砂漠の悪魔《パチモン》   作:ロールプレイヤー

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EP1 砂漠の悪魔

関東大砂漠

高度な文明に起こった大きな争いによって地球環境が破壊され、砂漠化した日本の関東地方。

人類は大きな争いと地球環境の破壊による変化によってその数を大きく減らし、一つの文明が滅びた。

 

 

僅かに残った子孫達は長い年月をかけて地上での生活拠点を築き上げ、好き勝手に生きていた。

 

 

そんな現代。

関東大砂漠の西オアシス、第30給水所の便利屋組合『無限屋』の主人は街の外れに住む便利屋に会う為に、束になった依頼書を片手に汗を流しながら向かっていた。

本来ならば便利屋が組合に顔を出し、依頼を受ける手続きをしなくてはならない。

それなのに何故、組合のトップである彼がわざわざ熱い外を歩きながら便利屋の元へとむかうのか?

 

勿論、その便利屋が凄腕であり、主人がいろいろと借りを作っているので頭が上がらないという事も理由ではあるが、一番の理由は主人がその便利屋を組合にスカウトする為に向こうから出された複数の条件を受け入れた事だ。

故に、主人は条件の一つである『自分に来た依頼が一定数溜まったら依頼書を持って行く』という契約を守る為に運動不足で重たくなった体を必死に動かしているのだ。

 

この関東大砂漠ではオアシス政府公認の書類や契約が物を言う。

どんな小さな事でも契約を破れば一気に信用は暴落し、この厳しい関東大砂漠で生きていく事が出来なくなるのだ。

 

 

流れ出る汗をポタポタと地面に染みこませながら目的地にたどり着いた主人は建物を見上げる。

 

「本当に、いつ見ても立派な豪邸だ……」

 

建物はこの時代では極めて珍しいレンガで出来ており、建物の玄関扉の上には『Devil May Cry』と書かれた看板が設置されている。

旧文明の人間が見たらアンティークと言われるこの建物でも、掘っ立て小屋みたいな家が基本のこの時代では立派な豪邸なのだ。

 

豪邸を眺めていた主人は汗を服の裾で拭い、目の前の大きな玄関扉をノックする。

 

『《無限屋》のおっさんか……入んな』

 

主人がノックを終えると、錆が一切見当たらない上質な鉄の扉の向こうから主人に家の中に入るように促す男の声が聞こえた。

自分が来ることを事前に伝える事はしていないのに何で分かるのだろうか?

 

毎回、思う疑問を胸に主人は扉を開ける。

 

主人が扉を開けると、そこは楽園だった。

ガンガンに効いた高性能なエアコンによる冷たい空気と何とも言えない香ばしくて美味しそうな香り。

何かの皮で出来きた高級品のソファーに、旧文明の遺産だと思われる遊び道具に楽器。

壁には剣と銃などが飾られている。

主人以外の人間から見ても、この家は宝の山だ。

 

「おい、さっさと扉を閉めな。

熱い空気が入って来るだろう」

 

「え?ああ、すみません」

 

涼しい部屋の空気とおいしそうな香りに当てられて、少しぼんやりしていた主人はこの豪邸の主に注意され、慌てて扉を閉めた。

扉を閉めて正面を向くとそこには貴重な木造のテーブルに足を掛け、おいしそうな香りを漂わせる一枚の大皿に乗った円形の食べ物を三角形に切り取って食べている豪邸の主が座っていた。

 

「お、お久しぶりです…ダンテさん」

 

ゴクリと生唾を飲み込みながら挨拶をする主人。

その視線はダンテと円形の食べ物を激しく行き来している。

ダンテと呼ばれた豪邸の主は主人の様子を興味なさそうに見ながら、珍しい銀髪の髪をエアコンの風でなびかせながら、もちゃもちゃと食事を続ける。

 

「こ、こちらが、今回《デビルメイクライ》に対する依頼書です」

 

「ほう?」

 

鼻孔と食欲を燻る、おいしそうな香りに誘われる様にヨタヨタとダンテのいる机にたどり着いた主人は小脇に抱えていた依頼書を差し出す。

視線はもうダンテに移る事はなく、香ばしい円形の何かに釘付けだ。

 

ダンテは片手に持っていたおいしそうな何かを皿に戻すとペラペラと書類をめくる。

書類を一通り目を通したダンテだったがその表情は苦虫をかんだようなものだった。

 

「っち、金にならねぇ小物ばかりじゃねぇか」

 

「そ、それはダンテさんがここら一帯の名のある盗賊団を壊滅させたからじゃあ……」

 

舌打ちしたダンテに、書類を突き返された主人は円形の何を見ながら反論する。

 

「た、頼みますよダンテさん。

特に、この『玉木組』は最近現れた少数精鋭の盗賊団なんです。

何度か便利屋が討伐に向かったんですが、全て返り討ち。

賞金額はまだ低いですが……もう、関東砂漠最強の男で『砂漠の悪魔』と謳われるダンテさんだけが頼り何ですよ」

 

「…フン」

 

皿に乗ったおいしそうな円形の食べ物に頼み込む主人を見て鼻を鳴らした後、ダンテはポケットから一枚のコインを取り出す。

 

「…表だったら倍の金額で引き受けてやる。

裏だったら半分の報酬で引き受けてやるついでに、アンタがずっと物欲しそうに見ているピザをくれてやる。

どうだ?この提案に乗るか?」

 

「ほ、本当ですか!?乗ります!!乗らせて頂きます!!」

 

「OK。じゃあ……いくぜ?」

 

ダンテは手に持ったコインを親指で弾く。

弾かれたコインは上空を回転しながら、ゆっくりとダンテの手に戻る。

 

ゴクリと喉を鳴らしながらダンテの手に視線を集中させる主人。

ダンテの手に隠されたコインの結果は……。

 

 

表だった。

 

 

「……俺の勝ちだ」

 

「そ、そんな……」

 

賭けに勝ったと言うのに不満そうなダンテに気づく事はなく絶望の表情を浮かべる主人。

 

「この……悪魔ぁぁああああ!!」

 

彼は涙を流しながら依頼書の報酬金額を修正し、捨て台詞を吐きながら汗と涙を流してダンテの自宅から逃げるようにして去って行った。

 

 

――――――――――――

 

 

「やれやれ……また、勝っちまった」

 

溜息を吐きながら本家の様に上手く行かないと嘆息を吐く。

俺は、コインをポケットに戻し、残りのピザを平らげた。

 

「あれから三年……か」

 

赤外線を防ぐ特殊防弾ガラスが取り付けられた窓側に移動し、砂漠を眺める。

こうして砂漠を眺めていると地下施設を飛び出し、加藤(かとう) 都ニ(トニー)と言う名前を捨てて、初めて地上に上った時のことを思い出す。

 

一年と言う長い期間を開拓用のステルス機能がついた探査ドローンを利用して地上の環境と驚くべきことに生き残っていた人類のありとあらゆることを調べた。

そして、生活基準から組織までありとあらゆる事を調べ上げている最中に《便利屋》という職業を知った。

《便利屋》とはいわゆる何でも屋の事であり、時には雑用を行い、時には銃器を持って盗賊と戦う。

俺はこの便利屋を知った時に強く思ったのだ。

 

銃を片手にカッコよく、ハードボイルドに生きてみたいと。

 

それからの俺はハードボイルドでカッコイイ何でも屋な男達を調べ上げた。

娯楽用のメディアデータは膨大であったが、俺は寝食を忘れて検索作業に没頭し、ついに見つけたのだ。

 

 

《Devil May Cry》を。

 

 

「ダンテ。ご注文のストロベリーサンデーを持って来たぞ」

 

「お、来たか」

 

砂漠を眺めながら過去を振り返っていると髭を生やした紳士が奥の部屋からストロベリーサンデーを持って現れた。

俺は彼が片手に持っているストロベリーサンデーを受け取ると、仕事机に戻り脚を掛けながら行儀悪く食べる。

うん…冷たくて甘い。

 

「ダンテ、いつも言っていると思うが行儀が悪いぞ」

 

「お前は俺の母親か?

モリソン。説教はいいから、さっさと探査ドローンを使ってコイツらの居場所を探ってくれ」

 

「…まったく、しょうがない奴だ。

あいよ、ドローンで見つけたら地図でプリントアウトしてやるよ」

 

 

呆れた表情で空になった大皿をさりげなく回収し、奥に引っ込むモリソン。

一見、海外ならよく見かけるであろう老紳士に見える彼だが、人間ではない。

彼の正体は、俺の生活をサポートするロボット『M26』だ。

Devil May Cryの資料を参考に、登場人物であるモリソンを忠実に再現させ、文句を言いながらも従順に命令をこなす。

 

実に有能なロボットである。

 

モリソンが居てくれて本当に良かった。

彼が居なければ俺は整形用のナノマシンでダンテの容姿を手に入れる事が出来ず、この家も人知れずに建築する事なんてできなかった。

俺の扱う武器もビーム銃やサーベルを改造ならぬ改悪させる無茶なオーダーの通りにカスタマイズして再現してくれたし、モリソン様様だ。

 

それからストロベリーサンデーを食べ終わると、タイミングよく地図を持ってきたモリソン。

地図はテーブルに広げられ、地図を覗き込むと敵の拠点と戦力に関する詳細なデータが書き込まれていた。

 

「人数は7人。

武装は全員マシンガンとショットガンに手榴弾を持っている。

悪魔(ナノマシン)の力を持つお前さんの再生能力と身体能力なら余裕だろう」

 

「分かった。

じゃあ、夜までには帰るからピザの用意をして待っててくれ。

勿論、オリーブオイルは抜きでな」

 

「了解だ。

地下の農園で育てている野菜も付けてやるから寄り道せずに帰って来いよ」

 

赤いコートを羽織り、壁に掛けてある大剣と二丁銃を装備した俺はターゲットである盗賊団の居る砂漠へと向かった。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

関東大砂漠にある、南15の白骨都市。

かつて旧文明…『暗黒時代』の初期に見捨てられた地上の都市が遺跡となって現代にいくつもの建物が残っている都市のことである。

 

この白骨都市にダンテのターゲットである《玉木組》のアジトが存在する。

 

彼等は食料を取り扱う商人から強奪した虫団子を片手に寛いでいた。

 

「リーダー。そろそろ拠点を移した方がいいんじゃないですか?」

 

そんな中、一人の男が不安そうな顔をしながらリーダーである玉木にアジトの移動を提案する。

 

「あーん?なんだ、ビビってんのか?

俺達の賞金はまだまだ低いんだぜ。

名の売れた賞金稼ぎや、オアシス政府の役人に狙われるのはまだまだ先だぞ」

 

口の中で咀嚼していた虫団子を飲み込み、不安げな表情を見せる下っ端の男に呆れた表情で己の経験則から来る確実性の高い予想を口にする。

 

「そうだぜ、マッチャン。

政府の仕事ってのは何時の時代も遅いと相場は決まっているんだ。

そんな事を今、心配したってしょうがないだろう?」

 

そして、近くで虫団子を食べていた大柄の男も玉木に追従するように口を開く。

不安顔の男もそんな事は分かっていた。

だから長年やっていた賞金稼ぎから、比較的に楽に稼げる盗賊に転職して西オワシスで賞金稼ぎや便利屋に狙われるようになったら南オワシスに逃げようと言う計画にも乗った。

 

「だけど…ここは《デビルメイクライ》の活動範囲だって……」

 

だが、西オワシスで活動する盗賊退治を専門にした《砂漠の悪魔》の存在が、彼を不安へと誘う。

 

 

《砂漠の悪魔》こと、便利屋《デビルメイクライ》。

悪魔の如き超人的な身体能力を誇る砂漠の悪魔。

どんな場所に隠れても盗賊団を必ず見つけ出し、単独で壊滅まで追いやる関東大砂漠最強の男。

 

彼が悪魔と呼ばれているのは二丁の拳銃と大剣だけで圧倒的な戦果をたたき出す戦闘能力にもあるのだが、それ以外の部分でも理由がある。

関東大砂漠に生きる砂漠の住人なら必ず装備する砂漠スーツを着用する事無く、自由に動き回るタフネス。

 

砂漠の住人にとってはスーツの恩恵なしで砂漠を行動できる彼はまさに人外の悪魔に見えるのだろう。

 

「デビル……ああ、《砂漠の悪魔》のことか?

あんなの都市伝説だろ。

どうやったら砂漠スーツを装着せずに砂漠を一人で活動できんだよ」

 

「で、でも。あの有名な盗賊団である《江戸前組》を含むいくつかの盗賊団が事実、壊滅したんだぜ?

噂話はともかく、実力は本物って事だろ」

 

「それも怪しいもんだぜ。

噂の中に奴はかなりの金持ちとあるからな……。

たぶんだが、オワシス政府の手柄を大金積んで譲ってもらったんだろ?

規模はデカいが、女にモテたい金持ちの坊ちゃんとかが、よくやってる手だぜ」

 

「そ、そうかな……」

 

インチキと言い張る大柄な男の言葉に不安そうな表情の男は頭をひねる。

確かに賞金稼ぎをやっていた頃、そこそこ金をもっている男に小物の賞金首を高く売り飛ばした事がある。

だが、いくら金持ちだからと言ってオアシス政府に介入できるのだろうか?

そこで、リーダーの玉木が大柄の男の考えを鼻で嗤った。

 

「バーカ。

政府の人間は確かに金に汚いが、民衆に己の権威を示したい奴らは手柄を奪う事はあっても譲ったりはしねーよ。

俺の考えでは、《砂漠の悪魔》は通常では考えられないようなとんでもないド卑怯な手を平気で使用する…まさしく悪魔の様な外道だと思うぜ」

 

「な、なるほど」

 

「さすがリーダー、その方がしっくりくるぜ。

流石、元ナンバーワン賞金稼ぎだ。」

 

「よせやい。

こんなのは頭を使えば、誰でも思いつくぜ?

ほら、ダラダラ喋っていないで、さっさと外で見張りをしている清彦達と代わるぞ」

 

玉木の言葉で不安が払拭された男は悩みのない晴れやかな表情でアジトを出ると……。

 

「よぉ。最後の晩餐は終わったか?」

 

三人のすぐ目の前に砂漠スーツの代わりに赤いコートとズボンを身に纏い、身の丈ほどある大剣を背に背負った銀髪の男が玉木達と向き合う様に立っていた。

彼等が話していた便利屋、《デビルメイクライ》ことダンテだ。

 

「あ、赤いコートに大剣……ま、まさか!?」

 

「便利屋《デビルメイクライ》か!?」

 

「み、見張りは!?清彦達はどうした!?」

 

三人から一斉にマシンガンとショットガンを向けられるダンテだったが、彼は恐怖で引きつった表情を浮かべるのではなく、その整った顔でニヤリと笑う。

玉木達は背中が一斉に冷たくなるのを感じ、後悔した。

こんなことならマスクの索敵機能をオンにしておくべきであったと。

 

見張りが居るからと完全に油断した。

 

「心配する必要はない。

奴らは今頃、地獄の鬼達とR指定だ」

 

ダンテは向けられる銃器など、存在しないかのように一切の躊躇もなく、滑らかな動きで懐からデカイ白と黒の二丁改造銃を両手で取り出す。

 

「テメェ!!!!」

 

仲間が殺された事を知り、ダンテのあまりにふざけた態度にキレた大柄の男は、持っていたマシンガンの引き金を引く。

 

「粉々になりやがれぇぇえええええ!!」

 

「おい!よせ!!何かの罠かも知れないんだぞ、奴が何を企んでいるのか分からない段階で撃つな!!」

 

ダダダダダダと白骨都市に鳴り響くマシンガンの銃声と撃たれるたびにポスポスと砂の大地に落ちる無数の薬莢。

男は玉木の制止を聞くことはなく、ありったけの弾丸をダンテに浴びせた。

 

弾丸を浴びたダンテは砂の大地に崩れ落ち、辺りは砂煙が舞い上がる。

 

「へへへ…。なにが《砂漠の悪魔》だ。

ただのイカレ野郎じゃねぇか」

 

大柄な男がダンテが粉々になったと確信すると向けていた銃をようやく下ろした。

 

「この、バカ野郎!!ハッタリだったから良かったものの、罠だったらどうするつもりなんだ!!」

 

「おいおい、怒るなよリーダー。

結局は何もなかったじゃないか……」

 

「結果だけを見ればな!!お前の独断専行は目に余るぞ!!」

 

玉木が男に説教を始め、彼等の緊張していた空気が晴れた瞬間。

 

「た、玉木さん、その辺でベェ!?」

 

ダァン!!という一発の銃声と共にアジトで不安な表情を浮かべていた男の顔が吹き飛んだ。

二人は突然頭が、ザクロの様に飛び散って、ゆっくりと砂の大地に体を鎮める男を驚愕の表情で見つめる。

 

「ま、まさか!?」

 

目の前で起こったグロテスクな光景に吐き気を催しながら、ダンテが立っていた場所に視線をやる二人。

視線の先には寝転がったダンテが、左手に持っていた黒い拳銃の銃口をこちらに向けている姿だった。

 

「やれやれ、せっかちで早い男だ。

そんなんじゃ、女にモテないぜ?」

 

ユラリと両手を遣わずにゆっくりと立ち上がるダンテ。

穴が空くほどダンテを見つめる二人だったが、目の前のダンテの体に傷どころか服に穴すら開いては居なかった。

 

しいて言うならダンテの被害は砂埃にまみれた事だろう。

 

二人の男達はこの事実に恐怖で全身が震えた。

 

「あ、悪魔……」

 

カチカチと歯を鳴らしながら玉木がせめてもの抵抗だろう言葉を小さな声で振り絞ると、ダンテは震える二人に躊躇する事なく銃口を向けた。

 

「ビンゴ」

 

その言葉をダンテが放ったと同時に二人に向けていた二丁の拳銃が火を噴いた。

 

 

 

この日、新勢力として盗賊の世界で有名になろうとしていた盗賊団はひっそりと壊滅した。

 

ここは関東大砂漠。

そこは弱肉強食の世界。

弱い人間は食い物にされ、強者のみが繁栄する。

 

《砂漠の悪魔》、ダンテの戦いは続く。

 

 

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