僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1 作:エターナルドーパント
(爆豪サイド)
・・・俺は、何をしてた・・・そうだ・・・確か戦闘訓練で・・・ッ!!
─ガバッ─
「うっ・・・痛ってぇ・・・」
顔面と腹に鈍痛が走った。
此処・・・保健室のベッド、だな。このカーテンは・・・そうだ、俺は
「・・・俺、勝てなかったか・・・」
自分でも驚くほど、すんなりと受け入れられた。まぁ、明らかに手加減されて、それでも俺じゃなきゃトラウマになるレベルまでブチのめされたからな。当然か・・・。
「アイツの強さ・・・」
(何も!背負って!無ぇだろうが!!!!)
「!・・・『背負ってるもの』・・・か」
・・・確かに、俺は何も背負ってねぇ・・・アイツは、自分を鍛えてくれた人達の想いを背負って、他の人の為に力を振るっているらしい・・・それに比べて・・・俺は・・・
「・・・そうか・・・俺が目指していたのは・・・『ヒーローじゃ無かった』のか・・・」
・・・目頭が熱くなり、息苦しくなってくる。出久は、俺等からあんな仕打ちを受け続けても・・・それこそ自殺しろと言われても、折れず、諦めず、進み続けた・・・あの強さはきっと、そこから来ているものなんだろう。だが、俺は・・・
「アイツを無個性の雑魚だと決め付け・・・自分が一番だと思い続けていた・・・それが揺らいで、焦って、上辺だけの安っぽい力振り回して・・・」
情けねぇ・・・ヒーローになる、なんて豪語しておきながら、俺はヒーローとは対極の行動をとっていた・・・
気付いたら、涙が溢れていた・・・
「クソッ!何で気付かなかった!何で自分だけがトップだと傲っていた!何で・・・何で、『ヒーローが何なのか』を考えなかったッ!!」
・・・俺は、このままじゃヒーローになれねぇ・・・まずは・・・
「謝らねぇとな・・・
もう、デクなんて呼べねぇ。謝って許して貰える訳無ぇけど、こうしねぇと、俺は人間の『屑』のまんまだ・・・そこから抜けて、出来る限り、償わねぇと・・・
「・・・もう、帰りのHRの時間か・・・」
チャイムが鳴るのが聞こえた。今から下校だ。だったら・・・
(爆豪サイド→出久サイド)
「爆豪君、大丈夫だろうか・・・」
飯田君が心配そうに呟く。
「大丈夫だろ。結構手加減したし、身体に疲労が溜まらないよう、出来るだけ速攻で倒したからな。多分リカ婆の治療1回で、結構治ると思うぜ」
『手加減し切れてないと思うよ!?』
「・・・何も全員で言わなくても良いじゃねぇか。まぁ確かにちょっとばかしやり過ぎたけど」
『あれがちょっとであってたまるか!』
・・・集中砲火だな~・・・しゃぁないけど。
──全員移動中──
「・・・俺の下駄箱に何か用か?」
爆豪が下駄箱の前で待ち構えていた。だが、何時もみたいな敵意は感じられない。三奈もその変化を感じたのか、一瞬ジト目になっただけですぐに戻った。
「・・・なぁ、話があるんだが、ちょっと良いか?」
何時もの彼からは考えられないほど、弱々しい声。どうやら、今までの自分を見つめ直したらしい。
「三奈、校門前で待ってくれ」
「ん、解った」
三奈は素直に行ってくれた。
「取り敢えず、此処じゃなんだ。校舎裏でも行こうや」
「・・・あぁ・・・」
──少年2人移動中──
「で、話って?」
こういうシーンの定番の場所、校舎裏に移動した俺は、同じく移動してきた爆豪にそう切り出す。すると爆豪は、今までの彼では考えられない行動をとった。
「・・・今まで!済まなかったッ!!」
「!?」
土下座したのだ。一切躊躇無く、俺に向かって、謝罪しながら。
「俺は今まで、1番になることだけにしがみついてた・・・そして、本当に人の笑顔の為に戦っていたお前の事を、役立たずだ、無個性だと馬鹿にして、虐め続けて・・・自殺教唆までして・・・」
・・・其処まで考えられたか・・・
「謝って済むような事じゃ無ぇって事は解ってる!でも・・・俺はコレから、今までやってきた事を償っていきたい・・・そう思ってる!・・・だから・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい!・・・うぅ・・・」
・・・正直かなり驚いた。あの態度がちょっとマシになったらいいな~程度だったが、かなり変わってくれたようだ。此処まで自分の罪を重く見ている今なら、きっと・・・
「・・・顔上げろよ」
「ッ!?」
俺の言葉に顔を上げた爆豪は、泣いていた。真っ赤な顔を涙でグシャグシャにして、自責の念で押し潰されそうになりながら。
「お前は、自分の罪を数え、その罪を犯したことを後悔した。なら、その次は前を向いて、償いながら歩き始める番だ」
「ッ!!」
今のお前、いや、〈君〉なら・・・
「君は、ヒーローになれる!」
「ッ!!・・・何で・・・?お前を・・・ずっと、虐めてきた・・・奴なのに・・・」
・・・決まっているさ。
「おいおい、俺はさっき言ったぜ?罪を数え、向き合い、償おうとしている。今の君なら、きっと、ヒーローになれるさ!・・・だから、これからはその力を、『皆の笑顔を守るため』に使うんだ!」
「ッ!!・・・うぅ・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
爆豪は、初めて俺の前で、声をあげて泣いた。俺は彼が泣きやむまで、見守っていた。
「・・・ありがとな!楽んなったわ!」
10分程思いっきり泣いた爆豪は、吹っ切れたような、綺麗な笑顔で言った。
「今この瞬間!君はコレまでの『爆豪勝己』から生まれ変わった!ハッピー・バースデイッ!!これから宜しくな!
鴻上会長が言っていた、祝福の言葉。この言葉は、今こそ使うべきだと思った。
「!・・・おう!宜しくな!出久!」
そして、俺達は握手した。そしてその後は勿論・・・
「こっから、こうして、こう、こう、こう!」
弦太郎さんがやってた『ダチの印し』だ。
「出久、今の何だ?」
「先輩がやってた、『友情と絆の証』!今からかっちゃんは、俺のダチだ!」
「ッ!!おうよ!!」
俺達は、拳同士を軽くぶつけ合った。
この日、俺とかっちゃんは本当の
家に帰って母さんにもこの事を言った。何度も『良かったね』って言ってくれて嬉しかった。そしてその夜、俺は早めにベッドに入った。
「・・・妙に、胸騒ぎがするな・・・」
ほんの少し、虫の知らせのようなものを感じながら・・・
(サイドEND)
「『オールマイトが雄英教師』・・・だってさぁ・・・」
路地裏にある小さなバーで、異様な者達が集まっていた。
全身に手首をくっつけた者、バーテン服を着た、真っ黒な靄のような身体をした者、最も目を引くのは、真っ黒な全身の皮膚、嘴のような歯を剥いた口、焦点の合っていない虚ろな目、何より、頭部から露出した脳という、到底人間には見えない大男。
その内、手首をくっつけた男が読んでいた新聞をカウンターに置いた。
「なぁ─────
─────────殺したら、どうなっちまうんだろうなぁ?」
男は嗤う。その目に、色濃い狂気を浮かべて。
出久達の知らない場所で、闇が、確かに、動き出していた・・・
to be continued
はい!かっちゃん救済です!こっから出久にヒーローのイロハを教わります!
因みに和解のシーンは、永夢とパラドの和解シーンを意識しました!
そして、暗躍する『闇』・・・一体どうなるか?乞うご期待!