日本一のエースと天才バッター 作:四つ葉
合宿4日目終了時
「お前ら本当に体力ないよな。」
俺は俺以外の一年の一軍メンバーが倒れているのを見て。少し呆れたようにする。
夏の都大会までついに1ヶ月を切り俺はこの現状を少しだけまずいと思っていた
降谷は関東大会二回戦で投げているので先発の可能性があるのだが体力が致命的にないのが気になっていた
「……なんで健斗くんは立っていられるの?」
「いや。俺もっと少ないチームで合宿やってたし。それに思ってた以上に昨日の足つぼが効いたんだよ。」
美帆の母親直伝殺人足つぼマッサージ。美帆の母親は整体師なので効果はいいがただかなりの激痛が走る。
しかし体の疲労はかなり抜け一日目と同じくらい楽になっていた
「お前もやっておくか?10分地獄を見るだけでかなり楽になるぞ。」
「いいよ。あの時の健斗くんを見てたらさすがに。」
「……同じく。」
まぁ10分くらい気絶するくらい痛いのだが
「まぁ、そういうことでさっさと風呂入って寝るぞ。明日も普通に学校と朝練あるんだからな。」
「……なぁ、今日健斗の部屋行っていいか?」
「沢村またお前あれ見るのか?」
すると頷く沢村に少し苦笑してしまう
こいつは俺の決勝戦を繰り返し見ていた。
打たれても打たれても要所を締める大門ナインを見て少し思うことがあったらしい。
伝えたかったのはそこじゃないんだけどな
まぁでもいい刺激になったのならばいいんだけど
「……ほら風呂行くぞ。」
「……」
「これまた3人背負っていかねぇといけないのかよ。」
俺はため息をつく。
明日はライトに入ってのノックだし練習の最終日
余力は残しときたいと思いながら一人づつ運んでいくのだった。
「沢村!!」
伊佐敷先輩が沢村を呼んでいるが沢村はひたすら熱心に俺が入れたDVDレコーダーを見ている
「すいません。俺が代わりに引き受けます。なんですか?」
「……いや。一体何を見ているんだって聞こうとしたんだが。」
「昨日と同じ奴ですよ。大門中対白金中の決勝戦です。」
俺は苦笑する。
「本当は四球がどれだけ怖いか見せようとしたんですが。このありさまでして。」
「……まぁ、その試合は俺も見たんだが。確かにこの試合は異常だよな。四球の怖さがよく分かる。」
俺が出塁して盗塁、そして次のバッターがバントを決め最後は犠牲フライ
理想的な1点の取り方だった
「まぁ、準決勝も俺たちから見たら下馬評をひっくり返して勝ちましたからね。あの時もうちが完敗するって言われてましたから。」
「確か青葉中だったよな。」
「よく知ってますね。御幸先輩。」
「あぁ。コントロールのいいピッチャーがいるときいて調べてみたら女子だったから驚いたよ。でも、あの正確なコントロールは正直驚いたな。でも青葉中もかなりの強さだったんだろ?」
「相手のピッチャーの本郷がかなり早い速球を投げてました。軟式でも130後半は出てたんじゃないかと。」
「マジか。そんなピッチャーがいるのか?」
「俺があった時はストレートだけだったんでなんとかなりましたけど、でも高校でも多分即戦力でしょうね。打った時軟式ですが手痺れました。重たくて伸びる。そして制球力もある。降谷の強化版だと覚えてた方がいいですよ。正直1点取れたらラッキーです。」
「それは今の打線でもか?」
「……多分テレビで見ましたが一年の時の成宮さんよりも大分怖いです。もしかしたら140後半はもう出ている可能性もありますしそれにスプリット覚えられたら。」
「確かに一年でそれは怖いな。」
「……それに全国準優勝投手石貝や決勝で投げた羽島はまだ中三ですからね。末恐ろしいですよ。でも、それだけでも全国大会に行った意味はありましたね。」
同世代次世代の怪物
それが会えただけでも収穫できた試合だった。
「そういえば、大門中といえばお前と前田って同級生だったんだろ?」
「はい。一応幼馴染ですが。」
「……ぶっちゃけ付き合ってるの?」
御幸先輩の言葉に疑問に思う
えっ?俺が美帆と付き合っているかって?
すると急に殺気が俺を襲う
「美帆ですか?いや付き合ってませんよ。」
俺はなるべく動揺しないように言う。これは回答を間違えると完全に先輩に殺されるパターンだとわかりきっていた
「へぇ〜でも前に飯分け合ってたよな。それにお前前まで晩飯食うとき前田と食ってたじゃん」
「まぁ、幼馴染ですし。」
「その幼馴染って便利だな。」
「……てか元々親父と美帆の母さんがいとこ同士で仲良くしてただけなんですけどね。物覚えついた時から一緒にいたんで別に飲み物でも俺が口つけたもの普通に飲みますよあいつ。てか野球やってる時なんか飲み物分け合う時いちいち女子専用とか決めるの面倒でしたし。」
実際俺の飲み物を美帆が飲むことは多々あったし
「それにあいつ俺に毒味とか言ってはちみつレモンいりのおにぎりとか作ってきますから。」
「……それって美味しいか?」
「美味しいと思います?」
あれは本当にひどかった。意識が失うほどのまずさであればいいんだけど。じわじわとまずさが口いっぱいに広がっていた。
「まぁ、どちらかというとライバルって方が近いと思います。お互いに競い合うことが多かったですから。」
「……へぇ〜。」
「一気に興味失せましたね。」
と言いながら各自遊んだりしていたけど
いつも騒がしいはずの沢村が変に黙り込んでいたのが気になった
「……お願いします。」
5日目俺はライトの守備についていた。
前園先輩が打ったボールは右中間深いところへ飛んでいく。
俺は全力ダッシュで最短距離を走りジャンプキャッチでとる
……やっと取れた
俺は荒れた息を吐きながら少し達成感に包まれる
さっきまで取れなかったギリギリの距離
それを繰り返し打ってもらうことによって守備範囲を広げていた
後はどうやって送球体制に入るか
それが俺が課題だ
汗をユニフォームで拭い俺はライトへと戻る
「おい。おい。こいつどんだけ守備範囲広いんだよ。」
「打って走って守れる。こいつ化け物か。」
そんな声が聞こえてくるけどまだ足りない
昨日言った選手はこの先絶対にどこかでぶつかる相手だ
そいつらからは本当に1点が重い
唸る豪速球
鋭く曲がる変化球
正確なコントロール
どれもすごい武器だ
そして俺たちのチームにも
長身から投げられる鋭いカーブ
コントロール抜群のサイドスロー
唸りそして重い豪速球
そしてムービングを使う変則フォームのサウスポー
……全国でも通用できるだけのピッチングができる投手が4人もいるんだ
「ライト。」
ボールが飛んでくる。しかしボールの勢いは死んでいて前に落ちそうな打球
俺はそれを追いかけボールを追いかける
……ピッチャー陣を支えるのは俺たち野手なんだ
ピッチャーが
メンタルが弱かろうと
打たれ弱けれど
どれだけ試合経験がなかろうとも
俺たちがピッチャーを助けるんだ
俺はスライディングをしてボールを掴む
歓声が聞こえるが俺は全く違う
負けてたまるか
置いていかれてたまるかよ
そして俺は立ち上がりセカンドに素早く正確に胸元に投げ込む
この俺の武器で負けてたまるか
ピッチャーやバッティングに関したら誰かに負ける
でも元大門中キャプテンとしてここだけは譲れない
「もう一丁お願いします。」
俺のところに飛んでこい
全部アウトにしてやるから
「変われ。俺が打つ。一年小湊は外れていろ。」
そしてついに監督がバットを持つ
そして始まる前園先輩より厳しいノックに俺は必死についていく
どんな鋭い打球でも体で止め
ギリギリで取れるボールには食らいつき
基本をしっかりこなす
体で覚えて来たんだ
どんだけ苦しいことでも
どんだけ狭き門だろうけど
俺はここだけは譲らない
「もう一丁お願いします。」
絶対に負けたくない
一年だからスタメンに入れない?
そんなことないだろ
足を動かせ
頭で判断するより先に体を動かせ
自分の限界を超えろ
「もう一丁。」
声を出せ
……生意気だけど
プレーで全部見返してやればいいんだよ
「もう一丁。」
どんだけ先輩が倒れようとも俺はここに立ち続けノックを受け続ける
もう限界にだけど
足がもたついてても
一年である俺が先にリタイヤしてたまるか
「もう一丁。」
「……砂田行くぞ。」
そしてボールが飛んでくる。真正面のボールを掴み送球する相手を探すと
「砂田。」
すると結城先輩がいつのまにか立ち上がりバックホーム中継の位置にいる
俺はそのミットの位置ドンビシャに送球を送る
「ナイス送球。」
「……ナイスガッツです。」
俺は拳を結城先輩に向ける
結城先輩の顔はまだやる気だ。
三年間の重み
俺にはそれはないけれど
一年や先輩方の代表としてここに立っているんだ
無様なプレーだけは絶対してたまるかよ
すると他のボジションの先輩方も徐々に立ち上がっていくのが分かる
もう手も足も感覚がない
それでもこのチーム一員であるために
「よしラスト一球。最後まで集中力を切らすな。」
「「「「はい」」」」
そうしてラスト一球俺がきっちりととり
地獄のノックが終わりをつけた