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――――ゲンムコーポレーション社長室
「はい、もしもし……ああ、財団Bの会長さんですか。ご無沙汰しております」
壇 マサムネは日本最大の財閥である財団Bの会長から電話を受け取る。
特に新商品を発売した覚えもなく、世間話か次の提携の話かと思った。
「……え?」
相手に言われ、ネットニュースのサイトにアクセスする。
そこにはゲンムコーポレーションとマキナビジョンが共同開発した新作ゲーム『カメンライダークロニクル』が売り切れ続出の大ヒットを記録しているとあった。
(なっ……!)
『いやいや、サプライズとはニクい演出ですな』
「ええ、その方が、インパクトがあって……」
そんなはずは無かった。
まだカメンライダークロニクルは不具合が――それも致命的な不具合があってリリースは見送る予定だったのだ。
「で、では……どうやら記者が取材に来たようで、失礼します……」
彼はゆっくりと通話を切り、マキナビジョンの電話番号にかける。
『…………プッ』
しかし繋がらなかった。
つまり、これは向こう側の策略ということだろう。
「――っくそ! やってくれたな……!」
マサムネは拳を机に叩きつける。
その直後、背中に何かが突き刺さる。
「――!?」
彼の個性は認識範囲内の時間を止める、というもの。
つまり認識できなければ止めることすらできない。
この事態を解決できる人物は、そのまま意識を失ってしまった。
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街ではカメンライダークロニクルを購入できた幸運なゲーマーたちがプレイをはじめていた。
「っしゃぁ! レベルアップ!」
ボスキャラを撃破したプレーヤーたちはハイタッチを交わし、戦利品を分け合っていた。
そんな中、プレーヤーの一人がスマホを掲げた。
「お、おいっ! 早速イベント実施だって!」
「ま、マジかよッ!?」
「さすがはゲンムだぜ!」
彼らは各々でその情報を探る。
イベント内容は『アイテム捜索』
マップ内に存在している多種多様なアイテムを探し、報酬と交換できる――ありがちな内容だった。
「場所は……神野区かぁ」
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街でそんなことが起こっているとはつゆ知らず、雄英高校の合宿は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
各々の個性を伸ばすべく、強大なムチが振るわれていたのだ。
さて、この強化訓練は当然部外秘である。第一、死に物狂いで個性を発動している場面を見たいもの好きな方はそう多くはいないだろう。
だがここに、一部始終を記録した資料がある。
特別に、御覧に入れよう……。
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「フゥッ! フゥッ! フゥッ! フゥッ! フゥッ!」
クロトは狂ったように緑色の甲羅を壁に蹴り当てていた。
その間、彼の頭上に表示されるライフカウントが1ずつ増えていく。
「ブゥヘヘヘ……これで私の命は――無限だァッ!」
元の状態――つまりライフが99になった時点で甲羅蹴りを止め、近くのパソコンの前に座る。
今度は超高速人差し指タイプでゲームを開発していく。
「雄英も酷なことをしてくれるゥ……このッ私の才能の限界を突破させろとはナァッ!」
\ゲーム・オーバー……/
開発に執念を燃やし過ぎてライフが尽きるも、即座にコンティニューし開発を続行する。
「私の敵は、まさにッ! 私自身の才能だったということデァッ! フェハハハハハハ!!」
開発でライフが減る→ライフを増やすの無限ループにより、すでにクロトは数百回も命を落とし、その分だけコンティニューをしていた。
強化内容:残りライフの増加+新装備の発明
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「――お前の全力を打ち込んでこォィッ!」
「20%デトロイトスマッシュッ!!」
緑谷の拳から衝撃波が放たれる。
そんな彼の両手両足にはおもりが着けられていた。
「す、すごい……20%でここまで」
「ホゥやるではないか――30kg追加ァ」
「う”!」
重りのウェイトが加算される。更に負荷がかかるようになった。
「まだまだ筋繊維千切れてないだろ? もっとしようぜ、ウルトラァ……」
「い、イエッサァッ!」
増強系個性の身体強化、我'sブートキャンプは他と違って軍隊じみたトレーニングだった。
指導教官はプッシーキャッツの一員、虎。一人だけゴリゴリの武闘派と言った出で立ちだ。
強化内容:身体強化、並びに許容上限の増加
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皆が外で体を動かす中、サキは一人だけ室内にいた。
「――次に、ここの問題だが」
ヴィジランテとして活動していた彼女は戦闘力、個性強度ともに一定の水準を超えていたのだ。
つまり――足りていないのは学力だった。
強化内容:学力
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その夜、サキは近くの洞穴に来ていた。
「っ!? 何でここが」
「ごめんごめん、君を探しに来たわけじゃないの」
捜索されたわけでないと知ってホッとする洸太。
「一日中部屋に籠ってたら体がなまっちゃうし――!」
と、彼女は近くの岩に向けて個性をぶつけた。それに大きな亀裂が走った。
「なんだよ……その個性」
「ヴィランみたい?」
言おうと思っていたことを先取りされて洸太は言葉を詰まらせる。
「よく言われる。こんな個性じゃヒーローにはなれないって」
「じゃあ何でヒーロー目指すんだよっ!? 個性があるからってなんで」
彼はその先を言うことができなかった。
「護るためだから」
サキの目に宿る狂気が、少年を黙らせたのだ。
「護るって……何をだよッ! 結局死んでちゃ意味ないだろッ!?」
「そのうち君にもわかるよ――私だって昔は君みたいに思ってた時期があったから」
が、そんな怖さは笑顔になった瞬間に消えた。
洸太はすぐに調子を取り戻して不貞腐れる。
「ふん……そうやっていつも誤魔化すんだよ」
「あはは! それ言われちゃ困るんだけどね」
上空では、一つの星が――しし座のレグルスが輝いていた。
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――――少し未来
「時間がない……少し急がねば」
ストールを巻いた青年はデヴィットが営むサポートアイテム店へと足を運ぶ
「いらっしゃい――ああ、この間の! もう仕上がってますよ」
デヴィットは作業スペースから修復済みのドライバーを取ってくる。
「ええ、期待以上です――それはそうともう一つ修理をお願いしたい」
青年は更にもう一つのドライバーを差し出した。
神に無限の体力を与えていいのかって?
もちろん無限なわけないじゃないですか(ゲス顔)