砂漠の悪魔《パチモン》   作:ロールプレイヤー

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EP2 砂漠のお嬢様③

 

 

武装集団が向かってくる中、俺は窓の外を眺めていた。

その強化された目には一キロ以上離れた敵の装甲車が映っている。

 

「後、もう少しで奴らが到着するみたいだが……あの純子お嬢様はどうする?」

 

「家の中で待機だ。

この家は核シェルター並みに頑丈なんだろ?

なら、ここに居てもらうさ」

 

モリソンの質問に待機という当たり前の答えを返したのだが彼は心配そうな表情を浮かべ、彼が懸念している事を口にした。

 

「まぁな…でも、親の仇が目の前に来るんだぜ?

そうとう荒れるんじゃないか?」

 

「……そん時はお前が部屋に閉じ込めるんだな」

 

モリソンの言葉に納得した俺は、戦っている間は純子ちゃんの事を彼にお願いする事にした。

 

「おいおい、俺に子守までさせるのか?」

 

「モリソンさん!その子守って私の事!?」

 

これから戦闘が始まるのだが特に緊張する事無く笑いながらしゃべる俺達。

そんな俺達の元に風呂から上がった純子ちゃんが絶妙なタイミングでプリプリ怒りながらやって来た。

どうやら色々と話を聞かれたらしい。

 

「おやおや、これは失礼しましたお嬢様。」

 

「もう…で?もうすぐ敵が来るの?」

 

頭を下げたモリソンに、満足した純子ちゃんは真剣な表情で俺に問いかける。

その目は増悪に燃えていた。

 

「ああ、もうすぐR指定のド派手なライブが始まる。

子供は二階で寝てな」

 

「嫌よ」

 

ダンテ風に二階で大人しくしてろと言ったのだが、彼女は拒絶する。

クライアントに死なれたら困るんだが……。

俺がどう言ったものかと頭を悩ませていると彼女は一歩、俺の前に進んで口を開いた。

 

「私が前を向く為に、奴らが死ぬ所をちゃんと見届けないといけないの」

 

その瞳は先ほどの増悪な物とは違い、決意に満ち溢れている様な気がして、俺は彼女の瞳から目をそらす事が出来なかった。

 

「っち。モリソン、外の映像を見せてやれ」

 

「いいのか?お前が暴れている姿を見たらトラウマになるんじゃないか?」

 

「知るか」

 

俺はモリソンの言葉を切り捨て、赤いコートを羽織って黒い手袋を嵌めた後、背中にリベリオンを装備する

 

純子(・・)大人しくモリソンとお留守番してな。

約束が守れたら……ご褒美に、奴らにうんとお仕置きをしてやる」

 

「ダンテ…」

 

俺は、これ以上彼女に語る事なく家の扉を開けた。

 

「さあ、ド派手なライブの始まりだ!!」

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『目標付近に銀髪の男を発見!!銀髪などの身体的特徴から《砂漠の悪魔》と思われます!!』

 

「一人か?」

 

『はい、一人だけです!!』

 

先行している装甲車から報告を受けた隊長は眉をひそめた。

彼等の戦力は大砲が搭載された大型装甲車が5台と装甲車の中で待機している銃器を武装した中隊規模の兵。

相手が特殊な能力を持っていようともたった、一人の人間を容易に肉片に変える事の出来る戦力である

 

兵隊の数が外から見る事は出来なくても、大型装甲車5台が向かって来ているのを車両に搭載されたライトの明かりで確認しているはずだ。

それなのに、相手が何もアクションを起こす事なく向かってくる。

 

不気味に思った隊長は用心の為に全車両に一時停止を呼びかけ、次の命令を下す。

 

「主砲の射程圏内に入りしだい、砲撃開始せよ!!」

 

『了解!!』

 

全車両が50口径の主砲を高性能な暗視ゴーグルとサーモグラフィーによる映像を参考に狙いを定める。

 

「奴の動きはどうだ?」

 

主砲が向けられている状態で相手がどんなアクションを取るのかが、気になった隊長は近くで映像確認をしている隊員に質問をした。

 

「いえ、こちらの動きに対して全くアクションが有りません。

砂漠の住民は小汚いアホではありますが、あれはその中でも最悪のアホですね」

 

「…そうか」

 

隊員の言葉を聞いた隊長は、自分の考え過ぎだと判断し砲撃の時を待った。

そして……。

 

『射程圏内に標的を補足!

攻撃を開始します!!』

 

「こちらも、攻撃を開始します!!」

 

攻撃が開始され、ドン!と腹に響く大きな音と、主砲を発射した時に生じる反動による独特な揺れを感じながら隊長を含む全隊員が勝利を確信した。

 

『目標に着弾を確認』

 

「こちらも、着弾を確認しました」

 

隊員達の報告を聞いた隊長は映像を確認する。

砂煙で暗視装置では何も確認は取れないが、サーモグラフィーの映像には先ほどまで、オレンジ色で人の姿が映し出されていた。

 

『も、目標は健在!!こちらに向かってきます!!』

 

「撃て!!撃ち続けろ!!」

 

『了解です!!』

 

二発、三発と真夜中の砂漠に硝煙をまき散らし、瞬間的な明かりで辺りを照らしながら掃射される砲弾。

しかし、目標地点に着弾し、土煙を上げているのにも関わらず《砂漠の悪魔》ダンテは生きていた。

 

「奴め、一体どんな種を仕込んでやがる!!」

 

「隊長!!標的に動きあり!!」

 

相手の種の正体に頭を悩ませていると映像を確認していた隊員が、もう止めてくれと悲鳴にも似た声で報告が上がった。

 

「今度は何をするつもりだ!?」

 

サーモグラフィーの映像を見ると、オレンジ色の人型が何かを拾い、大きく振りかぶって投擲するモーションを行っている。

隊長がこの行動に怒鳴り声を上げて数秒。

 

大きな破砕音と共にレーダーから味方の車両が消えた。

 

「先行していた車両が大破!!」

 

「何だと!?……まさか」

 

レーダー観測班の報告を聞いた隊長は《ハルク病》患者との戦闘経験からどんな攻撃を受けているのかを理解した。

 

「野郎!!砲弾を投げ返しやがった!!!」

 

「ひぃいいいいいいい!!!」

 

装甲車に怒号と悲鳴が響き渡る中で2台、3台と順調に数が減った所でダンテは夜の砂漠を車を超える速度で走り出しす。

全ての装甲車が混乱の極みに陥る中、案内の為に隊長車両に乗っていた男が隊長の胸倉を掴んだ。

 

「おい、話が違うじゃないか!!

この戦力なら余裕じゃなかったのか!?」

 

「うるせぇ、状況が変わったんだよ!!

俺達は狩る側から、悪魔に狩られる側になったんだ!!」

 

「へぶっ!?」

 

協力者の男の顔面を殴り飛ばし、悪魔が来る前に生き残った車両に無線で連絡を開始する。

 

「撤退だ!!今すぐこの場から離れろ!!」

 

『了解!!今すぐ撤退……』

 

無線機で会話をしていた隊員の声が耳障りな金属音で掻き消える。

 

『おいおい、まだライブは始まったばかりだろ?

本番はここからだぜ』

 

『ぎゃぁあぁああああああああ!!!?』

 

隊員の悲鳴と激しい銃声の嵐が無線で伝わったのを最後に無線は途切れた。

 

「全速力だ!!全速力でここから離れッ!!!?」

 

無線機を乱暴に床に叩きつけると、声を荒げて命令する隊長。

しかし、時は遅かった……。

 

「よう。お邪魔するぜ」

 

悪魔は大剣で車両の屋根を破り、赤いコートをなびかせて車内に舞い降りた。

 

「この…悪魔め!!」

 

隊長と周囲に居た隊員達は己の持つ小銃やハンドガンを恐怖に震えながらダンテに向けた。

 

「おいおい、今まで色々な悪事に加担しては実行して来たんだろ?

俺から見たら、ガキである純子から全てを奪おうとしているアンタらの方が悪魔だぜ。

そうは思わないか……秘書の高柳(たかやなぎ)さん」

 

「ひぃ!?」

 

隊長に殴れられ、赤くなった鼻から血を流しながら車両の奥へと逃げようとしていた協力者は突然、ダンテに声を掛けられた事で悲鳴を上げる。

 

「ど、どど、どうして…私がここに居ると?」

 

恐怖に背中を冷たくし、顔を青くしながら質問する裏切り者の高柳。

彼が本来の雇い主である《寿商会》との緻密な計画は完璧であった。

今までに何度も高柳は他社のスパイとして秘書として潜り込み、破滅に追いやって《寿商会》に吸収させる事で貢献して来た。

 

今までの経験から彼は自身と会社の計画にミスはないと今でも信じている。

それなのにどうして目の前の男は、自分がこちら側に居る事を知っているかが気になったのだ。

 

「はじめからだ。

アンタら、テンプレすぎんだよ。

大昔のB級映画でも、マシな脚本を書くぜ」

 

「は、はじめから?」

 

映画(えいが)やテンプレの意味を高柳は理解できなかったが、はじめから計画が看破されていたと言う事に戦慄した。

隊長や周囲の隊員達も、まさに悪魔の知恵だと、ダンテにさらなる恐怖を覚えた。

 

「これで質問は終わりか?

じゃあ……これでフィナーレだ」

 

相棒の二丁拳銃を素早く抜き放ち、銃声が鳴り響くたびに取り囲んでいた隊長や隊員が床に崩れ落ちる。

隊長も後方に控えていた隊員達も増援でやって来るが、悪魔が相手ではなすすべもなく、虫けらのように殺されていく。

銃声が消え、血と硝煙が充満する車内で最後に残ったのは高柳のみ。

 

彼は死んでいく男達を見ながら下半身を温かい液体で湿らせ、泣きながら震えていた。

 

そんな見苦しい男をじっと見つめたダンテは白い銃の銃口を高柳に向け引き金に指を掛ける。

 

「ま、まって!!」

 

「ジャックポッド」

 

高柳の制止を聞く事なく、ダンテは高柳の頭を撃ち抜いた。

こうして、依頼の邪魔をする敵を粉砕したダンテは地平線からゆっくりと上る朝日に照らされながら自分の家へと帰って行った。

 

 

………

 

 

《寿商会》の私兵が全滅して市役所での手続きも終了した。

純子は財産を無事に引き継ぎ、ダンテの護衛契約は終了。

純子からも報酬を受け取り、彼女とダンテが別れた。

 

 

 

その一週間後……。

 

 

 

 

何時もの様に自宅でダラダラと生活をしていたダンテの元に彼女は再び、やって来た。

大きな荷物を抱えて…。

 

「で?お前は何をしに来たんだ?」

 

「そうそう、別れる時に商会で信用できる仲間と経営を頑張るんじゃなかったのか?」

 

そう、彼女は両親から引き継いだ紹介を信用できる従業員達と共に盛り立てていくとダンテとモリソンに宣言して迎えに来た従業員達と共に帰って行ったのだ。

それなのに、またこの街にやって来て、ダンテの元に訪れた純子に疑問をぶつけた。

 

「はい、これ」

 

純子から二つに折られた一枚の用紙を差し出され、近くにいたモリソンが受け取った。

 

「あー、これはまた……」

 

「新しい依頼書よ」

 

「ほう?今度はどんな依頼だ」

 

契約書の内容を見て困った顔をしたモリソンからおもむろに契約書を受け取ったダンテ。

契約書に書かれた依頼内容に目を通して彼の目が大きく見開いた。

 

「おい、この依頼書は……」

 

「そう依頼内容は私を弟子にすること!!

報酬は私のす・べ・て」

 

きゃはっと年相応で、微乳な胸を張りセクシーポーズを取る純子。

ダンテは意味が分からないと言った表情をして頭を抱えた。

純子の言っている事は冗談ではなく本気だ。

 

文字通り、彼女が両親から引き継いだばかりの経営権や遺産が報酬に盛り込まれている。

 

「馬鹿、言ってねぇでさっさと依頼を取り消して帰れ。

俺はガキのおままごとに付き合う趣味はねぇ。

十年経ってから来な。デートぐらいならしてやるよ」

 

「デートでもなんでもするから、お願いよ!!

私をこの家に住まわせて!!

もう、元の生活に戻るなんて出来ないのよ!!

男なら責任を取なさいよね!!

それに便利屋なら助手や弟子の一人でも付けるのが一般的なんでしょ!?」

 

ダンテが純子の依頼を拒否すると、純子は必死の形相でダンテに訴えかける。

どうやら贅沢の限りを尽くした護衛期間は彼女にとって麻薬となり、今までの生活基準に戻れなくなってしまったようだ。

故に、彼女は財産と商会の経営権利を示す書類を持ち出し、《無限屋》に弟子入りの依頼を出すと言う暴挙に出たのだ。

 

「パートナーは欲しいと思った事はあるが、ガキはいらねぇよ。

さっさと帰んな」

 

「雑用でもなんでもするから!!

モリソンが作ってくれる料理の味が忘れられないの!!」

 

切実に訴え続ける純子の願いを切り捨てるダンテ。

この問答が数時間に及んだ所でモリソンが純子の援護に入り、依頼は受ける事となった。

 

 

 

 

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