「……今度こそは……逃がさん。解毒剤を……よこせ……」
タカヒトはボウガンを美紀に向け、息を切らしながらも解毒剤をわたすように言う。
「アンタ……っまだそんなこと…」
「さっさと上がれ、上がらなければ撃つ」
アキはタカヒトの言葉に反論するように話そうとするが、上へ上がらなければ美紀を撃つと脅される。
不満は残りながらも上へ上がり始めるアキ。
「…解毒剤はどこだ。誰が持っている」
解毒剤を誰が持っているのかと問いかけるタカヒト。
しかし美紀は、渡さないと言うかのように首を横に振る。
「…おまえも感染させてやろうか、そうすればあいつらも解毒剤を持ってくるだろう。あるいは…切り捨てるか……確かめてみるか?」
「あなたは……切り捨ててきたんですか」
「無論だ。水も食料も有限だ、生き残る者は選ばれねばならない。おまえは違うというのか」
今まで仲間たちを切り捨てて来たのかと問いかける美紀に当然だと言うようにここまで自分がやってきたことを思い出しながら答える。
「そうかもしれません。でも……生きてればそれでいいんですか?」
「……っおまえに……何がわかるっ!」
かつて友人に言われた言葉を同じようにタカヒトに言う美紀。しかしタカヒトは叫びながらボウガンを構えた。
今度は確実に撃たれると思ったのか目を瞑る美紀。
だが、撃たれることはなかった。不思議に思い目を開けると、先程までタカヒトの手にあったボウガンは地面に落ちていた。
ボウガンを持っていたタカヒトの左腕から血が流れていた。シノウが背後をとりアイスピックでさしていたのだった。
「早くこっちへ!」
「りーさん!!」
すると美紀は後ろからぐいっと引っ張られ、茂みの奥へと連れていかれる。
美紀を引っ張ったのは、先程シノウと合流したりーさんだった。
二人は茂みの奥から対立するタカヒトとシノウを見つめる。
「ごめんなさい……でも、私もう嫌です」
「いまさら何を!おまえだって散々殺してきただろう!!高上はおまえが……」
「うるさいっ」
「何が違うっ!」
するとタカヒトはシノウを感染させてやろうと思ったのか、シノウの肩に触れようとする。
しかしシノウはそれよりも早くアイスピックをタカヒトへ突きつける
「違うとか違わないとか知らない。でももう生きるって決めたから……この子のために」
シノウは腹部を手で撫でるように触った。
その姿を見ていたりーさんはシノウのお腹に新しい命があることに気づく。
すると校舎の上からカーテンで作った縄が垂れ下がり、傘を持ったアキとリセが降りてくる。
「みーくん!」
「ゆき先輩!くるみ先輩!しおり先輩!」
遠くからこちらに向かって走ってくるゆき、くるみ、しおり、そして千鶴と六花が見えた。
キャンピングカーからいなくなった後から姿が見えなかったゆき達の姿を見て笑顔を浮かべる美紀とりーさん。
そして武器を持っている面々はタカヒトの周りを囲み武器を構える
「……ちっ」
この人数だとさすがに無理だと思ったのか、舌打ちをした後に刺された左肩を抑えながらその場を後にする。
「三人とも無事だったんですね」
タカヒトが去った後に再び再会を喜ぶ学園生活部の五人。
するとやつらが近づいてきていることを確認したアキは学園生活部の五人に言う。
「中へ行きましょ」
あの場を後にしたタカヒトはお墓があるコンテナの上に上り、中にいるやつらを見下ろす。
《感染者!》 《排除!》
《ルール!絶対!》 《感染者!》
《排除!》
《ルール!》 《絶対!》
「ひっ…」
やつらから聞こえるタカヒトを排除しようとする声。
タカヒトは後ずさりはいつ配りながらその場をあとにしようとする。
「違う、俺は……俺は……最後まで……!」
するとやつらとは反対方向からタカヒトに向かってくる一本の腕。
しかし襲われることは無かった。
その手はアヤカのものであり、タカヒトの頬にそっとあてる。
「なんだ……おまえか……驚かせるな…シノウが裏切った、だが俺たちはまだ終わらん。生き残ってみせる」
「それってつらくない?」
「誰かがやらねばならないことだ。そのために俺は選ばれたのだから」
「……冗談でしょ」
やつらのほうを向きながら自分は選ばれたんだと話すタカヒト。
しかしアヤカは表情をかえることはなかった。
そして次の瞬間アヤカはタカヒトの背中を押した。
「選ばれたのは私よ」
先程までの表情とは反対に笑顔を浮かべながらアヤカは言った。
そしてライターで燃やした紙をタカヒトが落下した所に落とし、焼死体を完成させた。
数時間後、仮眠を取っていた学園生活部。
自然と目が覚め、起き上がるとゆき、そして同じ布団で寝ているくるみとしおりはまだ寝息をたてていた。
しかしりーさんがいないことに気づきどこに行ったのかと疑問を浮かべる美紀。
(りーさん?)
その頃りーさんは、窓際に座り外を眺めているシノウに声をかける。
「どうしたの?」
「さっきはありがとうございました。るーちゃんもお礼が言いたいって、ありがとうって」
「……どういたしまして」
シノウはりーさんが片手に持っているぐーまちゃんのぬいぐるみに目を向けそう言った。
「私たち……しばらくここを出ると思います」
「そうなんだ……」
「はい。あきらめなければまだできることがあるんだって、るーちゃんとシノウさんに教えてもらいました」
大学をでることをつたえた後にあの時勇気をだして窓から降りたから生きていることをるーちゃんとシノウから教わったと言った。
「うん、よかった。私は行けないけど……」
「あの…この子を……この子を…預かっていただけますか?」
りーさんはぐーまちゃんのぬいぐるみをシノウの前に差し出し、預かってもらうよう頼む。
「私が……?」
「危ない所には連れていけませんから。それに……お友達になってくれるかなって」
するとぐーまちゃんのぬいぐるみをシノウのお腹にあてる。お友達とは自分から生まれる新しい命のことを言っているんだと気づく。
「るーちゃん……」
シノウはぐーまちゃんのぬいぐるみを膝に乗せ、優しくなでる。
一方アヤカは駐車場に向かい、キーがかかったままの車に乗り込む。
そしてエンジンをかけ、校門へ向かい大学から出る。
-こんなに素晴らしい世界なのにあいつらはそれがわからない。この世界は私のために、私だけのためにあるんだ。私は……選ばれた-
しかし大学を出てすぐにエンジンが止まってしまった。
キーをもう一度掛け直したりアクセルを何度も踏むがエンジンはかからなかった。
エンジンが止まった時の音に反応したのか、近くにいたやつらが車に近づいてくる。
-私は死なない。私は……-
外から車をゆさるやつら。
すると聞こえたのは、窓ガラスが割れた音だった。