美紀の言葉の後、しばらく沈黙が続く中
「えっと、何の話?」
ゆきは美紀の言葉を疑問に思い、笑いながら美紀に返す。
「この学校には誰もいないんです。もう終わってるんですよ」
と、真面目にゆきに返す。
「夜だからね」
「昼も夜もです」
「休日?」
話を理解していないゆきを見て険しい顔で見つめる美紀。しばし間が開き、美紀はため息をつく。
「本を読みました。ちゃんと確かめました、人の心ってすごく不思議なんです」
「え?う、うん」
美紀の話があまり理解が出来ておらず頷きながらも唖然としていた。
「でも自分の嫌なものだけ見えなくて、その矛盾に気づきもしない。そんな都合のいい病気なんてどこにも書いてませんでした。妄想で現実を遠ざけても長続きしません。すぐに破錠してもっと症状が悪くなるんです。」
「ふぅん?」
美紀の言葉がまだ理解が出来ておらず軽く返事をするゆき。
「最初はふりをしてただけ。そのうちあの三人が本気にしはじめて後に引けなくてずっと続けるようになって、そんな感じじゃないんですか?」
美紀はジリジリとゆきに近づく。
ゆきは後退りをしていたが背に壁がつく。
美紀はそのゆきの横に手をドンッと壁に付ける
ゆきはその音にビクッとする。
「だから、もういいんですよ」
美紀は先ほどよりも険しい顔をしながらゆきを見つめる。
「あのね……」
「はい」
「おトイレ行かなくてだいじょうぶ?」
ゆきは話を逸らすように話を振る。
「あなたって人は……」
「だってあの、おトイレに来たんだよ、ね?」
「まだそうやって…」
美紀はぎりっと歯ぎしりをする。
すると美紀はゆきの腕を握り歩き出す。
「ど、どこ行くの?」
「先輩の目を覚まします」
向かった先は下へ続く階段。
美紀は止まることなく階段を降り、二階へ向かう。
「どこ行くの?二階」
「そうですよ」
「でも二階は……」
「別にいいでしょう誰もいないんですから」
「そ、そうだけど……」
階段を降り二階の廊下へたどり着く。
少し進むと椅子や机で積み重ね、針金でグルグルと固定されたバリケードが立ちはだかった。
美紀はお構い無しにバリケードをよじ登る。
「さ、行きましょう」
「みーくん危ないよ」
バリケードを登る美紀に止めるように声をかけるゆき。
「何が危ないんですか?危ないものがあるって認めるんですか?」
「えっと…」
美紀の言葉にすぐに返す言葉が出てこないゆき。
「いいですよねこの学校。電気も水も生きててお風呂まで入れて、それなのにあなたたちは何をしてるんですか?」
「何って……」
「私と圭は……そうやって毎日遊んでて気が晴れるかもしれないけどそれでいいんですか?」
ゆきに問いかけるが言葉が出てこず慌てながら美紀を見つめるゆき。
「もういいです。ずっとそこにいてください先輩」
美紀はそっぽを向きふっとバリケードの奥へと消えてしまった。
それを止められなかったゆきはしゅんとしてしまった。
「めぐねぇあのね、みーくんが…」
すると階段の方を振り向き誰もいない所に話しかける。
しかし何を言っているのかはゆきにしか分からない。
「ううん。わたしが行く。わたしじゃないとダメだと思う。喧嘩しちゃったみたいだから仲直りしないと…うん、それにねみーくんわたしのこと先輩って言ってくれるんだよ…うん」
めぐねぇが何を言っているのかは分からないが納得してくれたようだった。
「あのねめぐねぇ………ううん何でもない、いってきます」
ゆきはそう言うとバリケードに手をかけた。
-私だってずっと戦ってたんだ。こいつらなんて目じゃない。静かに冷静に、立ち止まるくらいなら一人だって-
美紀は懐から百円玉を取り出し奥へ投げる。
百円玉が床につく時の音に反応して美紀から離れる。
その隙を見て先に進む美紀すると、
「みーくんいた!」
不意に名前を呼ばれ目を見開く美紀。
後ろを振り向くとゆきが手をふり美紀に向かってきた。
しかしゆきの後ろにはゾロゾロとこちらに寄ってくる『奴ら』
「何やってるんですか!」
ゆきに怒鳴りつける美紀。
しかし美紀の後ろにいた『奴ら』も反応してこちらに寄ってくる。
美紀はそれに気づき懐から2本のペンライトを投げつける。
そして美紀はゆきの手を掴み走り出す。
「先輩こっち」
「う、うん」
二人はバリケードに向かい走り出す。
バリケードに着くと美紀が先に登り下にいるゆきに手を差し伸べる。
ゆきも無事登りきり互いにバリケードの上で息を整える。
「あんまり心配かけないでください」
「え、でもみーくんが危ないって」
「そういうことじゃ……まぁいいです」
美紀はそっぽを向いた。
しかしどこか照れたような顔をしていた。
暫し沈黙が続き、
『あの……』
「……どうぞ」
「うん、あのねあやまりに来たんだ」
美紀がゆきに話すことを進める。ゆきは美紀の所に来た理由を話だす。
「先輩がですか?」
「うん…わたしね頭悪いからみーくんの言うことよくわからないんだけどさ、たぶんあれかなって思うんだ」
「あれ、ですか?」
「うん」
ゆきはどこか理解していたが、美紀には分からず話し出す。
「しおりちゃんがね、時々すっごく疲れた顔してるんだ。」
「くるみちゃんとりーさんも夜中こっそり喧嘩してたりね、だいじょぶ?って聞くとうんなんでもないよって言うんだよね」
「そうですか……悲しくないですか?」
美紀はゆきの話を聞いていると暫し考えてゆきに問いかける。
「え、何が?」
美紀の問いかけの理由が理解出来ず疑問に思うゆき。
「だって仲間外れじゃないですかそんなの」
「うーんわたしのことかばってるんだと思うよ」
「どうしてそう思うんですか」
ゆきの答えが理解出来ず理由を問いかける美紀。
「しおりちゃんはいつもわたしの話、笑顔で優しく聞いてくれるし、りーさんとくるみちゃんが理由もなくそんなことするわけないし。ほらわたし頭悪いからさ、難しい話されてもわからないから」
「そんなことないです」
美紀はそっぽを向きながらそんなことないとゆきに言った。
ゆきはその言葉をきいてぱぁっと明るくなる
「そうかな?」
「はい」
美紀は頬を赤らめながら言った。
「と、とにかくね。三人が疲れてるからわたしはその分元気でいようって思ったんだ」
「どういう計算ですか?」
「三人は頑張ってるけどわたしは何もしてないからせめて笑顔でいたいなって、そしたらちょっとは元気出るかもしれないし」
「そうですか…」
「でもみーくんには迷惑だったかなって」
ゆきの言葉をきいて美紀は疑問に思いゆきの方を向く。
「病気明けにテンション高すぎたかなって。だからごめんね」
ゆきは美紀に微笑みながら謝罪を述べる。
「確かに先輩のテンションには疲れますけど」
「ややや、やっぱり?」
美紀の言葉に慌てながら美紀の方を向くゆき。
「でもいいです。ゆき先輩がたださぼってるんじゃないってわかりましたから」
「そっか。みーくんもさなんかつらいことあるみたいだけど…」
「は い ?」
ゆきが胸を張りながら美紀に言おうとするが美紀の威圧で言葉が止まる。
「もしかしたらあるんじゃないかみたいな、ほら人生長いし!」
ゆきは慌てながら美紀に話を続ける。
「まぁありますけど…」
「そゆ時はね頼ってくれていいんだからね。なんたってほら先輩だし」
ゆきは美紀の言葉を聞き胸を張りながら自分を頼るように言い聞かす。なぜか先輩を強調して言った。
「ふっあんまり頼りになる気がしませんけど」
美紀はゆきの言葉にふっと笑いながら頼りないと言った。
「頼りになるよ!すっごくなるよ!」
ゆきはずいっと美紀に近づいた。
「話して楽になることってあるじゃない?」
ゆきはもう一度美紀に悩みを話すように言った。
美紀はしばらく黙り込むも話し始める
「……友達が……いるんです。クラスメートで調子が良くて元気で……」
「うん」
「しばらく会えてなくて」
「登校拒否?」
「そう、かもしれません」
美紀は出ていくことを止められなかった友人…祠堂圭のことについてゆきにはなす。
しかしゆきは登校拒否かと聞いた。
美紀はそれに合わせるように答える。
「そっか」
「もう一度あえたらなって」
「きっと会えるよ」
「気休めですか」
美紀はゆきの答えに気休めかと聞く。
「ううん。だってほらわたしたち学園生活部だし!」
「さっぱりわかりません」
ゆきがぐっと親指を出すが美紀は理解ができなかった。
「みーくんは学校嫌い?」
「いえ……」
「でしょ?みんな学校大好きなんだからきっとその子もまた来るよ。わたしたちはずっと学校いるからこりゃもう会うのは時間の問題だね!」
「来なかったらどうするんですか?」
ゆきの言葉に最悪の場合はどうするのかと問いかける美紀
するとゆきはバリケードから飛び降り
「そしたらさわたしたちでこの学校をもっともーっと楽しくすればいいんだよ。もういっそ遊園地にしちゃうとかさ、夜になったら電飾がきらきらって。こりゃー来るでしょ明かりに誘われて」
ゆきは学校を遊園地にしようと提案する。
ゆきの頭のかなかには遊園地になった学校が浮かんでいる。
「先輩。言ってることが無茶苦茶です」
「そ、そう?」
二人の会話を上の階からこっそり聞いていたくるみ、りーさん、しおりの三人はどこか嬉しそうな顔をしていた