\絶対・フメツ! 壇 クーロートー……神だァ/
「刮目するがいい……この私の、神の才能にッ!」
一陣の風が吹く。
「君こそ思い知るがいい――“紅蓮爆竜剣”」
ゲムデウスは剣を生み出し掲げる。
放たんとしている技はドラゴナイトハンターZの敵キャラ、グラファイトの必殺技である『紅蓮爆竜剣』。
クロトの生み出した最強のボスキャラ、ゲムデウスはあらゆるゲーム(といってもゲンムコーポレーションのゲームに限るが)の必殺技を自在に扱う。
そしてその耐久力は無限に等しく、付与された様々なスキルも相まって斃すことは事実上不可能。まさしく最強のラスボスにふさわしい力を持っていた。
「ほう……」
ゲムデウスの“紅蓮爆竜剣”をもろに喰らうゲンム。
爆風が吹き荒れ、砂埃が舞い上がる。
「Game Overサ……っ!?」
「――さすがは私の生み出したラスボス。いい技を使う」
粉塵が治まると、その奥からは無傷のゲンムが現れる。
「だが私には効かない。それが“ルール”だからだ」
「……小癪ナ――“クダケチール”!」
続けて放たれるはタドルクエストのボス、アランブラの技『クダケチール』。
ゲンムの頭上に魔法陣が出現、衝撃波が放たれる。
「無駄だ――」
しかしその攻撃はゲンムを傷つけることは無かった。
「“ハイパークリエイション”は、プレイエリアを自由自在に作り変え、新たな遊びを生み出すゲーム。その自由度は――ゴッドマキシマムマイティをも上回る」
クロトの作ったゴッドマキシマムマイティXもまた、ゲームを作るゲームだ。しかしながらそれはあらかじめ用意されたテンプレートを用い、制限された中での制作だ。
対してハイパークリエイションは、その制限をすべて失くしている。グラフィック、BGM、キャラクターのステータス、そしてゲームのルール……それらを全てプレーヤーが一から創造し、各々が楽しめる最高のゲームを作ることができる。
「所詮、貴方は人の作ったもので遊んでいる
「……!」
完全な図星だった。
ジョニー・マキシマが使っているゲムデウスの力は元来クロトの開発した、ゲンムコーポレーションのゲームの一キャラに過ぎない。
彼の作った『ハリケーンニンジャ』はオリジナルゲームだが、基本技術はゲンムコーポレーションとの合作。ゲームコンセプトは既存ゲームの焼き増しであり、新規性は無いに等しい。
「人の作ったもので世界を支配しようなど、笑止千万。この世界を変えることができるのはただ一人――私だァ!」
ゲンムはジョニー・マキシマ――ゲムデウスを指差す。
「貴方にその姿はふさわしくない」
「グッ! か、体が……!」
背中の翼、ドラゴンを思わせる鎧、一本の大きな角、それらがほどけるように消滅し、忍者装束のチキン頭――下級バグスターの姿へと変貌する。
「馬鹿な! 私の個性がっ!」
「まだ個性にこだわるとは……個性、無個性、ヒーロー、ヴィラン、すべては先人が生み出した過去の遺物。真のクリエイターは既存の枠組みを打ち破り、新たな世界を生み出す――!」
\キメワザ!!!!/
ゲンムはガシャットのボタンを押し、キメワザを放つ。
\HYPER CRITICAL CHRONICLE/
壇 クロトにとって、この世界も所詮はゲームエリアの一つに過ぎなかった。
彼の才能はやがて現実世界を侵食し、この世を一つのゲームに変えてしまう……ことができるかどうかは定かではない。
だがしかし、彼は既に個性だけでは語れない、一つ上のステージへと到達していた。
「馬鹿な……この、私の計画が……」
ゲームに敗北し、ジョニー・マキシマはがくりと膝をつく。
X年前に起きた“ゲムデウス事件”、彼の計画はこの時から既に始まっていた。
最強最悪のヴィランを生み出し人々に恐怖の記憶を植え付け、ほとぼりが冷めてからその記憶を想起させるかのように暴れさせる。
恐怖した人々は安寧を――ジョニー・マキシマの生み出すVR世界に救いを求めて自ら支配されることを欲する。
しかしながら、彼の目論見は殆ど外れていた。
ゲムデウスをどんなに暴れさせても、人々はVR世界に救いを求めることはしなかった。
「あまり、この世界のヒーローを舐めない方がいい」
「なん……だって?」
ジョニー・マキシマの体は徐々に消滅し始めていた。
「ろくでもない連中が大半だが、中には人々に勇気と希望を与える者もいる」
ゲンム――クロトの脳裏には雄英のプロヒーローやクラスメイトの顔が思い浮かぶ。
「まあ、この私の才能には及ばないがなァ! ブゥヘヘヘヘ!!」
ジョニー・マキシマは懐から扇子を取り出し、大きく広げた。
「HAHAHA! 私の見通しが甘かった!」
そして悔しそうに高笑いしていた。
「……ああ、そうそう。その文字、“忍”を書きたかったのだろうが――それは“葱”だ」
「What!? Oh my god!!!!」
\ゲーム・オーバー……/
衝撃的な事実と共に、ジョニー・マキシマはゲームオーバーとなる。
空は青く晴れ渡っていた。
「ゲーム……クリア……」
変身を解除したクロトは、雲一つない空を仰ぎ見ていた。
――――
――
\\フィニッュタイム!//
\ビヨンドザタイム!!/
ジオウを含めた三人のライダーは一斉に必殺技を放つ。
「ギャォォォォォ……!」
トリプルライダーキックを受けたゲムデウスは爆発四散する。
「やった……! やったよゲイツ! 俺達でたおしちゃった!」
「はしゃぐなっ!」
ゲイツ――ケイトが変身を解除すると同時に、その姿がオーロラの壁の向こうへと消えていく。
「……え?」
「――この本によれば、時和 ソウゴには最高の親友にして最大の相棒がいたという。その名は」
変身を解除したウォズは辞典のような大判の本を開き内容を読み上げる。
「――妙光院 ケイト、じゃない?」
「……その通り。だがどうやら、彼と出会うのはもう少し先の未来のようです」
ソウゴは満足げに微笑んだ。
共に戦った少年が、未来において最高の親友兼相棒として戦っている。
「俺さ、ヒーロー目指してみるよ」
「……よきご判断です」
ウォズは膝まづいてそれを肯定する。
(俺は世界を平和にしたい、みんなには幸せでいてほしい。でも無個性の俺がそんなことをするためには、王様になるしかないって思ってた)
思いがけず力を手に入れた。
しかしそれはきっかけに過ぎない。
(漠然と、王様になれたらッて思うだけじゃダメなんだ。俺自身が目いっぱい努力して、個性がないなりに立ち向かっていかなきゃいけないんだっ……!)
必要なのは――心だ。
力を持っている人間がヒーローなのではない。誰かを助けたい、誰もが笑顔でいて欲しい、そう願い行動すること。それこそがヒーローの資格なのだ。
「……なんだか、いける気がする」
――――
――
竜ヶ峰サキは瀕死の重傷を負い、一時は生死の境をさまよった。
しかし最高の腕を持った外科医の尽力によって一命をとりとめていた。
「……ぅん」
術後、数週間が経過していた。
クラスメイト達は毎日代わる代わる見舞いに来ており、ベッドの脇にはその痕跡が見て取れた。
サキは鈍い頭を必死で動かし、横を向く。
「サキ……! 目が、覚めたのね!」
そこでは母が涙を流しながらサキの無事を喜んでいた。
心無い非難を浴び、心を壊していた母だったが、娘の一大事にいてもたってもいられなかったのだ。
「ごめんなさいっ……! あなたがこんなになるまで放っておくなんて、母親失格ね」
「……かあ、さん」
サキの声はかすれていた。
涙を拭ってあげようと手を伸ばすも、その手はギプスと包帯で包まれており直接触れることは叶わなかった。
そっと、包帯の上から母の手が包み込まれる。
「でも、これ以上無茶はしないでっ……! あなたまでいなくなったら、私っ!」
命を捨てても悔いはないと思っていた。
もう誰にも、自分と同じような思いはさせたくないと、そのためならば命を賭して戦うのだ、と。
「……うん」
それは間違いだったことに、サキは気づいた。
自分が死ねば、身を裂くような苦しみを母親に与えることになる。
誰にも与えたくなかった苦しみを、他ならぬ自分が与えるところだったのだ。
(父さん、私、ドラゴンナイトを超えるヒーローに、なるよ)
サキの父、ドラゴンナイトはヒーローとして致命的な過ちを犯してしまった。
それは――自分の命を落としてしまったことだ。
(みんなを助けて、笑顔で「大丈夫」って言えるヒーローに)
自分を含めたすべての人の命を守る。
それが竜ヶ峰サキ――グラファイトの
次回、エピローグ。
もうちっとだけ続きます。