☆美波
_思えば、あの時が一番幸せだったのかもしれない。
友達と楽しく喋ったり、家族と笑いながらご飯を食べたり…
本当に本当に、心の底から幸せだった。
私の家は6人兄弟で、親共々全員異端者としての能力を生まれ持ってる。能力は説明していくと長くなるから省いておくけど、別に能力なんてあんまり私達は気にしてなかった。周りには隠しておけば滅多にバレることはないし、ごくごく普通の魔法使いとして生きてきた。
…そう、あの出来事があるまでは。
その日は、忌々しいほど綺麗に晴れていて、朝起きた時はきっと素敵な一日になると思っていた。
私は顔を洗って目を覚ました後、自室を出て今日の朝ごはんを予想しながらリビングに降りた。
でも、そこには私の想像とは全く違う景色が流れていた。
まず、朝に必ずご飯を用意していてくれて、笑顔で「おはよう、美波」と声をかけてくれた両親がいなかった。それどころか、リビングに朝食と呼べるようなものは置いていなかった。
兄弟達はいつもの朝の通りに揃っていたが、普段とは明らかに様子が違い、どこか不安を誘う表情をしていた。
「…美波、よく…眠れた?…えっ…と、おはよう。」
兄弟の中で長女である炸楽姉が少し挙動不審のような雰囲気で恐る恐る話しかけてきた。
「炸楽…姉?どうしたの…?お、お父さんは?お母さんは?どうして朝ごはんがないの?急なお仕事だとしてもみんな先に起きてたならパンくらい焼いてくれても…」
私が炸楽姉に責め立てるように聞いている途中で、次女であるナナ姉が私と炸楽姉の間に割り込んできた。
「…美波。真面目に聞きなさい。」
ナナ姉はしっかりとした目で私を見つめ、口を重々しく開いた。
「私達が異端者ということが、魔力の流れで政府にバレたの。お父さんとお母さんは、ひたすら追っ手を足止めしてくれている。今から私達は身を潜めながら、異世界へ通じる扉へ行くわ。いきなりのことで本当に困惑すると思うけれど、それはここにいるみんなも同じよ。」
ここまでいうと、ナナ姉は少し息を吸い込んだ。
「…いい?美波。今日ばかりは、あなたのわがままも何も聞いてあげられないから…ね。」
「…そんな」
私は、悲しみやら驚きやら困惑やらの感情がごちゃ混ぜになって、いつの間にかその感情に任せて叫んでいた。
「どうして?どうしてお父さんとお母さんは一緒に行けないの!?なんで、なんで私達だけで!無理だよ、そんなの、私、戦ったことなんてないし、なんで?昨日までみんな普通に学校に行ってたじゃない!近所の人たちだって、友達だって、みんな普通に接して…!」
「…美波。落ち着いて。そう思うのはみんな一緒。言ったでしょう?…私だって同じこと、思ってるわ。だから…お願い、これ以上……」
ナナ姉がそこまで言った所で私はハッとして我に返った。
「あ…ご、ごめんなさい、ナナ姉…私…自分のことしか考えてなかった…不安にさせたりするつもりは無かったの…!本当にごめんなさい!」
「…美波…いい子ね。私こそ…もう少し言い方があったかもしれない。ごめんね。」
ナナ姉はそういうと、すぐに切り替えて炸楽姉に目線を移した。
「炸楽姉。経路とかの確保は出来てるの?」
炸楽姉は一瞬たじろぎ、そのあとすこし後ろの方へ目をやった。
「竜位がお話を聞いてるって、私は聞いたけれど…」
竜位は、兄弟の中で三男。私と同い年だ。
炸楽姉に呼ばれた竜位はあっ、という顔をした後にすぐ話し始めた。
「えっと、完全に安心できるような経路は無いんですが、それでも人目につかず、割と細道でバレにくい通路を何ヶ所か聞いてきました。」
両親から直接話を聞いたのだろうか。竜位の目は少し涙ぐんでいて、鼻をすんすんと言わせていた。
「道案内は私がします…えっと、周囲の確認などお願いして大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫よ。」
少し早口な竜位の問いかけに対して、炸楽姉が落ち着けるようにおっとりと答えた。
「…分かりました。出発、しますか?」
「待て」
竜位の言葉に炸楽姉が口を開きかけたところで横から声が飛んできた。
王兄だ。
王兄は兄弟の次男で、王兄っていうのは私が勝手に呼んでるあだ名みたいなもの。本名は陵桜で、王兄は語呂が良くて呼びやすいから、という理由で使ってる。
「食事はどうする?異世界への扉に行くまでの移動が何時間、下手すりゃ何日かかるか分からないんだろ?考えておくべきだと思う。…俺は。どう思う、炸楽姉?」
王兄の問いかけに、炸楽姉は少し考えてからこう答えた。
「…確かに、食料については今考えるべきかもね…。今家にある缶詰とかお菓子とか飲み物とか、持って行きましょうか。……一応、二人の分も残しておいて。」
やはりみんなを落ち着けようと頑張っているのか、炸楽姉の口調はどこかおっとりしている。ただし顔はかなり真剣で、本当に私達のために考えてくれているのだなということがすごく伝わってきた。
「…わかった。」
王兄は炸楽姉の意見に簡単に返事をして食料を集めにキッチンの方へ行った。
「…私たちも、食料を集めましょ!」
ナナ姉の声で私達は全員で協力して食料をカバンに詰めることになった。
「これくらいで平気かしら。…まあ、多すぎても困るしね。」
炸楽姉の一声でみんなの動きが止まる。
「…だな。」
王兄もこう答え、ふたたびリビングに集合した。
「…じゃあ、誰がどんなものを担当するか決めないとね!」
少し笑ってそう言ったのは、兄弟の長男、りょーさ兄だった。
先程までは頷いたり相づちをいれたりばかりだったが、流石兄弟をまとめるのが一番得意なりょーさ兄らしいタイミングで混ざってきた。
「…そうね。りょーさ、担当決めお願いできる?」
炸楽姉もここは任せようと思ったらしく笑顔でりょーさ兄にお願いした。
「うん。まず、この1番軽いリュックのが美波。それでこの飲み物とお菓子が入ってるのが…」
りょーさ兄が個人の能力、体格、体力などを考えてテキパキと選んでくれたおかげですぐに運ぶものが決まった。
そして…
「…じゃあ、行こっか」
少ししんみりと、別れを惜しむようにナナ姉が言った。
「ええ…そうね、もうこれ以上ここにいる必要は無いから。」
炸楽姉も同意し、竜位の案内の元、異世界への扉に向かうことになった。
正直言って、すごく不安だ。
でも、両親のために、兄弟のために…そして、私のために。
全力で立ち向かって、戦ってやる。
その思いを胸にして、私はみんなと歩き始めた。
こんにちわ、幼女です。
今回も一応お試しということで投稿させて頂いていますいつ続きが出るかは完全未定です(*^-^*)ゞテヘヘ
もしも、もしもここまで見て頂いている方がいましたら本当に感謝しかありません本当にありがとうございます。
では、ここら辺で私は失礼します。
また次話を投稿する時まで!さらばだ!