-どこ……ここ、そっか戻ってきたんだっけ……戻っちゃ…ダメなのに-
-ずっと一緒だよ-
-頑張って、しおりさん-
-ずっとここで暮らしてもいいかもしれませんね-
-いろんなやつがいるさ、大学だからね-
-一緒にいるとダメになるって思ったわけ-
-そう……だよね……もう……ダメだよね……-
-約束だからな-
-ごめんね……約束…また破っちゃうね…-
大学内を走る美紀。
タカヒトから逃げるために一度ゆきとりーさんが待つキャンピングカーを目指していた。
-息が詰まる、胸が苦しい、空気感染、突然変異、知りたくなんてなかった。怖い怖い怖い、一人じゃ無理だ……一人じゃ……-
胸元を抑えながらキャンピングカーのドアを開けようとする美紀だが、その手前で中から音がしないことに気づいた。
ドアに耳を済ましても何も聞こえなかった。
「ゆき先輩?」
ドアを開けているであろうゆきの名前を呼ぶ。
しかし返事はなく、中は暗かった。懐中電灯を付けて車内を見回すが、奥の席にも運転席にも誰もいなかった。
「なんで……」
美紀は顔を青ざめながら席にふらっと腰を下ろす。
すると外から物音が聞こえ反応する。近くにあった箒を手に取り中に入ってきた人物に振るおうとする。
しかし近くで見てみれば、その人物が誰なのかがわかった。
「ア…アキ先輩!?」
それは、武闘派に捕まっていたはずのサークルメンバーの一人であるアキだった。
「あ、あのっ武闘派の人かと思って……」
「遅くに出歩いてると危ないよ」
慌てて言い訳をする美紀をみてアキはくすっと笑い、美紀の頭にポンっと手をのせる。
「……すみません」
「門が開いちゃってさ、急にやつらが入ってきて…」
「そんな……」
二人は席にすわりアキはここまでの経緯を美紀に話す。門が開いたことを知らない美紀は唖然としていた。
「ほかのみんなは?」
「……わかりません」
ほかの学園生活部のメンバーはどこにいるのかと問いかけるアキ。しかし美紀は分からないと、顔を伏せながら答えた。
「外?中?」
「えっと……りーさんはたぶん校内だと思います。くるみ先輩としおり先輩は…校外かもしれません。ゆき先輩はわかりません」
「じゃ、ひとまず校舎に戻ろうか。外にいるにしても屋上から探したほうがいいっしょ」
「はい……」
美紀からほかのメンバーのいるであろう場所をアキに伝えた。一度校舎に戻ろうと提案するアキ。
それに賛成する美紀だが、その表情は暗かった。
「うわっもう近くまで来てるよ、戻れるかな」
「大丈夫だと思います。ケミカルライトと防犯ブザーの予備がまだあったはずです」
窓から外の様子をみてやつらが近くまで来ていることを確認するアキ。戻れるかと不安になるアキに大丈夫だと答え、リュックの中から使えそうなものを出す。
そんな美紀の肩にアキはてをのせる。
「アンタがいてよかったよ」
「はい……」
アキの言葉を聞いて嬉しそうな表情を浮かべ、アキの手に自分の手を合わせた。
(サイレン…やんだか…)
しおりを探して走り回るくるみ。しかし急なサイレンの音に驚き足を止め耳を塞いでいた。
サイレンが止まったことを確認して先を進む。
しかしくるみの目にとまるものを見つけた。それは自分の右腕につけているものと同じブレスレットだった。
それをみてしおりのものだとすぐにわかった。
「……あいつ」
美紀が部屋にきてしおりがいないかと来た時はここには居ないといい他を探すよう軽くいった。
しかしそれからしばらくして美紀は戻ってきた。しおりが校舎のどこにもいないと言われたときは驚いた。
こんな夜遅くに外に行くなんて考えたこともなかったため驚きを隠せなかったくるみ。
美紀と手分けして探していたが校舎のどこにもしおりの姿はなく大学の外回りまでも探したが見つからなかった。
もう一度大学内にもどり今に至る。
大学内に戻ってみれば中にやつらが入ってきていた。
外を探していたくるみは一度は驚くが、しばし考えれば原因はだいたいわかった。
どこかのバリケードが壊されたと予想したくるみだった。
辺りからやつらの呻き声が聞こえ木の影に隠れる。
(できる限り戦闘は避けよう…中にどれくらい入ってきてるのか分からないしな…)
くるみはシャベルを構えながら周りのやつらが離れるのを待つ。
(そういや、一人でいるのも久しぶりだな。ずっとしおりといたからかな…なんか足りない気もする…)
《しょげてても仕方ないよ、そんなのくるみらしくない!》
ふと後ろから声がした。
知ってる声だったが振り向いても意味はないと思っていた。その声の正体は、もうこの世にいないはずの友人…愛菜だからだった。
しかし久しぶりに聞く彼女の声に安心感を感じた。
《いやーでも二人ともしばらくしないうちに変わったね。しおりは明るくなったし、くるみは余計に過保護になったね♪》
(うるせーなー…悪いけど今はおまえとゆっくり話してもいられねぇんだよ)
《知ってる。しおりを探してるんでしょ?だったら早く見つけなくちゃだね。しおりは私にとってお月様なんだから、頼んだよ?》
すると両肩に手を乗せられたような感じがしたくるみは少し驚くがすぐに肩の力を抜いた。
《私はもうしおりと話したりできないからさ、私の分までちゃんと守ってよね?》
(わーってるよ…任せとけ)
《よし!じゃあさっさっと行ってこーい!》
「うわっ!?」
その声と共に背中を思いっきり叩かれた気がして倒れそうになるくるみ。急だったからか思わず声を出してしまったくるみは慌てて口元を抑える。
周りを見回して気づかれてないかを確認する。
こちらに近づいてくるようすもなく一安心するくるみ。
(ありがとな…愛菜…)
自分を勇気づけてくれた愛菜に向けてお礼を言い気づかれないように先へと進んでいく。
しかし進んだ先にはやつらが徘徊していた。
やつらを倒しながら進むのも考えたが、今はやつらに構っているほどの時間はないと思うくるみだが、先へはどう進もうかと考える。
ふと塀の方を向くと、外へ行き来するためのハシゴを見つける。これを使って安全な塀の上から探そうと考えたくるみはハシゴを使って塀の上に登る。
塀の上をしばらく歩くと見覚えのある人影を見つけた。
それはずっと探していたしおりだった。
くるみは見つけた喜びとこのまま離れてしまうんじゃないかという焦りが頭をよぎる。落ち着く暇もなくくるみはしおりを呼びかけるように叫ぶ。
「しおり!待てよしおり、そこにいるんだよなしおり!」
くるみが叫ぶたびにやつらは動きを1度止めくるみの方を向き始める。そんなのお構い無しに呼びかけ続けるくるみ。
くるみの声に反応するかのように動きを止めるが振り向きはしない。
「大丈夫だ、どんなことがあってもずっと一緒だって……約束しただろ…しおり!」
さらにしおりの近くに行こうと塀の上を走る。
くるみはしおりに向けて手を伸ばす。しかし足元を注意していなかったくるみは足を滑らし塀から落ちてしまう。
くるみが落ちてきたことにより先程からそちらを見ていたやつらが一斉にくるみに襲いかかる。
それに気づいたしおりは朦朧としていた意識が戻り先程から聞こえていたくるみの声に気づいていたがいまの自分は戻っては行けないと思っていた。
しかし大好きな親友の危機は見過ごせず足が動いてしまった。
やつらよりも早くくるみの方へ駆けつけ庇うように覆い被さる。
「…バカっ」
初めて言われた言葉に少し驚くくるみ。
すると何事もなかったかのようにその場から離れる。
二人は手を握りながら地べたに横になる。
久しぶりに握った手、久しぶりに見た顔、しかし二人は喜ぶことは無かった。
「くるみはバカだよ…こんなんじゃ……安心していけないじゃん」
「…どこいくんだよ」
「もう……意識があんまりないの。今だっていつまで保てかわからないし、だからこれでいいの……ごめんね……」
しおりはいまの自分の状況を伝え約束を守れないことを謝罪する。
「ごめんじゃねえよ!!それってつまり……自分が足手まといとか、いないほうがいいとか……そういうことだろ……そんなの…っ許すかよ」
「でも……」
「でもじゃねぇ!しおりのいない世界なんていやなんだよ!」
しおりの謝罪を聞いたくるみは起き上がり今しおりの言ったことを許さないと言う。
普段だったらここまで言わないくるみに驚くしおりだがくるみの言うわがままに反論する。
「聞き分けないこと言わないで……私だって…私だって好きでにげたいんじゃないもん!!今日は大丈夫だから明日も大丈夫だって思って、でもいつかはダメになるの。だから……ここから出ようとして……だけど出ていけなくてどうすればいいの!それにもうわたしは……」
「じゃ、逃げなきゃいいだろ!」
「無理だよ!」
「無理じゃねえ!」
「わかってないでしょ!!」
口論はエスカレートしていき普段とは違い怒鳴りつけるしおり。そんなしおりに驚きもせずくるみも叫ぶ。
「わかってる!ずっと同じ日は続かない、いつか別れだってある…けどな、知らないうちにいなくなって生きてるかどうかもわからないなんてそんなのずるい。ゆきもみきもりーさんもみんな心配してるぞ?…愛菜やめぐねぇだってな。それにいなくなったってあたしが絶対に見つけてやる!だから…だから絶対…最後まで一緒だ」
気づいた時にはくるみの目から涙が流れていた。
しおりはそれをみて何かを思い出し、泣き出す
「うっ……っごめん…泣かせたく…なかった……っ離れたくもなかった!……なのに…っ…」
目元を拭いながら話すしおりを見てくるみはしおりを抱きしめる。
「あたしだって…おまえが戻ってこなくて不安になった…もう帰ってこないんじゃないかって思った……もう絶対離さない…絶対守り切る…」
「くるみ……怒鳴ったりしてごめんね」
「あたしだって怒ったりして悪かったな……さ、やつらがいないうちにみんなの所に戻ろうぜ。あたしも何も言わずに出てったきりだからな」
くるみはしおりの手を握り立ち上がらせる。
「一緒に謝ろうな」と頭を掻きながら言う。そんな姿をみて自然と笑顔が戻る。
「どうやら解決したようだね?」
「千鶴…」
するとひょこっと現れた千鶴。
ニヤニヤと笑う千鶴を見て一体いつから見ていたのかと思う二人。
「んじゃま早速謝る子がいるんじゃない?」
千鶴の言葉の後に後ろから現れたのは六花と手を繋いでいるゆきだった。
するとゆきは六花の手を離し、しおりの方へと走り出す。
そしてしおりに抱きついた。
「しおりちゃん……っもう一人でどこかに行かない?」
「……うん、行かないよ」
「約束だよ!絶対だからね?」
しおりはゆきにも一人でどこかに行かないことを約束した。その言葉を聞いたゆきはいつも通りの笑顔で言った。
「くるみちゃんも、もうしおりちゃんと喧嘩しない?泣かせたりしない?くるみちゃんが……いふぁいよふるみちゃん~」
「なんであたしだけそんなに言われるんだよ!」
ゆきはくるみのダメなところをズカズカと言っているとくるみはゆきの両頬を引っ張る。
「さぁ合流したところで、みんなの所に戻りましょう」
『はーい!』
六花の的確な指示を聞いて、校舎のほうへと歩き出す一同。
「あーそうだ、しおりこれ落としただろ?」
「あっ…ごめん…」
くるみは懐から先程拾ったブレスレットを見せ、しおりの左腕にはめる。
はめた後三人のあとを追いかけるように歩きだそうとするが後ろから制服のシャツを引っ張られる。
何か言いたそうな顔をするが、発することはなかった。
ならこっちから当ててやろうと思い、その場でしゃがむ。
「ほら、疲れてんだろ?」
「当たり…でももう大学生だよ、さすがに…」
「陸上部なめんな…よっと…」
しおりは無理だと思いながらもくるみの背中に体重をかける。くるみは体重をかけたことを確認して、立ち上がりしおりをおんぶする。
「…おまえちゃんと食ってるか?」
「食べてるよ………」
「にしては軽すぎ………寝たのか?」
しおりの体重が思ったより軽かったことに笑っていると、後ろから寝息が聞こえた。
くるみは起こさないように歩く。
そんな中くるみは昔の自分たちを思い出す。
しおりが疲れたときや転んで怪我したときはいつもおぶって家まで帰っていた。
昔に戻ったように感じて笑みをこぼすくるみ。
出会ってから約十年近く、初めての喧嘩を通してしおりが隠していたことや抱えていたことがわかったきがしたくるみ。
中学の頃、千鶴にあることを問いかけた。
″いつも喧嘩してるのになんでそんなに一緒にいられるのか″
すると千鶴は笑って答えた。
″喧嘩した後って相手の新しい一面を見れるし、喧嘩すればさらに仲良くなれる″
今思えばどういう事なのかがよく分かる。
今日の喧嘩をきっかけにまたさらに仲良くなれる…そう思うと悪いことだけじゃないのかもしれないと、そう感じた。
遅くなってしまいすみません(;_;)
もう少し早く出せるように頑張りますd(˙꒳˙* )