教室
「すぅ…すぅ…」
ピンク髪の少女、丈槍ゆきは授業中にも関わらず寝息をたてて机に突っ伏していた。
先生は黒板に授業の内容を書き留めている。
「ゆき……寝すぎだよ 起きないと……」
隣の席で同じ授業を受けている女生徒はゆきが居眠りをしていることに気付き彼女の肩を揺さぶり起こそうとするが一向に起きる気配がない。
「もしもし?」
遂に先生が気付きゆきの席まで向かいわざとらしく咳払いをしながらゆきに声を掛ける。
「丈槍さん?丈槍ゆきさん?」
中々起きないゆきに痺れを切らし先生は持っていた教科書の角でゆきの頭を2回ほど小突く。
するとゆきは目を覚ました。寝起きのせいか視界がぼやけており瞬きを繰り替えし目を覚醒させる。目を開けて最初に見えたのは教科書片手にゆきを見下ろす先生と呆れた顔でゆきを見ているクラスメイト達。
「ふぁ〜い ん?…おはようございます」
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授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。それを聞いたゆきは荷物片手に教室を後にする。授業が終わった喜びからかゆきの表情は明るかった。ゆきは周りの目を気にせず廊下を駆けていく。
くるっと右折して目の前の階段を降りようとした所を誰かに声を掛けられる。
「ちょっとゆきちゃんどこ行くの?」
「わっ」
急に声を掛けられたことに驚き階段を踏み外しそうになるがギリギリのところで落ちずに済んだ。
「だ 大丈夫?」
「もう めぐねぇが急に呼ぶから」
声を掛けた人物はゆきにめぐねぇと呼ばれていた。ピンク色の長い髪を後ろで結っており、彼女の手元には教員が持っている授業で使うプリントや生徒の名簿。
ゆきからは友達のように話しかけられていたがれっきとした先生である。
「めぐねぇじゃなくて佐倉先生でしょ」
「はーい で何?」
「部活じゃなかったの?」
「あっそうだった」
ゆきはハッと気付いた。先程まで部活を忘れて帰路につこうとしていたのだ。それには流石のめぐねぇも呆れた顔をしていた。
「もう、そうだったじゃないですよ…」
「それじゃいってきま〜す。めぐねぇは?」
「あとで行くわ。みんなによろしくね」
「はーい」
そう言って、ゆきはめぐねぇと別れ目的地を部室に変更して再び足を進めた。
(最近学校が好きだ。そう言うと変だって言われそう。でも考えてみてほしい、学校ってすごいよ
物理実験室は変な機械がいっぱい。
音楽室。綺麗な楽器と怖い肖像画。放送室。学校中がステージ。
何でもあってまるで一つの国みたい。こんな変な建物他にない。
中でも私が好きなのは……)
そんなことを考えながらゆきはある教室へ入っていった。
学園生活部
「よう、ゆき」
「こんにちは、ゆきちゃん」
部室に入ってきたゆきに声を掛けてきたのは同じ部員である恵飛須沢胡桃。パイプ椅子に腰掛けカンパンを食していた。
くるみの隣には同じくパイプ椅子に腰掛け本を読む少女、如月犀良。
「やっほーくるみちゃん、せいらちゃんもやっほー」
「なぜここでシャベル……」
ゆきは、くるみの座るパイプ椅子に立て掛けてあるシャベルに目をやった。
「ふふーん知らないな?第一次大戦の塹壕戦で最も人を殺した武器は……」
くるみは自慢げそうに語るが、
「くるみちゃんはほんとシャベル好きだねぇ」
「聞けよ!!」
ゆきは全く聞かず、シャベルをブンブンと振り回している。
この光景を何度もみているせいらはまた始まったと呆れつつ2人の会話に聞き耳を立てる。
「うん聞いて!今日すっごく危なかったんだ」
「はあ?どうしたのさ」
「部活忘れてうっかり家に帰るとこだった」
ゆきは、てへっと照れながら言った。
「危ねえな!」
「うん。めぐねぇに言われて気づいた」
「めぐねぇ様々だな。学園生活部が家帰っちゃしょうがないだろ」
そう言ったくるみはカンパンを咥えた。
「あ、何食べてるの?」
「カンパン食う?」
「ちょうだい!」
くるみはゆきの方にカンパンの入った缶を差し出す。ゆきがカンパンを手に取ったことを確認して次は隣にいるせいらの方に缶を差し出す。せいらは読書に集中したままであるが片手で本を持ち、もう片方の手を差し出された缶へ。缶からカンパンを1つ取りそのまま自分の口に咥え、その手で次のページをめくる。
「カンパンってなんかさばいばる!って味するよね」
「わくわくするよな」
「りーさんは?」
ゆきはカンパンをもう一つ頬張りながら言った。
「部長は屋上。園芸部の手伝い」
「わたしたちもいってみよっか」
「いいぜ」
くるみは、シャベルを取り立ち上がった。
「せいらも行くか?」
「そうだね。園芸部の手伝い行こっか」
せいらも屋上に向かうため読んでいる本に栞を挟み、席を立つ。せいらは自分の座っていた席の隣にたてかけてある木刀の入ったケースを手に取り、肩にかけ2人の後を追うように部室を後にした。
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屋上
「園芸部のみなさん、お世話になってます」
ゆきはビシッと手を挙げ言った。
「いつもどうもねーあとは任せていいかしら?」
園芸部の女生徒はゆき達にあと仕事を頼んだ。
「はい!学園生活部にお任せで!」
「うす。お世話になります」
「お世話になります」
個々が挨拶をし、
「それじゃよろしくねー」
女生徒とハイタッチをした。
「あら?きてたの?」
すると、ゆき達の後ろから声がした。園芸部員と一緒に畑で作業をしていた学園生活部部長の若狭悠里ことりーさん。首に巻いたタオルで頬の汗を拭いゆき達の方へ向かう。
「あっりーさんだ。やふう!」
ゆきは、りーさんに気付き抱きついた。
「ゆきちゃんいい子にしてた?」
りーさんは、ゆきの頭を撫でながら言った。
「またまたぁいい子て子供じゃないんだから」
「聞いてよりーさん。こいつさー」
「あっ言っちゃダメ…」
先程部室で話していた件をりーさんにチクろうとしているくるみにゆきは小声でそれを阻止しようとするがそれも虚しくくるみは気にせずりーさんに話を続ける。
「今日授業終わって家帰りそうになったって」
「え?そうなの?」
「ご、ごめんなさい」
「めっ」
ゆきのおでこにピンッとデコピンをした。
「合宿なんだからみんな揃ってないとね」
「だよねー」
りーさんの意見にゆきは、コクコクと頷き、せいらも一回頷いた。
「学園生活部心得第一条!」
りーさんがビシッと人差し指をだし言った。
「はいっ!第一条、学園生活部とはー学園での合宿生活によって授業だけでは触れられない学園の様々な部署に親しむとともに
えっと、じ…じしゅどくりつの精神を育み…」
ゆきの口がモゴモゴし始めた。
すると、
「学校の設備借りまくって寝泊まりしようっていう」
「もー…くるみちゃんそれ言っちゃおしまいだよ」
ゆきがぷーっと顔を膨らましながら言った。
その答えにくるみは軽く笑った。
ゆきの顔が面白かったのかせいらはゆきの顔を見て微笑んでいた
「はいはい。無駄口叩いてないで園芸部のお手伝い終わらせましょ」
「私あっちの畑から水撒いていきますね」
「えぇお願いするわ」
話し続ける2人を横目にりーさんとせいらは園芸部の手伝いを再開する。せいらは園芸部員から継いだ作業をするべくジョウロ片手に畑に向かう。熱心に作業をしてくれているせいらを見て笑みを浮かべたりーさんも再び作業を再開した。
4人が作業をしていると、
「お!おー野球部頑張ってるのう。おーい」
ゆきは、校庭で練習をしている野球部部員にヒラヒラと手を振った。
ゆきに気付いたのか、野球部部員は手を振り返した。
「ねえくるみちゃん見て見て!手振ってくれた。」
ゆきは嬉しかったのか、未だに手を振っている。
そんなゆきにそーっとくるみが近づき、
「サボってんじゃ…ねえ!」
ゆきにシャベルを振るった。
「ちょっシャベルは反則反則!」
「峰打ちじゃ」
くるみはキラーンと目を輝かせた。
「もーそれなら…こうだよっ!」
「うわっ」
ゆきは、バケツに入っていた水を柄杓で掬い、くるみにバシャッとかけた。
「やったな〜」
くるみはバケツを掴み、ゆきとの水掛けを始めた。
「二人ともーお手伝いはー?」
りーさんはトマトを収穫しながら言った。
数分後…
「うー」
ゆきは、頭から足までびしょ濡れになっていた。
くるみはドヤ顔をしながらピースをしている。
すると、せいらがタオルを持ってゆきの頭を拭いた。
「せいらちゃん、くるみちゃんがひどいんだよ」
頭を拭いてくれているせいらにくるみの悪行を愚痴る。するとゆきは「へぶしっ」とくしゃみをした。
「ちょっ先やってきたのお前だろ!」
「まったく…くるみ、やりすぎだよ。ゆきちゃん、着替えておいで」
「はーい」
ゆきは走りながら屋上の出入り口に入っていった。
「一人で大丈夫かな」
「心配しすぎよ、めぐねぇもいることだし」
「あいつ危なっかしいんだよな…」
「まぁ…分からなくもないけど」
そんな会話をしていると、ゆきがぎいっ…っと扉を開けひょこっと顔を出していた。
「わあ!」
くるみは驚き、
「どうしたの?忘れ物?」
と、りーさんは問いかけた。
「あっそうじゃなくて…えーとね、みんな好きだよっていうか」
ゆきがモジモジしながら言った。
「なんじゃそりゃ」
それを聞いていた3人は思わずキョトンとした。
「ほら、合宿忘れて帰りそうになったけど、別にみんなのこと忘れたんじゃないよっていうか…」
ゆきはまだモジモジしている。
「わかってるわよ」
りーさんは、そう言って手を振った。
「うん。えーとそれだけ。じゃまた!」
そう言ってゆきはササッと扉を閉めた。
「ゆきはいっつも楽しそうだな……」
「いい事だと思うよ」
「そうだね」
(ー最近学校が好きだ。何でもあってまるで一つの国みたい)
そんなことを考えながらゆきは自分の教室の扉をガラッと開けた。
「お、丈槍どうした?」
教室にいた男子生徒が声をかけた…
でもそこにあった光景は、
「うん。忘れ物、宿題置きっぱなしだった」
ボロボロになった教室だった。
窓ガラスは割れ、黒板は崩れ落ち、机と椅子は散乱していた。電球も壊れ、壁や床もヒビが入っていた。
その教室にいるのは、一人で話しているゆき一人。
「これ?屋上で水遊びーえへーうんまだ部活」
教室をトタトタと歩きながら話している。
「うん。じゃーねー」
誰もいない扉の向こうに、ゆきは手を振る。
「うわっ寒っ窓開けっ放しだよ」
そう言ったゆきは、ほぼほぼ割れている窓を閉めた。
校庭に広がった光景はまるで、地獄のようだった。
23 7/6 再編集済み
オリキャラの名前、性格等変わっているため編集前とは別物だと思ってください。
編集済みの話には分かりやすくマークを付けます。