僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase1 作:エターナルドーパント
『まぁ、一応ラスボスだからね。ガオガイガーで言うパスダー的な。でも状態で言うとZマスターなんだよなぁ』
「強過ぎんよ・・・つうか、お前遅過ぎだろ!」
『インフルで一週間隔離されてたからね、仕方無いね』
──ギェアァァァァァァァッ!!──
オール・フォー・ワン・・・否、オール・フォー・ワンであった化け物が絶叫する。その姿は最早人のシルエットすらも失っており、巨大な肉塊から太い3本脚と無数の触手が生えているという姿だ。
そして胸部にあたる部分には、緑色のコアと思わしき器官が露出していた。
「っ!?」
その姿に全員が絶句する。オール・フォー・ワンの成れの果て・・・メモリアル・カオスはグチュグチュとグロテスクな音を立てながら脈動と流動を続け、触手を振り回し始めた。
「くっ、この!
─ズバババババンッ─
サガはジャコーダービュートで斬撃の制空圏を展開し、その触手を食い止める。だが触手が切り落とされようと、メモリアル・カオスにはダメージが通っている様子は無かった。
「何なのだ、アイツは・・・」
オールマイトの口からは、そんな茫然自失気味な呟きが零れる。
「ヘイヘイオールマイト!隙晒すんじゃねぇよッ!」
【クゥリティカァルッデァッドゥ!!】
オールマイトに激を飛ばし、無数の分身体をメモリアル・カオスに殺到させるゲンムX。この状況下でじっとしている事がどれだけ危険か、元傭兵である彼には分かっているのだ。
「更にッ!もってけダブルだッ!」
【クゥリティカァルッエェンドッ!!】
そう言ってゲンムXは跳躍し、回転しながらライダーキックを叩き込んだ。
【クイーン!】
─ガキィンッ!─
「なっ、何だってェ!?」
しかしその蹴りは、緑のバリアによって防がれる。
クイーンバリアはエターナルローブを凌ぐ防御力を誇る、正に鉄壁。シンフォギア世界のNEOクローズに備わった異能分解能力以外に、負けた事は無い。更にメモリアル・カオスは触手を素早く伸ばし、ゲンムXを雁字搦めに拘束してしまった。
「おいちょっと待て!仮面ライダーの触手プレイなんて誰得d【アイスエイジ】マジ待って寒い!」
何時もの調子でフザケ続けるゲンムXに、メモリアル・カオスは触手から冷気を流し込む。ゲンムXは瞬く間に氷塊に閉じ込められ、その減らず口は塞がれた。
更に触手が束なり、一本の巨大な腕を形成する。
【ヒート!】【バイオレンス!】
─ドッッッ!!─
「げばぁぁぁッ!」
その巨腕にヒートとバイオレンスのエネルギーが収束し、氷塊ごとゲンムXを殴り飛ばした。その熱量により氷は一瞬で昇華し、水蒸気爆発によってゲンムXの内臓は激しく揺さぶられる。
「何か・・・突破口は無いの・・・?」
永琳の唸りが零れる中、メモリアル・カオスは周囲のヒーローに攻撃を始めるのだった。
(出久サイド)
「あの、野郎ッ・・・」
俺は三奈達に運ばれながら、悪態を吐く。さっきから見る限り、状況に応じて条件反射的に最適なメモリを選んで力を使っているようだ。今だって、エンデヴァーが投げつけた炎の槍をヒートで吸熱し、吸い取った分の出力を水増しした熱波を放ってゾンビゲーマーの分身体を一掃しちまった。ストックしてる個性を使って来ないのが、せめてもの救いだな。恐らく、個性は全部制御に当てちまってるんだろう。
「オイオイ、何だァ?ありゃ・・・」
「グリス・・・」
デカい瓦礫の裏で合流したグリス・ライトも、あの化け物・・・メモリアル・カオスとしようか。メモリアル・カオスのおぞましい見た目と強さに顔を青くしている。レミ義姉さんのジャコーダーロッドから放たれる斬撃波さえも、与えた傷が瞬時に再生してしまって全くダメージにならない。
「まるでバイオのニュクスじゃねぇか・・・」
「・・・あぁ、確かに」
言われてみればそっくりだな。性質的にはガオガイガーのZマスターみたいだが・・・となると、
「クソッ・・・あの反吐野郎の実験続きで、体力が・・・」
麻酔無しで左目くり抜きやがって・・・観てたトガヒミコが発情してやがったなァ・・・
「出久、大丈夫?」
俺の顔を覗き込む三奈の顔は、心配が染み着いたような表情だった。首を起こせば、フランやグリス・ライト達も同様だ。そりゃそうか。
「正直、力が入らない。あの屑に、麻酔無しで眼球交換手術をされたからな」
「が、眼球交換!?」
「しかも麻酔無しって・・・」
ホントに狂った奴らだったよ。不幸中の幸いは、この義眼・・・
「それは後にしよう。済んだ事だ。それよりも問題は・・・」
俺はそこで一旦区切り、何とか首を動かして瓦礫の陰からメモリアル・カオスを見やる。奴は周囲の物を手当たり次第に破壊しながら、街の方に進んでいた。レミ義姉さんとデップーがいるお陰で進行は遅いが、このままじゃ、更なる大被害待った無しだ・・・ん?
「・・・安定してる・・・?」
「出久、どうした?何か気付いたのか?」
覗き込んできたグリス・ライトに視線を合わせる。
「あぁ・・・あれ程のエネルギーを内包してるんだ。普通ならさっき繋がれてた俺みたいに、エターナルウェーブとしてオーバーフローが起こる筈・・・マキシマムじゃないからか?・・・いや、流石に彼処までメモリエネルギーを
───エターナルは『統率能力』にリソースを割いてい
「────あ」
そうか・・・そう言う事か!
「突破口、見つかった?」
「あぁ、見つかった・・・」
ちっとばかし危険だがな。
「出久君、何に気付いたん?」
「あぁ。アイツは今まで、エターナルメモリの力を使っていないように見えたよな?」
「あぁ、確かに・・・あの蒼い炎とかも出してなかったし、何より俺らの個性が消えてねぇもんな」
そう言って右手からポポッポポッと火花を散らすグリス・ライト。エターナルレクイエムが発動していない証拠だ。
「逆だったんだよ。アイツは今、エターナルの力をフルに使ってるんだ。『
だからエターナルレクイエムが発動しないんだ。あんな無茶苦茶なエネルギーを無理矢理統率してるから。
「え~っと、それで?」
「さっきエネルギーの横槍で俺をエクスビッカーから弾き出したアイディアって三奈のだよな?」
何か天才的な勘でも働いたのか?
「で、どうすんだよ」
「まぁ待て、まだある」
瓦礫に背を預けて大きめの破片に腰掛け、グリス・ライトに掌を向ける。良くある『待て』のジェスチャーだ。
「T2メモリは、より適合率の高い人間に自分から侵入しに行く性質がある。オール・フォー・ワンはカオスになる時、メモリをバラ撒いただろ?その瞬間、俺じゃなくて奴の方にメモリが殺到した。って事はつまり、適合率が俺より高い・・・最低でも、96%はあるって事だ。もしかしたら、100%かもな」
「ひ、100%だァ!?」
うん、分かるぜグリス・ライト。俺も口に出して改めて絶望的だと再確認したから。だが、ここからが一分の希望だ。
「だがそんな中、エターナルメモリだけは
「っ!もしかして、アイツより適合率の高い人が!?」
「三奈、多分正解で間違い無いぜ」
そして・・・
「その《オール・フォー・ワンよりも適合率の高い人間》ってのは、俺だ」
「「「「だろう
わお、満場一致の予想済みか。
「まぁ一応、俺はエターナルの過剰適合者だからな。で、ガイアメモリにはもう一つ特性がある。それは───
───変身中に使用者よりも適合率の高い者が触れると、不具合を起こすというものだ」
要は、加頭順が変身したレッドフレアエターナルに兄さんが触れた時と同じように、エターナルメモリを俺に惚れ直させれば良いのだ。
「つまり、アイツに出久が触れば良いって事?」
「いや、それがそうも行きそうに無い。何せ俺が過剰適合しているのは、奴が挿入したA~ZのT2メモリの中でエターナルだけだ。他のメモリは奴の方が高位適合者だから、エターナル以外のメモリエネルギーが邪魔をする。エターナルの生体コネクタに直接触れないと、弾き出せないだろうな」
そう、これが厄介な所だ。奴の攻撃の雨やバリアをすり抜けて、更にコネクタを探し出し、そこに的確に一撃を叩き込む必要があると来た。今の話の最中は完全に脱力していたから幾らか体力が回復したが、それでも精々50キロ走直後から10キロ走直後程度だ。やはり心許ない。
この状態であの化け物に対して、ダデャーナザンみたいに『この距離なら、バリアは張れないな(OMO)!』を、しかも生身でしなきゃいけないって・・・
「今の話、詳しく聞いても良いかしら?」
その時、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「え・・・マンダレイ?」
顔を上げれば、マンダレイが腰に手を当てて此方を見つめていた。目つきは鋭く、『否』の選択肢は用意されていないのだろう。
「分かった。伝達を頼む」
まぁ、来たのがマンダレイだったのは都合が良かったかもな。
(NOサイド)
「ぬぅ・・・風圧も効かんか・・・」
オールマイトがぼそりと零す。先程から拳圧で攻撃しているが、サイクロンかクイーンで流されるだけだ。ゾンビゲーマーとサガが奮闘しているが、注意を引く程度の時間稼ぎにしかならない。尤も、メモリアル・カオスの足が一向に進まないのはその時間稼ぎのお陰なのだが。
「くっ、決定打に欠けるわね」
「ライダーシステムを使う者達の攻撃力に比べ、あの
永琳が毒矢を放ちながら零した愚痴に、回復を終えて戦場復帰した
「グオォォォウッ!!」
─ズダダダダダダダダッ!─
ネメシスアマゾンがミニガンを連射し、明後日の方向に飛んでいくメモリアル・カオスのエネルギー弾を狙う。放たれた弾丸はエネルギー弾を全て破壊し、何とか被害の拡大を防いだ。
「ネメシスさん!マシンガン用ブレット弾倉と、スティンガーミサイル弾頭の創造が終わりましたわ!」
「グォウッ!アリガトウ、モモ!」
八百万にネメシスカスタムの特注魔改造スティンガーミサイルランチャー(難波重工製)の専用弾頭を受け取るネメシス。八百万は弾数に限りがあるネメシスのアシストに回り、それをネメシス達アマゾンB.O.Wが護衛する形だ。学生でも繰り出さざるを得ない程、プロもなりふり構っていられないのだろう。エコーロケーションを持つリッカーアマゾンとロレンチーニ瓶を備えるスカルアマゾンは、被災者の救出に向かった。永琳の指示で、光源役として轟も同行している。機動力と咄嗟の判断力をカバーする為、飯田と切島も一緒だ。エンデヴァーが反対したが、
「オレ達、何も出来ない・・・リッカーとスカルは大丈夫かな・・・」
「グオゥ!」
悔しげに零すハンターアマゾンとタイラントアマゾン。それを見た八百万はカロリーバーを口に放り込みながらある物を創造し、2人に向き直る。
「では、タイラントさん。もしかしたら、瓦礫などで避難が遅れてしまっているかも知れませんわ。そう言った場合に対処する為、リッカーさんとスカルさんの方へ向かって下さい!」
「良い判断ね。こちらもネメシスさえいれば大抵は大丈夫そうだし・・・タイラント!行ってきて!」
「グオォォォウッ!!」
八百万の指示に永琳が許可を出し、タイラントが猛スピードで駆け出した。アマゾン細胞の恩恵もあり、ものの10秒足らずで見えなくなる。
「ハンターさんには、コレを」
「コレって・・・」
次に八百万は屈み、座り込んでいるハンターにある物を渡した。
「コンバットベルト?」
それは、小さなホルスターが大量に付いた黒いコンバットベルト。2本のそれを両肩から襷掛けにすれば、胸元に黒いクロスが出来る。
「ハンターさんはスピード特化のB.O.Wです。なので・・・」
八百万は更に、小さなナイフを大量に渡した。刀身はガラスのような材質で刃は無く、刀身は黒い液体で満たされている。
「コレは?」
「投擲ナイフの樹脂刀身に、超強力な粘着剤を詰めたものですわ。あの怪物の足元や触手に投げれば、多少は足留めが出来る筈・・・あなたのスピードなら、それが出来ますわ。いいえ、寧ろあなたにしか出来ない事です」
「・・・なら、オレは行く!」
そう言って手早くコンバットベルトのホルスターにナイフを詰め込むハンター。そしてあっと言う間に準備を終えた。その時・・・
──『全員!あの怪物・・・カオスと呼称する事にしましょうか。カオスの突破口になりそうな事が分かったわ!』──
マンダレイのテレパスによって、出久が仲間に話した事が繰り返された。更に、来られる者は集合せよという指令も伝えられる。
「緑谷少年が・・・」
「ほう、あの子供か」
オールマイトとエンデヴァーが呟いた。丁度この2人、何をやっても流されるからリッカー達とは別方向に救助に行っていたのだ。因みにほぼ全てオールマイトがやってのけた。最後の1人を救い出し、オールマイト達はカオスの元に急ぐ。
「成る程ねぇ~。取り敢えず、レミちゃんは作戦会議に参加しときな」
「あなたはどうするの?」
ゲンムXに聞き返すサガ。近付いて来た触手をジャコーダーで弾きながら、ゲンムXの方を振り返った。
「俺ちゃんは、ここで足留めしとくぜ。見た所、俺ちゃんの分身肉壁が一番有効だからな。大丈夫、俺ちゃんは不死身だ。それに、作者は俺ちゃんを殺す気無いだろうし」
言わないお約束を土足で踏み越えて来やがった。
「作者?・・・まぁ良いわ。気を付けてね」
そう言ってサガは羽ばたき、その場を後にする。
「ふっ、分かってるぜ。それに───
───まだ俺ちゃんと文の
流石はデップー、最後まで煩悩たっぷりであった。
(出久サイド)
「ホントに便利だな、マンダレイのテレパス」
「まぁ、実戦でも色々使えるからね」
そんな事を喋りながら、俺達はマンダレイが指定した集合場所・・・永遠亭の出張白バンに向かう。体力も結構回復してきたな。そして、さっき回収した
「出久、無事!?」
「レミ義姉さん!」
走っていると、レミ義姉さんも飛んで合流して来た。特にダメージなんかも無さそうだ。
「そっちはどうだ?」
「今の所、デップーが食い止めてくれてるわ。あの分身体が有効みたいよ」
成る程。確かに不死身だから、それを一掃する為には大量のエネルギーで素粒子単位まで消し飛ばすしか無い。だから進行が遅くなっているのか。
「出久君!無事かい!?」
「出久君!」
集合場所に到着するや否や、G3と永琳が駆け寄って来た。
「その眼・・・」
「あぁ、麻酔無しでくり抜かれてはめ込まれたよ」
「ッ!!」
永琳の顔が哀れみに染まる。まぁそりゃそうか。ホントに激痛だったし。
「大丈夫!この義眼は視覚もあるし、何より新しい能力も使えるようになったからさ!」
「出久君・・・」
あれ?何か、更に悲壮感が・・・もしかして、無理して安心させようとしてると思ってる?
「いや、本当に大丈夫だからさ。対メモリアル・カオスの作戦、早いとこ立てようぜ」
─────
────
───
──
─
「コレは・・・作戦と呼べるのかい?緑谷少年・・・後半はともかくとして、前半が・・・」
「あぁ・・・だが、これしか無い」
眉間の皺を深めるオールマイト。俺が提示した作戦は結構・・・と言うか、かなり絶望的な物だったからだ。
「三奈、デンデンセンサーを」
「・・・はい」
三奈も複雑な表情をしながら、デンデンセンサーを渡してくれた。何時も心配かけちまうな。
─ぎゅっ─
「っ!」
デンデンセンサーを受け取ると、その手を握り締めてきた。矢張りと言うべきか、その手は震えている。
「出久・・・大怪我したり・・・死んだり、しないでね?」
「あぁ、分かってる。死んでやる気は毛頭無いさ、三奈」
そう言って俺は、震える三奈の肩を抱き締めた。そしてそのまま、三奈の頭に頬擦りする。ほんの少し鼻をくすぐる三奈の良い香りは、俺の骨まで染み入ってきた。その香りに包まれて大きく深呼吸し、覚悟を決める。死ぬ覚悟じゃない。生き残る為に戦う覚悟、勇気の覚悟だ。
「フラン、
「ボンヤリとならね。あの緑色の辺りの筈だけど・・・ここからじゃ、細かい場所までは見えない。ごめんね・・・」
「いや、上出来だ。ありがとな」
ショボンとするフランの頭をポンポンと撫で、メモリアル・カオスを睨む。デップーは良くやってくれているらしく、さっき見た時から50m程しか進んでいなかった。だが、ゲンムXは瓦礫に背を預けて座り込んだまま分身体をけしかけ続けている。流石のデップーも消耗しているらしい。
「・・・良し。行くぜ、皆!」
「応ッ!」
「うんっ!」
「「ヤーッ!」」
「了解!」
「分かったわ!」
「あいよ!」
俺の声にライダーシステム保有者全員と、コンバットベルトを着けたハンターが答えた。俺は腰を上げて瓦礫の陰から抜け、皆も俺に続く。そして横一文字に並び、俺は首を回して手首をスナップさせた。
「頼むぜ、皆!」
「「「「変身ッ!」」」」
【ジョーカー!~♪!♪!♪!】
【タブー!♪~~!】
【ヘン・シン!】
【VIRUS・of・GOD!DANGEROUS・ZOMBIE!2!!Wooooo!!】
全員一斉に変身し、戦士の鎧を身に纏う。このメンバーなら・・・行けるな!
「心火を燃やして、ブッ潰す!」
「大義の為の、犠牲となれ!」
「ノーコンティニューでクリアするよ!」
「禁忌の焔で、焼いてあげるわ!」
「
「思い知れ・・・神の力!」
「オレの怖さ、教えてやんよ!」
皆が決め台詞を放ち、闘志を宿した眼を向けた。そして最後に俺。一歩前に踏み出して・・・
「今の俺達は───
───負ける気がしねェ!!」
さぁやるか、勇気は満ちた。
「ライダーズ!レディ・ゴー!!」
─────
「チカレタ・・・」
『目立たぬながら、実は今回メモリアル・カオスの足留めに一番貢献してたんだよな』
「ご褒美にR18書いてくれても良いのよ?」
『何時か、な』
「お前の〈何時か〉は当てにならん・・・」