雨が降り、しぃんと静まり返った教室に響く時計の音。
めぐねぇは一人、教卓に座っていた。
ーこれはたぶん遺書だ。私は罪を犯した。いつかこれを読む人にそのことを知ってほしい。
あの子のことだ。
丈槍由紀の時間が止まったのは、私のせいだー
「ふう」
めぐねぇは、ノートを閉じ、窓の景色を眺めた。
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「くるみちゃん、しおりちゃん、雨だよ」
ゆきが、窓から外の景色を見て言った。
「ほんとか?」
「うん。運動部が雨宿りしてるもん」
外には、頭を手で隠しながら、校舎まで走る運動部の生徒たちがいた。
「また雨かよ……」
くるみは軽く舌打ちをし、しおりはカンパンを食べていた。
「ふたり、とも…何か…忘れてない?」
しおりは、カンパンを缶からつまみながら言った。
それを聞いたゆきとくるみは顔を合わせ、
「「…!」」
二人はハッと気付いた。
「「洗濯物!」」
屋上
りーさんは、屋上にある畑のうちの一つに刺さっている十字架に向けて、手を握り、祈りを捧げていた。
すると、りーさんの手にポツっと雫が落ちた。
「あら?困るわね……また雨。そろそろ節電しないと……」
すると屋上の扉が開き、
「りーさん、洗濯物大丈夫?」
ゆき達が来た。
「あ、よかった手伝って」
「はーい」「うす」「…うん」
学園生活部全員総出で、洗濯物を取り込んでいる。
すると、
「くるみちゃん〜見て見て」
「んー?」
ゆきの声がした方をくるみは振り向くと、
「ほらほら、ボイン!」
ゆきが、りーさんのブラをつけていた。
「小学生かおまえは」
くるみは冷静につっこんだ。
「もうっ遊ばないのっ!」
「あーん」
りーさんは、ゆきからブラを取り上げた。
ゆきはなぜか尚残しそうだ。
「早くしないと濡れちゃうわよ」
「はーい」
洗濯物が風でぱたぱたと靡いている。
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『お昼になりました。午後の授業のためにもしっかり栄養をとりましょう』
チャイムがなり、お昼を知らせる放送が鳴った。
「「「「いっただきまーす」」」」
「……ます」
学園生活部の五人は、昼食にカンパンを食べていた。
「ううむ。ぱさぱさする」
くるみがカンパンをポリっと食べると、愚痴を漏らした。
「今日は、全校停電だから」
めぐねぇがおさめるように言った。
「わたし、停電好きだけどなー。なんかわくわくするよね」
ゆきは、カンパンをむしゃむしゃと頬張りながら言った。
「うちのシャワー、電熱式だぞー」
「え?」
「お湯が出ないのよね」
「はうっ」
ゆきは、めぐねぇの言葉にショックを受けた。
するとそのままゆきは、放心状態なのかピクリとも動かない。
「……」
「大丈夫かー」
くるみはゆきの肩を揺すると、ばっと立ち上がった。
「キャンプだよ!」
「「キャンプ?」」
りーさんとくるみはゆきに問いかけた。
「ほら、えーと、遠足でキャンプとかするでしょ?学園生活部だから学校でキャンプするの!」
ゆきは人差し指をくるくるさせながら説明した。
「なるほど、キャンプなら電気とかないもんな」
「そうねぇいいんじゃない?」
くるみとめぐねぇはゆきに賛成するように言った。
「キャンプか、テントあったかな」
「部室にあったはずよ。あれなら四人入れるわ」
「ちょっ私、私!」
めぐねぇは焦るように自分に指差した。
「だ、大丈夫だよ。詰めればめぐねぇも入れるよ!」
ゆきはめぐねぇをサポートするように言った。
りーさんは、それにハッと気付き、
「!すいません、そんなつもりじゃ」
「冗談よ。見回りもあるしね」
めぐねぇは、苦笑いをしながら言った。
すると、
「めぐねぇいつもおつかれさま」
ゆきがめぐねぇに言った。
するとゆきに続くように、
「めぐねぇおつかれさまー」
「……です」
くるみとしおりが言った。
するとめぐねぇは、
「もう、めぐねぇじゃなくて佐倉先生」
微笑みながら言った。
夜 学園生活部 寝室
四人は、寝室にテントを張り、中に布団を敷き円になり座っていた。
「雰囲気あるね!ね、何の話する?」
すると、
「怪談とかいいわよね」
りーさんがフフ…と笑いながら言った。
「え、雰囲気はあるけど……」
「やーだ!」
くるみは、りーさんに不満を漏らした。
しかしりーさんはそれを聞かず、
「知ってる?今日みたいな雨の日はね……」
怪談を話し始めた。
「〜〜〜チョップー!」
「いたーい」
くるみは耐えきれずりーさんにびたーんとチョップした。
「なんか明るい話しようぜ!コイバナとか!」
くるみは気を紛らわすために、話の内容を変えた。
しかし、
「あ、わたしすごく怖いこと思いついちゃった……」
ゆきが場の空気を変えるように言った。
それを聞いたくるみは、
「なにぃ?」
怒りに耐えきれずシャベルを構えた。
「ちょっタンマ!そういうのじゃなくて!じゃなくて!」
「ん?」
「うん、あのね。ほら、わたしたちそのうち卒業するよね?」
ゆきはくるみに聞いた。
「……まあな」
「でもさ……めぐねぇはずっと学校にいるんだよね」
ゆきの言葉に、周りは静まり返った。
「先生が卒業したらまずいだろ」
「そう思ったら、なんか悲しくって、ね」
ゆきが、くまのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら言った。
「わかるわ、いい先生だものね」
「だよなーめぐねぇがいなきゃこの部もないし」
りーさんとくるみは、ゆきに同情するように言った。
「うん。優しいよね…授業眠いけど」
「宿題多いけどな」
「時々、板書間違えるのよね」
しかし三人は後ずけするようにめぐねぇの問題点を言い合った。
すると、奥から靴の音がした。
それに気付いたのはしおりだった。
しおりは、くるみのジャージの裾を摘んで、
「先生…来てる」
「「「えっ」」」
その言葉に三人は驚き、慌てて布団に潜った。
そして、ランプの灯りを消した。
めぐねぇは寝室の扉を開け、
「はーい。夜更かししてる悪い子はいないかな?」
懐中電灯で灯しながら言った。
四人はその言葉に反応せず、めぐねぇが立ち去るのを待った。
「いないわね。じゃ、おやすみなさい」
めぐねぇはそう言って部屋を後にした。
ゆきは、布団からもぞっと顔を出し、そっとテントを開け、めぐねぇがいなくなったのを確認した。
「もう大丈夫だよ」
ゆきがみんなに言った。
くるみ、りーさんは起き上がったが、しおりは布団に入ったまま。
くるみはふと、違和感を感じた。
ジャージの裾が引っ張られている。
しおりが被っている布団を少し剥ぐと、
「すぅ…すぅ…」
くるみのジャージの裾を摘んで寝息をたてているしおりがいた。
それを見たくるみは、
「ははっ」
笑った。ゆきも微笑み、りーさんもぷっと笑った。
ー時間の流れは止まらない。いつかもし、あの四人がこの学校から笑顔で出られるのなら、そのためなら私はどうなってもいい。
あの子たちを元気に送り出すこと、私はそのために生きているー