武闘派に捕まり、ある一室にて座り込むゆき、りーさん、美紀の三人。
扉には鍵がかかっており脱出口はどこにもない。
るーちゃんのことがあり表情はか伺えないが、落ち込んでいるりーさんと普段とは違い笑顔を見せないゆき。
そんな二人になんと声をかければいいのか分からずきまづい状況になる。
「…行かなきゃ。あの子が泣いてるの」
りーさんはその場から立ち上がりるーちゃんが泣いていると言う。そんなりーさんに何かを言おうとする美紀だが、先日と同様で、言葉に詰まってしまう。
無理にでも扉を開けようと試みるりーさん、美紀の隣に座るゆきはなにかをぶつぶつ呟いている。
耳をすませば小さく「めぐねぇ」と言っていた。
そんなゆきの姿をみて息を飲む。
「待ってください」
「なあに美紀さん」
美紀は扉を開けようとするりーさんの腕を掴む。
りーさんは美紀の方を向くが、その表情はとても疲れ切っていた。
「こ……ここを出ましょう。るーちゃんを探しましょう、でも…みんな一緒です。ひとりでいかないでください」
「……そうね。私が…しっかりしないと…」
すると外側から『ガチャン』と何かが開く音がした。そして、ゆき達のいる部屋の扉が開く。
そこにいたのは、武闘派の一人であるシノウだった。
「奥へ戻って、早く」
シノウはアイスピックを突きつけて、りーさんと美紀に戻るよう言う。二人が戻ったのを確認して扉を閉め、ゆき達に近づく。
「……静かにね……あなたたちのうち、誰が高上を殺したの?」
アイスピックを突きつけながら、三人に静かにするよう言う。高上を殺したのは誰なのかと問いかける。
三人はシノウの問いかけに驚く中、シノウの表情は険しかった。
「あの……その前に、あなたはだれなんですか?」
「シノウ。右原篠生よ」
「高上は、あなたたちが来た時にボウガンで撃った人」
自己紹介をした後、シノウは高上が誰のことなのかを三人に話す。あの時のことを思い出したりーさんはその言葉の後からの表情が険しくなった。
「あの、殺されたってどういうことですか?」
「変わったのよ。かれらに……」
美紀の問いかけにシノウは高上が噛まれたわけでもないのに『奴ら』になった時のことを話す。
「外で噛まれたんじゃ…」
「外には出てなかった…あなたたちが来て事件が起きた。答えて、あなたたちが高上を殺したの?」
シノウはもう一度三人に問いかけた。
「いいえ」「殺してません」
りーさんと美紀はハッキリと答えて、ゆきは思いっきり首を横に振る。三人の答えを聞いたシノウはすっとアイスピックをしまう。
「やっぱりそうだよね。来た時撃ってごめんね」
シノウは高上に狙われたりーさんに頭を下げて謝罪する。シノウの行動に驚きを隠せないでいる三人。
「鍵は開けておくから、しばらくしたら逃げて」
「待って!るーちゃんはどこ!?」
「それ、誰?」
「私の妹です」
部屋から出ようとするシノウを止めるようにりーさんはるーちゃんの居場所を問いかける。
シノウは誰のことを言っているのか分からず、妹と言われても分からないでいた。
そんなシノウをみて美紀はシノウの近くに寄り、耳打ちをして事情を説明する。
「わかった。探しておくわ」
りーさんにとってあのグーマちゃんのぬいぐるみが妹と言っていることに驚くシノウだが、上手く話を合わせるように言って部屋から出ていく。
「いい人…だったのかしら」
「いろんな人がいるんですね」
「…逃げるの?」
「ええ、るーちゃんを探しに行かないと」
シノウについてりーさんと美紀が話していると、ゆきは逃げるのかと問いかける。
「でも、しおりちゃんとくるみちゃんは?トーコ先輩たちは?」
「!…そっか、捕まってるはずね」
「たぶんここには捕まってないと思います」
「そうなの?」
ゆきの言葉に思い出したようにりーさんは言う。
しかし美紀は、川沿いでのことや、先程アキと話している時に走り出すしおりや戻ってこないしおりを探すくるみを思い出して捕まっていないという推測を呟く。
すると、窓からひとつの手が見える。その手はガタガタと窓を揺らしている。
「ゆき先輩!こっち!」
「ひぃぃっ」
指先などに血がついているため、『奴ら』かもしれないと思い、一番窓の近くにいたゆきを扉側まで避難させる。
「おーい。鍵開けてくれー」
「だ、誰?」
「この声は…」
すると、手は窓をノックし始めて声を出す。
聞き覚えのない声に誰なのか分からず疑問を浮かべるりーさん。しかし美紀には聞き覚えがあり、窓を開ける。
「リセさん!?」
「はーつかれたつかれた」
窓にいたのは、左肩から血が出ているリセだった。
あの時窓ガラスを割った時、ガラスの破片が刺さってしまったようだ。りーさんにハンカチで止血してもらい一息つくリセ。
「大丈夫ですか…?こんなに血が…」
「美紀くん…心配してくれてるのかい…?」
「…大丈夫そうですね」
血が出ていることに心配する美紀をみてリセは自分を心配してくれているということに表情が明るくなる。
そんなリセをみて大丈夫そうだと呆れて言う。
「捕まったのはリセさんだけですか?」
「ほかの部屋でトーコたちも捕まっていたよ。千鶴と六花はまだ捕まってないみたい。君たちはできるだけ遠くへ逃げたほうがいい」
「先輩たちは?」
「ううん…私たちは……」
「ボクたちは残ろう」
「え?なんで?逃げようよ?」
リセがトーコ、アキ、ヒカが捕まっている部屋へ行った時、トーコは逃げないと言った。
アキは逃げないと言ったトーコに逃げようと言う。
「ボクたちは時間に甘えすぎていた。もっと前からちゃんと話し合うべきだったんだよ。あの子たちを見てやっとわかった」
「私たちはトーコに付き合うよ。話し合いは文明の基本だからね」
リセは、トーコが武闘派達と話し合うと言ったことに賛同したサークルメンバーは逃げずにトーコと一緒に話し合うと言った。
「危ないよ……」
「大丈夫だよ。本当に危ないことを考えてるならわざわざ閉じ込めたりはしないさ」
「う?うん……」
危ないと言うゆきに大丈夫だと微笑みながら答えるリセだが、あんまり理解出来ていなかいが納得するゆき。
「さ、君たちは急いで行ったほうがいい」
「はい。行きましょう」
「でも…どこへ?」
「まずは車です。あの時くるみ先輩としおり先輩は部屋にいませんでした。もし異変に気づいたのならまず車を確保すると思います。車があればいつでも逃げられますから」
三人はキャンピングカーに向かうべく武闘派にバレないようにそっと移動していく。
「私たちを助けに来てるってことはないかしら?」
「だったら途中で合流してると思います」
キャンピングカーの前までたどり着いた三人は、誰もいないことを確認する。ゆきは運転席を窓から覗くが、だれもいなかった。
「……運転席にはいないよ?」
「こっちにもいないみたいです」
「くるみちゃんとしおりちゃんが…いない……どうしよう」
キャンピングカーにはくるみとしおりがどこにもいないと知り、涙が出てくるゆき。
「書き置きがないか探しましょう」
「ら、らじゃっ」
荷物を置いてキャンピングカーの中を捜索する三人。
ゆきはしおりの使っていたベッドにしわがついていることに気づく。
(しおりちゃん……こっちで寝てたのかな)
掛け布団をめくると、そこにあったのは二つの手錠だった。それをみて怯え後ずさるゆき。
(しおりちゃん捕まって…………逃げた?)
「……これしおりちゃんの?違うよ、そんなのってないよ!しおりちゃん毎晩……こんな……」
しばらくして落ち着いたゆきは外で待つ二人と合流した。
「どうだった?」
「ううん何もなかった」
書き置きなどはあったかとりーさんに問いかけられるゆき。手錠のことは言わず、何もなかったと首を横に振る。
すると美紀は、ある部分だけ地面がくぼんでいることに気づく。
「地面がくぼんでる…これ前からあったでしょうか?」
「…なかったと思うわ」
「…これからのことを決めましょう」
前にはなかったくぼみをみてさらにしおりとくるみの行方が不安になるゆき。
すると美紀はこれからのことを決めようと言う。
「これから?」
「校舎に戻ってみんなを探すか」
「戻るの怖いな」
「このままここから出る手もあります」
校舎に戻るのは怖いといわれ、このままキャンピングカーを使って大学を出るという案を出す。
「ここを……出る?」
「くるみちゃんもしおりちゃんもるーちゃんも置いて?そんなのやだよ!」
「じゃあ……校舎に戻りますか?」
「……決めないといけないんです。私たちで」
見つからない三人を残して出たくないとゆきは言うが、校舎に戻るかと問いかけられるとなにも言い返せない。
「ねぇゆきちゃん。私たち大学生よね」
「うん。やっと入学したんだもん」
「大学生になったら自分のことは自分で決めないとね」
「自分のことは自分で?」
「そうよ」
りーさんにそう言われ、めぐねぇに相談しようとしているのか、横をむく。そしてなにかを決めたのか頷く。
「うんわかった」
「ゆき先輩はどうしたいですか?」
「わたし、くるみちゃんとしおりちゃんを探したい」
今度はハッキリと自分の考えを言ったゆき。
ゆきの言葉に納得して頷くりーさんと美紀。
武闘派校舎。
タカヒトは自分の部屋の壁に寄りかかり座る。しかしその表情は疲れ切っていた。
すると扉をノックしてアヤカが入ってくる。
「……まだ起きてる。眠れないんでしょ」
タカヒトに近づき肌に触れようとするが、アヤカの手を退かすタカヒト。
「考えたいことがあるんだ。すまない」
「一緒に考えちゃダメなの?」
「ひとりで考えさせてくれ」
「そう」
タカヒトの考え事を一緒に考えるとアヤカは言うが一人にしてくれと断る。
アヤカは素直に部屋から出ていく。
アヤカが出ていった後にタカヒトは頭を抑えながら表情を暗くする。