「ぬわああああん疲れたもおおおおん!」
「チカレタ・・・」
午前の授業を終えたルイズと野獣は部屋に帰るやいなやそれぞれの寝床に倒れこんだ。
ルイズはベッド、野獣は床に敷いた藁である。
「辞めたくなりますよ〜(使い魔)」
「辞めて、どうぞ(懇願)」
「ヌッ!?」
糸の切れた人形のようになってしまった二人は互いの寝床に顔面を埋めながらなんとか会話する。
さて、お次はアルヴィーズの食堂で昼食なのだが正直もう寝ていたい。
だがこれも時間が決まっているので昼食抜きで過ごしたくなければ今行くしかない。
「あぁ〜疲れたぁ〜。でもお腹すいた〜!アンタこのまま食堂までおぶって行きなさいよ!」
「えぇ・・・(困惑)」
うんこにおぶられながら食堂に赴くなどヴァリエール家始まって以来の恥である。
だがしかしルイズも本気で言った訳ではない。のそのそと起き上がると鏡の前で乱れた髪を整え始める。
「あっ」
「ん?」
もはや会話すら面倒になって一文字で意思の疎通を図る。
野獣が何か思いついたようだ。
「行きますよ〜イクイク」
そう言うと野獣は何処からか肌色の塊を取り出し、粘土のようにこね始めた。
「ヒィ!?何それ気持ち悪っ!!」
ルイズは目の前で繰り広げられるクッソ汚い工作風景をドン引きしながら眺める。
ワクワクさんならぬイクイクさん(激寒)と化した先輩がこねた肌色の何かは巨大化し、細長い足の生えた生物が誕生した。
「FOO〜↑どうっすか〜?」
「あ、あんた!学内で馬なんて・・・馬?」
クッソ汚い馬のような何か。
そう。みんな大好き走るMUR肉である。
最大限無駄を省き洗練されたフォルム。
首元で蠢く謎の手。
そして乗馬しやすいように鞍まで用意されている。
「ポッチャマ・・・」
聞いたこともないような鳴き声をあげるMUR肉。
「あんたまさかこれに乗って行けって言うんじゃないでしょうね?」
「おう、あくしろよ(ホモはせっかち)」
最近ただでさえ悪目立ちしているのにこんなトンデモ生物にまたがって颯爽と登場なんてした日には校内一、いやハルキゲニア一の変人として名を馳せてしまう。
「ごめんなさい。貴族たるものいかなる時もシャキッとしてなきゃね。自分の足で歩いて行くわ。」
「ファッ!?」
かくしてルイズは徒歩でアルヴィーズの食堂へ、野獣はMUR肉を駆り厨房へ向かった。
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ざわ・・・ざわ・・・
アルヴィーズの食堂は昼食をとりにきた生徒たちで賑わっていた。
今回は野獣を連れずに一人で来たのでゆっくりと食事を楽しむつもりのルイズであったが、
「あら、有名人のルイズさんじゃない。隣いいかしら?」
隣の席に褐色肌の怨敵が現れた。
「なによアンタいつもの取り巻きのところで食べればいいじゃない。」
普段は食事の時でさえ複数人の男子生徒に囲まれているキュルケ。今日は珍しく彼らを置いて一人でルイズのところまで来たようだ。
ふと彼女がいつも食事を取っている場所に視線を向けると、数人の男子生徒が憎々しげにこちらを睨んでいた。
「彼らにはもう飽きちゃったんだもの。恋の熱は移ろいやすいものなのよ。」
悩ましげな表情で答えるキュルケ。
「田舎少年はスケベなことしか考えないのか(偏見)」
「誰が田舎少年よ。それよりなんだか雰囲気変わった?」
野獣と関わっているうちに少しずつ言語能力が侵され始めていることにルイズ自身は気づいていない。
「何が?いつもと変わらないわよ。」
いつものルイズだ。キュルケは内心少し安堵する。
「そ、結構なことだわ。」
別に野獣のことが嫌いな訳ではないのだが、ルイズまで彼に影響されて不思議な言葉遣いで話すようになってしまったらと思うと彼女の人生の行く末を心配せざるを得ない。
「なんなのよいきなり・・・やめてくれよ・・・」
そんなこんなで料理が運ばれるのを待つ二人だったが、
「お ま た せ」
目の前にランチのプレートを運んで来た人物を見ておっp、おっぱげた・・・!
「使い魔くん!?」
「ア、アンタこんなとこで何してんのよ!?」
この事態にはルイズはおろか普段飄々としたキュルケですら驚愕で固まってしまっている。
「いや流石にぃ、タダで賄いもらうのも気が引けるんでぇ(人間の鑑)」
メイド服を着てどこからどう見ても可憐な乙女と化した先輩はホモ特有の流れるような手つきで配膳をこなしていく。
「そ、そう。殊勝な心がけじゃない(褒めて伸ばす)」
「ありがとナス!」
頰をわずかに染めてはにかんだような笑みを浮かべる先輩。
その姿は食堂に咲く一輪の糞。
誰がどう見ても年頃の乙女である。
野獣先輩女の子説Q.E.D
「あんまり迷惑かけちゃダメよ。」
「おかのした」
一通りの会話を済ませると他の生徒の所へ向かう野獣。
行く先々で男子生徒から身体を触られ、その度に「冗談はよしてくれ(タメ口)」と威厳を見せている。
そんな野獣を遠くから眺める乙女二人。
「良い人じゃない使い魔くん。こないだバカにしたこと謝らなくちゃね。」
「あんたは他人事だからそんなこと言えんのよ。」
呆れたような声で答えるルイズだが、その横顔が案外まんざらでもなさそうなのを見てキュルケも頰を緩めた。
そのまま平穏に進むかと思われたランチタイムだったが、ここで思わぬアクシデントが発生する。
パリィン(迫真)
「ヌッ!?」
何かガラスか陶器で出来たものが割れたような音が食堂中に響いた。
野獣が皿でも落としたかと彼のいる方に視線を向けたがどうやら違うらしい。
野獣の隣で金髪の男子生徒がワナワナと震えている。
「モンモランシーからもらった香水が、割れたんだよなぁお前のせいでよぉ(倒置法)、なぁ!」
「すみません」
相手はどうやらギーシュ・ド・グラモンらしい。
土の魔法を操るドットのメイジでルイズたちの同級生である。
「なあおいこれどうすんだよ、高かったんだよ(推測)なぁ!」
「すみません」
「見ろよこの無残な姿・・・」
そこまで言ったところでギーシュは後ろから近づく気配に気づいた。
「ギーシュ様・・・」
「ケ、ケティ!違うんだこれは(豹変)」
先ほどまでの高圧的な態度から一転。
慌てふためいた様子でケティと呼ばれた下級生に話しかけるギーシュ。
「違うも何も、それはモンモランシー様から頂いた香水なのでしょう!?私とのことはただの遊びだったのですね・・・!」
「誤解だケティ!僕は君のことも本気で・・・」
「ほーん・・・本気で、なんだって?」
ギーシュは背後から突然現れた気配に背筋を凍らせた。
「モ・・・モンモランシー・・・」
現れたのはモンモランシー。
ギーシュに香水をプレゼントしたと思われる女性である。
「いや、あの、二人とも!これは違くて・・・」
「ギーシュ様の嘘つき!!」
パァン(大破)
「へぶんッ!?」
涙目で頰をはたいてケティは走り去ってしまった。
「あぁ、待ってくれ!ケティーーー!!」
真っ赤になった右頰を抑えて呼び止めようとするギーシュ。だが彼の受難は終わらない。
「フンッ!!」
ゴスン!(迫真)
「ごふぁッ!?」
「さようなら、ギーシュ。」
モンモランシーもまたギーシュをグーで殴った後、のっしのっしと歩いてアルヴィーズの食堂を後にした。
「あぁ・・・待ってくれ!モンモランシー!モンモランシィィーーー!!」
食堂中に彼の叫びがこだまする。
「・・・すごいもん見ちゃったわね。」
「アンタ人のこと言えないからね?」
遠巻きに見ていたキュルケとルイズはその惨状を目の当たりにした感想を口々に呟いた。
その場に居合わせた全ての生徒がその悲劇の跡地に注目する。
そしてしばらくすると絶望のあまりその場に跪いていたギーシュが震えながら立ち上がった。
「君のせいだ・・・」
「ファッ!?」
俯いて表情は見えないがその呪詛のような声から彼の心中を察することができる。
「君のせいで僕はおろか、二人の可憐な花の名誉が大いに傷つけられた!どうしてくれるんだね!?」
ギーシュは周りの目も気にせず叫んだ。
呼吸は荒く目は真っ赤に充血し、怒りに肩を震わせている。
対する野獣は
「何をどうすれば私のせいになるのか、私には理解に苦しむね(微笑)」
この態度である。
「・・闘だ・・・」
「は?」
野獣にしか聞こえないような小さな声でギーシュが呟いた。
「決闘だ!!誇り高き貴族として君に一対一の決闘を申し込むッ!!」
「えぇ・・・(困惑)」
果たして野獣の運命やいかに。
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