神のヒーローアカデミア   作:鮫田鎮元斎

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アナザーエンディング16 『壇 クロト:オリジン』

――――

――

 

 ――人は生まれながらにして平等ではない。

 

 それはこの世界の子供が、齢4つにして知る現実である。

 

 壇 クロトもまた、そのことを知った子供の一人であった。

 

「――マイティアクションX……これは、大ヒット間違いなしだッ!」

 

 初めて作ったゲームの企画書。拙いながらも己の才能すべてを注ぎ込んだそれを、父は手放しで喜んでくれた。

 

「すごいわね、クロト」

 

 母もまた、彼の事を褒めてくれた。

 

 数年後、ゲンムコーポレーションから発売されたマイティアクションXは空前の大ヒット。ゲーム史にその名を刻むゲームとなり、会社の業績もうなぎ上りだった。

 

 

 

 

 

 

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「――ヒーローごっこしようぜ!」

 

 クロトの通う小学校では、例に漏れることなく“ヒーローごっこ”が一番人気の遊びだった。

 

 ヒーロー役はいつでも派手な個性を持った子が担当、ヴィラン役はその日によって変わるが、基本的に怖い見た目の個性の子、救助される役は所謂没個性の子。

 

 いつもそれぞれの配役はきまっていたようなものだった。

 

「あーあ、オレもたまにはヒーロー役やりたいなぁ」

 

 そうつぶやくのは、クロトの隣の席の生徒。拳が堅くなる“鉄拳”の個性を持っており、ヒーロー役として遊ぶには地味でいて、ヴィラン役を怪我させかねない個性だった。

 

 ――人は生まれながらにして平等ではない。

 

 すべての子供が知っているこの世界の現実。

 

「――なあ、一緒にゲームをしないか?」

「「「はぁ?」」」

 

 ある日、クロトはヒーローごっこに興じるクラスメイトに声をかけた。

 

「むこせーが何言ってんだよ。行こうぜ」

「まあ話だけでも聞いてくれよ」

 

 リーダー格の生徒はクロトを無視して遊びを続けようとするも、クロトはそれを手で制して止める。

 

「このゲームは――」

 

 クロトは自分の考えた“みんなが等しく楽しめるゲーム”のルールを説明する。

 

 初めはつまらなさそうに聞いていた彼らも、次第にそのゲームの世界観に引き込まれ、いつしかヒーローごっこを止めて一緒に遊んでいた。

 

「楽しかった! また遊ぼうぜ!」

 

 気が付けば日が暮れかけていた。

 

 皆が帰り道につく中、鉄拳の個性の生徒はその場に残っていた。

 

「ありがとう」

「いいんだ。僕もみんなに楽しんでもらえてよかったよ」

 

 鉄拳の個性の生徒とクロトは固く握手を交わす。

 

「オレさ、ヒーローごっこするとき、個性があるから思いっきり楽しめなかったんだ」

 

 彼の個性は拳を鉄の強度まで堅くするものだった。将来的に見れば、高い戦闘能力を持つ強個性と言えるが、ごっこ遊びの中で個性を発動すれば相手にけがをさせてしまう。

 

「でも、お前のゲームはそんなこと気にしなくてよくてさ、すっげー楽しかった」

 

 クロトの考えたゲームは個性を全く必要としなかった。

 

 誰もが知力と体力を駆使して攻略できるゲームだった。

 

「な、なあ……また明日も一緒に遊ばないか?」

「もちろん、また新しいゲームを考えてくるよ」

 

 それは、クロトに初めての友達ができた瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

――――

 

 

 翌日、クロトは友と遊ぶためのゲームを考えてきていた。

 

 早く放課後、一緒に遊びたい。楽しみが抑えきれなかった。

 

 隣の席の友は、遅刻しているのかいつまでたってもやってくることは無かった。

 

「――みんな、席について」

 

 朝のHR、いつもは明るい担任は暗い表情で教室へとやってくる。

 

 誰もがよくないことが起きたと直感した。

 

「……悲しいお知らせがあるわ。昨日――」

 

 それは鉄拳の個性を持った生徒が亡くなったという知らせだった。

 

 昨日の夜、家族で食事に行っていた彼はヒーローとヴィランが戦闘をする現場に居合わせていた。

 

 ヒーローはヴィランを斃すため、わざと見栄えのある派手な技を放った。明らかなオーバーキル、死体蹴りに他ならない行為だった。

 

 攻撃の余波はやじ馬にも大きな被害を与えた。近くの建物は倒壊、それによって起きた二次災害によって多くのヒーローが救助に駆り出された。

 

 鉄拳の個性を持った生徒は、運悪く建物の崩壊に巻き込まれてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

――――

 

 そんな免許剥奪レベルの不祥事を起こしたにも関わらず、件のヒーローは謹慎処分を言い渡されただけだった。

 

 そのヒーローの親はとある有名な政治家だった。

 

 政治家は息子可愛さに事件の全てをもみ消し、ヒーロー免許を維持させていたのだ。

 

「あぁぁぁあぁぁぁっ!」

 

 全てを知ったクロトは怒り狂い、復讐のためのゲームを考案した。

 

「……ゲームオーバーすればプレイヤーの命は無くなることとしよう。そうだ、死んだプレイヤーの意識データを保存して、クリア者には復活させる権利を与えよう。そうすれば死んだプレイヤーをよみがえらせたい人間が次から次へとゲームに参加する……序盤の敵キャラはたおしやすく、ラスボスの攻略難易度は限界まで高める。そうすればクリアできる人間はいるがごくわずかに絞り込める……フェァハハハハ」ブツブツブツ

 

 クロトは目の下にクマを作りながら企画書を書きあげていた。

 

 そんな悪魔のゲームの企画書を見た両親は、息子の才能と執念に驚く。

 

「これは……完成すれば……」

 

 父親はゲームの持つポテンシャルに気づき、満面の笑みを浮かべた。

 

「――――ッ!」

 

 母親はその企画書を読んだ瞬間、鬼の形相となる。個性が暴発し、金棒の似合う袴姿となった。

 

「クロトッッ!!」

「ぐぁっ!」

 

 彼女はクロトの頭へ拳骨を振り下ろす。

 

「マサムネさんッッ!」

「うぐっ!」

 

 ついでと言わんばかりに夫――マサムネにも強烈な平手を食らわせ企画書を取り上げる。

 

 そして企画書をビリビリに引き裂き、シュレッダーへ投入した。

 

「ああっ! なんてことを……」

 

 マサムネは慌ててシュレッダーのボックスを開け、企画書を復元しようとして紙屑まみれになる。

 

「クロト、あなたの友達の命を奪ったヒーローの行いは、決して許されることではないわ。でもね、だからってあなたがあんな酷いゲームを作っていい理由にはならないわっ!」

 

 真剣なまなざしの母親に見つめられ、クロトは頭のコブを押さえる。

 

「かあさん……どうして? いつも、僕の作るゲームを、褒めてくれたのに……」

「それは、クロトの作るゲームが“みんなを笑顔にできる”からよ」

「笑顔……?」

 

 彼女は諭すように続ける。

 

「そうよ。クロト、あなたの才能は誰も持っていない、特別なものよ。それを誰かを傷つけたり、不幸にしたりするために使っちゃダメ!」

 

 クロトの脳裏に友の笑顔が浮かぶ。自分のゲームで楽しそうに遊んでいるクラスメイトの顔が思い浮かぶ。

 

「クロト、みんなを笑顔にできるゲームを作って。そうすれば……あなたの友達も、きっと喜ぶわ」

 

 母に抱きしめられ、クロトは友が亡くなってから初めて涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「どうやら……エンディングは近いようだネ」

 

 ジョニー・マキシマは葱と書かれた扇子を広げて仰いでいる。

 

 その手がピタリ、と止まる。

 

「残り一つしかないライフで何をするつもりかネ?」

「……ラスボスを斃し、ゲームをクリアする」

 

 静かに現れたのはクロト。

 

 腰には既にゲーマドライバーを装着している。

 

「ハッハッハッ! 君はジョークのセンスもあるようだネ! Game Clearは――永遠に訪れない」

 

 ジョニー・マキシマの目が赤く輝く。

 

「VRの世界から抜け出したようだが、君たちの行きつく先はBad Endサ! 一度世界に捕らわれたものはバグスターウイルスに冒され、じきにEndingを迎える!」

「だがその仕組みは、ゲンムコーポレーションから盗み出した技術によって成り立っている」

 

 図星だったのか、ジョニー・マキシマは扇子を勢いよく閉じた。

 

「つまり、ウイルスの発生源である貴方を斃してしまえば――すべての人間が完治する」

 

 バグスターウイルス感染症――ゲーム病は感染したウイルスと同型のバグスターを斃すことで完治する病。

 

 ジョニー・マキシマがウイルスの根本であるならば、斃すことで完治することは道理である。

 

「私を斃す? 君は自分でデザインした――ラスボスの力を忘れているようだネ」

 

 ジョニー・マキシマの体がバグスターウイルスに覆われていく。

 

 その姿は巨大ヴィラン、ゲムデウスを人の形へ圧縮したようで、クロトのデザインしていた最強のラスボス――“ゲムデウス”の姿と瓜二つだった。

 

「天は私に最強の力を授けた――この世界を支配するに足る、最強の個性を――」

 

 ゲムデウスが個性を発動し、VR空間が広がっていく。

 

「そしてその力は、ゲムデウスによって増幅し、現実世界をも侵食する!」

「なるほど、今世間を騒がせているゲムデウスは貴方の仕業でしたか」

 

 日本中で暴れまわっているゲムデウス。それらは全てジョニー・マキシマの個性によって現実世界へ引きずり出された仮想世界の存在。

 

 彼の個性はもはや仮想世界にとどまらず、現実世界へと侵食していたのだ。

 

「その通り! 現実では恐怖の存在、ゲムデウスが闊歩する。人々はかりそめの現実に救いを求め、私の生み出す仮想世界へと自らその身を捧げるのダ!」

 

 ゲムデウスは高らかに笑う。

 

「所詮はその程度の器。私の――神の才能には到底及ばない」

 

\ゴッドマキシマムマイティX――マキシマム・ガッシャット!!/

 

 クロトはそんなゲムデウスを嘲笑し、ガシャットを起動、装填する。

 

「what?」

「所詮貴方の計画は凡人の領域を出ない。世界の支配? そんなものに、何の価値もない」

 

 そしてクロトは懐からもう一つのガシャット――ムテキガシャットに似た紫色の物を取り出す。

 

「ゲームとは、それをプレイしてくれる人間がいることで初めて価値を発揮する」

 

 ゲームは作られるだけではただのプログラムに過ぎない。

 

 高度なグラフィック、気分を盛り上げるBGM、個性的な思考ルーチンを持つ魅力的なキャラクター、それらは全て、遊んでくれるプレーヤーを得て初めてこの世界に現れる。

 

「それに、貴方の作る世界では、誰も笑顔になれない」

 

\ハイパ――――クリエイション!!/

 

 クロトはもう一つのガシャットを起動する。

 

「今こそ――私の才能の集大成を見せる時サァ!」

 

\ドッキーング!!/

 

 荘厳な起動音の後、ゴッドマキシマムマイティガシャットへと連結する。

 

「グレード(アンリミテッド)――変身!」

 

\パッカーン!!!! クリィエィション!!!!/

 

 まばゆい光が放たれる。

 

\煌めけ! 綺羅星のごーとーく! 最強・ムテキのクリエイター!/

 

 光はクロトの体に定着し、アーマーを形成していく。

 

 その姿はハイパームテキの色違い、紫のメタリックの姿だった。

 

\絶対・フメツ! 壇 クーロートー……神だァ/

 

 ゲンム、ハイパークリエイションゲーマー。

 

 神を自称するクロトの才能の、集大成の姿だった。

 

「刮目するがいい……この私の、神の才能にッ!」












ギーツなど最新作ライダーを登場させたのは完全なアドリブですが、オリジナルガシャット自体は初めから構想していました。
これが出たからには物語はクライマックスです!
あと3,4話で終われると思うので、あと少しだけお付き合いください!
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