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ゲムデウスが暴れまわる。
ビルは次々と倒壊し人々は悲鳴を上げて逃げ回る。
「ッ!」
それはかつてソウゴが夢で見た光景そのものだった。
ヒーローたちが対抗するも,オールマイト級でなければ戦うことすらできない。トップヒーローたちが分散している今では到底討伐などできないだろう。
『――お前には王の資格がある』
顔を思い出せない男はそう言った。
『王となり,この世界を救うのだ』
(でもどうやって)
ソウゴが迷っていると,チキンのような頭のヴィランに襲い掛かられる。それはゲムデウスの副産物として生まれたものであった。
「うっ」
思わず身構えるも,ストールによる攻撃がヴィランを蹴散らす。
「っあんた!」
「ご無礼をお許しください,我が魔王」
例の不審者が傍に現れ,“あのベルト”を献上してきた。
「ですが,今の貴方にはこれが必要――使い方はもうご存知のはず」
それをソウゴは恐る恐る手に取る。
時計を思わせるモニターに両サイドのスロット。脳内にあの老人の戦う様子が浮かんだ。
「俺は……」
しかし同時に,無個性だとあざ笑われた記憶も蘇る。
何もできない,何にも成れない。ヒーローにも,ヴィランにも――王にも。
本当にあの老人はソウゴの未来の姿なのだろうか?
あれは自分の事をよく知る第三者なのではないだろうか?
「キャァッ!」
彼が躊躇っていると,小さな悲鳴が聞こえてきた。
見れば,鳥頭のヴィランに親子が襲われていた。そしてそれをゲムデウスが押しつぶそうとしているのだ。
「っやめろ……!」
気が付けば体が動いていた。
無個性が何をしたって変わらない。それどころか足手まといになるのがオチだ。行ったところで無駄――それでも無我夢中で走った。
理屈なんて関係ない。とにかくあの親子を助けたい。
「ヤメロォォッ!!」
ソウゴの放った声が具現化し,ゲムデウスの体を阻む。
彼が手を伸ばすと,それに応えるようにヴィランの時が止まる。
「へ……?」
ヴィランが止まった隙を突いて親子は逃げ出した。その直後に止まった時が動き出す。
「――多くのヒーローはデビュー前より逸話を残す!」
不審者はいつも携行していた本を広げて読み上げる。
「この本によれば,時和 ソウゴもまた,その覇道において多くの逸話を残してきた。これらすべてには共通してこんな言葉が添えられる」
“気が付いたら体が動いていた”
「……俺にも,できるのかな。王様になって――世界を救うこと」
「それは私にはわからない。ただ君の未来を導くだけだ」
ソウゴの目つきが変わる。
手にしていたベルトを装着し,ポケットから時計型のアイテム――ライドウォッチを取りだす。
\ZI-O/
それを起動しベルトのスロットに装填,ロックを外して腕を大きく回す。
特に意識をしたわけではなかったが,その姿はあの老人と奇妙なまでに一致していた。
「変身!」
ベルトが回転し,鐘の音が鳴る。
\RIDER-TIME/
その瞬間,世界の運命が大きく動き出す。
\カメンライダー! ZI-O/
時計を思わせるアーマー,顔には丁寧に“ライダー”の文字。
「祝え!!」
不審者は高らかに宣言した。
「全ヒーローを凌駕し,時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者! その名もジオウ,まさに生誕の瞬間である」
吟遊詩人のような向上に,ソウゴは少しだけ引いていた。
「そういえば,君の名前を聞いていなかった」
「……私の名はウォズ,君を魔王となる未来へ導く家臣だ」
「魔王,か……なんか嫌だけど,世界を救うためならなってやるっ!」
少年は覇道を歩み始める。
それは,王となる道だ。
「これなら――できる気がするッ!」
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\ガッシャット! ガッチャーン……レベル・アーップ/
今までのガシャットとは違い,現実世界では何も起こらなかった。
その代わりに仮想世界で変身する。
\天地創造の力! 未来のゲーマー! マイティクリエイター――V! R! X!/
VRゴーグルを装着し,コートを纏った姿。それがエグゼイドクリエーターゲーマーだった。
「っ」
『響香ちゃん!?』
ウイルスの負荷で耳郎は膝をつく。
「だ,大丈夫……ちょっと驚いただけだから」
スタート地点はビルの屋上だった。どこからどう見ても日本のビル街の景色で,ここが仮想現実の世界であることが信じられなかった。
「すご……本当に,これがゲームの世界なの?」
『噂には聞いてたけど,想像以上だね』
踏みしめた地面の感触は,プレイ用マットではなく本物のコンクリートのようであった。
「よしっ!」
エグゼイドは一気に駆け出し,空へと身を投げ出した。
体中がすくみ上るような臨場感に彼女はひそかに胸を高鳴らせた。
空中でガシャットを取り出して足場を描く。
それに乗った瞬間,トランポリンのようにたわんで飛び上がる。
『た,たーのーしー!』
「って楽しんじゃだめじゃん!?」
エミははしゃぎまくっているが,本来は囚われた人々を助け出すミッションが待っているのだ。
当然それは一筋縄でいくものでもなく。
「――――そこまでだヴィラン!」
全身タイツのようなヒーロースーツに身を包んだ少年が攻撃を仕掛けてくる。エグゼイドは咄嗟に空中にバツ印を描いて防御する。
「この世界は破壊させないわよ♪」
魔法少女のようなコスチュームのヒーロー(実年齢不明)が杖から魔法を放つ。炎のようなそれを“水”と書いて相殺する。
「ここは俺たちの楽園だ」
バッタの異形型を思わせる人物がうなだれながら姿を現す。
「ここでハ! 俺たち,HERO!!」
侍のなりそこないのような少年が片言で叫んだ。
『もしかして――』
「みんな自分からこの世界に捕らえられた……てこと?」
ガシャットを構える。想定外の事態にエグゼイドは戸惑っていた。
「みんな! 行くぞッ!」
大きな盾を構えたリーダー格の男が号令をかける。
「アベ(以下自主規制)」
「いやそれ別の作品だからッ!?」
救出作戦は波乱の幕開けとなる。
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――
「やれやれ,この世界に俺の出る幕は無いか?」
マゼンタのトイカメラを首からぶら下げた男がぼやく。
彼はゲムデウスによって破壊される街並みを撮影し,オーロラのようなものを呼び出す。
「だがまあ,少しくらい手を貸してやるか」
そこから現れたのは三人の男。
忍者,クイズ番組の回答者,一昔前の青年。
「じゃ,あとは頼んだ」
カメラの男がオーロラの向こうに消え,三人の男たちは破壊される街並みを見つめる。
忍者は瓢箪を取り出し,その中身をベルトへと変える。
クイズ回答者は胸元のペンダントを引っ張りベルトを呼び出す。
青年がスパナを取り出すと自然とベルトが出現する。
「「「変身!」」」
忍者はベルトの手裏剣を回転させ,回答者はクエスチョンマークのカードを装填し,青年はスパナとドライバーをベルトに装着する。
\ダレジャ? オレジャ! ニンジャ!! ――シノビ! 見参!/
\ファッション! パッション! クエスチョン!! ――クイズ!!/
\デカイ・ハカイ・ゴーカイ ――仮面ライダーキカイ/
三人は各々の戦う姿へと変身を遂げる。
「“忍”と書いて“刃の心” 仮面ライダーシノビ,見参」
「救えよ世界,答えよ正解」
「鋼のボディに熱いハート,仮面ライダーキカイ!」