思い付き短編集 作:ゆっくりRUISU
前回のあらすじ
後方基地が墜ちた。
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「…知っての通り、この泊地の補給源だった後方基地が墜とされた」
ゲ○ドウポーズでそう言ったのは喜一。何処からか取り出したメガネを掛けている辺り、ノリノリである。
「既ニ、コノ泊地ハ放棄スル許可ガ下リテイマス。明朝、06:00ヨリ撤退ヲ開始シマス」
「…てな訳で、この撤退の指揮をタ級、お前に任せる。…ホントはリ級に任せたかったが」
「…オマエハドウスルノダ」
タ級に聞かれた喜一は、メガネを放り投げながら口を開く。
「今チ級に、要塞棲鬼用の増槽を作らせてる。
それを使えば呉第一鎮守府を奇襲して暴れて移動先まで逃げれるから、時間を稼いでくる」
「…囮カ」
「おう。05:30にここを出発する。そうすりゃ05:45位に鎮守府の哨戒海域に入れるからな」
そこまで言い、喜一は立ち上がる。
「ル級はこの内容を各員に通達。
ヲ級とタ級は機密関連の撤収を優先してくれ!」
「「「了解!」」」
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そして翌日、05:00。
「オォ、司令(仮)。頼マレテタノハ出来テルヨ」
「だから(仮)やめろって…。
んで、これが増槽か?」
「ソウダヨー。増槽ノ中ニハ燃料タンクガ3本入ッテテ、タンク1本デ要塞棲鬼ガフルパワーデ30分動ケルヨ。
チナミニ背中ノコネクタカラ燃料入レルヨ」
「…てことは、その増槽を加味して俺が全力で戦えるのは最長2時間か」
コクリ、とチ級は首肯する。
「おし、んじゃあ撤収してくれ。
残してく荷物は機密関連以外でな」
「リョーカイダヨー」
荷物を纏めながらそう言うチ級を見ながら、喜一は踵を返した。
そして、05:30。
「要塞棲鬼、抜錨スル」
そう言い、喜一は呉第一鎮守府目掛け海面を蹴った。
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05:45。
予想通りの時間に、喜一は呉第一鎮守府の哨戒海域に侵入した。
「サテ、イツバレルカ…」
そう呟いた僅か数分後、喜一の持つ逆探に反応があった。
「意外ト早カッタナ。モウ少シ進ミタカッタノダガ」
ぼやきつつ、腰に着けていた大盾を保持する。
更に進むこと数分、駆逐艦達が鎮守府から飛び出してきた。
そして、喜一目掛けてすぐさま砲撃を開始する。
自ら目掛け飛翔する砲弾に対し、喜一は無視する。
数秒後、着弾。
たかが駆逐艦の主砲ならば、要塞棲鬼にとって脅威足りえない。
…筈、だった。
しかし、直撃した瞬間喜一の視界は奪われた。
眼の辺りを覆ったソレに触れてみると、やけにネバネバしている。
(…トリモチ!)
視界を奪われたままの喜一は、咄嗟に目元を自爆させた。
調整し損ねて顔面そのものが吹っ飛んだが、再生が終われば視界は確保できる。
故に両腕の大盾を構えて守りに入ったのだが、直後に爆発の衝撃が喜一を打ち据えた。
「魚雷デハ、俺ハ殺センゾッ!」
…そもそも不死である喜一を殺す手段などないのだが。
閑話休題。
装甲のアチコチを凹ませながら、喜一は顔面の再生を済ませる。
視界が戻ると、既に戦艦や正規空母等が出撃していた。
「…来イ」
囮として時間を稼ぐ為に、喜一は大盾を構え直して突撃した。
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約1時間後。
空になった2本目の燃料タンクをパージしながら、喜一は右腕で剣を振るう。
既に、組み付いてきた長門を引き剥がした際に装甲はパージしており、大盾は手放したまま海面を漂っている。
振るった剣はしかし、伊勢と日向の二人がかりで受け止められた。
交差させた刀の交点で止められ、それ以上進まない。
そのまま、喜一は腹を戦艦の馬力で蹴りつけられた。
勢いのままに距離を取るが、右腕に長門が投げた鎖が巻き付いた。
「エエイ、マタカッ!」
これで3度目となる拘束に、苛立った声を上げながら左手の剣で鎖を切断。
…しようとして、砲撃に剣身を砕かれた。
舌打ちする間も無く、再びの衝撃。
直後に爆発に呑まれながら、喜一は増槽に引火した事を察した。
「燃料ガッ…!」
残り活動可能時間、フルパワーにて約30分。
退避先の拠点まで、喜一が飛ばして20分程かかるのを加味すれば、潮時だった。
(07:10、モウ少シ稼ギタカッタガ、致シ方ナイカ…!)
撤退するべく、焦げながらも喜一は右手の剣を手放そうとした。
手放した剣を左手で掴み、鎖を切断する。
そのつもりだった。
だが、右手が開けない。
見れば、いつの間にか付着したトリモチが右手を固定していた。
咄嗟に自爆しようとするが、ポスンッ!という音が出ただけだった。
「…魔力不足デ、自爆デキナイ!?」
直後、喜一の体は砲弾と魚雷で吹き飛ばされた。
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数十m吹き飛ばされ、海面を滑って要塞棲鬼が停止する。
だが、今までより再生が遅い。
体内の魔力が不足しているのだ。
しかし、それよりも不味い問題があった。
体に大穴が開き、そこから燃料が漏れているのだ。
通常、深海棲艦は体内に資材を溜め込み、適宜その資材を消費しながら戦闘を行う。
故に、腹に穴など開こうものなら資材が流出してしまう可能性があるのだ。
…しかし、そもそも腹に穴が開いた時点で資材などどうでもよくなる。
数分ほどで轟沈してしまうからだ。
―ここまでは、普通の話。
だが、喜一のみ事情が異なる。
腹に穴が開くと、資材は流出してしまう。
しかし、轟沈せずに修復されるのだが、この時資材までは復元されない。
つまり。
現在、喜一の燃料は既に、後10分動けるかどうか、という程度にしか残っていなかった。
だが。
喜一は、なけなしの燃料を機関に叩き込んで飛び出した。
「…コノママデハ帰レンノデナ」
そう言い、近くにいた艦娘に突貫する。
…かに思えたが、しつこく絡み付いていた右腕の鎖に妨害される。
直後、今度は左腕に鎖が巻き付く。
見れば、こちらは陸奥が鎖を持っている。
直後、一隻の戦艦が喜一の正面に躍り出る。
「獲らせてもらうぞ、要塞棲鬼っ!」
「舐メルナッ!」
武蔵の振るった拳に対し、喜一は咄嗟に膝を割り込ませて受ける。
バキリ、と嫌な音をたてて膝が割れたが、直撃だけは辛うじて防ぐ。
しかし、再び武蔵が拳を振り上げる。
迎撃は、間に合わない。
ドゴスッ!という音を聞いた直後、喜一の意識は電源を切られたように途切れた。