日本一のエースと天才バッター 作:四つ葉
合宿8日目
「川上先輩ツーアウトです。」
「ここで締めましょう。」
今日の第一試合稲実対青道
俺は四番ショートでスタメン起用されていた
ピッチャーは川上先輩でキャッチャーは宮内先輩
セカンドには春市が入っている
カキィィィン
鋭い音が聞こえる
鋭い三遊間の辺りに俺は飛びつくとグローブに収まる。
そして俺はすぐ立ち上がりファーストに送球する
「アウト。ゲームセット。」
5対4
なんとか稲実を振り払った
「ウォォォ。あのショート今日何個目だよ。」
「三回の4−6−3のゲッツーもさすがだったぞ。」
「倉持と亮介にも劣ってないんじゃないか?」
と歓声が聞こえる
「ナイスプレー。健斗くん。」
「うわぁ。久しぶりにショートで出たけど。やっぱり結構飛んでくるな。」
「いや、普通取れないところでも全部取ってたからだと思うけど。」
「レフトに降谷いるしなるべく取っておきたかったんだよ。あいつ未だにゴロをトンネルすること多いから。」
外野のエラーはかなり致命的だそれだからな。
「てか今日俺勝負避けられたし。結構走ったからな。ちょっと合宿の疲れも消えきってないし。」
今日の成績は5打席2打数1安打1打点3四球2盗塁
初戦だけでこんだけ走るって中学でもそんなになかったからな
「……5対4で青道の勝ち。礼。」
「「「しゃー。」」」
俺はベンチに戻ると
「……ありがとうな。」
川上先輩が急にそんなことを言ってくる
「今日は助けられたよ。」
「いや。これが俺の仕事ですから気にしないでいいですよ。」
とスポーツドリンクを飲みながら俺は苦笑する
「元々守備に関したら野手の仕事なので。それよりも川上先輩もう少しせめてもよくないですか?スライダーの配球が後半多いような気がしたんですが。」
「えっ?そうか?」
「後半少しスライダーに的を絞ってきてましたから。ストレートを首振っていた時ほぼスライダーでしたよ。」
実際のところ川上先輩はスライダーに頼りすぎているふしがあるからなぁ
サイドスローピッチャーは結構貴重だから腐らしておくには勿体無いし
試合でも最近は好リリーフだったからな
今日の丹波さん次第では……
それに丹波さんと俺ってあんま話さないんだよなぁ
合宿中のフリーバッティングの時も俺あの人から打ちまくってたし
せめて落ちる球が一球種あればな
まぁ、でもカーブは全国区並みだしな
軟式経験のある俺にとってスライダーとカーブそれとチェンジアップはよく中学の時に対戦経験があるけどな
あんなに曲がるカーブはそうそうないんだがストレートとカーブだけじゃ絞りやすいし
「ってか春市ベンチかたづけねぇと。修北すぐくるしダブルヘッターだから急ごうぜ。」
「うん。そうだね。」
と片付けて荷物をまとめすぐに外に運び込む
そうしていくと肩を伸ばし体を伸ばす
やばいな。体が重い
昨日はほとんどオフに近かったからいいんだけど、いつもよりも盗塁も守備も劣っているのを感じる
……最後のやつだって普通なら飛びつかないで普通に取れたのに
派手さより確実性を優先する俺にとっては少し納得がいかなかった
……やっぱり完成度高いな。
俺は稲実対修北の試合を見ながらそう思う
見ているのは稲実のエースの成宮さん。
俺が打ってみたいと思っていた一人だった
俺が対戦した時、稲実は第二ピッチャーの江口さんだけだった。
……それでもレベルが高いのに
俺はため息を吐く
148kmのストレート
キレのいいスライダーとフォーク
本当完成度高すぎるんだよなぁ
去年のトラウマも払拭されているらしいし
厄介だなやっぱり
春の都大会も先発していたし完全に復活したと言っていいだろうな
「……本当に厄介だよね。」
「……お前な心の中よむなよ。」
とスコアブックを書いている美帆が話しかけてくる
「まぁ、お前とは違うタイプのピッチャーだよな。どちらかというと球威とキレで三振を狙うタイプ。まぁコントロールもいいんだけどさ。」
「……ふーん。けっこう余裕そうじゃん。」
「そうか?案外これでも余裕はないんだけど。」
「嘘ばっかり。大体打てる秘策がある時は健斗は笑っているもん。健斗今笑ってるし、何か策があるんでしょ?」
すると無自覚に笑ってしまっているのに気づく
「……まぁ、あることにはあるんだけどな。打てるかどうかは分からないけど。」
「……ふーんどんなの?」
「今はいったらダメだろ。」
俺は少しだけ苦笑してしまう
この試合を見る限り多分
俺は一つのことに気づいていた
まぁ、大したことではないが
……明らかに弱点になる要素がある
それも大きな弱点が
すると7回の最後のバッターを迎える
……修北のバッターこれ三振だな
ストレート一本狙いなのがよく分かる
そして成宮さんが最後の一球を投げる
ゆっくりとシンカー気味に落ちる遅いボールがキャッチャーミットに収まる
……チェンジアップかよ
縦と横それに緩急
それを見るけど
「……なんか嫌だな。あの見せ方。完全に舐められているみたいで。」
美帆がそういうと同じく頷く
「そうだな。それも一軍がいる中で見せられるが一番腹たつな。それもチェンジアップがあると印象付けたように見えたけど。」
「……多分あれは意識を引きつけるためのチェンジアップだよな。多分本当の試合でも1割投げればいいくらいの頻度で使うための。」
「うん。捨ててもいいと思う。」
成宮さんの決め球はストレートそれを生かすために緩急を覚えたのだろう
でもそれは見せたのは間違いだった。
「……ところでなんであんたはここにいるのよ。」
「スコアブック取りに来たからに決まっているだろ?今の試合のスコアブック見せてくれ。相手の配球見たいから。」
「あぁ。いつものね。」
といい俺は少し美帆の書いてあるスコアブックを見る
……綺麗にかかれたスコアブックには球種と別にマークが分けられていた
「……懐かしいな。それ。」
小学校の時よく美帆がいやいや言いながら書かされていたスコアブックの書き方だった。
「……そうね。私がまた書くとは思わなかったわよ。でも、今私ができるのはこれだけくらいしかないから。」
そんな声が聞こえる
「沢村に何か教えているんじゃなかったのか?」
「あれは善意よ。本当は私があのマウンドに立っていたいんだから。」
「お前、なんでマネージャーになったんだよ。」
苦笑してしまう
「お前それなら女子野球続けたらよかったじゃねーか。一応それじゃねくても草野球とか。」
「…だから健斗がいないと意味ないの。」
そんなことを言い出す
「言ったでしょ?私は健斗がいないところで野球やっても意味ないのよ。私がマウンドで立っていられたのは、健斗がいるからだもん。」
「……」
「健斗のところに打たせたら絶対にどうにかしてくれるんだもん。それに初めて全国大会へ出場権が得れる時だって一番気遣いして緊張やプレッシャーに真っ先に気づいてくれたのは健斗でしょ。」
「……何年一緒にいると思っているんだよ。それくらい気づくわ。」
俺はため息を吐く。生まれた時からほとんど一緒にいた。
美帆と俺は誕生日も1日違いで同じ病院、家も近く自然と一緒にいることの方が多かった。
スコアブックを書いていた美帆は少しだけ悲しそうに笑う
「……生意気で意地悪で自己中心的な考え方ばっかりでも監督もみんなも何も言わなかったでしょ?肘を壊した時だって諦めずに利き手を変更してまでピッチャーにこだわってたけど、あの秋大でピッチャーが私に健斗はセカンドに決まった時だって何も言わなかったよね。私を庇って肘を壊しちゃったのに。」
……まだその話を引きずっているのか
一年夏直前の5月
俺と美帆は一度俺の父さんが乗せた自動車で交通事故にあっている
美帆は抱きかかえて守ったので打撲程度無事だったのだがガラス片が俺の左肘に刺さり俺はピッチャーとしての道を諦めないといけないことになったのだ。
「……あれはお前のせいじゃねぇよ。あの事故で生きてただけマシだろ。」
後部座席にいた俺と美帆は助かったからな。
「……そうじゃないわよ。ただ。私はそんな健斗を見ていけないといけないから。」
「……は?」
予想外の言葉に俺は呆気にとられる
「無茶して、こんどは右肘傷みかけたの忘れたの?」
「……」
「私はあの時の事件はもう気にしてないの。それよりも私にとったら今のことの方が大事だから。私は今は健斗のサポートをしたいの。」
「……まぁ、どうせ何言っても変えないだろうしそれで納得しているんならいいけどさ。」
嘘は言っていない美帆のことを見て納得したようにみせる。まぁバレてるとは思うけど深くは聞かない方がいいってことは分かっている
「でもなんでそんなに俺のことを気遣うんだよ。俺は恩返しでもないのに俺の進路に合わせるって。」
「……いいでしょ。別に。」
「まぁ、そうだけどさ。」
そこがよく分からないんだよなぁ
でも正直俺は美帆が野球をやれないことを残念に思う反面一緒に進学してくれたことを嬉しく思ってしまった
まぁ、一緒にいて楽しいしやっぱり幼馴染だからだろう。
妙に落ち着く。
元々気を使わないのだが、それでも悩み事や愚痴をこぼす時や何かあった時親よりも早く報告するのはいつの間にか美帆だった。
お互いに信用しあっているとは思っているんだけど
よく鈍感って言われるんだよなぁ
「それよりもいいの?スコアブック見ないで。」
「いや、別にいいや。少し話したかっただけだし。」
「へ?」
「いや。なんか話したかったんだよ。気分転換っていうか。」
俺は少しだけ苦笑してしまう。
「……こういった会話するだけで自然と落ち着くんだよ。バカっぽい話でもシリアスなことでも。」
結果的に少し落ち着いているからな
少しだけむずかゆいけど
「……あんた言ってて恥ずかしくないの?」
「……恥ずかしいに決まっているだろ。」
少し頰をかいてしまう。今頃顔は真っ赤だろう
そしてしばらくは無言が続きスコアブックを書く美帆の隣で軽めに柔軟をする俺がいた
するとしばらくして9回に入る
「んじゃ。行ってくる。」
俺は立ち上がり軽く腕を伸ばす
「うん。頑張ってね。」
「おう。」
と手を振ると先輩方が見ていたバックネット裏へ向かう
……さてと
「やるか。」