僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1   作:エターナルドーパント

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『さぁ、デカく動かすぜ』
「収集着く範囲内でな?」
『頑張るぜ!』


第51話・合宿/出久のT

(出久サイド)

 

「さぁ、検索を始めよう」

メガネウラドーパント出現の1時間後、俺はかなり久々に地球の本棚に潜っていた。理由は、警察への協力。敵が俺と同じガイアメモリを使ったという事で、自主的に情報を提供しているのだ。事情聴取は既に済ませ、死柄木との会話を話したりした。

「キーワードは、《ドーパント》」

まず調べるのは、ドーパントそのもの。今までは、俺達以外にメモリを使う奴が居ないと思いこんでいた。だが、そもそも俺の身体と融合しているメモリーメモリも出所が不明なのだ。どこかの誰かが造ったのか、それとも時空を超えてきたか・・・

 

『では、そのドーパントについて詳しく頼むよ』

 

そう言ってきたのは、オールマイトの友人である警察官、塚内さんだ。何でも雄英襲撃・保須事件を受け、警察側も特別捜査本部を構えたらしい。因みにシン兄さんとリュウ兄さんも居る。俺が呼んでもらった。2人も捜査本部に所属している。

「了解。まず、ガイアメモリについて話そう」

 

『あぁ、録音させてもらうよ』

 

「頼みます」

 

───

──

 

『成る程。大まかなことは分かった。では本題。ドーパントについてだ』

 

「ドーパントとは、ガイアメモリに封入されている《記憶》のエネルギーを身体に取り込むことで、その記憶に合わせて身体が変質した生物の総称だ。この定義故に、俺達仮面ライダーもこのドーパントに包含される。性能はピンキリで、下は武術をかじった生身の一般人でも倒せる程度雑魚から、上はたった1体で街一つ簡単に滅ぼせるレベルの奴まで。前者の例はマスカレイド。コイツは変身者の服装に、白いムカデみたいなマスクの形だからすぐに分かる。後者の例は、ヴァイラスやウェザーだ。ヴァイラスは殺人ウィルスをバラまいて操り、ウェザーは天候を自由自在に操作する。雷とか、吹雪とかな」

 

『成る程。凶悪な能力だ』

『恐ろしいな』

 

「後で、画像資料も提出しよう。次にだが、ドーパントには大きく分けて2つのタイプがある。ボディタイプと、ソウルタイプだ」

まぁ、正式な組み分けはされてないから、俺が分かり易く分けてるんだがな。

 

『そのタイプの違いは?』

 

リュウ兄さんの声が響く。

「まずボディタイプ。コイツ等は簡単に言うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()の記憶を封入したメモリだ」

 

『生物とか道具はまぁ分かるが、()()()()()()()()()・・・と言うと?』

 

「例えば、暴力(バイオレンス)加速(アクセル)なんかだな。これらのドーパントは、一般的に複雑な特殊能力は持っていない。あって生物の能力の延長線上の発展能力だったり、口からエネルギー弾を飛ばしたりだな。だがその分、身体能力が高い。副作用は知能の低下と人格の狂暴化。今回出たメガネウラもコレに該当するな。纏めると、ボディタイプのドーパントは物理攻撃が得意だ。これもまた、明日資料を提出する」

 

『おう。済まないな』

 

「何の何の。次にソウルタイプ。コイツ等は、()()()()()()()()()()()()()()()の記憶を封入したメモリだ。コイツ等の特性は、《特殊効果》や《属性攻撃》。フラン・・・フランドール・スカーレットが使っている禁忌(タブー)とかな。コイツ等は基本的にステゴロはせず、搦め手を多用する。副作用はエゴの増大とモラルの消失。知能が余り下がらないから複雑な計画を立てられる分、こっちの方が有る意味質が悪い。分かり易いのは・・・嘘吐き(ライアー)かな?」

 

『嘘吐き?』

『詐欺をするとかか?』

 

「それならまだ可愛いな。コイツの能力は、『自分の吐いた嘘を特定の対象に()()()()()()』と言うものだ。例えば、《泊進護は射殺許可の降りた犯罪者だ!》とかな」

 

『お、オイオイ出久、流石にそれは・・・』

 

「な?恐ろしいだろ?因みに能力が発動すると、まずライアーの口元に漫画みたいな吹き出しが出て来る。そこに嘘の内容が書き込まれ、その吹き出しが針に変化して射出。その針が刺さった相手は、例えどんなに無茶苦茶な嘘でも強制的に信じ込ませられるんだ。しかも更に恐ろしい事に、この針はボディアーマーだろうがヘルメットだろうが関係無しに透過して来る」

 

『つまり、防御は不可能という事か?』

 

「いや、掴んで止める事も出来るし、盾で弾く事も出来る。恐らく、服のように()()という表現が出来るものだけを透過するんだろうな。だから、仮面ライダーも騙される」

 

『複雑だなぁ』

 

「そう言うもんさ。他にも、対象者の恐怖心を膨張させて発狂を引き起こすなんてえげつないヤツも居るぞ。そして大事な事だが、ドーパントはメモリシステムかライダーシステムでしか倒せない」

 

『それは何故だい?』

 

「厳密に言えば、倒す事は出来る。だがその場合、ドーパントになっていた奴は死ぬ。ほぼ確実に死ぬ」

 

『・・・詳しく頼む』

 

「ちょっと待ってくれ。一旦そっちに戻る」

そう言って俺は目を閉じる。そして再び目を開くと、目の前にはシン兄さん達の顔があった。

「済まん。理由は、ドーパントの体内のメモリを破壊する事が出来ず、体内にメモリのエネルギーが残留してしまうからだ。仮面ライダーの必殺技は、そのエネルギーを流し込んで体内の残留エネルギーをほぼ相殺し、同時にメモリを破壊して再使用不可能にする事が出来る。だがそれ以外だと、強制変身解除という解除の仕方だ。これは体内にエネルギーが残った状態で、エネルギーを統率しているメモリとのコンタクトが切れると言う意味。そうなれば、エネルギーは暴れ馬の如く体内を破壊し、変身者を死に至らしめる。対して俺達仮面ライダーは、ドライバーを介してメモリのエネルギーを使っているから、毒素と身体の変質はほぼ0と言って良いだろう。身体と直接結合してないから、強制変身解除しても身体への負担は少なくて済む」

「成る程」

重要だと思ったのか、塚内さんはメモ帳に纏めている。

「それと、最初に言ったマスカレイド。コイツはどんな倒し方でも変身者は死ぬ」

「何故だ?」

「マスカレイドには自爆機能が登載されているんだ。一定量のダメージが入れば、ドカンッ!って訳だな」

「・・・成る程」

難しい顔をするリュウ兄さん。

「そしてリュウ兄さん。貴方に渡したい物がある」

「ん?何だ?」

俺はスキマを開き、中からアクセルドライバーとアクセルメモリを取り出した。

「それは!」

「恐らく、リュウ兄さんが最も適合率の高い人間だ。ドーパント犯罪者も増えるかもしれないからな。警察側にも仮面ライダーが居てくれると、俺が応戦出来ない状態でも被害を減らせると思ったんだが・・・どうする?」

「うむ・・・」

かなり悩むリュウ兄さん。まぁ、下手すりゃ問題事だからな。

「・・・近い内に暇をとる。その時に研修のようなものをしたいんだが、コーチを頼めるか?」

「了解」

にしても、財団Xやミュージアムはヒットしなかった・・・何故だ?

 

そして俺は家に帰った。そこそこ遅くなっていて、先に帰った母さんが涙でリビングを水浸しにしてたよ。どこに入ってたんだよ、あの水分量・・・そしてよくもまぁ漏電しなかったな家電製品類。

 

 

 

(NOサイド)

 

時は過ぎ、合宿開始日。1-Aメンバー達は、バスの中ではしゃぎ倒していた。

「ねぇ出久!」

「ん、どうしたフラン?」

そんな中、フランが出久に声をかける。

「何か歌ってよ!カッコ良いの!」

「あ~、ウチも聴きたいかな!」

フランが歌ってくれとリクエストを出し、それに耳郎も乗っかった。

「・・・じゃ、何曲か」

そう言ってスタッグフォンを操作する出久。そして選び終え、最初の一曲を流し始めた。

「では、聞いて下さい。『real heart』」

 

─何故気持ちは擦れ違うの?触れ合えたら、

分かるのに・・・─

 

それは儚い、美しい想いの歌。出久が歌い始めると、その声は聞き馴染んだ男子の声から、精一杯想いを伝えようとする力強い女声へと変わった。それを聞き、ワチャワチャと騒いでいたクラスメイト達も何時の間にか口を閉じ、その歌声に聴き入っていた。

 

─教えてよ。その心は・・・何処に、向かっているの?─

 

「・・・ふぅ。ご静聴ありがとうございましたっと」

出久は一息吐いて、周りを見渡す。全員が漏れなく、目を丸くしていた。

「何か、歌詞の中に親近感を覚えるフレーズがいくつかあった。本当は誰より寂しいのに、とか」

まず感想を口にしたのは轟。孤独な地獄で生きてきた彼女に、この歌詞は響いたようだ。

「何かこう、健気な感じだったよな!」

「つーか何で男なのにそんな高音出るんだよ!」

次に切島と上鳴。切島は歌に込められたらメッセージ性に心打たれたようだ。上鳴は純粋に驚いている。

「ねぇ出久!もう一曲お願い!」

「・・・YES Maihani」

三奈のリクエストに、またスタッグフォンを弄る出久。間もなく、次の曲が決まった。

「それでは引き続き、cod-E~Eの暗号~」

 

─君が抱き締めているのは、あの日の約束、一つ・・・─

 

次に歌ったのは、今は亡き敬愛する兄から教わった歌。胸に秘める愛を叫び、その温かい愛の熱を絶対に忘れて、手放してなるものかという想いを乗せて、熱く歌う。

 

─君が教えてくれたのは・・・青空の、欠片・・・─

 

「ふぅぅ・・・ん?ッ!?」

一息吐いた出久が周りを見渡すと、大体のメンバーが泣いていた。特に三奈とフランは。

「スッゲェ・・・スッゲェよ!緑谷お前!」

「前にウチ、その曲のベースやらせてもらったけど、聴きに専念すると・・・」

「・・・悲しき運命と共に闇の中を彷徨い、愛しき人の手によって光が齎された・・・そんな内容か」

「ワオ、常闇ドンピシャ」

そう言いながら、思い返せばこの歌みたいだったな、俺の人生・・・などと考える出久。

「さて、そろそろ一旦止まるらしい。先生!そこからエターナルボイルダーで行っちゃダメですか?」

「・・・ヘルメットは?」

「スキマの中に」

「バイクの免許は?」

「尻ポケットの財布の中に」

「バイクは?」

「スキマの中に」

「・・・飛ばすなよ」

『許可降りた!』

驚いて当然だ。

 

(出久サイド)

 

「やっぱ、バイクは良いな」

そう言って俺は軽くアクセルグリップを吹かす。この辺はほぼ車が来ないな。映画のロケ地で使われそうだ。カーチェイスシーンの。

─ピコン─

「ん?」

と、ハンドルにジョイントしているスタッグフォンにLINEが来た。え~っと・・・

 

三奈『ウィリー出来る?』

 

「ん、ウィリーか。出来るっちゃ出来るな」

 

出久『出来るっちゃ出来る』

 

コレはやってって言うだろうが・・・

─ピコン─

 

三奈『やって!』

 

「だと思ったよ全く!危ないんだぞあれ・・・」

 

出久『今は後続車両が居て万一の時が危ないから、止まったときに見せてやる。それまでガマンな』

 

妥協して、コレぐらいかな。俺だって流石に常識無しでは無い。それぐらいは心得ている。

─ピコン─

ん。

 

三奈『ありがと!』

 

・・・満面の笑みを浮かべる三奈が目に浮かぶな。

 

出久『どういたしまして』

 

─ヴオンッ─

そう返して、俺は再びアクセルグリップを短く吹かした。

 

────

───

──

 

さてと、あの駐車スペースだな。

「よし、前が開いた!」

A組のバスが止まると、俺はその横を通り抜ける。そして・・・

「下りてきたな・・・今だ!」

─ギャリリリッ!─

俺は左足を着いて勢い良くドリフトし、四分の三回転した所で一旦ギアをニュートラルに入れる。そしてエンジンを目一杯回し・・・

─ガコンッ!ヴォォォォォンッ!!─

即座にローに入れた。すると必然的に前輪は跳ね上がり、エターナルボイルダーは暴れ馬の如く嘶く。最後に重心を右後ろに一気に移動して、半回転しながら前輪を地面に叩き付けた。

「うっひゃ~!出久カッコ良い!」

「満足したかい?これにて、ライダー出久のパフォーマンスは終了っと」

俺はボイルダーから降り、スキマゲートに格納する。便利だなぁスキマ・・・と言うか、コレも仁が教えてくれた『東方Project』の八雲紫の能力まんまだわ。

「カッコ良いパフォーマンスをありがとう!緑谷出久君!」

と、後ろからの声に振り向く。するとそこには、ミニスカに猫グローブに猫耳の女2人と、小学生くらいの男の子が立っていた。この人達は・・・

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ、通称ワイプシ。山岳救助を主な活動内容とする、4人一組のヒーロー集団だ。今のスーパー戦隊みたいな名乗りも、テレビに出る時は必ずやってる。

「狂気の炎と記憶の王者!仮面ライダーエターナル!」

「緑谷お前何やってんだ」

「対抗して名乗ってみました。恐らくもう二度と使う事は無いでしょう」

相澤先生の冷めた視線もスルリスルリと受け流す。意外と恥ずかしいなコレ。

「え~、今回お世話になるプロヒーロー、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの皆さんだ」

「確か今年で12年目だっけか」

ボソッと呟くと、ピクシーボブが凄い形相で詰め寄ってきた。

「心は18ッ!」

「無理通してると嫁の貰い手が無くなりますよ」

「グヴェアッ!?」

そして一言で沈んだ。

「ここら一帯は私らの所有地なんだけど、君達の宿泊施設はあの山の麓ね」

そう言ってマンダレイはグローブの鉤爪を伸ばし、2㎞程離れた山を指差した。

「遠ッ!」

あぁ、そうか・・・

「と言うか、それなら何でこんな中途半端な場所に?」

このパターンはあれだ。

「おい!バスに戻るぞ!」

自力で辿り着けってパターンだ。

「取り敢えず、昼飯時までにあそこに行けば良いんですね?この、恐らく障害物満載であろう森を抜けて」

「流石は修羅場を潜った仮面ライダー、話が早いね!個性も使用許可だすよ!」

「じゃあお先に」

俺は一足先に助走をつけ、柵を踏み台にして大きくジャンプした。下は30mくらいかな。

 

─ドゴンッ!─

 

そのままスーパーヒーロー着地で地面を陥没させ、即座に太股の筋肉を膨張させて走り出す。合金板仕込みの黒いブーツが地面を砕き、爆発的に加速した。

 

─ドドドドドドッ─

 

他のメンバーも落とされてきたな。と、森のギミックもご登場だ。

 

─ズシン、ズシン─

 

大木の陰から出て来たのは、4足歩行の怪獣。大きさは3m程かな?しかしいくら見てくれを弄ろうと、俺は臭いで分かるんだよ。

「土塊など相手になるかァッ!!」

 

─バゴンッ!─

 

俺はその怪獣の頭を思いっ切り蹴りつけた。するとその頭は砕け、脳漿や血の代わりに土や砂岩の破片を撒き散らす。

「フン、俺が知ってる土塊人形(クレイドール)より弱いな。遠距離攻撃も、自己修復能力も無い。ハッキリ言って数だけの雑魚だ」

変身するまでもない。だが、1人につき数十体(この物量)は流石に面倒くさい。だったら・・・

「練習相手になっていただこうか」

【アメノハバキリ!】

「詠装!」

 

Determination edge Amenohabakiri tron(決意を鋭刃とし、闇を切り裂く)~♪─

 

俺はアメノハバキリを装着。どうやらその時の服装に追加装甲がくっつく形らしい。と、歌っている間に囲まれたな。

「好都合だ」

 

─心に剣!輝く勇気!確かに閉じ込めて!奇跡・・・切り札は、自分だけ♪─

 

俺は初っ端から歌い、脚部のブレードウィングにエネルギーを供給する。そしてそこから素早く逆立ちし、開脚状態でブレードウィングを振り回した。

 

─逆羅刹・永久(トワ)

 

瞬く間に土に還る人形共。耳を澄ませば、爆発音やエンジン音、凍結音も聞こえて来た。かっちゃん達もノってきたようだ。

「~♪~♪!」

俺は歌いながら走り抜け、土塊と擦れ違う度にアームドギアで辻斬りを繰り返す。脚部のスラスターを吹かしていた事もあり、30分程度で宿泊施設に辿り着いた。

「ふぅ、意外と掛かってしまったか」

「イヤ、十分速いから。と言うか私らより速いよ・・・」

ピクシーボブが顔を青くして、ドン引きしながら突っ込む。

「俺は化け物ですからね。もっと早く着く事も出来たが・・・ふむ、今回は少々遊び過ぎたな」

アメノハバキリを解除しながら、ゴキゴキッと首を鳴らした。

「ッあぁ~・・・さて、二着はかっちゃんかフランか、三奈や麗日・・・はスピードは厳しいか」

 

─BBBBBBBOM!!─

 

「ニトロバーンフィニッシュッ!!」

考えてる間に答え合わせの時間が来た。正解はかっちゃんだったな。両腕を広げて爆速ジェットしながら回転ライダーキックで土塊人形を粉砕すると同時にゴールイン。ハザードレベルかなり上がったからな。

「ハァ、ハァ、出久速すぎだろォ!」

肩で息をしながら怒鳴るかっちゃん。どうやら相当無茶な動きをしたらしい。

「まぁな、お疲れさん。ちょっと休んでろ。マンダレイ、ペットボトル用意しといて下さい」

「え?あ、うん分かった」

マンダレイの返事を聞き、俺は再び俺は森に飛び込んだ。

 

───

──

 

「あ゛~キツかった~!」

「疲れた・・・でも私、この能力で良かったよ」

三奈とフランも到着。因みに三着は麗日だった。そしてフランは四着、三奈が五着だ。ライダーシステムの適合者は流石に速いな。1時間で着いた。

「お疲れさん。食うか?」

そう言って俺が差し出したのは、蛇と飛蝗の串焼きだ。さっき採ってきて、勝手に焼かせてもらった。かっちゃんも焼いて食ってる。

「美味いぞ」

「いや、私達は・・・」

「遠慮しとく」

「そうか。美味いのに」

三奈とフランは受け付けなかったようだ。俺は肩をすくめて蛇をかじり、ペットボトルの中身を喉に流し込んだ。

「ねぇ、出久?そのペットボトルの中身って何?」

「何か赤黒いけど、まさか・・・」

ん、コレか?コレは・・・

「蛇の生き血。滋養強壮に良いんだぜ」

「「お゛ぉう・・・」」

「ん?」

2人の顔が益々青くなった。何でだろうな?ヴァイラスメモリで病原体は根刮ぎ殺してあるんだが・・・

「ん~美味し~♥」

「見てみろよ麗日を。普通に食ってるぞ」

麗日を見やれば、かっちゃんに串刺しを貰って、自分で焼いて喰っている。逞しいな。

 

「彼ら、もう昼食要らないんじゃない?」

「あ~、水と野菜だけ下さい」

 

─────

────

───

──

 

「うめぇぇ!米うめぇぇぇぇ!」

あの後、結局他のメンバーは昼飯時に間に合わなかった。全員が揃った時ピクシーボブが「唾付けとこう!」とか言って飯田、俺、かっちゃんに唾をかけようとしたが、次の瞬間には三奈、フラン、麗日の3人からライダーリンチを受けるハメになっていたのは笑えたな。「女子高生怖いガクブルガクブル」とか言って震えてた。そして今は夕飯時。空腹のせいでおかしなテンションになった切島と上鳴が、泣きながらご飯を口に掻き込んでいる。

「御馳走様でしたっと」

俺は食器を持って厨房に行った。そこでは、マンダレイが洗い物の準備をしている。

「マンダレイ、御馳走様でした。かなり美味かったです」

「そう、お粗末様!」

俺は洗い場に食器を入れ、スポンジを取って洗い始めた。

「え!ちょ、良いんだよ!?今日は私達がしてあげるから・・・」

「気にせんで下さいな。コレは情報料みたいなモンなんで」

あせあせしていたマンダレイの表情が変わる。

「・・・ふ~ん、中々分かってるね。で?何が聞きたい?」

「あの子供・・・洸汰の事ですよ。アレは・・・あの顔は、並みの子供が出来る顔じゃない。ヒーローっていう存在に対する激しい不信感・・・考えられるのは、親が死んだ時に助けてくれなかったから、ヒーローが嫌いになった、とかですけど」

すると、マンダレイの表情がまた変わった。悲しげな顔だ。そう言えば、洸汰はマンダレイの従甥と言っていたな。

「凄いねぇ、当たらずとも遠からずだよ」

「と言うと?」

そこからマンダレイは話し出した。それによると、彼の両親〈ウォーターホース〉は敵に殺され、洸汰は『自分の親がヒーローだったから死んだ』と思うようになったそうだ。更に、まだ物心ついたばかりの時に起こった両親の死を、世間はこぞって褒め称えた。故に、洸汰にとってヒーローとは、理解不可能な気持ち悪い人種らしい。

「・・・()()()か。それに、社会も社会だよなァ。全く・・・どうも、良い話が聞けた」

「うん。さてお風呂に入って来な、私はもうちょい洗い物するから」

「どぉも」

あの胸糞悪い事件が原因、か・・・全く・・・

 

─────

────

───

──

 

「温泉は良いなぁ。疲れがスッキリ取れる」

まさか温泉まで所有しているとは・・・

『にしても残念だな、混浴が無いのは』

「ちょっと待てフラン!何でだ!?」

おっそろしいなフランは!

『出久と入りたいから!』

『ちょっとスカーレットさん!?』

「「ミィドリヤァ~ッ!」」

ほら上鳴(アホビリビリ)峰田(性欲怪人)に睨まれた。面倒くさっ・・・

「・・・壁とは・・・」

ん?峰田がプルプル震えてるぞ?気でも狂ったか?いや、そりゃ元々か。

「超えるためにある!Plus Ultraァァァァ!!」

「アイツとうとう壁じゃなくて一線超えやがった」

【ルナ!】

俺は起動したルナメモリを投げ、京水姉さんと同じモーションで構えをとる。そして俺の額に生体コネクタが出現し、ルナメモリが挿入された。髪に金メッシュが入ったのが見える。

「ン~来たァッ!来ィた来た来た来たァ!ッア~♪ってこんな事してる場合じゃ無かったわ!」

「人のアレコレから学び直してこい」

「クソガキィィィィッ!!」

あ、洸汰が突き落としたわ。って落ちてきた!!

「ホッ!クネクネ~!」

私は咄嗟に腕を伸ばして、洸汰を受け止める。

「良かった~怪我は無いわね!あ、鼻血・・・アナタ女湯見ちゃったのかしら!何てけしからん!ムッキィィィィッ!!」

「・・・出久?」

あ、かっちゃんが私の地団駄見てドン引きしてるわ。

「あぁ、メモリを直挿しすると前使用者の人格に口調とかが引っ張られるのよ。気にしないで」

そう言って私は額からメモリを抜き取る。メッシュが消え、俺の身体から力が抜けた。

「さてかっちゃん、峰田のリンチ頼むわ。俺は上がるついでに洸汰送ってくる」

俺は洸汰を担いで脱衣所に戻った。後ろからは峰田のものと思われる甲高い悲鳴が聞こえたが、無視だ無視。




『申し訳無い。詰め込みすぎた』
「まぁ、大丈夫だろ。因みに洸汰のライオンキングパンチはどうなったの?」
『出久は普通に受け止めたよ』

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