思い付き短編集 作:ゆっくりRUISU
つまりあっちには間違っても要塞棲鬼は出ない。
前回のあらすじ
喜一、鹵獲コース一直線。
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コツン、コツンという足音を聞いて、喜一の意識は浮上した。
見回してみると、両腕は鎖で壁に繋がれた上で鉄格子の中―牢屋に入れられていた。
コツン、コツンという足音が、徐々に近づいてくる。
「…燃料燃料、ット」
誰かが来るのは確定なので、先に燃料の残量を確認しておく。
―燃料残量、10%
―戦闘可能時間、推定3分
「…ウル○ラマンジャネーカラ」
カラ○タイマーなんぞ生えてこねぇよな、と焦る喜一であったが。
キィッ、という音と共に、鉄格子の扉が開く。
「む、もう意識が戻ったのか。割と全力で打ち込んだのだがな」
「…ココハ何処ダ」
「教える義理はないが…。
呉第一鎮守府の地下牢だ」
そう言ったのは、褐色の肌に露出の多い服装をした艦娘。
大和型戦艦二番艦、武蔵。
…間違っても、3分で倒せる相手ではない。
「…今何時ダ?」
「14:35。殴り飛ばしてから7時間程で意識が戻るとは思わなかったぞ。
…今度はこちらだ。何故鎮守府を襲った?」
時間を答えた武蔵が、喜一に質問をする。
(…フム、今ノ俺ハ捕虜カ)
分析を済ませた喜一は、差し支えのない範囲で答えてやる事にした。
「何故、ト聞カレレバ。
深海棲艦ダカラ、ト答エヨウ」
「…その割には沈められた艦娘がいないのは?」
「俺ニハ砲撃能力ガナイ。沈メヨウガナイノデナ」
「…では、次だ。何故今貴様は無抵抗なのだ?」
「抵抗スル余力ガ無イ。今、俺ガ全力デ戦エルノハ後3分程ダ」
喜一がそう答えると、やや呆れたように武蔵は肩を竦めた。
「普通、情報をそんなペラペラ喋るか?」
「大シタ情報デハアルマイ。殆ドガ俺ニ関スル情報デシカ無イ」
「…そもそも、要塞棲鬼とは何隻存在するのだ?」
「俺ダケノ筈ダ。他ノ海域デ確認サレタトイウ情報ハ聞イテイナイ」
「…なるほどな。
っと。そろそろ私は退出させてもらおう。演習があるのでな」
そう武蔵が言った直後。
ググゥ~、と喜一の腹の虫が情けなく鳴いた。
「…ソウイヤ今日朝飯食ッテキテネェヤ」
「ハッハッハッ、間宮に頼んで軽食でも用意してもらおうか。しばらく生きていてもらわねば困るからな」
(…ナルホド。シバラクシタラ移送スルツモリラシイナ。…問題ハ、他所ガドウ手ヲ出シテクルカ、ダガ)
そこまで考えた喜一は、武蔵に警告してやる事にした。
「…燃料ハ補給サセテクレヨ」
「お前は何を言ってるんだ」
イマイチ伝わらなかった。
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「ふむ、呉の第一鎮守府が深海棲艦の鬼級を捕獲したと…」
「そのようです。大本営上層部はこれを受け、当該深海棲艦の輸送を計画。
成功した場合、呉第一鎮守府司令官、遊旗愛梨大佐は准将へと昇進する模様です」
「ふむふむ…。
だが、もし仮に愛梨大佐が非業の死を遂げたとしたら、やむを得ず我々がその深海棲艦を大本営まで運ばねばなるまいな」
「…万事、その通りに」
悪意が、牙を剥く。
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その頃、第一鎮守府地下牢。
「…ドウシテコウナッタ」
「はわわ、動いちゃダメなのです!」
喜一の回りには、暁型の4人がいた。
武蔵が言った通り、間宮の作った軽食を暁型が持って来た。そこまではいい。
しかし、そこで雷が『食べさせてあげましょう!』と言い出したのである。
抵抗しようとした喜一だったが、鎖に拘束されたままなので殆ど動けず、自爆で鎖から脱出しようとした所、何故か不発に終わり―そこで燃料が尽きて動けなくなった為、暁に抑え込まれて雷に食べさせられる事となったのである。
食べた軽食が、体内で僅かばかりの燃料に変換されるのを感じながら、喜一は口を開く。
「…ソウイヤ、久シブリニチャントシタ飯食ッタナ」
ポツリと喜一が呟くと、聞いていた響が反応した。
「…深海棲艦は食事を取らないのかい?」
「俺ノ所ハ只ノ泊地ダッタカラナ。
飯ヲ作ル余裕ガナカッタンダヨ」
それを聞いた暁型4人は、何故か一ヶ所に集まってひそひそ話を始めた。
それを見ながら、喜一は思考に耽る。
(他所ガ手ヲ出シテ来ルナラ、輸送ノ時ハ狙ワン筈ダ。ダトスレバ狙ワレルノハ…)
そこまで考えた時、カチャリという音を立てて鎖が外された。
喜一が見上げると、そこにいたのは白い軍服を着た、身長160cm程度の女性。
「…誰ダ?」
「私は遊旗愛梨。この呉第一鎮守府で提督をしているわ」
「…改メテ、要塞棲鬼ダ」
「知ってるからいいわよ。
…それで、ちょっと明石が聞きたいことがあるから来てくれって」
「…ソレハ構ワンノダガ、先ニ燃料ヲ補給サセテモライタイ。今ノ残量ダトロクニ動ケン」
「動いてもらう必要はないから大丈夫よ」
「…俺ハ知ランゾ」
そう言いつつ、喜一はついていって。
階段の途中で燃料が切れた。
暁型では背負うのに身長が足りず、背負う羽目になった愛梨はヒーコラ言いながら喜一を地上まで運ぶのだった。
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そして、工廠。
背中のコネクタから燃料を供給されながら、喜一は明石に質問攻めされていた。
「この装甲、普通の深海棲艦の装甲と構造が変わらないのにやけに硬かったのはなんでなの」
「内側に爆薬が入ってるけどどうやって起爆してるの」
「結構な重量になるのになんであんな軽々動けるの」
etc。
聞かれたが、馬鹿正直に「魔法使ってるから」などと答える訳にもいかず、喜一は沈黙するしかなかった。
しかしながら、このまま黙っているのもどうかと思った喜一は、多少警告を出す事にした。
「…イツ頃俺ヲ輸送スルンダ?」
「その話ってしてたかしら?
…まぁ、明後日の夕方に大本営から護送車が来る筈よ」
「…ナラ明日ノ夜カ」
「あら、脱走でもするつもりかしら?」
「阿呆。…多分ダガ、明日ノ夜。
何処ノ、トハ分カランガ、確実ニ横槍ガ入ルダロウ」
喜一の不穏な予言に、愛梨は沈黙。
「あはははっ!まっさか~!」
…しなかった。
「…足ノ引ッ張リ合イハ今ノ海軍ノオ家芸ナノダガ」
「でも、此処は大したことしてないし、そんな横槍が入るなんて…」
「深海棲艦の鬼級を鹵獲しといてよくもいけしゃあしゃあと」
ついナチュラルに口を挟んだ喜一であった。