風の戦士伝   作:理系@セン

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御子の目覚めた日  3

「はぁ……はぁ……」緊張が解れ、そのまま遠くを眺めた。自分でも驚きを隠せない。たまたまうまくいっただけかもしれない力とはいえ、さっきまで大虐殺を行っていた化物をぶっ飛ばした挙句、地面もろとも真っ二つにしたわけですし…………

 「グルルッ……」「ガルゥッ……」再び、聞きたくないあの唸り声がした……まただ、化物だ。「やっべえ、多いな……」辺りを見渡すまでもなく、音だけでどれくらいマズいのかが分かる。「グゥウウウ……」「ガルウゥゥゥゥ……」「……コロス」……え、ちょ、待って「……犯ス」おい、ちょっといろいろな意味で待て。「お前ら喋れるんかい」…………一斉に頷くなよ、やりづれぇ。「……ナア、ハヤクコロソーゼ」「ソーシヨソーシヨ」「ウマソー、食ベヨ」「ソーシヨソーシヨ」何やら物騒なこと話してるな……嫌だぜ、食い殺されるなんて……「イヤ、犯ス」この一体だけさっきから別の意味で物騒なこと言ってるんですが!?

「……イクゾ」もうどっちの意味かわかんないけどこっちに来やがった!!「うわあぁぁっ、来るなよ!!」ということで、鬼ごっこの幕開けである。左へ行ったりー右へ行ったりー、何度も繰り返して、その中で「グギャァッ!!「ギャハァッ!!」何度も何度も聖遺物収納庫(デュランダル)を振り回してとにかく適当に切り刻んでいった。「やあぁっ!!」「はあぁっ!!」「「ギュグッ!」」もう血飛沫が飛ぼうがどうなろうか関係ない。焦ってそんなの気にする暇なんてないし。例え腕や内臓が飛び散ろうと、生きるのに必死だった。

 気づけば、辺りは血と臓物で溢れかえっていた。但し、今回は人間のそれではなく、さっきまで人間をまるで蟻を踏み潰すような感覚で殺していた化物のものだ。そして、臓物の中に一人たたずむ。「ハァ……ハァ……」膝に手をのせ、荒くなった呼吸を落ち着けようとした。さすがに、疲れた……汗もかいて気持ち悪い。呼吸が落ち着いたところで、我に返り自分の作り上げた不気味な肉片アートをみて、「うぐっ……!?」再び気持ち悪くなり、地面に何かをぶちまけた。「げぼっ、げぼぉっ……ぐっ……」いくら敵のモノとは言え、心地よいものではない。この短時間で嫌というほど目に焼き付けられたが、出来れば二度とごめんである。

吐き出すものも吐き出し、胸いっぱいにむせかえりそうな空気で深呼吸。大きなため息をつき、一瞬このため息の積み重ねで幸せが逃げて云々考えたが、それだとつじつまが合わないこと——————謎の力、この化物どもから身を守れた力だ。もう、わかってるはずだ、これが何か……ただ信じられないだけ…………今まで自分が求めてきた力、これが使えないせいで嫌な思いをするきっかけになった力、時に友人にまで嫉妬を抱くほどであった力、そして何より、もっとも大いなる力……「こ、これが……」自分の手を見つめた。この手で、実際使ったんだよ、俺は。何も握られていないこの手には、確かに強い力を感じる。「これが、これがっ……」顔を空に向けた。「はい!これが魔法です!!」「うわあぁっ!!」突然横から奇麗な声音して、鳥肌が立った。「び、びっくりした!!ルヒエル、いつからそこにいたんだよ……」右に金髪の天使————ルヒエルがいた。彼女は、この状況とは裏腹に見とれそうなほどの笑顔である。どうやら、こっちがなぜ少し身をそらして一歩引きさがったのか不思議なようである。「なあ、いつからそこにいたんだ?」「ひっどーい、さっきからずーっといましたよ!!」気づいてもらえていなかったことにご立腹らしい。いや、ゆうても絶対気づいてもらえてないこと自体に気づけたと思うんだけどなぁ……まあいいや。「あ、そういえば創太さん。そのマフラーどこで手に入れたんですか?」マフラー…………忘れてた、そういやこれ付けてたな……「それ、私から渡そうと思っていたものだったんですけど…………」この言葉に、少し前に彼女がドラえもんのようにあれこれ袋の中を探す光景を思い出した。「やっぱ、こいつドジでポンコツだ」心の中で、そう呟いた。

「……え、突然、勝手に、ですか?」「ああ、そうだ。突然目の前に現れて、首に巻かさったんだよ」「へえ……マフラーにそんな機能まであったなんて……」とりあえずざっくりと彼女に経緯を話した。話していく中で、どうやら彼女自身もこうなった理由に思い当たることがなさそうなのがわかった。「いままで、さすがにそこまでは起こらなかったんですけどね……」「そうか……まあ、本物の神器ってことはわかったし、よかったー」おかげで安心して魔法(この力)を使えるってわけですし。これで、周りのやつや龍神に……はっ!「そうだ!!おいルヒエル、龍神はどうした!!」「ふぇっ!!」「なあ、どこだ、どこにいるんだよっ!!」はやくはやく、はやく!!あいつをみつけないと……あいつは、あいつは「俺のダチなんだ!!なあ、どこだよ……どこにいるんだよ!!」「ふぇぇぇ……あお、落ち着いてください!!ほ、ほら、そこに……」指さす方向には人影——————龍神だ。「落ち着け、俺なら無事だ」「はぁ……よかった……そうだ、家族は、父さんと魔理亜(まりあ)、姉さんに弟、妹は?」こっちも心配であるが、父さんと母さん(魔理亜)の組み合わせだ、多分……「無事よ、あなたの家族」龍神のいた方から人影、よく見るとルヒエルと同じく、光の輪と羽がついている、赤毛で背の低い、その割に胸のでかい女の子だ。龍神が彼女に向ける視線は、少々不安交じりであるので、俺自身も嫌な予感しかしない。「あ、あの……この方は?」「あ、ああ……この娘は……」「……なにが『この娘』よ!!私は熾天使にして神の炎そのもの、ウリエルよ!!覚えておきなさい、このグズ!!」プライド高いな……こういうタイプ、ちょっと苦手。「青髪、なんか文句あるの?」「い、いえ無いです」やっぱ相手しづらいな……

 「さて、この先、あなたたちは『戦士』として、この化物—————リリンやエグリゴリ共と戦わなければならないわ、拒否権なんてないけどね。」二人の天使からは、真剣さが感じられた。「これは神が意図せず、しかしながら試練として課されたものよ。あなたたちは先陣を切って奴らと戦い、人類を導かなければならないの。当然、今までにないほどつらく厳しいことがある。人は死ぬし、あなたたち自身も、簡単に殺されるかもしれない。」二人で唾をのんだ。そうだ、さっきまで嘘だと思って軽く見ていたものだったのに、結局命まで脅かされるものだったわけだ。今度は恐怖で首を縦に振りたくない。「さあ、答えて。あなたたちは、戦う覚悟ができているのか、それとも指をくわえたまま人類が悪魔のモノになるのを待つか……」確かに、俺たちがやらないと、みんな死ぬ。だけど、付け焼刃のような力で、俺がまともに戦えるとは思えない。俺らより強く、リリンと戦える奴だってきっといる。俺なんかじゃ役に立たず、腐った木片のように簡単にボロボロになるんじゃないか、そう思って頷けなかった。「おい、創太」俯く俺に「俺は、やるぞ。」「えっ?」気づけば、いつもの彼が戻っていた。自信を持ち、突き進むあいつだ。「何もしないで死ぬより、何かしてからにしようぜ、そっちの方が、後味わるくないだろ」「……」黙り込んだ。決心が、自分でもつかない。まだ迷う、どちらをとっても死ぬかもしれない……それでも、死ぬのは嫌だ。なら、イチかバチか……「ああ、やろう」天使ふたりはほっとしたような笑みを浮かべ「では、さっそくですが……」「戦うわよ、ほらさっさと行くわよ!!」そうして俺たちは『戦士』として、悪魔どもとの戦いに身を投じることになった。

 

 




母親が呼び捨てになってるところは意図的です。
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