-卒業と入学の間のこの時期、今の私たちは学生じゃない。どこにも
属さないなんでもない人だ。なんだか足下がふわふわする。
なーんてね、みんなで一緒に卒業旅行、これが楽しくないわけないよね!-
ゆきは窓から見える景色を眺めながら抱いているぐーまちゃんのぬいぐるみをさらに力を入れて抱きしめる。
現在座っている位置は、運転席にしおりが座り、助手席にくるみが座る。後部座席には、左から美紀、ゆき、りーさんの順番で座っていた。
「ゆきちゃん、道わかった?」
運転席に座っているしおりがゆきに問いかける。するとゆきは慌ててマップを開く。
「ん〜と…うん。三丁目五番地だから多分次の角を右」
「はーい」
ゆきの答えに返事をしながら運転を続けるしおり。
「…ね、しおりちゃん」
「何?」
「卒業旅行楽しいね」
「わわっ」
急に話を振られて答えようとするが、それと同時に前にいた『やつら』にぶつかりそうになり急ブレーキをする。
「先輩、運転してる人にあんまり話しかけちゃダメですよ」
「ごみん」
急ブレーキをした時にゆきは美紀の方へと倒れてしまった。
その反動ぐーまちゃんが落ち、窓とゆきに挟まれる美紀。
「ねね、りーさん。修学旅行って楽しいね!」
「……そうね」
ゆきは、右隣に座るりーさんに話を振る。
するとりーさんは何かを考えていた顔をやめ、笑顔でゆきに返す。
「今日はこの辺かな」
「おつかれさまー」
しおりは運転していた車をコンビニの駐車場に止める。
「やっぱり時間かかりますね…地図だと近いのに……」
「工事いっぱいやってたもんね」
「そうねぇ」
「んじゃちょっと見てくるわ」
助手席の扉を開け、シャベルを持ちながら中を見てくると言うくるみ。
すると反対側にある運転席の扉を開けて外へ出るしおり。
「着いてく位ならいいでしょ?」
「あんま離れんなよ」
首を傾げながら問いかけるしおりにくるみは少し呆れた顔をしながらついて行くのを了承する。
「わたしも行くー」
ゆきはマップを見ている美紀の前にずいっと向かい窓から一緒に行くと言う。
「くるみちゃんもしおりちゃんも疲れてるでしょ?一緒に行くよ」
うずうずとしながらやる気に満ち溢れた顔をするゆき。
そんなゆきを見てそーっと手をゆきの頬に当てる。
「ちょっ冷たっくすぐったいよ」
「ゆきちゃんに化けた宇宙人めー本物のゆきちゃんをどこへやった」
しおりは冷たい自分の手でゆきの頬をむにむにと弄り始める。
「手伝うって言ったのにこの仕打ちーひどいよー」
「本当のところは?」
「…コンビニでマンガ読みたいなって」
「ま、そんなところだな」
ゆきは美紀の問いかけに少し間を開けながらも本音を言う。
それを聞いて頭を掻きながら呆れた顔をするくるみ。
「ね、りーさんいいでしょ?」
「そうねぇ気をつけるならいいわよ」
「うん。気をつける」
ゆきは後ろを向き左に座っているりーさんに行っていいかの許可をとる。するとりーさんは一つの条件をつける。ゆきはそれを守ると言いそれを聞いたりーさんはついて行くことを許可した。
「行こっしおりちゃん」
ゆきはしおりの手を引きながらコンビニへと入っていく。それを見て微笑んだくるみがその後をついていく。
コンビニに入っていく三人を見てどこか心配そうな顔をする美紀。
「大丈夫かなって思ってる?」
「え、あ、その……」
そんな美紀をみて問いかけるりーさん。少し気まずそうにする美紀
「大丈夫よ。くるみとしおりさんがいるし、ゆきちゃんもああ見えて結構素早いから」
「そういえばそうですね」
「美紀さんを見つけた時もすごい勢いで走ってって、誰も捕まえられなかったのよ」
「ゆき先輩、すごいんですね」
「そう。あの子すごいのよね」
コンビニの中に入ると、中は真っ暗で棚から商品が落ちていたり、レジなどが割れていた。
さすがに暗すぎるため少しでも明るくしようと懐中電灯をつけるしおり。
「だいぶ荒らされてるな」
「マンガ売り切れてるー」
中の状態が予想以上で驚いているくるみと違い目的だったマンガがないことに驚きながらショックをうけるゆき。
しおりは懐中電灯の明かりであちこちを照らす。すると奥に扉があった。その扉を照らしなが後ろにいるくるみの方を向き互いに頷き合う。
「ちょっと裏を見てくるからうごかないでね?」
「はーい。床、掃除しとくね」
雑誌を読んでいたゆきに動かないように言ってくるみと一緒に奥の扉に向かう。
奥から戻るとゆきがほうきとちりとりを使ってせっせと掃除をしていた。そんなゆきを見て疑問に思ったくるみ。
「……なぁおまえ最近ちょっと…」
一度言葉が止まり、互いに見合うゆきとくるみ。
「美人になった?」
「はあ!?」
ゆきが照れながらくるみに問いかけるが予想外の言葉に驚くくるみ。
「クールビューティ?」
「クールでもビューティでもねぇ!」
「えーひどいよー!」
するとゆきは腰を振りながらもう一度聞くが今度は驚かず否定をするくるみ。
そう言われて近くにあった化粧品を手に取り「お化粧とかすれば…」と呟く。
「ま、いっけどな」
その日の夜、学園生活部の五人はコンビニの床に布団を敷きその場で寝ることにした。
「やっぱお布団いいねぇ」
「車中泊って結構きついですよね」
ゆきは自分の布団の中でごろごろと動きながら呟く。
「悪いわね、掃除までさせちゃって」
「ゆきがやったんだぜ」
「え、うそ」
ゆきが掃除をやったことに驚く美紀。
「ひ、ひどいよみーくん……」
「みーくんじゃありませんから」
美紀の驚きに体を震わせながらうるうると涙目になるゆき。
しかしそんなゆきの前にいつも通りの否定をする美紀。
「最近結構役に立つよな」
「普段は役立たずみたいな…」
「嘘だよ。昔っから役に立ってるよ」
「そ、そうかな」
最初はむすーっとしていたゆきだがくるみの言葉を聞き布団で口元を隠しながらもじっとする。
「それは間違いありません」
「ゆきちゃんはもう大丈夫ね」
「う、うん」
さらに美紀とりーさんからの言葉を聞いて顔が赤くなるゆき。
そんな会話をしている四人と違いすやすやと寝ているしおりだった。
あれからしばらくすると寝息がいくつか聞こえてきた。
四人が寝ている中ゆきだけはまだ起きていた。
「ふわぁぁ」
ゆきは起き上がり欠伸をする。
左右をみてだれも起きていないことを確認して、懐中電灯を持ちながらその場を離れようとするゆき。
「……ゆきちゃん、どうしたの?」
「あのね、おさんぽーめぐねぇがね今日は星がぴかーっとしてきれいだって」
「だめでしょ。夜、一人で歩いちゃ」
ふと目を覚ましたりーさんに外へでる理由を言うがだめだと言われてしまう。
「えー」
「そこに座って」
「ぶー」
「座りなさい?」
声が聞こえ目を覚ますくるみ。声がする方をみるとなぜかゆきがりーさんに説教されていた。
その光景を見ていたくるみが驚いていると、美紀としおりも目が覚める。
叱っているりーさんと反省しているゆきをみて微笑む三人。
次の日、全員が車に乗り込み発進する。
今回は運転席にくるみが座り、助手席にゆきが座る。
「……変なとこ触んなよ?」
隣でうずうずしているゆきに念を押すように言うくるみ。
「う、うん。あ、でも触っちゃいそう」
と言い手をぷるぷると震わせているゆき。
「わーったわーった。じゃあ音楽かけてくれよ」
「!はーい!」
ゆきはぱぁっと明るくなり一枚のCDディスクを入れる。
「これかな?」
と言いボタンを押す。
『……ねぇねぇ誰か聞いてる?こちら巡々丘ワンワンワン放送局』
その声を聞き急ブレーキをかけるくるみ。
『この世の終わりを生きてるみんな元気かーい!』
「おまえ今どれ入れた?」
「こ、これ……」
と言いゆきが見せたのは一枚のCDケースだった。
「うーん!?」
それを手に取りよく見るが、どう見てもこんなものが流れるような感じの表紙だった。その表紙をみて唸るくるみ。
『聞こえない人返事してーはーい…ってノリ悪いなぁ。まぁいいや、ワンワンワン放送局はっじまるよー!』
「くるみ、これラジオじゃ……」
「あ……」
しおりの言葉を聞いて息を呑むくるみ。
『それじゃ今日もゴキゲンなナンバーいってみよっ!』
「ほんとよ、AMだわ」
『まずはダスベスの『天より降り来るもの・第三』から『戦いは終わらない』いってみよっ!』
「てことは……」
「誰か……生きてる!」
音楽が流れる中学園生活部五人は一斉に喜び合う。
「ご静聴ありがとう!いや本当静かだよね、静かすぎ。もうちょっと騒いでもいいよ!こちらはワンワンワン放送局。どんなにつらい日々でも希望と音楽をお届けするよ!じゃまた明日!」
女性は放送用の機材をパチンといじり放送を終了させる。
そして、息を吐きながら付けていたヘッドフォンを外す
すると女性は「ケホッゴホッ」と咳き込む。