思い付き短編集 作:ゆっくりRUISU
前回のあらすじ
不穏な空気漂う。
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喜一が不吉な予言をした翌日。
「…今日ハオ前ナノカ?」
「は、はいっ!特型駆逐艦、吹雪です!」
「イヤ聞イテネェカラ」
喜一の前には、吹雪がトレーを持って立っていた。
…この小説、本編(元ブラ鎮)の方で登場してない艦娘出過ぎ(白目)。
閑話休題。
「えっと、司令官から鍵をお預かりしてます!少し待っててください!」
吹雪がおっかなびっくり拘束を外し始めるのを見て、喜一は口を開いた。
「心配シナクテモ、取ッテ食ッタリシネェヨ」
「…あ、外せました。片方だけですけど」
「ドーモ」
そう言って、喜一は自由になった右手を軽く動かす。
そのままトレーに置かれた食事に手を伸ばし―空を切る。
「だ、駄目です!
ちゃんと手を拭いてください!」
「ソコカヨッ!」
言いつつ、喜一はウェットティッシュを受け取る。
それで右手を拭き、改めて食べようとし―再び空を切る。
「…?」
「まだ左手外せてませんから、もう少し待っててください」
「イヤデモ」
「待っててください」
「アッハイ」
喜一が折れ、大人しく左手が自由になるのを待ってからいただく事になった。
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「ソウイヤ普通ハ箸使ウンダッタナ。シバラクマトモニ食ッテナカッタカラ忘レテタワ」
「暁ちゃん達が言ってたの、ホントなんですね…。
って、そんなことより!」
「ドシタ?」
急に吹雪が声を荒らげ、喜一はつい尋ねた。
「いえ、どうも声が聞き取りにくいな、って思いまして」
「アー、分カル分カル。
慣レナイト聞キニクイヨナ、コレ」
「…慣れないと、って。
元々深海棲艦だから慣れるも何もないんじゃ?」
「オット、コレ以上ハ言エネェヤ」
「チッ」
吹雪がこっそり舌打ちした。どうやら情報を聞き出そうとしていたらしい。
「オイ舌打チ。
…マァイイヤ、代ワリニ一ツ教エテヤル」
「…?」
「普通ニ深海側ノ電波ハ通ルカラココノ情報駄々漏レナ」
「え!?」
吹雪が驚愕した瞬間に、喜一は動いた。
立ち上がると同時に筋力強化を使用し、吹雪に接近する。
こちらに気づいた吹雪は避けようとするが、間に合わせない。
そのまま吹雪を両腕で掴み。
牢屋に突き飛ばした直後、喜一の全身を網が包み込んだ。
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少し、時間を遡る。
呉第一鎮守府、正門前。
普段は業者や軍関係者が出入りするだけのそこに、一台のトラックが停車した。
すかさず、二人の守衛が近づく。
「守衛の者だ。立ち入り許可証を…」
「これでいいか」
パン、と。
サイレンサーで減音された銃声と共に、守衛の一人が射殺される。
それを見たもう一人は、咄嗟に警報を鳴らそうとしたが、助手席の男によって撃ち殺された。
そして、トラックに偽装されていた装甲車が呉第一鎮守府に侵入した直後、十数人の男たちが降車した。
彼らは、『ある海軍将校』の小飼いの部隊。
名を、『ハゲワシ隊』。
戦果の強奪が主な任務の、特殊部隊である。
侵入した直後、彼らは艦娘と遭遇した。
当然、艦娘は手持ちの武装を向けたが、ハゲワシ隊はそれを無視する。
何故か。
艦娘は、『人間を攻撃できない』からである。
そう作られているのだ、彼女たちは。
故に、ハゲワシ隊がネットガンを向けても攻撃できず、あえなく捕獲されてしまった。
次々と艦娘達が捕獲される中、司令官である愛梨も拘束され、広場へと連れ出される。
そして、捕獲できていない艦娘―吹雪を捕獲するために、数人が地下牢へと向かっていった。
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そして時は元に戻り。
網で捕獲された喜一は、全身から力が抜けるのを感じた。
「…対艦娘用ノ、捕獲ネット…!?」
外したな下手くそ、と片方がからかうように言い、うるせぇ、ともう片方が笑うように言うのを聞きながら。
網から脱出した喜一は、その二人を殴り飛ばした。
「な、何故…」
「簡単な話だ」
そう、方法は意外と単純。
「人間に戻れば、あんな網などオモチャにすらならん」
あくまでも捕獲ネットは、対艦娘用。
近い存在である深海棲艦には有効だが、人間にはまるで効果が無い。
予想より早かったな、と呟きながら失神した二人を見下ろしていた喜一は、ふと視線に気づいた。
「…あぁ、吹雪か」
「あの、その、なんで、深海棲艦が、人間に」
「違う違う、逆だ。
人間が、深海棲艦になってたんだよ。
…と、詳しい話は後だ」
そう言うと、喜一は艤装を展開し、再び要塞棲鬼へと変化した。
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「隊長、地下牢組の応答がありません」
「…構うまい。先にこちらを始末しよう」
隊長、と呼ばれた男がサイレンサー付きの拳銃を構え、愛梨の額に照準。
「恨むならば。
深海棲艦を捕獲した自らの幸運を恨むのだな」
そう言い、引き金に指をかける。
艦娘たちは庇おうとするが、ネットによって動く事ができない。
そして、隊長は引き金を引く。
その直前、地下牢から飛び出した要塞棲鬼が割り込んだ。
勢いのままに、喜一は大盾で隊長を殴り付ける。
咄嗟に放たれ、愛梨目掛けて飛来した銃弾を肩の装甲で弾き飛ばしつつ、腰を落として構える。
そして、筋力強化を使用して矢のように駆け出した。
進路上にいた数人をはね飛ばしながら、装甲車へと突撃し。
「フンヌァァァ…!」
雄叫びと共に、装甲車を持ち上げた。
装甲車を持ち上げる。
それだけでも、容易く出来ることではない。
だが、喜一はその上を行く。
完全に持ち上げた装甲車を、担ぐように持ちかえ―跳躍。
そのまま、ハンマーか何かのように叩きつけた。
巻き上げられた砂煙が視界を奪う。
こうなると、味方を撃ちかねないハゲワシ隊は発砲できないが、喜一は異なる。
彼にとって、ここは敵地。
故に、立っている人影を手当たり次第に叩けばいい。
砂煙が晴れる頃、ハゲワシ隊は全員倒れ伏していた。
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「…サテ、誰ノ差シ金カダケ聞イテオコウカ?」
「だ、誰が貴様などに…」
「アッソ」
グシャリ。
呆気ない音と共に、隊員の足が押し潰された。
「……!」
「ウン、オ前ハモウイイヤ」
声にならない悲鳴を上げる隊員の頭を、喜一は大盾で磨り潰した。
血溜まりとなった男に目もくれず、喜一は最後の隊員へと歩み寄る。
「…サテ、モウ君シカイネェカラサ」
ゴン、と盾を地面にめり込ませながら口を開く。
「トットト黒幕、吐イテクレナイ?」
「…ど、どうせ吐いた後に殺すだろう!?」
「大丈夫大丈夫。言ッテサエクレレバ殴リ殺シモ磨リ潰シモシネェカラ」
「…か、嘉祢画大佐だ。横須賀第二鎮守府、嘉祢画星井大佐。我々は嘉祢画大佐に指示され…」
「オシ、死ネ」
カパンッ!と、喜一の蹴りが最後の隊員の頭を柘榴のように粉砕した。
「…嘘ハツイテナイゼ。殴リモ磨リモシテネェンダ」
そう言い残すと、喜一は海へと逃げようとし。
「ま、待ってくれ」
と、声を掛けられた。
「…武蔵カ」
「何故、我々を無視して行かなかったのだ。そうすればこの鎮守府は壊滅していたのだぞ」
「…アァ、ソノ事カ。多少ノ打算ハアッタガ、正直ニ言オウ。
…ドウデモヨカッタ。タダ、殺セレバ」
「なっ…」
「ダカラ、俺達ニ構ウナ。『分カリ合エルカモシレナイ』ナンテ思ウンジャナイ。ソノ迷イハ、イズレ仲間ヤ自分ヲ殺ス事ニナルゾ」
そう言い残し、今度こそ喜一は海へと跳び去って行った。
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しばらくしてから、喜一は部下のチ級と合流できた。
「ダイブ損ナ役回リシテタネ」
「言ウナ。人殺シノ感想トカ実際言ッテテ吐キ気ガシタ」
…喜一の先程の虐殺の感想等は、全て嘘である。
全ては、『深海棲艦=敵』という方程式を崩さない為に。
「…トモカク、他ノ鎮守府ヲ襲撃スルゾ」
「何処ヲ?」
「横須賀第二鎮守府。ソコノ嘉祢画星井大佐ヲ強襲スル」
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数日後、呉第一鎮守府。
「…というわけで。
私の昇進は無くなりました、っていうのが一つ。
もう一つは、横須賀第二鎮守府が襲撃されて、そこの提督が殺されたらしいです」
朝食の場にて、愛梨はそう発表した。
一区切り。
この後蛇足を足します。