僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1 作:エターナルドーパント
「どうした、何があった」
『ふんぐるぃ むぐるぅなふ~っ くとゅる る・るいぇ うがんなぐる ふたぁぐん!』
「え?マジで何があったの?」
『何、今旧支配者のキャロルを作業用BGMとして聴いてるだけだ』
「ワオ!SAN値がヤベーイッ!!さてさてどうなる第53話!」
(出久サイド)
「奇跡~に~縋~ら~ぬ~と誓~った~のだ~♪」
〈殲琴ダウルダブラ〉の替え歌を歌いながら、今日も元気に分身と殺し合う。昨日の夜、俺は先生方とワイプシのメンバーとを交えて話をしていた。無論補習が優先なので、午前2時から3時まで。内容は、ガイアメモリを使う
ライダーシステム以外では、ドーパントを
ガイアメモリには本来、極めて強い依存性がある事。
ドーパントによる傷は医学による治療が全く出来ず、本人の自己再生能力を信じるしか無い事。
等々・・・仮面ライダー以外だと相手にし辛いんだよな、この国の法律だと。だってヒーローには正当防衛が認められないんだから。
─ゴボンッ─
「あ・・・グプッごう゛あ・・・」
─ビチャビチャッ─
あ~しまった、内臓が損傷したわ・・・組み手の最中に考え事なんて、するもんじゃないな・・・
【ヒーリング!マキシマムドライブ!】
「ギェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!ヴゥゥン゛ッ!!
ふぅ。昔読んだ本曰わく、内臓が傷付く痛みは人生で感じ得る限りで最大級の苦痛らしいが・・・うん、慣れれば意外と大した事無いもんだな」
「いや、そうそう慣れるモノでは無いと思うぞ?と言うか、相変わらず我がドン引く悲鳴だな。地獄で拷問を受ける亡者の声のようだったぞ」
虎に突っ込まれた。まぁ俺は可笑しいからな。仕方無いよ。
「さァ!トッ訓ヲ゛はジめようカッ!」
「最早正気の人間の喋り方ではないな」
「諦めてくレィ!ヴェギャヒャヒャヒャヒャヒャハキャハヒャハヒャヒャヒャ!!!!」
「この、聞く者の心を大きく抉る狂笑よ・・・」
───この日、頭痛や吐き気、悪寒などの症状を訴える生徒が続出したと言う。コレについて相澤は、「悲鳴にも慣れさせておいた方が良いだろう」と言って放置したとかしてないとか、そんな事になったんだとか・・・───
「フぅ~、休憩っト・・・」
「お前、流石にもう止めとけ。人格がブッ壊れるぞ」
あ、相澤先生が見に来た。
「アぁ、お構イ無く。コレが今ノ俺の壁でスかラネ・・・
実際、ここにいる誰よりも高く、凶悪な壁だろうな。俺は・・・
「あ、そう言えば・・・オールマイトは来ないんですね」
お、漸く口調が落ち着いてきた。
「あぁ、今回はどっから情報が漏れるか分からないからな。必要最低限だ。そして、オールマイトは
「馬鹿みたいに悪目立ちしますからね。はい胃薬」
「・・・」スッ
あ、受け取った。やっぱりストレス漬けだったみたいだ。
「ねこねこねこ・・・それより皆!今日の晩はねぇ・・・クラス対抗肝試しを決行するよ!訓練した後は、しっかり楽しいことがある!ザ・飴と鞭!」
「へぇ・・・まぁ今は関係無いよね。と言う事でッシャァ殺し合うぞオr─ゴボンッ─あっぐじゅひゅっ」
─ベチャベチャッ─
【ヒーリング!マキシマムドライブ!】
「オ゛キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛オ゛ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!ヴッヴッヴェッヴァッヴッ!!ヴェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
─────
────
───
──
─
─トンットンットンットンッ─
「わぁ~カツキ君包丁捌き鮮やか~!」
「あ?いや、これぐらい普通じゃねぇか?」
「ううん、お恥ずかしながらここまで上手くは。それで、その・・・お、教えてくれはる?///」
「・・・おう///」
わぁ!かっちゃんが麗日の両手を後ろから握って教えてる!尊ぇ!尊ぇよこりゃ!
─ザクザクザクザクザクザクッ!─
「出久、凄いホンワカした顔で空中食材切断してるけど・・・ちょっと怖いよ?」
「おう、済まんな!いやはや、何故か可笑しなテンションになってるせいかな!野菜を切り刻むのが楽しくて仕方無いんだ!」
「・・・あぁ~もう!出久!こっち向いて!///」
「三奈?どうしむっ!?」
─ズキュゥゥゥンッ!─
「ッ!・・・?」
「んむぅ~・・・ぷはっ!・・・出久、どう?正気に戻った?///」
・・・あ、俺発狂してたんだ。それを三奈がキスで引っ張り戻してくれたんだな。
「・・・その、美味しかったです///」
「ッ!?///ば、馬鹿ッ!///」
あ、しまった。三奈が元々ピンクの肌を更に紅くしてる・・・うん、コレで正解だったな。
「緑谷死ね─バゴンッ─ブッ!?」
「あ・・・」
後ろからモギモギを振りかぶって飛びかかって来た峰田に反射的にカブトキックを叩き込んだ。何十回と繰り返した攻撃だからな。
「峰田、今回は流石に私達にも非があるけどさ・・・まぁどっち道庇えないし庇う気も無いけどね」
あ、三奈が養豚場の豚を見る目をしてらっしゃるわ。
「君達!世界一の肉じゃがを作るんだッ!」
「何だよ世界一の肉じゃがって」
「それは!・・・」
「おい、言い淀むなよ」
また空回ってるなぁ飯田。にしても・・・
「久々のキス・・・甘酸っぱかったな」
「い、出久っ!///」
「いや、スマン。御無沙汰だったから、つい・・・」
・・・何かピクシーボブも凄い顔して睨んでるが・・・大方、選り好みしてたら何時の間にか30代になって焦りだしたって所か。自業自得だな。
─────
────
───
──
─
「さて!腹も膨れた!皿も洗った!お次は~?」
「肝を試す時間だー!!」
わぁ三奈嬉しそう・・・だけど、多分・・・
「あ~、喜んでるとこ気の毒だが」
「?」
「補習組は、これから俺と補習授業だ」
「 ウ ソ だ ろ ッ !? 」
・・・ホントに残念だ。つか顔が凄いな三奈・・・
「済まんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたからな。コッチを削る」
「堪忍してくれ~!」
「試させてくれ~!」
・・・きっと、あれだな。お盆の終わりに獄卒に地獄へ再連行される亡者達ってあんなんなんだろうな・・・
「三奈!頑張れたら何でも1つ言う事聞いてやるよ!」
「 頑 張 る ッ ! 」
よし。コレで大丈夫だろう。さて・・・
「かっちゃん」
「ん?どうした?」
俺はかっちゃんにウェストポーチを渡した。かっちゃんは何かを察したらしく、パチッとポーチを装着する。
「・・・で、何でだ?」
「念の為さ。世の中、『有り得ないなんて有り得ない』んだ。このご時世なら、尚更な」
「・・・わかった。もう片方渡せ。お茶子に伝えとくからよ」
「有り難い」
俺は麗日の分のポーチをかっちゃんに預け、遂に肝試しが始まった。
「はい!と言うわけで、脅かす側先攻はB組。A組は二人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いた御札があるから、それを持って帰ってくること!」
「闇の狂宴・・・」
常闇が何か言ってるな。
「脅かす側は直接接触禁止で、個性を使った脅かしネタを披露してくるよ!」
「創意工夫で、より多くの人数を失禁させたクラスが勝者だッ!!」
「きったねぇなオイ」
虎、なんて事を・・・あ、マンダレイが何か諦めたような顔してるわ。
───12分後───
「じゃ、5組目・・・ケロケロキティとウララカキティ、GO!!」
麗日と梅雨ちゃんが行ったな。さて、俺達の番が楽しみ・・・ッ!
「ピクシーボブ!危ねェ!!」
「へ?」
─ガギャンッ!─
ピクシーボブの背後にある林・・・そこから、良くない気配を感じた。
俺は反射的にその位置に向かって跳び蹴りを叩き込む。思った通り、金属を蹴りつけた感触があった。
「ちょっ!何よこの子!?」
俺はその場から蹴りつけた金属を足場にしてバックジャンプで素早く戻る。
出て来たのは、大剣を背負った蜥蜴男と見るからにオネェな奴。今蹴りつけたのは、オネェが持ってる棒状のアイテムだったようだ。
「ッたァく・・・何でこう、邪魔が入るかなァ・・・」
「な、何で・・・?万全を期したんじゃ・・・
何でッ!!
峰田が五月蠅いな・・・取り敢えず・・・
「マンダレイ!洸汰がいる場所、知らないだろ!」
「え!?えぇ・・・」
やっぱりな。流石は冴えてる洸汰だ。《秘密》って言葉の意味も、シッカリ理解してるよ畜生ッ!
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら
「楽しい合宿を邪魔されてよろしい筈無いだろうが!貴様ッ!頭脳が間抜けかッ馬鹿がァ!!」
取り敢えず、邪魔された鬱憤も込めて全力で罵ってみた。
「あら、生意気な口きくわね。殺しちゃおうかしら?」
「させぬわこのッ・・・」
「早まるなマグ姉!虎もだ、落ち着け。生殺与奪は全て────
・・・成る程。質の悪い
「ステイン!あてられた連中か!!」
ったく、『兄さんが順調に回復して、今リハビリで少しだが走れるようになってきた』って飯田が嬉しそうに言ってたのに、その尻からコレか。
「そして、アァそうそう!俺はお前、君だよ
そう言って蜥蜴男ばポケットから何かを・・・ッ!
「申し遅れた、俺はスピナー────」
【アームズ!】
「────
そう言って、背中に背負っていた大剣を構えるスピナー・・・否、アームズドーパント。その大剣は、鉈やコンバットナイフ、ククリなどの刀剣類を鎖や革ベルトで幾つも束ねて紡いだ、正に奴の自称を表す武器だった。
「・・・ハァ、本ッ当に───最ッ悪だ・・・!」
俺は呟きつつ、肩から先を脱力する。強張ってはいけない・・・
「皆!施設まで走って!戦闘行為は絶対にしちゃダメ!」
「いや、無理だろ」
「!」
流石にコレ相手は、な・・・
「敵連合・・・前に遭遇した死柄木弔は、メガネウラのドーパントメモリを持っていた。そして新顔である
「でも、許可は出来ないわ!」
だよなぁ・・・だったらせめて!
「マンダレイ、失礼するぞ」
【パペティアー!マキシマムドライブ!】
俺はパペティアーのマキシマムを発動し、指から極細ケーブルを伸ばしてマンダレイの頭に接続した。
「ひゃっ!?な、何を!?」
神経回路接続完了!個性強制発動!
『
よし、言わなきゃいけない事は言えた!
「ちょっ!あなた勝手に!」
「済まない。だが仕方無いんだ!ドーパントは今言った通り、普通のヒーローでは倒せない!殺せるなら別だがな!」
「ッ!」
・・・にしても・・・
「ありがとよ、律儀に待っててくれて」
スピナー・・・いや、アームズドーパント・・・何を考えてるんだ?横の
「いや何、ステインがファンクラブ会員であった人物の判断力がどの程度か、些か興味があっただけだ」
「うっそだろオイ・・・」
アイツ俺のファンだったのかよ・・・結構複雑だな。
「飯田!取り敢えず皆を連れて施設に逃げろ!マンダレイ!俺は洸汰を拾ってくるから、時間稼ぎ頼んだぜ!」
「ッ!あぁもうッ!お願い!!」
よし、これで一応は動ける!
「ドーパントから受けたダメージは医学が通用しねぇから、被害者の自己修復能力を信じるしか無ぇ!極力怪我はするなよ!『境界符・スキマゲート』!」
俺はスキマを秘密基地の上空に開き、勢い良く飛び込んだ。
(爆豪サイド)
「マジかよ・・・」
俺は出久からのメッセージを聞き、冷や汗を流す。まさか出久と同じように、メモリを使う奴が来るとはな・・・
「ねぇ爆豪。グリスとローグって、誰だろうね?そんなコードネームの生徒っていたっけ?」
そうだ、俺達まだ言ってないんだった・・・
「・・・さァな。にしても、このガスも
俺達は奇妙なものを見て、足を止める。
「あぁ、ひぇいあにくうぇん・・・あぁ、ゆうわくするなよぉ」
それは、真っ黒な服で何かブツブツ言ってる男・・・このタイミングだと、間違いないよな。
「なぁ轟・・・俺らの前、誰と誰だった?」
「・・・障子と、常闇」
「ひごこひなひゃ」
ソイツの足元には、切り落とされた腕・・・もう間違いねぇな!
─ブチブチッ─
「ッ!アイツ、拘束衣を・・・」
奴は右手の拘束衣を引き千切り、手に持った
【ファング!】
「ドーパント、かよッ!」
奴は舌にそのメモリを挿し、異形に変身する。
──ギラつく鋭利な牙が歪に並んだ、凶暴性剥き出しのクラッシャー──
──腕に付いた、永遠亭のハンターみたいなアームカッター──
──肉食恐竜を思わせる、鋭い爪の付いた指行性の足──
──手足の指に付いた、鎌のような鋭い鉤爪──
──獲物を逃がさないであろう、赤い瞳──
「・・・最悪かよッ!」
(麗日サイド)
「ふぅ~、やっぱ怖いねえ」
私は梅雨ちゃんと手を繋ぎながら、肝試しのルートを歩いている。さっきから凄い悲鳴が上がってて、背筋がゾクゾクする・・・ん?
「・・・焦げ臭い?」
木が焼けるような、そんな臭いが・・・ッ!
「梅雨ちゃん危ない!!」
「ケロッ!?」
私が梅雨ちゃんを突き飛ばしたと同時に、後ろからナイフが突き出された。そのナイフは私の腕を浅く掠めて、瞬時に引き戻される。そちらに目を向ければ、ナイフを持っていたのは私達と同い年ぐらいの金髪の女の子・・・
でも、あれはダメだ。ダメな
「う~ん・・・浅い!少ない!」
ナイフに付いた私の血を見て、そう言った。出久君曰わく、血に反応する奴は3パターン。血を何かに利用する個性というパターンか、単純に流血で興奮するタイプの変態か、もしくはその両方か・・・
「急に斬り掛かってくるなんて酷いじゃない。何なのあなた」
「トガですっ!2人ともカァイイねぇ。麗日さんと、蛙吹さん!」
・・・やっぱり、名前バレはしとるよね。
「体育祭でも、目立っちゃったからね。情報は割れてて不利か・・・」
ヒーローはこういうトコが辛いな。自分の情報は知られてて、敵の情報は全く知らない。
「血が少ないとね?ダメです。普段は切り口からチウチウと・・・その・・・吸い出しちゃうのですが・・・」
そう言ってトガは、背中に背負った機械から何かのアタッチメントを取り外して構えた。その筒状のアタッチメントにはチューブが付いており、背中の機械に繋がっている。そして、その先端から鋭い針が伸びた。
「この機械は、突き刺すだけで勝手にチウチウしてくれて、お仕事が大変捗るとのことでした。
刺すね♥」
・・・コレは、同じ人間と思っちゃいけない奴だ・・・
(出久サイド)
秘密基地上空10mにスキマゲートを開いた俺の眼下には、怯える洸汰に殴りかかろうと拳を振り上げる黒マントの巨漢が見える。やっぱりいたな!
「フッ!」
俺はすぐさま黒マントに蹴りを叩き込んだ。腕で防がれたが、その腕を足場にして洸汰の方にジャンプ、着地する。
「無事だな!洸汰!」
「あ、あぁ・・・」
ったく、間に合って良かったなァ!
「おぉ!お前緑谷出久だろ!本気でぶっ殺しても大丈夫だって言われてるんだよなぁ!」
・・・義眼になった左目、そして皮膚の上を覆う筋繊維・・・そうか、コイツが!
「会いたかったぜ・・・質の悪い
コイツは、殺す気で行かなきゃなァ・・・
「まぁ待てよ」
待たない。
─ドゴンッ─
俺は合金板ブーツで奴の股間を思いっ切り蹴り上げた。だが・・・
「オイオイ、ヒデェじゃねぇかよ」
「チッ、太股の筋繊維を増強して防ぎやがったか!」
潰す気で蹴ったんだがなァ・・・
「もう良い!最初から本気で行くぜ」
そう言って奴は義眼を交換し、やはりと言うべきかガイアメモリを取り出して左手の甲に挿す。
【バイオレンス!】
「・・・コレは、良くないな」
奴の身体がボコボコと膨らみ、赤黒く変色していく。その姿は正に、暴力の化身・・・
「サァ!行くぜェェェェッ!!」
かなり早いが、大振りなパンチ。この程度なら避けられる!
「洸汰!跳ぶぞ!」
俺は洸汰の腕を掴み、ジャンプで避けた。
─ゴゴガァァンッ!!バキャバキャッ!─
奴の拳は地面に当たり、足元の岩盤を粉砕する。流石はバイオレンス・・・ッ!!
「オイオイ・・・ドーパントになったら、使えないんじゃ無かったのか?何で・・・何でッ!───
───
奴の腕には、ウゾウゾと脈動する赤黒い筋繊維がまとわりついていた。死柄木弔は『個性は使えなくなる』と言っていたのに・・・
「知るかよそんな事ァ!!」
奴の手口が分からない以上、打って出るのは危険・・・
「なぁ・・・俺達、殺されるのかな?」
聞こえた・・・背負っている洸汰の、不安気な涙声が・・・仕方無いか。
「大丈夫!」
─ガチャッ─
俺は洸汰を下ろし、ロストドライバーを装着。そして、洸汰の頭を撫でた。
「だって俺───仮面ライダーだから!」
そう言って俺は、精一杯の笑顔と一緒にサムズアップをしてみせる。洸汰の目の中に、微かな希望の光が灯った。
「だから、見ててくれ・・・俺の────」
【エターナル!】
俺はロストドライバーにエターナルメモリを装填し、左手をバックルの上に添えて右手を左上に伸ばす。そして、メモリのエネルギー増幅音が鳴り響く中、左手を左腰に、右腕を正面にスライドさせ・・・
「────《変身》ッ!!」
叫んだ。
同時に右腕を左手の上に移動させ、右肘でロストドライバーのスロットを倒す。
【エターナル!~♪~♪】
俺の身体は白いガイアアーマーで覆われ、手足には蒼い決意の焔が灯る。漆黒のエターナルローブがはためき、複眼が強く黄金色に光った。
「やっと変身したなァ!!」
嬉しそうに叫ぶバイオレンスドーパント。奴の言葉に耳を貸さず、俺はエターナルローブを外して洸汰に着せた。ありとあらゆる攻撃を阻むこのローブなら、洸汰を護ってくれる。
「さぁ、来いよドーパント・・・俺が・・・仮面ライダーエターナルが!相手になってやるッ!」
(NOサイド)
「オォラよッ!!」
真っ先に仕掛けたのは、バイオレンスドーパント。腕の筋肉を個性で水増しし、桁外れの質量とエネルギーを持って襲い掛かる。それに対してエターナルは・・・
「フッ!」
一気に、間合いを詰めた。その腕の射程圏の、更にその内側に侵入する。そして・・・
「トァッ!」
─ボゴンッ─
脚・背骨・腕・・・全てを同時に動かし、バイオレンスの腹に発勁を叩き込んだ。
「ゴヘァッ!?」
4~5歩分吹き飛ぶバイオレンス。しかし、出久はマスクの中で冷や汗を垂らしていた。
「(重い・・・何より、エネルギーが
本来発勁とは、相手の装甲をすり抜けて内部中枢に直接ダメージを浸透させ叩き込む技術。だが、バイオレンスの分厚いタイヤのような筋肉と、その下に潜む金属質の強化皮膚によって、エネルギーが分散させられてしまったのだ。
「効かねェなぁ!仮面ライダーさんよォ!もっと楽しませろやァ!!」
再び筋肉を増量し、殴り掛かるバイオレンス。それに対して、エターナルは1本のメモリを取り出した。
「取り敢えず、同じエネルギーで相殺してやらァ!!」
【バイオレンス!マキシマムドライブ!】
それは、敵と同じバイオレンスメモリ。エターナルの右腕に赤黒いエネルギーが集中し、筋肉の代わりに腕力を増強する。
「ブロウクンマグナムッ!!」
─衝撃波、暴風、爆音─
その拳同士が衝突した瞬間、それら全てが周りのモノを薙ぎ倒す。唯一無事だったのは、エターナルローブにくるまっていた洸汰と、バイオレンスだけだった。
─ガゴンッ!─
「クハッ・・・!?」
エターナルはパンチ勝負で押し負け、崖にめり込まされてしまった。T1のドーパントメモリであるにも関わらずT2である自分に押し勝ったその威力に、エターナルの頭には激痛と共に、納得が込み上げる。
「成ァる程・・・過剰適合か・・・そして、個性とメモリの性質がほぼ同じ・・・それ故に、変身しても個性が使えるんだな」
謎が解けてスッキリしたと同時に、血の気が引くのがエターナルには分かった。
【サイクロン!マキシマムドライブ!】
サイクロンで風を集めて吸収し、若干回復するエターナル。そして同時に、バイオレンスを倒す算段も付けた。
「チンタラ休憩してんじゃねぇぞ!!こちとらワクワクが止まらねぇんだよ!!」
バイオレンスは堪忍ならんという仕草でまた殴りかかった。
「悪ィな!!」
【ダミー!エンチャント!パペティアー!マキシマムドライブ!】
エターナルはエターナルエッジを取り出してダミーで増やし、パペティアーの糸でそれをバイオレンスに向けた。
「発射!」
瞬間、数十本のエターナルエッジがバイオレンスに殺到する。しかしバイオレンスは筋繊維を増やして、楽々とエッジの雨を受け止めた。
「オラオラ!そんなんじゃあ霰ほども効かねェぞ!」
エッジを筋繊維に巻き込みながら、今度は蹴り掛かる。それもエターナルは避け、またエターナルエッジを飛ばした。ちまちまとした攻撃に苛立つバイオレンス。
「オイコラ!!やる気あんのかよテメェ!!」
「・・・そろそろだな」
バイオレンスの絶叫を無視し、呟くエターナルその仮面の下の顔は、吐血しながら笑っていた。
「最初に言っておこう。お前は後・・・
「ハッ、やってみ──キィィィィ──ッ!?何だ!?」
強気に言いかけたバイオレンスの手足が、赤熱化し始めた。ここからは、エターナルのターンだ。
─ガンッBBBBBBBOM!!─
「ゴヘァッ!?」
「・・・1」
エターナルがバイオレンスの腕を蹴りつけると、腕部の中で連鎖爆発が発生。水増しされた筋繊維が弾け飛び、その下の強化皮膚も大きく抉れた。
「こ、コレは・・・ッ!さっきのナイフか!?」
「2!」
「ッ!しまっ───」
─ガチッBBBBBOM!!─
「グアアアアアアア!?」
2手目は、右腿。エターナルは内股に強く爪先を抉り込んだ。それにより爆破スイッチが入り、太股の筋繊維も吹き飛ぶ。
「す、スゲェ・・・」
エターナルローブにくるまっていた洸汰が呟いた。先程まで押されていたエターナルが、今は逆転して自分の親の仇を追い詰めている。
「行け・・・ッ!
行ッけェェェェッ!!仮面ライダァァァァァァ!!」
「3ッ!
─DOGGGGGGGGOHM!!─
その声に答えるように、出久は3手目のパンチをバイオレンスの胸に叩き込んだ。大きく吹き飛ばされるも、まだ立ち上がるバイオレンス。だが、その膝は生まれたての山羊のごとく震えていた。
「爆発で、お前の血中に二酸化炭素を大量に送り込み続けた。そして、4手目・・・」
【ナスカ!マキシマムドライブ!】
それは、風都を愛した仮面ライダーと時にぶつかり、時に共闘し・・・最期は愛する風に包まれ、儚く散って行った男のメモリ。今その力が、救いを求める者を救い出す為に振るわれようとしていた。
「コレで決まりだ・・・ハッ・・・ハァァァァ~・・・!」
エターナルが腰を落として、アギトと同じライダーキックポーズを構える。すると、地面にコンドルの紋章が現れた。それはエターナルの右足に収束し、その純白のガイアアーマーと三本の角から黄金のオーラとなって立ち上る。
「ハッ!!」
そしてエターナルは大きく跳躍し、バイオレンスに向けたその脚から放たれる必殺技!
─── ラ イ ダ ー キ ッ ク !! ───
─ドゴォォォォンッ!!!!─
「グァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!?」
─パキンッ─
放たれたキックは正確にバイオレンスの胸部に炸裂し、爆散。その炎の中から血狂いマスキュラーが倒れ、排出されたバイオレンスメモリは粉々に砕け散った。
「
エターナルは倒れたマスキュラーに背を向け、サムズアップした右手を横に伸ばす。そして・・・
「さァ・・・地獄を、楽しみな!!」
勢い良くひっくり返し、サムズダウンの形に変えた。その姿は正に、地獄から来た白い死神そのもの。だが救われた洸汰にとって、その蒼炎の死神は───
「・・・スゲェ・・・」
───カッコ良い最高のヒーロー、そのものだった・・・
──────to be continued・・・
『過去最高の出来だと自負しているぜ、今回のは』
「お疲れ様。狂気は抜けたか?」
『あぁ。今は最高の気分だ。さて、次回は他のドーパント達との戦いだ!せーの!』
「『次回もお楽しみに!!』」