「外の世界だ。あの五人は外の世界からやってきた」
「俺たち以外にも生き残ってたやつがいたってことだな。別に意外じゃねぇだろ」
武闘派の五人は普段話し合うために使う部屋に集まり、先日やってきた学園生活部の五人について話していた。
タカヒトは、窓から外を眺めながら言う。それを聞いていた他の武闘派メンバーであるタカシゲが吸っていたタバコを灰皿でクシャッと潰しながら言う。
「問題はそこじゃない。俺たちの目的はなんだ?高上」
「安全を保ちながら救助を待つ、だよね」
「だがいつまでも待つわけにはいかない。食料にも限界はある」
急に話を振られた高上は、頬を指で掻きながら答える。しかしタカヒトは、それに付け足すように言う。
「こっちから探しに行きゃいいだろ」
「闇雲に行ってもしかたないわ。行ったけど無駄でしたなんて余裕はないのよ」
「必要なのは情報だ。あの五人がどこから来たか、何を見たか、それを調べる」
タカヒトは再び窓から景色を見ながら今後必要なことを全員に話す。それを聞いてシノウ、高上、タカシゲはタカヒトをみて頷く。
「高上君がミスらなきゃよかったのにね」
アヤカはジト目で斜め右の席に座る高上をみて呟く。そんなアヤカをみて高上はしょんぼりとしながら顔を伏せる。
「穏健派に遊ばせておく段階ではなくなった。リソースは一元化しないとな」
「外の世界だよ!外の世界に行く!」
同時刻、穏健派及びサークルのメンバー五人と学園生活部の五人、そしてるーちゃんはトーコゼミに集まっていた。
そんな中トーコはふと外を見つめながら外へ行くと全員に向かって言う。
「遠足だね!」
「大学生になって遠足はないだろ……」
「そうだね、えーと……サークル合宿!」
「いいね…合宿…」
トーコの宣言を聞いてゆきは挙手をして遠足だと言う。くるみに指摘されてサークル合宿と言い直すと、それを聞いてヒカはくすっと笑いながら賛成する。
「今までは…外に出なかったんですか?」
「だいたいは学内でまかなえたんだよねー」
「ぶっちゃけ怖かったんだよねぇ。大学いる間はさ、ほら……もうすぐ救助が来るかもって思えたけど……外に出て誰もいなかったらって思って」
話を聞いていると、りーさんの膝の上に座っているるーちゃんがりーさんの服の袖をぎゅっと握りしめる。
「大丈夫よ」
りーさんはそれに気づくと、るーちゃんの頭を優しく撫でる。それを見ていたトーコはしばらく黙り込むが咳払いをして話を戻す。
「救助隊はいなかったけど君たちがいた。ほかにも生存者はいるよ」
「……そうですよね」
トーコの言葉を聞いた美紀は先日、理学棟でのことを思い出す。
『動かないで、話があるの』
「誰ですか、そこにいるんですか」
『入っちゃだめ』
「え?」
理学棟の扉の隣にあるインターホンのようなものから女性の声が聞こえる。美紀は息を飲み扉に手をかけようとするが止められた。
『ここのことは誰にも知られたくないの』
「…あの、じゃあなんで私に声をかけたんですか?」
美紀の問いかけに黙り込む女性。
「……なんでかしらね。あの日から私はここでかれらを研究してるわ」
『かれらがそこにいるんですか?』
「サンプルがないと研究できないでしょう?あなたは外から来たのよね?」
『はい』
小型のマイクで画面に映る美紀に問いかけると女性は傍にあったタバコを手に取り、ライターで火をつけて口に咥えふーっと煙をだす。
「ここの生存者は安全管理に厳しいわ。かれらを保管してることが知れたらただじゃ済まない」
『……それは武闘派だけです。それ以外の人達は大丈夫と思います』
「そうなの。でも私のことは秘密にしてほしいわ」
女性はもう一度煙をふーっと吐きながら美紀に自分のことは秘密にしてほしいと頼む。
『…わかりました。それであの……研究して何かわかりましたか?』
「いくつかあるわ。でも、本当に知りたい?」
「みーくんだいじょうぶ?」
「だ、大丈夫です」
ゆきは心配そうに美紀を見つめながら問いかける。美紀はそれを聞いて我に返り、慌てて大丈夫だと答える。
そんな会話をしている間にトーコはホワイトボードにあるものを書いていた。それはトーコお手製のサークル合宿計画である。
「はいっまずはランダルの本社を目指す。そのために準備してあと情報を集める。何か質問はあるかい?はい、くるみ君」
「遠征には何人で行くの?全員でいくなら車がもう一台いるけど」
「んー」
「サークル合宿だから全員じゃないかな!」
くるみは遠征にいく人数をトーコに問いかける。学園生活部が持ってきたキャンピングカーでは、ここにいる全員は乗れない。
どうするかを考えていると、ゆきは全員で行くべきだと言う。
「学校行事じゃないから強制じゃないですね」
「えー」
「全員はやめたほうがいいっしょ」
美紀の意見にふまんそうにしているゆき。美紀に賛成するようにアキは全員はやめた方がいいと言う。
「ここも…維持しないと」
「んじゃ二手に分かれるか…」
誰が残るかを考えているサークルメンバー。そんな中りーさんはるーちゃんをみたあと挙手をする。
「じゃあ私は残ります」
「え!?な、なんで、りーさん?」
「危なくなるかもしれないでしょ。この子は連れていけないわ」
りーさんはるーちゃんの頭にポンっと手を乗せて、どうして残るのかをゆきに伝える。
そんなりーさんをみて不思議そうにしていたり、険しい顔をするサークルメンバーの五人。
話し合いを終えたあと、りーさんはグラウンドにて走っていた。グラウンドに書かれている線通りに走るりーさんをベンチ近くで応援するゆき。
「がんばって、あと一周!」
「はぁ……はぁ……」
タオルを振り回しながら応援するゆきの声を聞いて最後の一周を走るりーさん。
ゴール付近にはタオルを持ったゆき。
りーさんはゴールと同時にゆきが持っていたタオルに顔を埋める。
「はいっゴール!りーさんすごいよ、記録更新だよ!」
ゆきは笑顔で水の入ったペットボトルをりーさんに渡す。りーさんはそんなゆきをみて笑顔でペットボトルを受け取る。
シャワーを浴び終え、りーさんは更衣室にて着替える。すると美紀がやってきた。
「美紀さんありがとう。いい子にしてた?」
りーさんの問いかけを聞いて美紀は抱えていたるーちゃんをりーさんに渡す。るーちゃんは疲れたのかすやすやと寝ていた。
「私は合宿に行こうと思います。大学の人たちはかれらと戦った経験がほとんどなくて不安ですから」
「そうね」
「先輩は本当に残るんですか」
「合宿は大切だと思うけど、この子は連れていけないわ」
二人は部屋に戻るため歩きながら合宿をどうするかを話していた。合宿に行くという美紀とは違いりーさんはるーちゃんを連れて行けないと言う理由で大学に残るという。
「そうですよね」
美紀はりーさんの背中をみて何かを言おうとするが何も言えずにそのまま各自の部屋に戻って行った。
「そっか、うん。そうだよね」
「私……学園生活部がばらばらになるって信じられなくて……」
その日の夜、今朝あったことをしおりに相談するために二人は屋上に来ていた。
「そういうものだよ」
「何がですか?」
するとしおりは美紀の背後に周り両腕を美紀の肩からまわし抱きしめるような形になる。
「出会いがあれば別れもあるんだよ」
「先輩までそんなこと言うんですかっ」
「別にすぐじゃないよ。準備してる間にりーさんも落ち着くよ」
しおりの言葉に不満そうに言う美紀。そんな美紀の頭を右手で撫でながら付け足すように言うしおり。
「そうだといいんですけど……ずっとここで暮らしてもいいかもしれませんね。みんなでずっと」
「そうだね」
「外の世界なんて……」
『外の世界は…………もうない。国が生き残っていれば、救助は遅れても放送くらいはするはずだ。でもラジオから衛星携帯まで色々試したけど大規模な放送はどこもやってない。日本全土と周辺国……たぶん世界の全域で国家に準ずる組織は既に消滅したと考えたほうがいい』
理学棟の女性に言われた言葉を思い出すと、美紀は上をみて見上げるようにしおりを見つめる。
[国家に準ずる組織]もし、しおりの父親が関わっていたら、もしかしたらしおりの父親はもう…と、考えてしまう。伝えたい気もするが理学棟の女性から秘密だと言われ言えないし、もし言えたとしても本人に伝えてもいいのかと考えてしまう美紀。
「どうしたの?」
美紀が見つめていることに気づき問いかけるしおり。
「いえ…しおり先輩はこうやって見ていても綺麗だなと…」
「?」
ふとした美紀の答えの意味をよく分かっていないしおり。結局意味は分からずそのまま解散し、部屋に戻り同じ部屋にいるくるみに相談してみたのは別の話。
武闘派がつかうスペースにて、夜の廊下をそっと歩くシノウ。辺りを見回しながら高上の部屋へ向かう。
「れん君起きてる……?」
ノックをして中へ入ると、既に寝ている高上がいた。シノウは高上が被っている布団にてを乗せて、
「おやすみなさい…」
と呟き部屋を後にする。
「外の世界かぁ……」
シノウは夜空に浮かぶ満月を見つめ、腹部を左手で撫でながら呟く。
その頃高上は先程までとは違い辛そうな呼吸をしていた。