ゆきが出ていってしばらくたった頃、しおりの病状は更に悪化していた。呼吸をするのも辛そうにしていた。
汗が止まらずその度にタオルで拭き取るりーさん
しおりに掛けている布をペラっと捲ると右手右足に手錠が付いていた。
りーさんは傍にある椅子に腰を下ろし、こんなことしか出来ない自分を悔やむ。
くるみと美紀はめぐねぇに向き合う。
そして持っている武器を構えるがやはりめぐねぇを見ると顔が険しくなる二人。
するとめぐねぇはギギギと不気味な音を出して二人の方へと歩き出す
その度にビシャビシャと水が跳ね上がる。
「ここだと足場が悪いな…シャッターのとこまで戻るぞ!」
くるみは美紀の肩を掴みシャッターの所まで戻るよう言う。
そしてその場から離れるように走り出す二人。
その後を追いかけるように歩くめぐねぇ
シャッターの空いている隙間から滑り出し外にでる。
息を整えながらシャッターの隙間を覗く。
そこには二人を追いかけてきためぐねぇがシャッターに当たり進めなくなっていた。
無理に進もうとする度にガンガンと音がする。
すると美紀は立ち上がる
「美紀……」
美紀は後ろにいるくるみを見て頷きめぐねぇに視線を戻す。
「佐倉めぐみ先生、ですよね。はじめまして直樹美紀学園生活部の新入部員です。めぐねぇのことはみんなから聞きました。優しくていつもみんなを支えてたって、みんなを傷つけたくなかったんですよね。会ったら……心が折れてしまうかもって」
美紀はそっとシャッターに手を当てる。
「でも、今は私たちみんな元気です。りーさんはみんなのお姉さんで、いつも先のことを見ています。ゆき先輩はいつも元気でみんなの支えになっています。くるみ先輩は困った時に頼りになる頼もしい先輩です。」
自分のことをそんな風に思っていた美紀の言葉を聞き頬を赤らめ恥ずかしくなるくるみ。
「しおり先輩は……」
今のしおりのことを思うと言葉が止まる美紀。
「しおり先輩は、みんなのことをいつも優しく支えてくれる尊敬できる先輩です。めぐねぇがいなかったら私もここにいません」
するとシャッターの奥からガシャーンっと音がした。
しかし話を止めない美紀。
「私たち、もう大丈夫です。だから…」
するとシャッターの隙間から手で美紀の左足を掴むめぐねぇ
「美紀っ!」
美紀は一度は怯えるように目を見開くも深呼吸をする
そしてしおりから借りた薙刀をぎゅっと握る
「ゆっくり…休んでください」
と、優しく呟き薙刀をめぐねぇに突き刺す。
返り血を浴び薙刀の刃の部分は血で紅く染まる
美紀はよたよたとシャッターの中へ入っていく。
その姿を見て後をついて行くくるみは美紀に肩を貸し、めぐねぇの方を向く。
(めぐねぇ…大丈夫だよ。しおりはあたしが…みんなが支えていくから)
まだ学園生活部ができたばかりの頃、見回りの帰りに廊下を歩いているくるみ。
するとめぐねぇが学園生活部の部室前に寄りかかっていた。
「恵飛須沢さん、おかえりなさい」
「めぐねぇただいま。入らないの?」
くるみに気づき声をかけるめぐねぇ。
しかしその顔はどこか悲しそうだった
「さっきまでいたんだけど…ちょっと居ずらくてね」
「ん?今いるのはしおりだけだろ?」
「そのね…ちょっと前にしおりさんに聞いたの「何か相談したいことはない?」って…でも断られちゃった」
髪をいじりながら何があったのかを話し出すめぐねぇ。
それを聞いて疑問に思うくるみ。
「なんでそう思ったんだ?」
「うん…しおりさんって私たちと違って体育館にいて、1番危なかったと思うし…1番辛かったと思うの。目の前でお友達や部員の子達を何人も失ったと思うから…何か聞けないかなって」
その言葉を聞いて目を伏せるくるみ。
「私、これでも顧問だからね…相談してくれないかなって」
めぐねぇは「失敗しちゃった」と言いながら苦笑いをする。
するとくるみの方を向いて話す
「もし、恵飛須沢さんや他のみんなに話す時が来たら私の分までしっかり支えてあげてね」
くるみはめぐねぇを見て昔した約束を思い出す。
そしてくるみは美紀に肩を貸しながら奥へ進む
そこから更に地下へ進む道を見つけた二人は階段を下り、地下二階へとたどり着く。
他の『奴ら』が居ないことを確認して奥で薙刀を構えている美紀に合図を出すくるみ。
美紀はその合図を見てすっと薙刀を下ろしてくるみのいる方へ向う
懐中電灯をつけながら奥へ進み薬を探す。
すると懐中電灯をあてた先にひとつの箱があった。
その箱には『医薬品』と書かれていた。
箱を開けるといくつもの薬などが置いてあった
しかし時間がないことに気付き、必要な分だけを非常時袋に詰めて放送室へと走る二人。その顔はどこか嬉しそうだった。
戻ってきた二人を見つけたゆき
「おかえり」
と、手を振るが二人はゆきに軽く会釈をすると放送室へと向う。
美紀は思いっきり扉を開ける。
「二人共!良かった…」
それに気付いたりーさんは椅子から立ち上がり安心したような顔をする。美紀は、袋から注射器を出す。
そして、しおりに掛けられている布をめくる
しおりの状態は出ていった時よりも酷く悪化していてガタガタと震えながら暴れていた。
そんなしおりを見て下唇を噛むくるみ。
「手伝ってください」
美紀の声を聞き、くるみはしおりの体を抑え、りーさんは右腕を抑えて注射を打てるようにする。
そして注射を打つ美紀。するとしおりの動きが徐々にゆっくりになりそして、すっと大人しくなるしおり
「大丈夫なの?」
「鎮静剤と抗生物質と実験薬だそうです。脈拍も体温もあります、あとは…待つだけです」
「そっか……」
美紀の言葉を聞きほっと安心するように胸をなで下ろすりーさん。
くるみはぼそっと呟きながらしおりに再び布を掛けてしおりの右手を握りしめる
「頑張れよ…しおり」
その時、しおりの手がくるみの手を握り返すようにピクっと動いたがくるみはそれに気付かずそのままでいた。