小さな小道のわきに車を止めて車中泊をした学園生活部の五人。
「おはよー」
最初に目を覚ましたのはゆきだった。
辺りを見ればまだ他のみんなは寝息を立てて寝ていた。
そしてゆきは車の窓に付けられたカーテンを開けて、晴れた青空を見て呟く。
全員が起き、順番に歯を磨く。ゆきと美紀はうがいをして近くにある田んぼにぺっと出す。
「眠れた?」
「眠れましたけど……首が痛いです」
ふとゆきは隣にいる美紀に問いかける。すると美紀は手で首を抑えながら答える。
「あー車ちっちゃいよねぇ」
「ゆき先輩は眠れました?」
「わくわくして眠れなかった!」
「それにしては元気ですね」
ゆきはギラっと目を見開くがいつも通りの気がする美紀。
しかしゆきの目の下にはクマが出来ていた。
「おい、戻れ」
「はい」「はーい」
車で待機していたくるみが二人を呼び戻す。バックミラーに映るのは数体の『奴ら』だった。
二人は早足で車に戻る。
「今日はどうすんの?」
「ラジオの人に会いに行くんでしょ」
ゆきは後部座席に乗り込むとドアを閉めて、りーさんに今日の予定を問いかける。
「どこかな、ラジオ局?」
「どーだろうなぁ」
「電波の入る距離が短めですから、あまり大きい設備ではないと思います」
ラジオの人がどこにいるのかを話していると、美紀が欠伸をしながら言う。
「じゃあどっかの家かな」
「どうやって探したらいいかしら」
「アンテナが立ってるとか……」
すると、『ジジッ』と音がした。
『おはよう、いい朝だね。外は見てないけどきっといい朝なんじゃないかな。こちらワンワンワン放送局今日も一日よろしくぅ!リスナーのみんな、この放送が聞こえたならこっちに顔を出してくれないかな』
するとラジオの人は「コホッコホッ」と咳をする。
「もしもーしどこに住んでますか?」
『今ならお茶とお菓子をサービスするよ。住所はね……』
「うおっと!」
「通じた!?」
「いやいやいやいや」
ゆきはラジオの人に住所を問いかける。するとタイミングよく住所を教え始める。さすがのゆきもこれには驚いたようだ。
通じたのかと驚くりーさんに首を横に振って否定する美紀。
「うっし。これでわかったな。えっと……ここか」
「こっちでしょ」
くるみはマップを開きここかと指を指すがゆきが手を伸ばしてこっちだと言う。
「んん?んん……ゆき頼む」
「らじゃ!ちょっと回り道になるけど……これなら今日中に着けるかな」
「よし行くか!」
「行くわよ」
くるみは分からず結局ナビゲーションをゆきに任せ、マップを渡す。
そして車を発進させる。前にいた『奴ら』を引き飛ばしながら。
しばらくゆきのナビゲーションで進んでいく車。
ゆきの指示で右に曲がる車。するとその先は電柱とトラックで道が塞がれていた。
「りーさんストップです!」
「ここも通行止めかー」
「この辺狭い道多いですものね」
りーさんは急ブレーキをして車をバックさせて別の道を通る。
ナビゲーションのためくるみと席をチェンジしたゆきは助手席に座りマップを広げていた。
そのマップには今通れなかった道にバツ印が書かれていた。
「かといってでかい道路は渋滞してるしな」
「何がいけないんだろうねー」
「政治かな」
「決めた!わたし二十歳になったら道路を広くしてくれる人に投票する!」
ゆき達が道路について話している中、りーさんはどこか疲れたような顔をしていた。
「少し休憩しましょ」
車をコンビニに止め、車に寄りかかるりーさん。
するとコンビニの中を探索にいっていたくるみが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
りーさんは欠伸をしながら呟く。
「おつかれ」
「最近疲れがとれなくて…」
「この車だとなぁどっかで二、三日泊まっていくか?」
くるみの提案に首を横に振るりーさん。
「お水がなくなっちゃう」
「まぁなぁ。別の車探すかぁ国道にいっぱい乗り捨ててあるだろ」
「そうね。めぐねぇに相談して……ほら、めぐねぇの車だし乗り換えるなら……」
りーさんの言葉を聞き疑問に思うくるみ。
そんなくるみをみてもう一度言おうとするが、言葉が止まる。
「ゆきちゃんにも相談しないとね」
「そうだな」
『お聞きの曲は群青の『フレンドシップタワー』でした。さぁて次の曲の前に、ワンワンワン放送局はリスナーのみんなのリクエストをいつでも受け付けてるよ』
「ゆき先輩…」
「なぁに?」
『メール、電話、郵便、伝書鳩、大声、何でもいいよ』
「どんな人なんでしょうね」
美紀はラジオの人がどんな人なのかを助手席に座るゆきに問いかける
「明るい人っぽいよね」
「……そうなんでしょうか」
「ん?」
『でも一番嬉しいのは顔を出してくれることかな。ゴホッゴホッ』
ラジオで話し続ける声を聞いてどこか不安そうな顔をする美紀。
するとラジオの人はまた咳き込む。
『……おっと風邪かな?一人暮らしのつらいのは病気の時だよね。リスナーのみんなもこの季節風邪には気をつけてね』
「私たち……五人ですよね。六人になっても……大丈夫なんでしょうか」
「新入部員ってこと?」
「はい。もし怖い人だったらとか、喧嘩になったらとか……」
美紀は今自分が考えていることをゆきに話し始める。
「わたしはね、みーくんが来てくれた時嬉しかったよ」
「そ、そうですか」
「そりゃぶつかる時もあるけど……結構何とかなるんじゃないかな」
急に言われたゆきの言葉に顔を赤くする美紀
「考えすぎなんでしょうか?」
「怖い人だっらさ、みんなで車で逃げちゃえばいいよ」
「それは……そうですね」
「あ……」
ドアを壁にして寝ていたしおりがふと目を覚ます。
目を擦りながら小さく呟く。
「先輩、どうしました?」
「来てるよ」
「わっと!」
美紀の問いかけにサイドミラーに映る『奴ら』を指さす。
それを聞いたゆきは慌てて窓から顔を出す。
「戻って!」
「今行く」
「ゆきちゃん…」
(すっかり頼れるようになったわね……)
ゆきは外にいるくるみとりーさんを急いでもどるよう言う。
それを聞いて慌てて戻るくるみと頼れるようになったゆきを見て感心するりーさん。
それからしばらくして、目的地であるラジオの人がいるであろう建物に到着した学園生活部。
その建物は白くて四角い普通の家とは違う形の建物だった。
「多分これだろな」
「すごいわね」
「なんか強そう…」
それぞれ建物を見た感想を述べる。
りーさんは建物の大きさに驚くがゆきはなぜか強そうと呟く。
「……なんでこんな家を建てたんでしょう」
「……ん?」
「まるでわかってたみたいです」
「あー聞いてみればいいんじゃないかな」
美紀は建物を見ていくつかの疑問を感じた。
そんなことを考える美紀に聞いてみればいいと言うくるみ。
「そうね。でも……どこから入るのかしら」
「あれじゃねぇか」
くるみの意見に同意したりーさんは中へ入るための入口を探すがどこにも見当たらなかった。
するとくるみが指さした先にあったのは鉄ハシゴだった。
「行こっか」
「誰か車見てないと」
「私が残るわ。いってらっしゃい」
「あ、頼むわ」
ゆきは鉄ハシゴに向かうが車を誰が見るのだと美紀が言う。
するとりーさんが残るといい、四人で中に向かうことになった。
「んじゃいってきまーす!」
ゆきは元気よくりーさんに向かって手を振る。それを見ていたりーさんはゆきに手を振り返す。
鉄ハシゴを登りきると、その先にあるのは一つのハンドル式の扉だった。その扉を開けようとくるみと美紀としおりはハンドルを回すがそのハンドルは思った以上に固く、ビクともしない。
「先輩、何してるんですか?」
「ほら、あしあと」
「いいから手伝ってください」
「はーい」
美紀は未だに鉄ハシゴの方にいるゆきに声をかける。
するとゆきは自分たちが通ってきた場所に足跡がついていることに気づく。しかし美紀はその前に扉を開けると言い、ゆきを呼び戻す
そしてやっと開いた扉を覗くと、下まで続く鉄ハシゴがあった。
鉄ハシゴを使い下まで降りる四人。
降りた先にあったのは大きな鉄扉だった。
「開けるよ?」
「おう」
しおりが扉の取手を握りくるみに確認をとる。くるみが頷くのを見て扉を開けるしおり。
その先にあったのは、放送の機材が置かれた机に椅子。そして倒れ入っていた中身が零れたマグカップ。
誰もいないことを確認し、机の近くによる。
放送機材の上に手紙と鍵が置かれていた。くるみはその手紙を手に取る。
すると奥の扉からガリガリと扉を研ぐ音や扉を叩く音が聞こえた。
[扉を開けるな!扉の先には私がいる。なるべく始末をつけるつもりだけど、うまくいくかわからない。音がしたらそういうことだと思ってくれ。この手紙を見つけた人にこの家とこのキーを預ける。
できれば、あなたと一緒にお茶を飲みたかった。できれば、あなたと一緒にここをでたかった。できれば_________]
最後まで何かを書き残そうとしたが途中で感染が進んだのか後半の文字はぐちゃぐちゃで、さいごに書かれたあとはあるが何を伝えたかったのまでは分からなかった。
その手紙を三人にも読ませる。するとそれを読んだ美紀は涙を流す。
くるみは音が聞こえる扉の取手に手をかける。
「くるみちゃん……」
「ん?あぁ送ってくるよ……そのほうがいいと思ってさ」
「……気をつけてね」
「おう」
そしてくるみは取手に力を入れて扉を開けた。
さらに奥に進み、電気を付けるとそこにあったのはたくさんのコンテナだった。
「うわーいっぱい」
「……そっくりですね」
「ん?」
「学園の地下とそっくりです。物資もコンテナも」
コンテナがいっぱいあることに喜ぶゆきと、そのコンテナをみて疑問に思う。
その見た目は学園の地下にあったコンテナに似ていた。
「ふぅん……ならここで暮らしてもいいかもな」
「だめだよ!みんなで大学へ行くって……」
「ええ行きましょう。できるだけ早く」
くるみの提案に大声で否定するゆき。ゆきの意見を聞き大学へ行こうと再び決意する三人。
しばらくコンテナを調べていると、しおりは小さなケースを見つける
ケースを開けるとその中にあったのは、ベルトキットだった。
ベルトキットを取り出す。既にもういくつか埋まっていた。その中には、武器となるマチェットが三本、取り付けが自由にできる救急キットだった。そしてベルトキットを腰に巻いてみるしおり。腰に付けるとベルト部分に付属していた別のベルト、それを両足に取り付ける。
これは便利だと思い、少し喜んでいるしおり。
「なんかみっけたか?」
「これ、便利だし使えないかなって」
「ふーん。まぁ土産のうちにはいるよな」
「そうだね」
こうしてらしおりは新しくベルトキットとマチェットを手に入れてみんなと一緒に外へと戻る。
りーさんは四人が帰ってきたことに気づきドアを開ける。しかしりーさんは、制服に血がついているくるみをみてびっくりする。
「どうだった?誰かいた?」
「あー留守だったみたい」
くるみはラジオの人を送ったことはりーさんに言わなかった。
「そう残念ね」
「おみやげはあったけどな」
と言いキーとしおりのベルトキットを見せる。
すこし先を歩くと1台のキャンピングカーがあった。
学園生活部はめぐねぇの車からキャンピングカーに乗り換えて大学へ向かうことを決めた。
全員が乗り込みさいごに美紀が乗ろうとするが、建物を見つめる。
「みーくんどうしたの?」
「もう少しだけ、もう少しだけ早く来てたらなって思ったんです……」
「うん、そうだね。次はきっと会えるよ」
「そうですね。さようなら……」