思い付き短編集   作:ゆっくりRUISU

4 / 8
今回、艦娘に関して独自設定があります。


4話

前回のあらすじ

不穏な空気漂う。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

喜一が不吉な予言をした翌日。

「…今日ハオ前ナノカ?」

「は、はいっ!特型駆逐艦、吹雪です!」

「イヤ聞イテネェカラ」

喜一の前には、吹雪がトレーを持って立っていた。

 

…この小説、本編(元ブラ鎮)の方で登場してない艦娘出過ぎ(白目)。

閑話休題。

 

「えっと、司令官から鍵をお預かりしてます!少し待っててください!」

吹雪がおっかなびっくり拘束を外し始めるのを見て、喜一は口を開いた。

「心配シナクテモ、取ッテ食ッタリシネェヨ」

「…あ、外せました。片方だけですけど」

「ドーモ」

そう言って、喜一は自由になった右手を軽く動かす。

そのままトレーに置かれた食事に手を伸ばし―空を切る。

「だ、駄目です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんと手を拭いてください!」

「ソコカヨッ!」

言いつつ、喜一はウェットティッシュを受け取る。

 

それで右手を拭き、改めて食べようとし―再び空を切る。

 

「…?」

「まだ左手外せてませんから、もう少し待っててください」

「イヤデモ」

「待っててください」

「アッハイ」

喜一が折れ、大人しく左手が自由になるのを待ってからいただく事になった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ソウイヤ普通ハ箸使ウンダッタナ。シバラクマトモニ食ッテナカッタカラ忘レテタワ」

「暁ちゃん達が言ってたの、ホントなんですね…。

って、そんなことより!」

「ドシタ?」

急に吹雪が声を荒らげ、喜一はつい尋ねた。

 

「いえ、どうも声が聞き取りにくいな、って思いまして」

「アー、分カル分カル。

慣レナイト聞キニクイヨナ、コレ」

「…慣れないと、って。

元々深海棲艦だから慣れるも何もないんじゃ?」

「オット、コレ以上ハ言エネェヤ」

「チッ」

吹雪がこっそり舌打ちした。どうやら情報を聞き出そうとしていたらしい。

「オイ舌打チ。

…マァイイヤ、代ワリニ一ツ教エテヤル」

「…?」

「普通ニ深海側ノ電波ハ通ルカラココノ情報駄々漏レナ」

「え!?」

吹雪が驚愕した瞬間に、喜一は動いた。

立ち上がると同時に筋力強化を使用し、吹雪に接近する。

こちらに気づいた吹雪は避けようとするが、間に合わせない。

そのまま吹雪を両腕で掴み。

 

 

牢屋に突き飛ばした直後、喜一の全身を網が包み込んだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

少し、時間を遡る。

 

 

呉第一鎮守府、正門前。

普段は業者や軍関係者が出入りするだけのそこに、一台のトラックが停車した。

すかさず、二人の守衛が近づく。

 

「守衛の者だ。立ち入り許可証を…」

「これでいいか」

パン、と。

サイレンサーで減音された銃声と共に、守衛の一人が射殺される。

それを見たもう一人は、咄嗟に警報を鳴らそうとしたが、助手席の男によって撃ち殺された。

 

そして、トラックに偽装されていた装甲車が呉第一鎮守府に侵入した直後、十数人の男たちが降車した。

 

 

彼らは、『ある海軍将校』の小飼いの部隊。

名を、『ハゲワシ隊』。

戦果の強奪が主な任務の、特殊部隊である。

 

 

 

侵入した直後、彼らは艦娘と遭遇した。

当然、艦娘は手持ちの武装を向けたが、ハゲワシ隊はそれを無視する。

何故か。

艦娘は、『人間を攻撃できない』からである。

そう作られているのだ、彼女たちは。

 

故に、ハゲワシ隊がネットガンを向けても攻撃できず、あえなく捕獲されてしまった。

次々と艦娘達が捕獲される中、司令官である愛梨も拘束され、広場へと連れ出される。

 

 

そして、捕獲できていない艦娘―吹雪を捕獲するために、数人が地下牢へと向かっていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

そして時は元に戻り。

 

 

網で捕獲された喜一は、全身から力が抜けるのを感じた。

「…対艦娘用ノ、捕獲ネット…!?」

 

外したな下手くそ、と片方がからかうように言い、うるせぇ、ともう片方が笑うように言うのを聞きながら。

 

 

 

 

 

 

網から脱出した喜一は、その二人を殴り飛ばした。

「な、何故…」

「簡単な話だ」

そう、方法は意外と単純。

 

 

 

「人間に戻れば、あんな網などオモチャにすらならん」

あくまでも捕獲ネットは、対艦娘用。

近い存在である深海棲艦には有効だが、人間にはまるで効果が無い。

 

予想より早かったな、と呟きながら失神した二人を見下ろしていた喜一は、ふと視線に気づいた。

「…あぁ、吹雪か」

「あの、その、なんで、深海棲艦が、人間に」

「違う違う、逆だ。

人間が、深海棲艦になってたんだよ。

…と、詳しい話は後だ」

そう言うと、喜一は艤装を展開し、再び要塞棲鬼へと変化した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「隊長、地下牢組の応答がありません」

「…構うまい。先にこちらを始末しよう」

隊長、と呼ばれた男がサイレンサー付きの拳銃を構え、愛梨の額に照準。

 

「恨むならば。      (不運)

深海棲艦を捕獲した自らの幸運を恨むのだな」

 

そう言い、引き金に指をかける。

艦娘たちは庇おうとするが、ネットによって動く事ができない。

 

 

そして、隊長は引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直前、地下牢から飛び出した要塞棲鬼が割り込んだ。

勢いのままに、喜一は大盾で隊長を殴り付ける。

咄嗟に放たれ、愛梨目掛けて飛来した銃弾を肩の装甲で弾き飛ばしつつ、腰を落として構える。

 

そして、筋力強化を使用して矢のように駆け出した。

進路上にいた数人をはね飛ばしながら、装甲車へと突撃し。

「フンヌァァァ…!」

雄叫びと共に、装甲車を持ち上げた。

 

 

装甲車を持ち上げる。

それだけでも、容易く出来ることではない。

   (要塞棲鬼)

だが、喜一はその上を行く。

 

完全に持ち上げた装甲車を、担ぐように持ちかえ―跳躍。

そのまま、ハンマーか何かのように叩きつけた。

 

巻き上げられた砂煙が視界を奪う。

こうなると、味方を撃ちかねないハゲワシ隊は発砲できないが、喜一は異なる。

彼にとって、ここは敵地。

故に、立っている人影を手当たり次第に叩けばいい。

 

 

砂煙が晴れる頃、ハゲワシ隊は全員倒れ伏していた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「…サテ、誰ノ差シ金カダケ聞イテオコウカ?」

「だ、誰が貴様などに…」

「アッソ」

グシャリ。

呆気ない音と共に、隊員の足が押し潰された。

「……!」

「ウン、オ前ハモウイイヤ」

声にならない悲鳴を上げる隊員の頭を、喜一は大盾で磨り潰した。

 

血溜まりとなった男に目もくれず、喜一は最後の隊員へと歩み寄る。

「…サテ、モウ君シカイネェカラサ」

ゴン、と盾を地面にめり込ませながら口を開く。

「トットト黒幕、吐イテクレナイ?」

「…ど、どうせ吐いた後に殺すだろう!?」

「大丈夫大丈夫。言ッテサエクレレバ殴リ殺シモ磨リ潰シモシネェカラ」

「…か、嘉祢画大佐だ。横須賀第二鎮守府、嘉祢画星井大佐。我々は嘉祢画大佐に指示され…」

「オシ、死ネ」

カパンッ!と、喜一の蹴りが最後の隊員の頭を柘榴のように粉砕した。

「…嘘ハツイテナイゼ。殴リモ磨リモシテネェンダ」

そう言い残すと、喜一は海へと逃げようとし。

 

 

「ま、待ってくれ」

と、声を掛けられた。

「…武蔵カ」

「何故、我々を無視して行かなかったのだ。そうすればこの鎮守府は壊滅していたのだぞ」

「…アァ、ソノ事カ。多少ノ打算ハアッタガ、正直ニ言オウ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ドウデモヨカッタ。タダ、殺セレバ」

「なっ…」

「ダカラ、俺達ニ構ウナ。『分カリ合エルカモシレナイ』ナンテ思ウンジャナイ。ソノ迷イハ、イズレ仲間ヤ自分ヲ殺ス事ニナルゾ」

そう言い残し、今度こそ喜一は海へと跳び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

しばらくしてから、喜一は部下のチ級と合流できた。

「ダイブ損ナ役回リシテタネ」

「言ウナ。人殺シノ感想トカ実際言ッテテ吐キ気ガシタ」

…喜一の先程の虐殺の感想等は、全て嘘である。

全ては、『深海棲艦=敵』という方程式を崩さない為に。

「…トモカク、他ノ鎮守府ヲ襲撃スルゾ」

「何処ヲ?」

「横須賀第二鎮守府。ソコノ嘉祢画星井大佐ヲ強襲スル」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

数日後、呉第一鎮守府。

 

「…というわけで。

私の昇進は無くなりました、っていうのが一つ。

もう一つは、横須賀第二鎮守府が襲撃されて、そこの提督が殺されたらしいです」

朝食の場にて、愛梨はそう発表した。




一区切り。
この後蛇足を足します。
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