砂漠の悪魔《パチモン》   作:ロールプレイヤー

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EP2 砂漠のお嬢様②

朝霧純子は今年で10歳となる砂漠で有名な商会のトップの一人娘。

そこそこ裕福で幸せな日常を送っていた彼女であったが、仕事に出かけた両親が護衛と共に謎の盗賊団に襲われて死亡。

 

彼女は両親が遺した遺産と商会の経営権を取得する為に西オワシスの第30給水所の街にやって来た。

この町は砂漠の中ではそこそこの都会であり、しっかりとした役所や警察署なども存在する。

 

そして、何よりもここには《砂漠の悪魔》と謳われる盗賊団にとっては恐怖の象徴である男が居た。

高柳が勧めた彼を味方に付けて利用する事で、護衛と仇討ちをしようと考えたのだ。

 

その為ならどんなにボロくて汚い家でも我慢しようと考えて居たのだが……。

 

動物の肉を贅沢に使ったピザと言う食べ物に冷たくて甘い夢の様なストロベリーサンデーと言うデザート。

使わせてもらっている部屋も綺麗で、ベットはフカフカ。

そして、大金持ちの贅沢として有名なお風呂もあった。

 

まさに、彼女にとってダンテの自宅は砂漠のオワシスだった。

 

商人の娘でなくても大金の匂いをプンプンさせているダンテ。

彼女は幼い好奇心に突き動かされながら、契約満了までに彼の正体を探る事を決意した。

 

 

……………。

 

 

「ああ?外に買い物に行きたいだ?」

 

二日目の朝、彼女は夢の様な朝食を一心不乱に食べ終えるとダンテに買い物に行く事を提案する。

勿論、この街の服や食べ物などに興味があった純子だったが一番の目的は当然、ダンテを外に連れ出して彼の交友関係を知る為だ。

 

彼女は将来立派な跡取りになる為に両親から人を鑑定するイロハを学んでいた。

故に交友関係を知る事によってそのダンテがこの町でどんな立場の人間かを探ろうと考えたのだ。

 

「いいじゃないかダンテ。

たまには依頼以外で外に出ないと体に悪いぞ?」

 

純子の提案に賛同するのは、モリソンと言う老紳士。

昨夜の夕食の時にダンテから情報屋と純子は聞かされていたが、その話を信じてはいない。

 

彼の物腰は情報屋という危険な仕事をしている人間にはとても見えず、どちらかと言えば上級階級の人間に仕える召使だ。

料理にを出す一つ一つの所作に気品が溢れ、最上級のおもてなしをしてくれる。

 

故に………。

 

「うるせぇよ。だいたい、このお嬢さんは狙われているんだぜ?

家にいた方が安全だろうが」

 

そんな人物に世話をしてもらっているダンテの正体がますます気になるのだが彼女が見る限りダンテはダメ人間だった。

掃除洗濯風呂の準備から食事の用意まで全てをモリソンに任せ、ソファーでゴロ寝するか椅子にだらしなく腰を掛け、机に足を乗っけて眠ってる。

便利屋《デビルメイクライ》は実はモリソンではないかと疑うレベルだ。

 

「だがなぁ……。お前さんがサインした契約書にある、この一文を読んでみな。

『契約者の意向には従う』とあるだろう?

このままだと、タダ働きに……」

 

「わーったよ。行けばいいんだろ?行けば……」

 

モリソンに契約書の一文を見せられたダンテはめんどくさそうな表情を浮かべながら出かける準備を始めた。

 

「純子お嬢様。買い物の費用は大丈夫かな?」

 

「大丈夫よ、モリソンさん。

秘書の高柳にいくらか貰っているもの」

 

「そうかい。なら楽しんで来るといい。」

 

「ありがとう、モリソンさん」

 

紳士なモリソンに笑顔で返した純子の元に装備を整え終えたダンテがやって来た。

 

「おい、さっさと行くぞ」

 

「…む」

 

やる気のない迷惑そうなダンテの態度に気分が悪くなったが、彼女はその気持ちを我慢してダンテと共に外に出た。

 

 

………………

 

 

ダンテの自宅から出て、街の商店街へとやって来た二人。

そんな二人…主にダンテに向けられる視線は様々であった。

 

「悪魔だ!!悪魔が来たぞぉ!!」

 

「キャー!!ダンテさーん!!たまには家の店に来てぇん♪」

 

「いつ見ても素敵だわぁ……」

 

「これ以上俺達から仕事を奪わないでくれぇ…!!!」

 

便利屋の傘を被った男達は恐怖と絶望に(おのの)き、女性は彼の容姿を見て黄色い声援を上げる。

男女で反応が全く違うが、目の前のこの男は何をやったのだろうか?

思わず疑わしい視線をダンテに向ける純子。

 

「おい、その視線はやめろ。

別に俺は悪い事は何もしてねぇよ。

…ただ、俺にビビったここら辺の盗賊団の活動が著しく落ちてな。

護衛の依頼や賞金首の数が減ったんだよ」

 

「ああ…なるほど」

 

ダンテが大手の盗賊団を壊滅させた話は本当かどうか未だに怪しいが、ここら辺の盗賊団が大人しいのは周知の事実であった。

故に、便利屋や賞金稼ぎを生業としている彼等からしたらダンテの存在は悪魔以外の何物でもないのだろう。

 

だが、だからといって仕事がないのをダンテのせいにして悪魔呼ばわりするのはどうかと思う。

仕事がないのは彼らが好き勝手に生きて来た結果であり自業自得だ。

 

商人の娘として努力している純子から見たら彼らは成るべくしてなった《負け犬》だ。

 

「買い物は中止!!

ほら!行くわよ、ダンテ!!」

 

《負け犬》達の視線や反応にイラついた純子はこの場を離れる為に力強く歩き出した。

 

「やれやれ、わがままなお嬢様だ」

 

ズンズンと商店街を離れていく純子に呆れながら後をついて行くダンテ。

買い物から急遽、散歩に切り替わった二人のお出かけは特に何かが起こるわけでもなく静かに時間が過ぎて行った。

 

 

………………

 

 

当てもなくフラフラと二人が人気の少ない街はずれを歩いていると……。

 

「手を上げろ!!」

 

「ゆっくりと見えるようにな!!」

 

ボロボロの建物の物陰からマスクを付けた二人の男が現れた。

二人組の男は短機関銃を片手に銃口を純子とダンテに向けている。

どうやらタタキと呼ばれる強盗のようだ。

 

「早く、手を出しやがれ!!」

 

「へへ、《砂漠の悪魔》がビビってやがるぜ」

 

「やれやれ」

 

強気の二人に呆れたダンテは驚いて動けない純子の盾になるようにして前に出る。

 

「誰が勝手に動いていいと言った!?」

 

「お嬢さん、目をつむってな。

ここから先はR指定だ」

 

後ろにいる純子をチラリと見ながら純子に忠告して両手を見えるようにゆっくりと上げ始める。

ダラダラしてめんどくさがりのダメ人間だと思っていたダンテから漂う張り詰めた空気。

さっきまでのダンテと今のダンテの違いにどちらが本当のダンテか分からなくなった純子。

そして、ダンテが両手を背負っている大剣の柄と同じほどの高さとなったまさにその瞬間……。

 

「オラ!さっさと手を……ぐぼぉ!!?」

 

「ぶっ!?」

 

「ほら、両手だけじゃなく剣も出してやったぜ?

代金はオタクらの命だ」

 

二人の男達は大剣によるダンテの高速の一振りによって両断された。

銃を向けていた相手を瞬く間に制圧したダンテ。

 

大剣に付着した血を大剣を大きく振るう事によって綺麗に吹き飛ばし、再び背中に装備する彼を見て彼女は呟いた。

 

「私、見ちゃった。

……R指定」

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

R指定な惨劇を見てしまった純子ちゃん。

正直、ゲ〇を吐いたり泣きわめくものだと思ったが意外と普通だった。

 

砂漠に住む子供のメンタルすげぇな。

 

強盗を退治した後、俺達は会話を交わす事なく自宅へと戻った。

 

「お?無事に帰って来たか。

風呂の準備が出来ているからお嬢様から入りな」

 

「!?ありがとう、モリソン!!」

 

自宅に戻ると部屋の掃除をしていたモリソンが笑顔で俺達を向かい入れ、純子ちゃんをお風呂へと誘導する。

純子ちゃんは輝くような喜びの表情を浮かべ、お風呂に向かって走り出す。

バタバタと床を走り、部屋の奥へと消えていった彼女を見送った後、モリソンが真剣な表情に変わった。

 

「ダンテ、敵さんは今夜にでも襲撃をするらしいぜ」

 

「ほう…その様子だと()に接触したか?」

 

「ああ、概ねはお前さんの予想通りだ」

 

「……俺達を襲撃した二人組は本命の前の威力偵察ってところか?」

 

「あわよくばお嬢様をそこで確保する予定だったらしいが……まあ、そういうことだな」

 

「ガキ一人の為にご苦労なこった」

 

俺が呆れ、ふかふかなソファーにゴロリと寝転がるとモリソンはニヤリと笑った。

 

「ふふふ、どうやら標的は純子お嬢様だけじゃなさそうだぜ」

 

「あん?」

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

第30給水所より離れた白骨都市にて、武装集団が遺跡に駐屯していた。

 

「隊長。威力偵察に向かった高橋と浜田がやられました」

 

「…ほう、で?どうだった?

《砂漠の悪魔》はどんなド汚い手をつかった?」

 

砂漠のナイトスーツに着替えた男が情報収集の為に送り込んだ男に問いかける。

マスクの下では仲間をやられた怒りなのか?鷹の様な鋭い瞳が、剣呑な光を放っていた。

 

「…いえ、奴は信じられない事に銃を向けていた二人を正面から大剣による一振りで殺しました。

あの速さは本物です。

もしかしたら奴は身体能力向上型の《ハルク病》なのかもしれません」

 

「なるほど、《ハルク病》をコントロールしているのなら噂の幾つかは本当なのかもしれんな」

 

《ハルク病》とは精神的に大きなショックを受けた人間が時節、己の限界を超えた身体能力と凶暴性を発揮する病の事。

本来であれば敵味方に関係なく攻撃を仕掛けて暴れまわるのであるが、訓練次第では制御する事が可能である程度のコントロールを身に着ける事が出来る。

 

彼等は冷静に《ハルク病》患者との戦闘マニュアルを思い出し、現武装による最適な制圧方法を考案して各部隊に無線で連絡する。

 

『隊長…本気ですかい?

いくらなんでも過剰戦力じゃあ……』

 

「俺は本気だ。

《砂漠の悪魔》は全武力を行使して、肉片も残さないで処理する。

奴は危険な存在だ」

 

『……了解』

 

隊員が過剰戦力と言う程の武装を持って挑もうとしている隊長に違和感を覚えながらも、長い間従ってきた隊長の命令に逆らえるわけがなく、彼は了解の意を示して無線を切った。

 

「さて、目的地で盛大な祭りを開こうじゃないか。

道案内は頼むぜ…協力者さん」

 

「……」

 

「全員、車に乗り込め!!出発するぞ!!」

 

こうして夜の砂漠をライトで照らしながら沢山の武器を積んだ装甲車が悪魔を倒す為に砂漠を渡る。

彼等がダンテの元にたどり着くまで、あと僅か……。

 

 

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