背後を取られ、確保証明のカフスを付けられてしまった。
『切島・竜ヶ峰チーム、条件達成!』
「はふぅ……」
マスクを外したサキは切島に微笑む。いくら特注のコスチュームとはいえ、何度も裂撃を使用したせいかビリビリニ引き裂けていた。
二人が勝利のハイタッチを交わした瞬間だった。
――――ぼよん!
サキの見事な双丘が抑えられずに弾けた。同時に、耐え切れなくなったコスチュームが完全にはじけ飛んでしまった。
「きゃっ!?」
「ぉうわっ! みてねえ! みてねえぞ!?」
髪のごとく真っ赤に染まった切島は慌てて目を逸らす。半裸のコスチュームのせいで、上着を差し出すという漢気満点な行為はできなかった。
「……締まらないですね」
セメントスは即座に監督役のリカバリーガールを呼んでおいた。
――――
――
「――巨乳、貧乳、ロリ、熟女。オイラはあらゆる快楽を見つけ出したっ!」
追い詰められた峰田は頭のもぎもぎを無差別に投げつける。
「もう一度あのパラダイスを手に入れるんだッ!」
―――――グレープ・ラッシュ!!
条件は達成したものの、峰田は無事に生徒指導室へ送られた。
――――
――
――――数日後
期末試験は終わった。だが1-Aの面々は穏やかではなかった。
「……お前ら席に着け」
相澤の声も、いつになく深刻な物だった。
「知っているとは思うが、耳郎がバグスターウイルスに感染し、ゲーム病となった。幸い、その場にいた口田とマイクは無事だった」
いち早く彼女を医務室に連れていっていた口田は若干俯いていた。
「感染時期が特定できない以上、ここ一、二週間――学校だけでなくプライベートでの接触があった者は挙手しろ」
一緒にテスト勉強をしていた緑谷、麗日が手を挙げる。丁度この日はクロトがまだ来ていなかったのである。
「よし、今すぐ検査を受けてこい。すでに衛生省の医者が応接室にいる」
「「は、はいっ!」」
今更ではあるが、二人とも口を手で押さえ感染を防止しようとしている。
「――おや、何やら雰囲気が重いようだな」
そのタイミングでクロトが遅刻してくる。敵意のある視線が集中した。
彼は呆れたようにため息をついた。
「ふん、クラスメイトがゲーム病に感染して気が立っていると見た」
「てめ――」
「よせ切島」
怒りを受けてもなおクロトは気にせず自分の席に座る。
「おい壇、俺はお前のプライベートに干渉するつもりはない。だがこうなったら話は別だ。お前の知っていることを全て教えろ」
「……もはや正体を隠す意味も、ない」
ショートワープしたクロトは相澤を押しのけた。
「そもそも君たちは私が無個性だと教えたのになぜ不思議に思わなかったのかァ……不思議でならないな」
死んでも蘇る、このようにショートワープするのも、どちらも無個性なら本来はできない芸当だ。個性が当たり前の社会では多少の超常は当たり前すぎて誰も気にしていなかったのだ。
「い、言われてみれば……」
「確かに個性がないなら説明ができねえな」
クラスメイト達も今更ながらそれに気が付いた。
「なぜ私が無個性なのにコンティニュー出来るのか、なぜ自由自在にガシャットを生み出せるのか、なぜ変身して戦うことができるのか。その答えはただ一つ」
――――私が人間ではないからだ。
――――
――
場所は変わって衛生省。
ゲーム病の治療はここで秘密裏に行われていたのである。
「――では加賀美先生、オペの準備を」
「ああ……」
医者であり、プロヒーロー“ブレイブ”である加賀美 ヒイロは衛生省でゲーム病治療に携わることとなった。
あのゲンムが使用していたベルトとガシャット、まさか治療器具となるとは思ってもいなかった。
「よし、始めるぞ――ゲーマドライバー」
「はい」
助手が彼の腰にベルトを装着させる。
「ライダーガシャット」
「はい」
ヒイロはピンク色のガシャット――マイティアクションXを受け取る。
患者は姪っ子のクラスメイトだ。何としてでもオペを成功させねばならない。
「――これより、バグスターウイルス切除手術を開始する」
彼の親指がガシャットの起動スイッチを押す寸前。
「まって!」
治療室に乱入者が現れる。
天才ゲーマー“m”
クロトの屋敷にいた少女である。
「な、どうやってここに――」
「それ貸してっ!」
彼女はショートワープでベルトとガシャットを奪い取り、病室へ飛び込む。
職員たちは直ちに捕まえようとするも、いとも簡単に逃げられる。
「これは私のせいだから――」
ベルトを装着し、ガシャットを起動させる。
\マイティアクションX/
『あー楽しかった、また遊んでくれるよね? えっと……』
『そういや、自己紹介してなかったっけ。ウチは耳郎 響香、よろしく』
初めてできた友達だった。
『私は天才ゲーマー"m"――本名は、二条 エミ』
ゲームエリアが展開し、耳郎の体内に潜むウイルスが活性化する。
「うぅっ!?」
「響香の運命は――私が変えるッ!! 変身!」
\ガッシャット! レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! What's your name? ……I'm a カメンライダー/
「……ピンク色の、ゲンム?」
耳郎はそのつぶやきを最後に意識を失う。
mの変身した姿は、ゲンムをピンク色に変更した姿だったのである。
バグスターウイルスが多数出現し、
「もうコンティニューせずに、クリアしてやるッ!」
二条 エミ(天才ゲーマー“m”)
個性:ウイルス
未知のウイルスを生み出す! これはマジでヤッベーイ!
ようやく研修医のリイマジキャラに到達できたぞい