僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1   作:エターナルドーパント

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『すいません、ちょっとこっちに回す気力無いんで。では早速、どうぞ』
「投げやりすぎじゃね?」


第七章・最終決戦
第55話・出久奪還作戦/Nの始まり


 

(爆豪サイド)

 

合宿襲撃2日後。俺らは今、合宿場近くの病院に来ていた。頭を脳無に殴られた八百万と、ガスで意識不明の耳と透明の見舞いだ。

「皆さん・・・」

「よぉ八百万!何とか大丈夫そうだな」

ベッドの上で体を起こす八百万に、切島が話し掛ける。八百万は頭に包帯こそ巻いているものの、一応は平気そうだ。

「皆さん、お揃いで・・・」

「いや、耳朗と葉隠がまだ意識不明だ。その3人を除いた・・・」

1()6()人・・・だよ」

お茶子が、切島の言葉を継ぐ。

「出久が、いねぇからな」

最後に俺が締めた。見てみれば、芦戸とスカーレットの目は怒りで燃えている。

「・・・出久が、言ってたんだよ・・・手の届く所にいる奴を助けられなかったら、死ぬ程後悔するって・・・だから、ヴィジランテになってまで、人助け(やりたい事)をやってたんだって・・・」

ギリギリと拳を握り締めて、言葉を紡いだ。

「今、その意味がよく分かる・・・」

そら、こんな気分になるよりゃ後ろ指指されて追い回される方がマシだわな。

「だったら、助けに行こう」

切島の言葉に、俺達は一瞬固まって・・・ライダー適合者は、本気の目になった。

「あぁ・・・ドーパントに勝てるのは、仮面ライダーだけだ」

「あの後、奇跡的に没収とかはされなかったからね。私達のドライバー」

確かにな。もしかしたら、この間にドーパントが来た時なんかの為の自衛手段とかなのかも知れんが・・・

「何より、出久に頼まれたからな」

恐らくあの『頼むぞ』は、俺達の助けを期待してくれて言ったんだろう。だったら、答えねぇといけねぇよな。

「八百万、昨日警察とオールマイトに話してた受信デバイス、創ってもらって良いか?」

「待つんだ君達!!これはプロに任せるべき案件!生徒(俺達)が出ていい舞台では無いんだ馬鹿者!!」

「分かってるよ!でも、(ヴィラン)が来て緑谷達が戦ってるってのに・・・なんっっも出来なかった!しなかった!!ここで動かなきゃ俺ァ、ヒーローでも・・・男でもなくなっちまうんだよ!」

「切島、もう良い。分かってるよ・・・だから、静かにしろ。ここ病院だろうが」

「あ、済まねぇ・・・」

俺の声に、素直に声のトーンを落とす切島。

「だけどよ・・・まだ、手は届くんだよ!」

その言葉で思い出されるのは、異世界で聞いた出久の過去と言葉・・・

 

───手が届く目の前で光が消されれば、助けられなかった事を死ぬ程後悔する。だから、手の届く範囲は絶対に守りたいんだ───

 

その後に『ま、先輩の受け売りだがな?』と付け足しながら見せた、何処か哀しげなクシャッとした笑顔も浮かんだ。

「つまり八百万から受信機もヤツ貰って、それを辿って助けに行くって事か!?」

上鳴の顔には冷や汗が浮いている。当然だろうな。危険過ぎるから。

「アイツ等、私達は殺害対象って言ってた。なのに緑谷を浚ったって事は、利用価値があるって事・・・だけど、死んでないとも言い切れない。だから、私と切島は行く。芦戸とフランちゃんも行くって」

轟の言葉に視線を動かせば、芦戸とスカーレットは先程の怒りと共に決意も目に宿していた。そして右を見れば、お茶子も同じだ。

「ふっ────ふざけるのも大概にしたまえ!!」

「待て、落ち着け」

怒鳴る飯田を、し・・・し・・・障子か。障子が宥める。

「切島の『何も出来なかった悔しさ』も、爆豪の『眼前で奪われた』悔しさも分かる。俺だって悔しい。だが、これは感情で動いて良い話じゃない」

感情で動いて良い話じゃない、か・・・

「オールマイトに任せようよ・・・戦闘許可、もう解除されてるし」

「青山の言う通りだ・・・助けられてばかりだった俺には、強く言えんが・・・」

「・・・っ」

手から鋭い痛みが伝わって来た。見てみれば、握り締めすぎたのか人指し指に親指の爪が食い込んでいる。血も滲んできた。

「皆、緑谷ちゃんが攫われてショックなのよ。でも、冷静になりましょう。どれ程正当な感情であろうと、ルールを破る(戦闘を行う)と言うのなら────その行為は(ヴィラン)のそれと同じなのよ

 

───(ヴィラン)のそれと同じ───

 

だが・・・出久を攫ったんだぞ・・・それに、俺達以外でドーパントに真っ向から対抗可能なのは・・・デッドプールにアマゾンズ・・・そして、急遽駆けつけてくれたスカーレットの姉貴・・・後は、ブラッドスターク。それだけの筈だ。そして奴等の所には、確実にドーパントがいるだろう。もしかしたら、脳無って奴がドーパントになるかも知れない。それに対して、ヒーロー達は戦えるのか・・・?

 

「行くならソッコー、今夜だ。集合は、この病院前な」

「あたし、出久の家からデンデンセンサー借りてくるよ。他のメモリガジェットも、幾つかスペアがあったし」

「・・・応」

 

─────

────

───

──

 

「・・・よぉ、お前も来たんか」

「・・・」

時は過ぎて、集合時間。集まったメンバーは、俺、お茶子、芦戸、スカーレットのライダー適合者に、言い出しっぺの切島、今回の要の八百万、志願した轟、そして・・・飯田。

「・・・君達は・・・ッ!俺達はまだ保護下に居る。ただでさえ雄英が大変な時なんだ・・・君らの行動の責任は誰がとるのか、分かっているのかッ!?」

飯田は叫びながら俺の胸倉を掴み上げ、睨み付ける。その目に浮かぶのは、怒りと心配、そして・・・悔しさ。

「・・・それでもよ・・・頼まれたんだよ、俺達は。だから、行く・・・それが、仮面ライダー(本当のヒーロー)ってヤツだと思うからよ」

俺は飯田から目を逸らさず、はっきりと言った。

「アァッ!」

 

─ガキッ─

 

「なっ!?」

飯田が繰り出した右フックを、俺は何とも無しに掴んで受け止める。ハザードレベルが上がっているせいか、かなり鍛えている筈の飯田のパンチでも全く響く事は無かった。

「・・・流石は、化けモンに仲間入りした身体・・・いや、個性持ってるから化けモンは元々か」

飯田の手を離して、その掌を見つめてみる。意識を集中してみれば、適合前よりも明らかに強く力が込められるようになっている事が、何となく分かった。

「だが、例え兵器(バケモノ)になったとしても・・・この力で、誰かを護る事、救う事が出来るんだ。そりゃ無責任かも知れねぇ。でもよォ・・・だからって、助けを求めて伸ばされた手を振り解いて良い理由になるはずがねェだろッ・・・!」

また、平行世界で出久から聞いた話を思い出す。それは、出久が変わっちまう切っ掛けになったと言っていた、あの胸糞悪ィ出来事。

「届く手ェ伸ばさずにただ待ってるだけじゃ、この力貰った意味がねぇんだよ!だから俺達は行くんだ!自分が信じるヒーローを貫く為にッ!」

俺は拳を握り締めて叫んだ。それが、ヒーローってモンだと思うから。

「万が一の場合は、私がストッパーになる為に、同行するつもりで参りましたわ」

「八百万君!?」

「八百万!」

八百万の同行が決定した。つまり、作戦のピースは揃ったって事だな。

「・・・俺だって、無謀だってのは分かってる・・・でもよォ、手が届くんならよォ・・・助けたくなって、当然だろ?」

「・・・平行線か・・・」

飯田は息を付いて、一旦クールダウンする。そしてまた視線を上げ、再び口を開いた。

「ならば、俺も連れて行け」

「・・・分かった」

 

───

──

 

「暴力を振るってしまった事、陳謝する。ごめん・・・」

「本当ですわ飯田さん。()()()()()()に対して、説得力が欠けてしまいます」

「気にすんな。どっちみち効いてねぇ」

頭を下げる飯田に、俺はピッピッと手を振る。一応手をグッパしてみるが、痛みや違和感も全く無い。

「俺は、君達の行動に納得がいかないからこそ同行する。少しでも戦闘に発展しそうなら、即座に引き戻すからな!言わばお目付役・・・そう、ウォッチマン!

「ウォッチマン飯田・・・」

構え即引き戻し、か。そりゃキツいな・・・

「私もですわ。これはプロの仕事。端から見れば、あなた方が出張る必要は一切ありません。しかし、お気持ちが分かるからこその妥協案と言うことをお忘れ無きよう」

そう言って受信機をポケットから取り出す八百万。ホント、コイツの個性は頼もしいわ。

 

─────

────

───

──

 

「発信機の示した座標は、神奈川県 横浜市 神野区。長野からこの新幹線で約二時間・・・10時頃の到着です」

新幹線の中でそれぞれ晩飯をつつきながら、八百万の話を聞く。因みに俺はドラゴンゼリー2パック。お茶子はカルビおにぎりで、芦戸はプロテインバー、スカーレットはカツサンド。そして切島、飯田、八百万は唐揚げ駅弁だ。

「・・・なぁ轟、この出発の詳細・・・他の奴等にゃ伝えてんのか?」

「うん。言ったら余計止められたけどね」

・・・これは、少々拙いな。相澤先生にバレたときゃ、下手したら全員除籍なんかも有り得るか・・・

「一応、聞いとくよ」

「あ?」

唐揚げを摘みながら、轟が口を開く。

「私達がやろうとしてるのは、誰からも認められない・・・所謂エゴってヤツだからさ・・・引き返すなら、まだ間に合うよ?」

「迷うくらいならそもそも言わねえ!それに・・・アイツは俺等ン中で、一番ヒーローを目指してた。そんな奴が(ヴィラン)共の良いようにされて、良い筈ねぇだろッ・・・」

確かに、出久は誰よりも仮面ライダー(本物のヒーロー)に憧れてたよな・・・まぁ戦場仕込みって経験から、脳無を消し飛ばしたり色々レッドゾーンスレスレな事もしたが・・・でも、俺を救ってくれたアイツは、間違い無くヒーローだ。『メッチャ危なっかしい』が頭に付くが・・・

「待ってろよ、出久・・・」

そう呟き、俺は残りのゼリーを一気に飲み干すのだった。

 

(NOサイド)

 

「ここか」

受信機の反応を頼りに、廃倉庫に辿り着いた爆豪達。因みに顔バレしている為、全員変装している。爆豪は髪を茶髪にして持ってきていたモッズコートを羽織っており、麗日はローグ変身時のような殺る気のある目で黒い革ジャンを肩に掛けている。三奈はメイクで肌色を普通に変えウィッグをかぶり、フランはサイドテールを赤メッシュに染めて、下はGパン、上に此方も革ジャンというボーイッシュスタイルだ。因みに翼は収納している。

「えぇ、ここが発信機の示す場所ですわ。少なくとも丸一日間、(ヴィラン)はここから動いていません」

「だが、脳無はあくまで兵器らしいからな。電気も点いてねぇし、差し詰めここはその保管庫・・・若しくはメンテナンスエリアって所か」

爆豪が考察しつつ、チョイチョイと指で招きながら細い路地裏に入った。他のメンバーもそれに続く。

「っと、狭いね」

愚痴をこぼしながら進み、一行は窓の下に着いた。

「麗日、浮かして」

「んっ」

麗日の個性で三奈を浮かし、三奈は持っていたデンデンセンサーで窓の中を覗き込む。

「赤外線センサーなんかは無しっと・・・ッ!!・・・麗日、爆豪浮かして」

「了解」

指示に従い、今度は爆豪を浮かせる麗日。そして爆豪は壁を軽く蹴り、窓の位置までスイスイと移動する。爆速ジェットによる立体軌道慣れの賜物だろう。

「どうした」

「・・・あれ」

「・・・ッ!」

爆豪は三奈に渡されたデンデンセンサー越しに倉庫の中を覗き、絶句した。その中にあったのは・・・

「・・・成る程なぁ・・・さっき、思った通りだったって訳か」

大量のコンクリート水槽と、その天辺から微かに覗く、()()()。その見えた脳味噌(モノ)は、水槽の中身が何であるかを爆豪に理解させるには十分すぎる材料だった。

「・・・見た所、培養液、か?みたいなモンに浸けられてるな」

「メンテかな?」

「あれで栄養を注入して、身体を維持してるってのも考えられる。ウィルの兄貴んとこのB.O.W達も、そうして造ったって言ってたしな。前に永遠亭に連れて行って貰った時、特別に培養室を見せてもらった。あそこと雰囲気が似てる気がする」

 

─ドゴォォンッ!!─

 

『ッ!?』

突如、途轍もない爆音と風圧を伴って、格納庫が半壊した。そして月光が差し込み、巨大な脚のシルエットと複数の人影が浮かび上がる。

「プロヒーロー、来たか」

「ワイプシの虎さんとマンダレイさんもいるね。取り敢えず麗日、解除」

「分かった」

指示を聞いた麗日が一旦個性を解除し、2人は地上に戻った。

「このまま、上手く行ってくれりゃ良いんだがなァ・・・」

危なげなく着地する爆豪の胸には、一抹の不安がくすぶっていた。

 

─────

────

───

──

 

─ズズ・・・ン─

「・・・?揺れた、か」

上半身裸で目隠しをされ、手術台に縛られながら、出久は僅かな振動を感知した。しかし、出久は身動ぎ一つしない・・・否、()()()()

「ふむ。意外と早かったねぇ」

出久の横に座っていた、全身に様々なチューブを繋ぐ目も鼻も無いのっぺらぼうのような男・・・オール・フォー・ワンが呟く。その後ろには、2人の男が立っていた。1人は真っ白なスーツを着ており、もう1人は黒のスーツを来ている。そして2人の共通点は、鼻から上を覆うそれぞれのスーツと同じ色の仮面(マスク)だ。

「丁度良かった。緑谷出久での実験は、もう飽きてきた所だ。実験材料の調達と行こうじゃないか」

黒スーツはそう言ってゴキゴキと首を回す。マスクから覗くその目は爛々と怪しく輝き、口角が釣り上がった。

()()()()()()の戦闘実験も一緒に行いましょうか」

そう言って白スーツは赤いナニカを2つ取り出し、片方を黒スーツに渡す。

「さぁ、ファンキーな虐殺の時間(ショータイム)です」

 

───

──

 

「うぇ~、コイツ等ホントに生きてんの~?こんなカンタンな仕事で大丈夫ですか~ジーニストさん?オールマイトの所に行った方が良かったんじゃ・・・」

「難易度と重要性は切り離して考えろ、新人」

「ラグドール!」

「何をされたのだ!?」

Mt.レディとベスト・ジーニストが脳無を保存水槽からとりだして拘束。虎とマンダレイは、行方不明になっていたチームメイト、ラグドールを発見した。だが、ラグドールはボーッとしており、まるで魂を抜かれたような状態だ。

「いやはや、サーチ・・・良い個性だったから貰ってしまったよ」

その声に瞬時に反応したのは、ベスト・ジーニストだった。声の主である男に向けて自身の服の繊維を即座に操って飛ばし、人体の耐久能力ギリギリまで締め付ける。

「ちょ、ジーニストさん!もし民間人だったら・・・」

「実戦ではその一瞬が命取りだ。(ヴィラン)には何もさせるな」

 

───

──

 

「・・・また、デカく揺れた」

また振動を感じ取り、出久が呟く。その振動は、先程よりも大きなものだった。

「今上がって行ったからな。オール・フォー・ワンだろうよ。さて、俺等も行くとしようか」

「そうですね、《私達に付いて来なさい、緑谷出久》」

 

─ピピッ─

 

「キッ・・・畜生ッ・・・」

白スーツの言葉に、出久の首に着けられたチョーカーが反応する。このチョーカーは、首から下の横隔膜以外の随意筋の自由を奪うアイテム。これにより、出久は反撃をする事が出来なかったのだ。その為出久の意思とは関係無く身体は起き上がり、2人に付いて行く。階段を上りきれば、その肌を微かに風が撫でた。

「おぉ、来たね」

オールフォーワンは嬉しそうに振り向き、口を開く。その後ろには、真っ平らに吹き飛ばされた街だった場所が広がっていた。更に、ベスト・ジーニストも倒れている。その腹には、大きな穴が開いていた。

 

─ビチャビチャビチャッ─

 

「ボヘッ!ゲホッゴフッ・・・」

「エッホエホッ・・・」

突然、何も無い空間に真っ黒なヘドロのようなものが現れる。そして更に、その中から(ヴィラン)連合のメンバーが出て来た。

「・・・先生!」

「また失敗したね、弔・・・でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。何度でもやり直せる。その為に(せんせい)が居るんだ。全ては、君の為にある」

オール・フォー・ワンが話している間、爆豪達は動けなかった。オール・フォー・ワンが放つプレッシャーにより、全身が硬直したからだ。

「やはり、来てるな」

徐に呟き、両手を構えるオール・フォー・ワン。

「ヌゥアッ!!」

すると、その方向からオールマイトが降ってきた。そして拳をオール・フォー・ワンに振り抜くも、軽々と受け止められてしまう。

「返してもらうぞ!オール・フォー・ワンッ!!」

「また僕を殺すか、オールマイト」

「オールマイトだけじゃないわ」

「俺ちゃん達も忘れんなよ、糞ったれ共ッ!!」

「彼の力、悪用などさせないわ!」

オールマイトに続き、レミリア・サガとデッドプール(ゾンビゲーマー)、更に永琳率いるアマゾンズも到着した。

「さぁ、返してもらいましょうか・・・私の義弟(おとうと)を!」

 

───

──

 

(出久サイド)

 

「オールマイト・・・デップー・・・レミ義姉さん・・・永琳・・・アマゾンの皆・・・」

「愛されてんなぁ、お前」

俺の呟きに、右に立っていたクソ野郎が返す。

「さて、ヒーロー諸君!始めまして!俺の名は緑谷火吹(ヒスイ)。ここにいる緑谷出久の、父親だ」

『ッ!?』

見えなくても、皆が息を飲んだのがわかった。だが・・・

「妻を捨て、息子を実験材料に使ったド屑野郎が・・・今更父親面するんじゃねぇよッ虫酸が走るッ・・・」

俺はギリギリと拳を握り、音源に向かって振り抜こうとした。だが、チョーカーデバイスがそれを許してくれない。いくら力を込めても、少し腕が震えるだけだった。

「さてと、緑谷君。君には一応発言権があるわけだ。彼等に、何か言う事は無いかな?」

そう言ってオール・フォー・ワンは俺の目隠しを外す。言う事、か・・・コレしかないな。

「皆、ゴメン・・・死なないでくれよッ!」

 

─キュピンッ─

 

言い終わるやいなや、俺の意思とは関係無く左手が動いて左目の前を通過。その時、脳が温まるような感覚を覚えた。

「おわっ!?」

すると、オールマイト達が突然宙に浮かび上がった。そして、それぞれが地面に叩き付けられる。

「ッ!出久に何をしたッ!!」

「答えねぇとこの肩スパイクでテメェ等のケツほじくり返すぞッ!!」

流石はデップー、こんな時でも抜かり無ぇ・・・

「ふむ、まぁ教えた所で対抗出来そうもありませんね。良いでしょう」

白スーツは俺の近くに寄り、俺の前髪を託し上げる。すると、俺の左目が露わになった。

「なっ!?」

「ぎ、義眼?」

そう。俺の左目は、黒い眼球に白い瞳孔の義眼になってしまっていた。白スーツと火吹の野郎に改造されたのだ。

「これは、過剰適合進化者の義眼(アイズ・オブ・ハイドープ)という義眼です。私達が創ったもので、緑谷出久が無意識に抑え込んでいたハイドープの能力を一時的に引き出す働きがあります。この様に・・・」

 

─キュピンッ─

 

再び俺の左手が通過し、今度はそこら辺に転がっていたコンクリートの破片が飛礫として飛んでいった。

「クッ、ハァァァッ!!」

「下がってなアマゾンズ!」

【クゥリティカァルッデァッドゥ!!】

レミ義姉さんはジャコーダービュートで瓦礫を全て切り落とし、ゾンビゲーマーは分身体を盾にする。

「まぁ、引き出せるのは念力だけですがね。因みに私達は、この義眼からのハイドープウェーブの影響を受けないキャンセラー装置を服に組み込んでいますので、これを使って私達を倒すことは出来ません」

そうなんだよコイツ等1号先輩と2号先輩にまんまと2回も同じ原因で逃げられた間抜け(ショッカー)と違って、バッチリ対策してやがるんだ!

「それがどうした!私達は緑谷少年を取り返し、今度こそ貴様を刑務所にブチ込む!!貴様の操る(ヴィラン)連合諸共!!」

「それは、やることが多くて大変だな───お互いに」

 

─ドッッッッ!!─

 

オール・フォー・ワンの腕が肥大化し、殴りかかったオールマイトを一瞬で吹き飛ばした。その射線上のビルも、一瞬で瓦礫の山と化す。

「《空気を押し出す》+《筋骨バネ化》、《瞬発力》×4、《膂力増強》×3・・・この組み合わせは楽しいねぇ♪」

コイツは、俺と似たスタイルだ・・・豊富なバリエーションを持ち、状況によって組み合わせて戦うタイプ・・・

「さて、ここは逃げろ弔。仲間を連れて・・・黒霧、皆を逃がすんだ」

 

─ズドドドドッ─

 

オール・フォー・ワンは指を鋭角的な触手に変化させ、黒霧に突き立てる。すると黒霧の個性である霧状のワープゲートが発生した。

「僕が送れれば良いんだが、生憎僕のは出来たてでね。距離も酷く短いし、ついでに送り先は()・・・僕と見知った人間の所じゃないと飛ばせない。さぁ行け」

個性強制発動か。俺がマンダレイにやったのと、全く同じだ。

「先生!俺も・・・」

「弔・・・考えて行動しなさい」

「逃がさんッ!!」

「させないさ。その為に僕がいる」

吹っ飛ばされたオールマイトが戻って来て即座に死柄木に殴りかかるが、オール・フォー・ワンがそれを邪魔する。

「さてと、俺等は準備だな」

「そうですね」

「準備、だと?・・・ッ!?それは!!」

火吹と白スーツは、背後から大きな機械を持ってきた。問題は、その機械に()()()()()()()ことだ。

「何ッで、それがある────

 

 

────エクスビッカーがッ!!」

 

それは、嘗て兄さんが風都市民を自分達と同じ不死身の怪物、NEVERにする為に用いた、巨大な剣状の装置だった─────

 

to be continued・・・




「エクスビッカー!?マジか!?」
『マジで!?』
「マジだ!」
『「ショー・タ~イム!」』
「じゃな~いッ!!」
『まぁ冗談はさておき、マジだよ。あのフィリップが組み込まれてたアレ』
「イヤなんでそんなモンが・・・あ(察し)」
『ネタバレすんなよ?では、次回もお楽しみに!・・・あと、前半に違和感あったかも知れません。俺はあぁいう描写が苦手でして・・・すいません』

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