運動会の次の日、いつも通り学園生活部の部室にて朝食を食べる。
しかしいつもみたいにわいわいではなく、どことなく気まづかった
淡々と朝食を口にする美紀とりーさん。
その光景を見ながら気まづそうに食べるゆき。
くるみとしおりは今この場にいなかった。
「みーくん。ごはんはもっとおいしそうに食べないと」
隣で黙り込みながら朝食を食べる美紀に注意するゆき。
「失礼しました…先のことが気になるんです」
「先のこと?」
美紀はカチャッとスプーンを皿に置き考えていたことを口にする。
しかしゆきにはあまり理解出来ず美紀に問いかける。
「ずっと同じことをしてもしょうがありませんから、これから先どうするかを考えないと」
美紀は少し悲しそうな顔をしながらゆきの問いかけに答えた。
「そうね、せっかく人が増えたんだしやれることはあるわよね」
「むーこれから先かーうーん悩むよねー」
ゆきはスプーンを見つめながら首を傾げる。
「ね、みーくんは進学?就職?」
「え?」
「やっぱ進学かな?頭よさそうだもんね」
「ゆきちゃん就職にも試験はあるわよ」
「えっ」
ゆきは就職なら試験はないだろうと思っていたらしく慌てるゆき。
そんなゆきを笑いながら見つめるりーさん。
「お先に失礼します」
今の状況に耐えきれずガタンと勢いよく椅子から立ち上がる美紀。
周りの沈黙に気づき椅子を戻し、
「ごちそうさまでした」
小さくお辞儀をして部室を後にした。
そんな美紀を見てオロオロするりーさん。
「そ、そういえばりーさん。くるみちゃんとしおりちゃんは?」
ゆきが話を逸らすようにりーさんに問いかける。
「ええ、なんかしおりさんがいないって言ってくるみが探しに言ったわ。二人とも帰ってきたら朝ごはん食べるって」
「ふーん…くるみちゃん心配性だね」
「ふふっそうね」
美紀はイヤホンを付けながら階段を降り、CDプレイヤーをバリケード前に置いてその場を後にする。
その音に反応して、『奴ら』がバリケードの外側に集まる。
その隙をつき別のバリケードから奥へ進む美紀。
『奴ら』が居ないことを確認して図書室に入る美紀。
懐中電灯を付けて目的の本がある棚を探す。
たどり着いたのは心理学の棚
そこから目的の本を探すがその場所に隙間が空いており貸出されていた。
美紀は仕方なく別の本を探す。
目をつけた本があったがギリギリ手が届かず背伸びをするがバランスが崩れそうになって中々取れない。
すると横から美紀より少し背の高い誰かが美紀の取ろうとしていた本を取り出した。
「…これかな?」
隣にいたのは美紀は未だに会話をしていないしおりだった。
本を持っていない方の手には血が付いた薙刀が握られていた。
よく見るとしおりの着ているうさ耳パーカーにも所々血が着いていた。
美紀はそっとしおりから本を受け取りしおりを見つめると、
ほんわかと笑を浮かべるしおりがいた。
美紀はしおりにお礼を言おうとするが言葉に詰まりその場を去ってしまった。
しおりはそれを止めることなく見つめていた。
「いた!」
急に呼ばれて後ろを向こうとすると背中に重みを感じた。
後ろを向くとしおりの肩に腕を乗せ体重をかけるくるみがいた。
「ったく1人で行くなっていつも言ってるだろ!…どした?」
しおりに注意をするが少し悩んだような顔をしていたのでくるみは心配そうに問いかける。
「…うん。みきちゃんと、仲良くなれないかなって…」
「大丈夫だって。ほらりーさんが朝ごはん用意して待ってるから戻ろうぜ……その前に風呂だな」
くるみはしおりの手を握りながら歩き出すが1度止まり、血で染っていたしおりの髪を見て呆れながら言った。
「あっ…汚れないようにフード被ってたのに…」
「せっかく綺麗な髪なんだから痛まないように大事にしろよー」
くるみの言葉を聞いて嬉しかったのかしおりは微笑みながらくるみの手を繋ぎ部室へ戻る。
一方りーさんは廊下を歩いていた。
するとどこからか音楽が聞こえた
音が聞こえた方へ向かうとCDプレイヤーが置かれていた。
りーさんはバリケードの向こうを見つめながら、
「…美紀さん……」
CDプレイヤーを置いたと思われる人物に思いを寄せた。
しばらくすると学園生活部部室の扉が勢いよく開く。
美紀は何も言わずに椅子へ座りリュックを机に置き中から本を取り出す。
今この場にいるのはゆきとりーさん、そして美紀のみ。
くるみとしおりはシャワーを浴びに行ったらしい。
りーさんは淡々と本を読み進める美紀を見てむーっと頬を張る。
「みきちゃんもしかして下行った?」
「ええ」
りーさんの問いかけに本を読みながら返す美紀。
「だめじゃない一人で行っちゃ」
「問題ないですこっちはずっと一人で暮らしてたんです」
「部の規則は守ってよ」
「まだ部員になったは覚えはありません」
するとしばらくしないうちにまた昨日のような揉め合いが始まった。
ゆきはそれをじーっと見ているが何もわかって言わない。
「……あ、めぐねぇ」
するとゆきは誰もいない方を向いた。
きっとめぐねぇが隣にいるんだろう。
美紀はそれを見て険しい表情をした
「えー今日だっけー?今からー?……はーい」
「どうしました?」
会話が終わったタイミングを見計らって美紀は話の内容をゆきに問いかける。
「うう、補習あったの忘れてた…いってきまーす…」
「いってらっしゃい」
ゆきは顔が青ざめながらも部室を後にして教室へ向かった。
その日の夜、美紀は一人部室にて図書室から持ってきた本を読んでいた。
[多重人格の実態と伝説]
ー主人格は、自己を守るために人格交代時の記憶を持っていないことが多く、結果として無謀な行動をする場合があります。
救済人格とは、交代人格の一つであり、主人格をサポートする機能を持ちます。
主人格が無謀な行動をしようとした際、交代して現実的な対処をするわけです。
美紀は本をぱたんと閉じ、目をごしごし擦る。
するとギィ…と小さく部室の扉が開く。
「あ、みーくんまだ起きてたんだ~」
ゆきが目を擦りながら部室に入る。
右手にはぐーまちゃんのぬいぐるみが抱えられていた。
ゆきがふわーっと欠伸をすると再び扉が開き他の3人も入ってくる。
「みんな起きちゃったね」
「おまえの声がでけーんだよ」
と言いながらゆきの頭を軽く小突くくるみ。
「ごみん。みーくんは何してたの?」
「本を読んでました」
ゆきは美紀の肩に腕を乗せて体重をかける。
「お、何の本?」
「勉強の本です」
「こ、これが進学組の心がけか!」
勉学の本だと答えた美紀。
それを聞いたゆきはササッーっと後退りをする。
「別にそういうのじゃ…」
美紀はため息をしながら席を立つ。
「どこ行くの?」
「お手洗いです!」
「学園生活部心得第三条!」
「?」
ゆきは指で3を作り、美紀に指す。
「第三条、夜間の行動は単独を慎み常に複数で連帯すべし!」
「ですから部員じゃないんで…」
「いいからいいから一緒にいこ、ね?」
「なら……」
りーさんの言葉を遮るようにくるみが止める。
美紀はゆきをじっと見つめてしばらく考える
「…いいですよ」
と言いゆきと一緒に部室を後にした。
「…大丈夫かしら不安だわ」
「落ち着けよ大丈夫だよ。たぶん」
誰もいない廊下を歩く二人。
ゆきはちらっと美紀の方を見るがどこか悲しそうな顔をしていた。
「夜の廊下ってさなんかいいよね」
「いいですか?」
「うん。誰もいなくてなんかドキドキするっていうかゾクゾクするみたいな」
「じゃあ昼はいるんですか?」
美紀はゆきの方を向きながらゆきに問いかける。
「え?そりゃいるでしょ」
美紀の質問に当たり前のように答えるゆき。
「…そうですか」
ゆきの答えを聞きピタッと足を止める美紀。
「もう、そういうのやめませんか?」
「え?」
美紀の言葉に目を見開くゆき。
「めぐねぇとかみんな無事とか、全部嘘なんでしょう?いいんですよもう、隠さなくて」
あと今更ですがしおりはちょっとずつしっかり話すようになってきます。
最初と今を比べれば点が減ってると思います。