日本一のエースと天才バッター   作:四つ葉

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武器

俺はいつも通りフリーバッティングの順番を待っていると

「砂田、少しいいか?」

すると話しかけられたことのない先輩から急に話しかけられる

「はい。なんでしょうか?」

「少し手伝って欲しいことがあるんだがいいか?」

「……えっと内容によると思いますけど。」

俺は少しだけたじろぐ

俺もこの一軍にいる限りはやれることをやっておきたい

……スタメン争いにも響くしな

「……沢村と降谷のことなんだが。」

沢村のことを言うってことはもしかしてこの人が

昨日の二軍戦のスコアブックを御幸先輩に見せてもらったら初回三者連続四死球があったもののキャッチャーが変わった途端空気が一変した

4−2−9のダブルプレーと

キャッチャーからの三塁ランナーへの牽制アウト

たった3球でそのピンチを潰した立役者であるクリス先輩か

「沢村と降谷に外野の守り方を教えてくれないか?」

「……はい?」

思った以上に変な言葉に俺はただ驚く

ただ少しだけ分かったことがあった

この人野球かなり詳しいな

外野ノックで走らせ同時に遠投させるわけか

大きなフォームと体力をつける為に美帆がよくやっていた

「あのすいません。俺教えるのはどうも苦手で。やって慣れていったとしかいえないんですよ。基礎とかも死ぬほどやって体が自然と覚えていったとしか。」

「……そうなのか?」

「だから沢村や降谷も数やって体が覚えるまでやるしかないんですか?あいつらバカだから多分頭で考えたら逆効果だと思いますが。」

「……確かにそうだな。」

いや俺あいつらのことバカっていってるけど突っ込まないんだな。まぁバカだけど

「まぁ、でもあいつ大丈夫ですかね?教室で珍しく授業受けてたし、なんか背負いすぎてるっていうか。」

「授業受けているのは普通じゃないのか?」

あっそこには突っ込むのか

「いや。あいつ基本寝てるんで。」

「……」

あっこの人青筋浮かべてたな

「まぁとにかく体に覚えていくのが一番の練習なので死ぬほどやらせるのがいいと思います。できれば最初は硬式テニスボールで型を覚えさせるのがいいんですが本質はスローイングの方ですよね。」

「……よく分かったな。」

「同じトレーニングをしてた奴が中学の頃にいたんで。」

「あぁなるほど。」

「話は戻しますけどあいつこのままだったら背負いすぎて潰れませんか?最近オーバーワーク気味だし。」

「……気づいてたのか?」

「えぇ。俺合宿のメニュー御幸先輩から聞いているので一年のみ朝練最近はサポートする方に回っているんですけど沢村に禁止令出しましたから。あいつこのままだったら怪我すると思って倉持先輩に引き渡したんですけど。まずかったですかね?」

「いや。助かる。俺ももうそろそろ言おうとしてたところだ。」

「……なら良かったです。」

と俺はほっとする

「少しいいですか?俺二軍戦見てないから分かりませんがあいつの球どうでした?受けてみて。」

「……」

「俺は監督は将来有望の選手程度だったらベンチに入れることはないと思います。だからちゃんと試合で使えるから沢村を一軍に呼んだんだと思っているんですが……実際のところどうなんですか?」

あいつの武器は柔軟な体とくせ球と気持ちのみ

それなら悔しい思いをした方が後々の秋大で使えるようになっていたはずだ

しかし監督が起用したってなると

「……俺と一緒で何か掴んだんですか?」

あの時の感覚で俺はバッティングで柵越えを連発できるようになった。すると守備や走塁もなんかわからないが視野が広がりいつもよりも動きが良くなったっていうか勝手に体が動くようになっていた。

化ける時は一瞬で化ける

中学の監督から言われた言葉が身に入る

「……それは見えば分かる。」

「……えっ?」

「夕食後バットとプロテクトを持って室内練習場にこい。」

すると去って行くクリス先輩に俺はただ呆然と見送るしかなかった

 

夕食後

「あれ?春市と前園先輩も呼ばれてるんですか?」

「あぁ、クリス先輩に頼まれたんや。」

「うん。僕は付き添いだけどね。」

「…へぇ〜。」

俺は少しだけ驚く

「そういえば春市一軍昇格おめでとうさん。まぁ二軍成績みれば当たり前の結果だとは思うけどさ。」

「あ、うん。でも東条くんと金丸くんはやっぱりショック大きかったみたい。」

「まぁそうだろ、俺だって二軍成績みたら沢村より東条か金丸をあげたし。でも監督が上げるくらいなんだから何かあるとしか考えられないだろう。俺はそれをみにいくんだから。」

と室内練習場に入ると

あたふたしている沢村と眠たそうにしてる降谷そして御幸先輩とクリス先輩がいた

「……なにしてるんですか?」

「いや、チームプレイの大切さについて教えてたんだが。」

「……あぁピッチャーは誰よりも野球について詳しくならないといけないってはなしか。授業中寝てるこいつがそんなこと言われたらな。」

「ちょっとその話後から詳しく聞かせてもらおうか。」

「……うす。」

「ちょっと。健斗!!クリス先輩?」

慌てる沢村。それなら授業中寝るなって

「ってかチームプレイの強化だったら俺もつき合いますよ。どうせ内野練習するときにピッチャーとの連携は確認しておきたいですし。」

「えっ?健斗くん内野もやるの?」

「てか俺キャッチャーとピッチャー以外どこでも守れるし怪我人がでたら大変だろ?それにスタメン取れる可能性が増えるじゃん。最近俺セカンドとショートとサードとセンターとライトのノック入っているけど。その分バッティング練習減らしているけど。」

「……それもこいつ憎ったらしいほどに上手いんだよなぁ。」

「まぁそれが俺の唯一強みですし。」

「……それ他の奴に言わない方がいいぞ?」

御幸先輩の言葉に首をかしげる

「あのそういえば沢村の球見させてくれるんですよね。オーバーワークになってしまう前に一球だけ見させてほしいんですけど…。」

「あぁ。そう言ってたな。」

するとクリス先輩はキャッチャーミットとプロテクトをつけ始める

俺はスイングしながら沢村が肩を作るまで待っていると

「そういえば春市と前園先輩は見たんですよね。沢村の球どうでしたか?クリス先輩が入ってからの。」

「……いや。俺にはわからん。しかしバッターが振り遅れとったんじゃ。」

「振り遅れる?沢村の球が?」

球速でいうと120kmあればいい方の沢村の球に振り遅れる。ってことは

「……砂田入れ。沢村の肩ができたぞ。」

「は、はい。」

とりあえず入った方が良さそうだな。

そしてその一球を待つと沢村が振りかぶる

すると右手に壁を作り左手が

……は?見えない

体に隠れどこにボールがあるかがわからない

そして勢いよくボールが放たれる

スピンがよく回ったボールは真ん中に行った後加速したように見えて

クリス先輩のミットに収まった

「……」

バットを持ったまま立ち尽くす俺。

リリース点もわからない分タイミングが取りづらい

「……なんですかあのめちゃくちゃなフォーム。」

ボールが出るところがわからないからタイミングが取りづらいしさらに伸び上がったように加速するストレート

「……分かったか?」

「……分かったも何もあのフォームできるのってあいつぐらいしかできませんよ。反応すらできませんでしたから。それにフォーシーム覚えさせたんですか?」

「いや。あれはまぐれだ。」

「そうですか。」

ガックしとしてしまう

まぁ納得だな。こいつはものすごい武器を手に入れたからベンチ入りメンバーに入ったのか

「ありがとうございました。確かにこれは打席入らないとわかりませんね。」

変則フォームから投げられるムービング使いのサンスポー

「どうだった健斗俺の球は。」

ガハハと笑っている沢村に

「……気持ち悪かった。」

最高の賛辞を送ってやった

「気持ち悪い!?どういうことだよ。」

「その言葉通りだ。」

なんであんな投げ方できるんだよ

まぁでも

こいつが敵の高校じゃないだけマシだったか

俺はため息をついてわらう。

「本当気持ち悪すぎ。」

「……健斗くんそれ褒めてるの?」

「あぁ。まじでこいつの球は初見ではジャストミートはできないだろうよ。これからこいつがピッチャーする時内野陣が苦労するのが目に見えるよ。全国でもこんな奴は見たことねぇ。」

「えっ?」

「ぶっちゃけ。コントロールを磨いてアウトローとインコースに投げ分けることとと緩急のつく変化球を覚えたら全国でも普通に通用する。てかこれで球速が伸びてムービングを操ることになったら。」

寒気がする。どうやって打ち崩せるかじゃなくどうやったら当てられるかに変わってくる

「……本当にあいつは敵じゃなくてよかった。完成形を打ち砕くビジョンが浮かばない。」

「……!!」

「降谷に沢村。この二人が三年間で一度も甲子園制覇できなかったら完全に俺らのせいだぞ。」

プレッシャーがかかる。多分こいつらが三年になる時にはほぼ二枚看板になるだろう

「そんなにやばいんか沢村は。」

「やばいってもんじゃないですよ。ぶっちゃけ今のままでも中堅校ぐらいだったら通用します。」

「……」

「沢村には内緒にしといてください。調子に乗らせない方がいい。」

「あ、あぁ。」

でもこいつらと一緒のチームで本当によかったな

「前園先輩、春市素振り付き合ってください。ちょっと本当にシャレになってない。」

「お、おう。」

「だ、大丈夫?健斗くん。」

「やばい。こんなん見せられて燃えない訳ないだろ。」

「……ダメやこいつ完全にあの時の沢村みたいな目をしとる。」

呆れたように前園先輩は俺を見る。

「ほら。早く行きますよ。」

「ちょ、ちょっと待てや。」

「……」

やばい。本当にやばい。

こんな投手がうちに二人もいるのだ

絶対に甲子園制覇しないと

その期待に胸を弾ませながら

俺は素振りへと向かうのだった

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