別の部屋にて拘束されているサークルメンバー四人。
その部屋には武器を持った武闘派メンバー三人もいた。しばらく沈黙が続く中、アヤカが問いかける。
「どうして一緒に逃げなかったの?」
「何が?」
「新入りを逃がしたのに自分たちはまた捕まりにくるなんて、一緒に逃げなかったのはなぜ?」
アヤカの問いかけに黙り込むサークルメンバー。理由を言ったのは代表であるトーコだった。
「話し合うため…だよ。一緒の学校にいるんだからもっと話し合うべきだったんだよ、ボクらは」
「容疑者を逃がして話し合いの余地があると思うの?」
「容疑者?」
「高上が……発症した、外には出てない…タカシゲも帰ってこない、おまえたちの仕業だ」
アヤカの言う[容疑者]がどういう意味なのか分からず疑問を浮かべていると、タカヒトは高上が発症した事と、別行動してから帰ってこないタカシゲのことを伝えたあと、サークルメンバー達が犯したことだと言う。
「はぁ!?何それ」
「アキ。城下君のことは聞いてない、でも高上君が接触したのはうちの新入りたちだけだ。だから新入りに原因があると、そう思ったわけだね?」
タカヒトの言うことに反論しようとするアキを止めた後、トーコはタカヒトの言ったことを改めて確認するように言う。
「そういうことだな」
「高上君は何て言ってたの?怪我とかしたのかな?」
トーコの問いかけに黙り込むタカヒト。
シノウがなにかを言いかけたがそれに割り込むようにアヤカが答える。
「いえ、そうは言ってなかったわ。近づいて威嚇射撃した程度よ」
「ボクらもそう聞いている。だとすると接触なしで発症するのは難しくない?」
「難しいかもね」
トーコは改めて講義するように発症は難しいと言う。アヤカはそれに納得するような答えを言うが睨みつけるような目をしている。
「であっても、高上が発症した事実は変わらん…っ!」
「ちょっ…言いがかりじゃん!」
「ボクらはそんなことはできない。だけど新入りならできるかもしれないって考えるのは理解できるよ」
先程からタカヒトの言うことに反論するアキとは違い冷静に武闘派メンバーの意見に納得しながら話し合いをしようとするトーコ。
「あらずいぶん物わかりがいいのね。ならどうするつもりなの?」
「だから話し合うんだろ?知らない相手がそばにいれば不安になるし疑いたくもなるだろ、話し合うしかないんだ」
「口が回るな。夜逃げの準備を整えていたくせに」
「夜逃げ?」
アヤカの言う夜逃げがどういうことか分からず疑問を浮かべるアキ。
「車に食料運び込んでたでしょ」
「あれは夜逃げじゃなくて探検だよ、半分くらいはこっちに残る。そいう話を……もっと時間をかけてするべきだったんだよボクらは……」
「ひとまず筋は通ってるわね」
夜逃げではなく遠征に行くことや、全員ではなく何人か残ることを伝えると、一理あるとここまできてやっと納得するアヤカ。
しかしタカヒトだけはまだ疑っていた。
「くだらん、全部詭弁ばかりだ。貴様らがやったに決まっている!」
タカヒトは持っていた釘バットを床に叩きつけ、トーコの胸ぐらを掴む。
いままで無表情だったヒカでさえも驚くくらいの声で叫ぶ。
先程から様子がおかしいタカヒトを隣で見ていたアヤカはトーコの胸ぐらを掴むタカヒトをみて疑問を浮かべていた。
「私はくるみ先輩としおり先輩、るーちゃんを探してきます。ゆき先輩は…りーさんをお願いします」
「うん。絶対見つけてきてね」
「すぐ戻りますから」
美紀はリュックを背負い、三人を探しに行くとゆきに伝える。
表情が暗いりーさんをゆきに任せ、懐中電灯片手に走り出した。
「りーさん…中入ろ」
ゆきはりーさんの手を取り、キャンピングカーの中に入る。
りーさんを席に座らせ、ゆきはその向かい側の席に腰を下ろす。
「大丈夫。るーちゃんもうすぐ見つかるよ」
近くにあった毛布をりーさんの膝に掛けてあげ、りーさんを安心させるように言う。
「わたしね、ずっと思ってたんだ。自分なんかがここにいていいのかって。わたしよりすごい人とか頑張ってる人とかもいたのに、どうしてわたしなのかなって思うよね。でもねみんなが、めぐねぇもくるみちゃんもしおりちゃんもみーくんもりーさんも、みんなのおかげでわたしはここにいるんだよね。それだけじゃなくて、平和な頃だってお父さんとかお母さんとかお医者さんとかいっぱいいっぱい色んな人に助けてもらってたから、もうちょっとだけ頑張ろうって思うんだ。だからりーさんも、ね」
ゆきはりーさんの膝に手を乗せるが、りーさんは寝息を立てて寝ていた。その姿をみて安心するゆき。
ふと窓の外を見ると、塀を飛び越えて大学内に入ってくる人影。その人影をよく見るとしおりなのがわかった。
追いかけたいがりーさんを置いていく訳には行かず悩んだ末に、
「…すぐに戻るからね」
そうりーさんに伝え、リュックを背負いキャンピングカーから出ていく。ドアが閉まる音が聞こえ、りーさんが目を覚ます。
三人を探している美紀は、先日訪れた理学棟へとたどり着く。
息を飲み、インターホンを押す。
「……あの、青襲さんいますか?」
『…君か、久しぶりね。どうしたの?』
美紀の問いかけにすぐに答える理学棟の女性[青襲]
「私の…友人がこっちに来てませんか?たぶん同じ制服を着た」
『残念だけど誰も来ていないわ。君が来るように言ったのかな?』
「いえ…もしかしたらって思って…すいません」
「別にすまなくはないけど何かあったの?」
『はい…実は……』
コーヒーの入ったマグカップ片手に、画面に映る美紀に問いかける青襲。
美紀はここまでの経緯を青襲に話す。
「_____なるほどね。予想された事態ではあるかな」
『え?』
美紀からここまでの経緯を聞いて、予想された事態だと答える。それを聞いて驚いた反応をみせる美紀に″あること″を伝える。
それを聞いた美紀は目を見開いた。
その頃、サークルメンバーと武闘派メンバーが揃う部屋では口論が始まっていた。
「おまえたちが毒を盛ったんだろう!」
「ちょっとやめてよ!」
「タカヒト?」
未だにトーコの胸ぐらをつかみながら叫び続けるタカヒト。それをやめるようタカヒトに言うアキ。
先程から様子がおかしいタカヒトに問いかけるアヤカ。
「水に入れたとか、そんなところだろう」
「そんなことしたらアタシたちも感染するじゃん!」
「だから!解毒剤を出せ!!」
アヤカの問いかけに答えもせず解毒剤を要求するタカヒト。
「ちょっとタカヒト、落ち着いたら?」
「触るな!!!」
落ち着くようタカヒトの肩に手をおこうとするアヤカの手をはたく。
そのときアヤカの目に映ったのは、汗を流しながら辛そうな呼吸をするタカヒト。
それをみて驚くシノウ。タカヒトからできる限り離れるサークルメンバー。
「解毒剤…タカヒト…あなた…」
「……黙れ!俺は!」
「あなたの決めたルールでしょ?」
アヤカの言葉の後に、アイスピックを構えながらじりじりとタカヒトとの距離を詰めていくシノウ。
タカヒトは釘バットを構えるが、全身の震えが止まらず部屋からでていってしまう。
廊下を走り抜けるタカヒトを険しい表情で見つめるシノウ。
美紀は理学棟で″あること″を聞いたあと、みんなにも伝えるために懐中電灯片手に走っていた。
(早く戻らないと。でもこんなこと…何て言えば…)
そんなことを考えながら走っていると、前に人影が見える。人影の正体は、シノウから逃げてきたタカヒトだった。
「…どこへ行く」
先ほどよりも状態が悪化しているような状態で、美紀に近づくタカヒト。
そんなタカヒトの姿をみて驚く美紀にもう一度言う。
「どこへ行く」