僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1 作:エターナルドーパント
『無いです』
「ヴゾダドンダゴドォーン!!」
(出久サイド)
「あぁ~・・・お、皆お早う」
合宿2日目、早朝5時半。皆眠い目を擦りながら起きてきた。俺はフランと一緒に、朝のストレッチで身体を温めていた所だ。
「2人とも、早いね~」
「確かにフランは早いな。まぁ、俺は1時間も睡眠をとれば充分だが」
などと言いながら、俺達は相澤先生の方を見る。
「本日から、本格的な強化合宿を始める。今合宿の目的は、全員の強化及びそれによる
成る程、大体分かった。
「て事で爆豪、コレ投げてみろ」
「コレ、体力テストの・・・」
かっちゃんが渡されたのは、入学初日にやったテストのボール。
「入学直後の記録は、705.2m・・・どんだけ伸びてるかな」
「おぉ!成長具合か!」
「この3ヶ月、色々濃かったからな!1㎞とかいくんじゃねぇの!?」
「いったれバクゴー!」
ふむ、果たして、伸びているか?そもそも、個性の容量を増やすようなシゴキはしてないからな。下手すりゃ前とあまり変わらんかも知れん。
「成る程。なら、心火を燃やして・・・
ぶっ潰すッ!!」
おぉ、カズミンの決め台詞・・・と言うか、今の最大出力じゃないか?体力テストの時とは比べ物にならなかったぞ?
─pp─
「ッ!?・・・924.1m」
「ウオォォ!!」
「いったァァ!!」
何か相澤先生が解せないって顔してるな。と言うか・・・
「かっちゃん、手ェ痛くないのか?」
「あぁ、あと3発4発なら余裕で撃てそうだ」
・・・あぁ、成る程。
「先生、ちょっと」
「ん?どうした緑谷」
見れば、相澤先生は今の記録と前の記録を見比べていた。
「かっちゃんの記録の事ですが、もしかしたらライダーシステムに適合した影響かも知れません」
「どういう事だ?」
何時もの顰めっ面が、より深いものになる。
「かっちゃんや麗日の使うライダーシステムにはハザードレベルという数値があってですね、それが上がれば身体能力も上がるんですよ」
「つまり、アイツの手の耐久力が上がったからあれを撃てたと?」
「その可能性が高いです」
「・・・はぁぁぁ・・・取り敢えず、爆豪は個性を特訓なんかでよく使ってたからな。だからこそ、ここまでの成長があった」
あ、誤魔化した。
「だが、筋肉が生半可な刺激じゃ傷付かないように、個性も酷使せねば伸びることは無い。これから君らは、その個性を伸ばす訓練をしてもらう。死ぬ程キツいが、くれぐれも─────死なないように
─────
────
───
──
─
(NOサイド)
─ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!─
─ギャアアアアアアアアア!!─
─ギェアァァアヂャヂャヂャヂャヂャヂャアッヂャァア!!─
「・・・何この地獄絵図・・・」
鳴り止まず響き続ける悲鳴、そしてそれぞれが己の個性をいじめ続けるその光景に、B組の面々は
「キャパのある発動型は上限の底上げ、異形型・その他複合型は“個性”に由来する器官・部位の更なる鍛錬。通常であれば、肉体の成長合わせて行うが・・・」
「まァ時間が無いんでな。お前等も早くしろよ」
相澤がB組の担任〈ブラドキング〉の言葉を引き継ぎ、締めくくった。
「でも、私たちも入ると40人だよ?そんな人数の“個性”、たった6名で管理出来るの?」
「だから
拳藤の疑問に対し、相澤は答えになっていない答えを返す。そこに、4人の集団が現れた。
「そうなの!あちきら四身一体!」
「煌めく眼でロックオン!!」
「猫の手手助けやって来る!!」
「何処からともなくやって来る」
「キュートにキャットにスティンガー!!」
『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!』
声高に(約1名ドスの効いた声で)名乗り、ビシッとポーズを決めるワイプシ。100人まで現在位置や弱点まで見通すラグドールの『サーチ』、個性に合わせた訓練場を創る事が出来るピクシーボブの『土流』、複数の人間に同時にメッセージを送れるマンダレイの『テレパス』、そして、物理戦の対応能力を否が応でも鍛えられる虎の格闘技術・・・短期強化合宿には、これ以上無い程に適したメンバーだった。
「まず単純な増強型の者!我の元へ来い!」
虎に呼ばれ、増強型の生徒は着いて行く。その先では・・・
─ドゴンッ─
─ズドムッ─
─ブシャッ─
3人の仮面ライダーエターナルが、寄って集って上半身裸の出久を虐め抜いていた。どの拳もどの脚も、ライダーが持つ
「我ーズブートキャンプはもう始まっているぞ」
『イヤイヤイヤイヤ!?』
その光景に、全員が冷や汗を流しながら声を上げた。
「流石の緑谷でも死にますよ!?」
「幾ら何でも酷過ぎます!!」
声を荒げる生徒達。だが、虎は組んだ腕を解かずに口を開いた。
「あやつは案ずるな。アレは奴自身が考案したトレーニングメニューよ」
『ッ!?』
生徒達は絶句する。何故なら、さっきから幾度か筋肉が潰れ、骨が砕ける音が聞こえてくるからだ。〈こんなメニュー、頭がイカレてやがるッ!!〉という考えで頭が一杯になり、一言も発せなくなってしまった。
─ドゴッ─
「んぐァ!?・・・ヴッ・・・ゴプッ」
─べしゃっ─
腹に鋭いミドルキックを叩き込まれ、文字通り血反吐を吐く出久。流石にもう動けないらしく、その場に倒れ込んでしまった。
「緑谷ッ!」
思わず駆け出しそうになる生徒を虎が止め、近くの木の幹に突き立てられていたエターナルエッジを引き抜く。そしてポケットから緑色のガイアメモリを取り出し、エッジのマキシマムスロットに装填した。
【ヒーリング!マキシマムドライブ!】
その音声と共に、エターナルエッジの刀身はエメラルドグリーンのオーラを纏う。虎はそのエッジで、出久の右腕と右胸を撫でた。
「ッッッッカッ!?ッゥオ゛オ゛オ゛ヴア゛ギェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!ヴェイヴァ゛ァァァァッッ!!」
出久の絶叫と共に右腕と右胸は再生され、その手は跳ね上がって虎の手からエッジをカッ浚う。
「ヴォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!!」
─パキッ・・・ペキピキッ・・・コキッ・・・パキュッ・・・─
尚も絶叫する出久。その体内から異音が発せられ、歪になっていた
「ッア゛ァ~・・・ふぅ、復活!」
─ゴキキッ!ベキベキッ!─
数秒後には、出久は何事も無かったかのように首を回す。
「み、緑谷・・・大丈夫なのか?と言うか、髪の毛の色が・・・」
B組生徒が指摘した通り、出久の髪には暗い紫のメッシュが入っていた。
「あぁ、コレね。よっと」
出久は顎の下に手を添え、メモリを抜く。そのメモリの色もまた、暗い紫色だった。
「コレは
『ッ!?』
言いようの無い悪寒に思わず身震いする面々。それ程までに、今の出久の顔は口角を無理矢理釣り上げたような、狂気じみた笑顔を張り付けていた。その目に光は無く、最も適切と思われる形容はと聞かれれば、『黒洞々たる深淵』だろう・・・一瞬その
「オイ、苦痛の受け過ぎで少々発狂しているぞ」
『発狂!?』
狂気“じみた”、ではなく、本当に発狂していた。そして出久はまるでゾンビゲーマーのような覚束無い足取りで立ち上がり、もう1本メモリを取り出してエッジに装填、ボタンを叩く。
【サイコアナウンセス!マキシマムドライブ!】
「・・・ふぅ。すいません虎、あれしきの事で発狂してしまって」
「・・・少々、休むか?」
「いえ、大丈夫です」
【パペティアー!】
虎の気遣いをキッパリと断った。そしてまた目隠しで視界を潰し、再びメモリを挿してリンチ組み手を再開する出久。
「なぁ貴様等よ、信じられるか?あの分身、最初5人だったのだ。だが、もう2人倒したのだぞ」
『・・・』
最早声を出す気力さえも失い、B組生徒はただ淡々と我ーズブートキャンプのトレーニングメニューを遂行するのだった。
その後、1時間毎に治療の激痛による出久の絶叫が他のトレーニング場まで響き渡り、生徒達のSAN値を大きく削り取る事になった。
─────
────
───
──
─
(出久サイド)
「な~んか、訓練中の記憶がボンヤリとしか無いんだよなぁ・・・」
【ヒート!マキシマムドライブ!】
「聞きたい?」
火起こし中にぼやいていたら、フロッグポッドを持った三奈が顔を青くして聞いてきた。
「聞きたい」
「ふ~ん・・・」
─カチッ─
─ヌ゛ゥン!ヘッヘッ!ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥンッ!!!!─
─カチッ─
・・・えぇ?
「イヤ、こんなの人間の声じゃねぇよ。何の絶叫だ?コレ」
『 お 前 だ よ ッ !! 』
「びゃっ」
全員から叫ばれた。耳痛ぇ・・・
「ったく、無茶すんじゃねぇよアホ。芦戸もスカーレットも心配してただろォが・・・」
「あ、優しいかっちゃん」
「う、うっせぇわボケがッ!」
最近かっちゃんの態度が可愛らしくてしょうがないな。
「なぁ爆豪、爆発で火ィつけれねぇ?」
「おう、任せろ」
かっちゃんは新聞を丸め、それを指で挟んで爆破した。極力威力を絞ったそれは見事に火種を作る。
「加減上手くなってきたな」
───
──
─
「ふぅ、食った」
御馳走様でしたっと・・・ん?
「何が個性だ・・・本当・・・下らん」
俺の人外聴力は、木の陰でボソッと呟いた洸汰の声もしっかりと聞き取った。
「・・・フ~ン・・・三奈、フラン、ちょっと行ってくるわ」
「ん、行ってらっしゃい」
「頑張ってね」
「あいよ」
俺はカレーを一皿盛り、ラップをかけて洸汰の追跡を開始した。
────
───
──
─
「ケッ、何がヒーローだよ、気持ち悪い」キュルルル~
心底不機嫌そうにしている洸汰。だが俺は、その腹の虫の鳴き声を聞き逃さなかった。俺は今立っている崖の上の木から飛び降り、洸汰の後ろに着地する。
「・・・ッ!?な、何でお前此処が!?」
「クハハッ、『蒼炎の死神』を嘗めて貰っちゃ困るぜ?この程度は朝飯前さ♪ちょっとココ、失礼するよ」
俺は中心線をズラさずに歩み寄り、洸汰の横に座り込んだ。
「取り敢えず、腹減ったんだろ?少年。ホラ、食いなよ」
カレー皿を横に置き、ぐでっと力を抜いて寝転がる。持ち前の図々しさが発揮されたな。
「いいよ、いらねぇ。言ったろ、連む気などねぇ。俺のひみつきちから出てけ」
「ほう、良いねぇ秘密基地!ロマンだねぇ!」
ハハハ、キバ先輩のキャッスルドランとか、ダブル先輩達のガレージとか、フォーゼ先輩のラビットハッチ、ドライブ先輩のドライブピット、エグゼイド先輩のCR、ビルド先輩の地下秘密基地なんかが脳裏に浮かぶ。
「“個性”を伸ばすとか張り切っちゃってさ・・・気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ、“
「・・・調べたんだけどな・・・ウォーターホースだろ?君の両親さ」
「ッ!マンダレイか!?」
「まぁ、ちょいとばかしな。事件自体は、良く知ってたからよ・・・」
洸汰は左足を引き、ギリッとこっちを睨みつけてきた。この年にしちゃ、中々の殺気だ。
「皆、みーんなイカレてるよ・・・馬鹿みたいにヒーローとか
成る程ねぇ、この超人社会そのものが嫌いか・・・それに、俺の頭がおかしいってのはしっかり当たってるな。
「確かに、最近のヒーローはおかしな奴らばっかりだ」
「・・・は?」
意外だろうな。まぁ俺自身、洸汰に共感できる事が多いからな。
「昔のヒーローは良かったよ。自分の欲に溺れて個性を振り回す
「だったら「だが」っ!」
─ドゴンッ─
俺は背中に触れる地面を肘で打ち、その勢いで立ち上がった。そして、洸汰の顔に目線を合わせる。
「少なくとも、この狂い切った俺がヒーローを目指す理由は違う」
「はぁ?」
俺は拳を握り締めた。脳裏に浮かぶのは、あの忌々しき出来事・・・
「知ってるからだよ。救える力があるのに、もうちょっと、あとちょっとっていう所で手が届かなくて、目の前の
映司先輩と、理屈は全く同じだ。と言うか、ほぼ同じ経験をしているからな、俺・・・
「どれだけ強い奴も、偉い奴も・・・オールマイトだって、過去においてきた悔しさには、絶対に勝てない。それに比べれば、身体の物理的な痛みなんて高が知れてるのさ・・・届く手を伸ばすのが遅れれば、待っているのは死ぬ程の後悔だ。それが嫌だから、手を伸ばし続ける・・・そんな奴もいるって事を、せめて頭の片隅に置いといてくれると・・・俺、嬉しいな。
ハイ!鬱陶しい話はお終い!ご静聴ありがとうございました・・・じゃあね」
俺は少し助走を付け、木の上を伝って皆の元に戻った。
「・・・何だよ、チクショウッ!」
さぁ、存分に悩んでくれ、少年よ・・・
─────
────
───
──
─
(NOサイド)
─ザアァ・・・─
ワイプシの私有地の外れ。そこは本来、立ち入り禁止区域だった。だが、今ココにいる者達には、道端の石ころ程の事も無い。
「疼く・・・疼くぞ・・・早く行こうぜ!」
マントと仮面で全身を隠した巨漢が、辛抱たまらんと言った様子で口を開いた。その言葉には、あからさまな狂気が滲んでいた。
「まだ尚早。それに、派手なことはしなくて良いって言ってなかった?」
学ランにガスマスクを装着した少年が咎めるように言う。
「あぁ、急にボス面始めやがってな・・・今回は、あくまで狼煙だ」
次に口を開いたのが、恐らくリーダー格であろう男。全身が継ぎ接ぎだらけで、その目はギラギラと怪しい光を湛えている。
「虚に塗れた英雄達が地に堕ちる・・・その輝かしい未来の為のな・・・」
「て言うか、コレ嫌!可愛くないです!」
自分にあてがわれた装備に文句を言う女子高生と思わしき少女。造形が気に入らないらしい。
「裏のデザイナー・開発者が設計したんでしょ。見た目はともかく、理に適ってる筈だよ」
「そんな事聞いてないです!可愛くないって話です!」
ガスマスクの言う事を一刀両断する女子高生。そうとう気に入らないようだ。
「どうでも良いから早くやらせろ!ワクワクが止まんねぇよ!」
マントから左手を出し、ゴキゴキと関節を鳴らすマスク巨漢。その手の甲には、回路基盤のような特徴的なタトゥー・・・
「黙ってろイカレ野郎共。まだだ・・・結構は・・・10人全員、揃ってからだ」
「お待た~」
「
「・・・」
その4人に、更に3人のメンバーが合流する。
──ロン毛・グラサン・たらこ唇の、あからさまにオネェなマッチョ──
──全身を拘束衣で縛られ、歯茎を剥き出しにした男──
──ステインのような布マスクを付け、大剣を担いだ蜥蜴のような男──
その中の拘束衣の男の舌と蜥蜴男の目元にもまた、生体コネクタが刻印されていた。
「口だけのチンピラを幾ら集めようが、ただただリスクが増えるだけ・・・やるなら、
ここでの経験とは、殺人経験の事だろう。
「まずは思い知らせろ・・・」
狂気を孕む脅威は───
「テメェ等の平穏が───」
着実に───
「───俺達の、掌の上だと言う事を・・・」
───すぐそこまで、迫っていた・・・
・・・to be continued・・・
「うっへ~不穏・・・」
『だろう?さぁ、ここからが本番よ!』
「敵の部隊にドーパント3人かよ」
『あぁ、まぁソイツ等の人物像でメモリは大体判るだろ。あ、ネタバレ厳禁で頼みますよ!』