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「――お,落ち着いてくださっ! 当院は負傷者を優先的に」
病院はパニック状態となっていた。
突如として各地に発生したヴィラン,ゲムデウスの影響で人々は恐怖のどん底に叩き落とされる。
ただでさえ一体でも甚大な甚大な肥大を与えた存在が同時多発的に出現している。
破壊活動を行う中,なぜか病院だけは襲わない。
ゆえに,助かりたい人々は理由をでっちあげて押しかけているのだ。
「「「――――!!」」」
誰も彼もが叫んでいるせいで何が言われているのかすらわからない。ところどころ「病気が――」や「持病が悪化して――」など聞こえてくる。
『急患です! 道を開けてください!』
救急車がやってきて道路にまで溢れ出ている人々に注意を行う。
担架に乗っている少女は血の気が無く,応急処置が成されているものの焼け石に水と言った印象を受ける。付き添いの少年は今にも泣きそうで,必死に縋りついている。
「ちょっと私の方が先だったのよッ!」
意地の悪そうな女性が叫んだ。それにならうようにざわめきが広がっていく。
彼らは恐怖心で正常な判断ができていないようだった。
「ちょっ――早く道を開けっわ!」
人々は担架を運ぼうとしている救命士を妨害し,自分が先に院内へ入ろうともがく。
「――道を開けろッッ! 治療の邪魔だッッ!!」
病院の中から医師――加賀美 ヒイロが姿を現す。
「っ先生! 私の治療を」「いやオレを」「私を――」
餌に飛びつく魚の様に人々が飛びつく。
それを押しのけてヒイロは患者の下に向かう。
「っサキ……」
患者の姿を見て彼は思わず表情をゆがめた。
しかしすぐに冷静さを取り戻し,看護師たちに指示を出す。
「事態は一刻を争う。すぐに集中治療室へ」
「はいっ!」
そして呆然としている群衆に向けて宣告する。
「深刻な病状の患者から治療を行っていく。先程の少女よりも深刻な病気を持っている奴がいるなら名乗り出ろ。すぐに
ヒイロの気迫に押されたのか,誰も反論する者はいなかった。
「……そうか。ならば静かに順番を待っていろ。余計な騒動は治療の妨げとなる」
騒ぎ立てていた人々は静まり返る。
そして諦めるように避難所へと向かうのだった。
――――
「――今の啖呵,さすがだな,ヒイロ」
「!?」
手術着に着替えたヒイロを持ち構えていたのは,怪しげな男性だった。真夏なのにコートを羽織り,帽子を目深にかぶって人相を誤魔化していた。
だが,彼にはその正体が分かった。
声だけを聴けば十分だった。
「……ッ北城先生に連絡を,俺の代わりに
「はいっ!」
二人きりとなる。
コートの男は帽子を取り,ゲーマドライバーを装着する。
「あの娘にオペは必要ない。このまま逝かせてやれ」
「ふざけるなッ!」
ヒイロもまた,ゲーマドライバーを装着する。彼がゲーム病治療に関わることは無かったが,万が一に備えて支給されていたのだ。
「お前は一体何者だ? 俺の
「容赦はしない,か。やれるものならやってみろ」
\タドル・クエスト/
\ハリケーンニンジャ/
二つのガシャットが起動され,ゲーム空間が展開される。
「未だかつて,お前が俺に勝ったことはあったか? ヒイロ」
「確かに兄に勝ったことは無いが――偽物に負けるつもりはない」
個性が発動し,ヒイロの姿が騎士を思わせるヒーローコスチュームになる。
「「変身!」」
\\ガッシャット! ガッチャーン! レベルアップ!//
\タドルメグル! タドルメグル! タドル・クエルト!/
\(中略)ハリケーンニンジャ!!/
\ステージ・セレクト/
院内から突如としてどこかの荒野へと場所が変わる。
「これより,ヴィラン切除手術を開始する」
「…………」
――――
――
――――???
「壇 クロトの名はもう捨てたァ……今の私は」
クロトの背後に横断幕が広げられる。
「壇――クゥロォトォ王だ!」
発射されたクラッカーに緑谷とベルナージュはぽかんとしていた。
「……来るのが遅かったな,緑谷 出久。待ちわびたぞ」
「い,いや……クラスの皆に会いに行ってたら時間かかっちゃって」
王を思わせる煌びやかな装束を纏ったクロトにドン引きしつつ,緑谷はあったことを早口で説明した。
「ほう,全員正気を失っていたか」
「もうめちゃくちゃだよ! かっちゃんは無駄にイケメン風だし飯田くんはなんかロックだし峰田君は悟り開いてるし轟くんはものすごくファザコンだったし(あと壇君はどうして王様風なんだ……?)」
「想定の範囲内だろう……我々の力を奪わねば脱出されてしまうのだからなぁ」
「ね,ねえ! 壇君はどうにか――できない?」
「無理だ」
クロトの言葉に緑谷は肩を落とす。
「今の私には,な」
「――でも現実世界にはあるさ」
「っあなたは」
従者のような姿をしたエムが緑谷達の前に現れる。
「クロトが作ってたガシャットはこの世界に干渉できる――が」
彼は悔しそうな表情になる。
「俺が使ったらこのザマさ」
「まだバグスター用に調整できていないせいだ」
さすがの神ともいえど,そう易々と完璧な作品は作れないのだ。
「あれを扱える人間は……いや,一人だけいるな」
――――
――
マイティクリエイターVRX
それがクロトの作り出していた対抗策だ。
「ウチがやる」
「駄目だ。お前はまだ」
「ほかにやれる人がいないんでしょ?」
相澤が耳郎を止めようとするも,それで止まる彼女ではなかった。
「ウチは一回ゲーム病になってる。だからもう一度感染しても大丈夫じゃないの?」
「だが――」
「先生がプレイして感染したら誰が世界を護るの? それこそ合理的じゃない」
「っ!」
その言葉を出されてしまったら相澤も黙るしかない。
「っ勝手にしろ」
耳郎はガシャットを受け取り,モニターの前に立つ。
「響香ちゃん……大丈夫?」
本来のプレーヤー,エミは不安そうに尋ねてくる。
「さあ……でも,エミがいるなら」
と,彼女は手を差し出す。
「わかった,やろう!」
エミもそれに応え,手を取る。すると体がバグスターウイルスに変換され,耳郎に取り込まれた。
彼女の目が赤く輝く。
「ゲームなら,私たちに任せてっ!」
VRゴーグルを装着し,ガシャットを起動させる。
\マイティクリエイター! V・R・X!!/
「変身っ!」
そろそろ神も活躍します(;´・ω・)