日本一のエースと天才バッター 作:四つ葉
青道行きが決まってから早い事で四ヶ月
「ほら、美帆ちゃんと高島さんが待ってるわよ。」
「……うっせ。分かってるよ。」
俺は笑い急いで靴を履く
野球道具と最低限の道具を持って俺は荷物をかつぐ
そして俺は仏壇に手を合わせる
「……んじゃ行ってくるわ。親父」
そして俺は席を立つ
「んじゃ行ってくるわ。」
「えぇ。頑張ってきなさい。美帆ちゃんを甲子園へ連れて行くのよ。」
「……おう。」
「あんたのことは全部美帆ちゃんに任せてあるから、後正月には一度帰ってきなさいよ。」
「何度も聞いたって。」
と母さんの言葉に苦笑してしまう
「それに今度会うときは甲子園の切符を掴んで勝ってくるさ。そんじゃあな。」
俺は住み慣れた家の玄関を潜る。今日は青道高校の寮への入寮日。
そして美帆が東京で一人暮らしを始める日でもある。
「……来たわね。」
俺はタクシーから降り長野駅に着くとそこにはすでに多くの人集まりができていた
「遅い!!」
美帆が少し怒ったようにしているがまだ集合時間15分前だぞ
「わりわり、そんでなんの集まりだ。」
「えっと沢村くんの同級生が見送りに来たんだって。」
「……へぇ〜。スゲェなあいつ。俺の部活の後輩全て卒業式に労いの言葉書かれただけだったぞ。」
「嘘つき。」
「……何むくれてるんだよ。お前。」
「別に〜。」
と俺はため息をついてしまう。本当乙女心って難しいよな。
「そんで、お前どうするんだよ。料理。」
「うっ!」
「お前の料理スキル最低だし姫路さん並みにひどいんだから。」
「だれが王水肉じゃがを作るのよ。」
「お前が作った肉じゃが食ったら俺四時間ぐらい気失ってたらしいじゃねーか。」
「うっさいわよ。結局青道の寮で野球部として食べることになったのよ。」
「……まぁいいんじゃないか?栄養士さんの監視のもと健康のいい食事ができるらしいし。ちゃんと野菜も取れるからな。」
よく自炊することになると食生活が悪くなるって聞いてるから少し一安心だ
「……後悪いけど朝の清掃少しだけ手伝ってくれないか?さすがに先輩に手伝ってもらうわけにはいかないだろうし。朝の自主練や勉強も付き合ってほしいんだけど。」
「……でも青道って練習量は多いんでしょ?そんな暇あるの?」
「青道に行っても大門の頃とやることは同じだろ。勉強の時間は少なく効率的にだけど他人への気遣いは忘れず家の手伝いは怠らず。食事や睡眠で健康面を作る。まずは日々の態度、姿勢をアピールしないとあんな青道の野手にアピールの暇さえもらえないからな。」
「……なるほどね。」
するといきなり高島さんが納得するようにしている
「高島さん聞いてたんですか?」
「えぇ。最初から。どうやら、本当に君をスカウトしたのは間違ってなかったようね。」
俺は少し苦い顔をしてしまう
「それはプレーを見てから言ってください。」
「でも砂田くん前会った時よりも身長伸びなかった?」
「はい。5cm伸びて183cmになりました。体重も80kg代に載せましたし。」
「本当男子はいいよね。軟式の時は転がせって指示があったからシングルしか打てなかったのに最近じゃ私の球を100は飛ばすでしょ?」
「……まぁ、それは真ん中でフリー打撃してるだけだろ?俺の持ち味は足と守備なんだからそこからアピールしていかないと。なるべく低めの打球を確実にセンターへ返すのが理想だろ。それと追い込まれてからのバッティングもだし。」
「あなた、本当に高校生なの?」
高島さんの言葉に苦笑してしまう
「でも結果が全てなんで。口だけじゃなんとでも言えるんですよ。目の前の試合を一つずつ勝つこと。それが一番大切ですから。それに俺名目上はまだ中学生ですよ。」
「……責任感が強いんですよ。昔から。」
美帆が笑う
「だから一年生の秋から監督の指名でキャプテンをしてたんですよ。日々の態度もよく野球に関しての向上心もありましたから。」
「…そういうお前だって日々の態度からエースを掴み取っただろ。負けん気の強さ、それと女性であることのディスアドバンテージを見事プレーで払拭したんだし。」
「好きなことについては妥協したくなかったのよ。」
「俺はお前に負けたくなかっただけなんだけどな。」
今でもこいつだけには負けたくねぇ。努力も態度も野球も
人知れず天才で野球センスがずば抜けており
俺が初めて負けを認めたから
小学校のころは俺はエースだった。
早いストレートで押していきチェンジアップで三振をとるそんな投手だった
しかし中学にはいり美帆がピッチャーで少しずつだが活躍するようになった
早いストレートも、大きく曲がる変化球もない
でも誰よりも走り誰よりも投げ誰よりも努力をしていたことを俺は知っていた
だから俺も必死に食らいついた
今まではエースとして。ピッチャーとして
こいつに劣ると気づいた俺は野手として美帆を支えたいと思った
その後はノックをぶっ倒れるまでやり、血豆が潰れるまでバットを振りそれでいて美帆の練習に付き合った
お互いに幼馴染で、頼れる仲間であり、ライバルであることが俺たちが強くなった理由だった
「本当美帆が男だったらよかったのに。」
つい本音が漏れてしまう
「……砂田くん。」
「こいつと一緒に甲子園でプレーしたかったんです。こいつの後ろでずっと守っていたかった。」
そう思える選手だった。頼りになり俺の片腕として支えてくれたのは美帆だった
「……こいつは俺にとっての目標であり、目指すべき選手像なんですよ。」
こいつはエースとして一人の野球人として
「……すいません。ちょっと暑くなっちゃいました。」
「本当よ。こっちが恥ずかしいじゃない。」
「……うっさい。俺だって恥ずかしいんだよ。」
さっきから沢村たちだってこっち見てるし
「でも美帆は俺にとっての日本一のピッチャーだよ。」
守りたいと思わせるようなピッチング
俺が一番魅せられた選手だった。
「日本一の投手。」
隣から沢村がそう呟く
こいつもピッチャーでありそこを目指しているんだろう
「……本当バカ。」
「バカでいいよ。ほら泣くなって。」
「……」
と泣き出す美帆に俺は軽く頭を撫でる
「……あの、このタイミングで悪いんだけどもうそろそろ電車が来るわ。」
「……はい。」
「お前本当昔から泣き虫な性格変わんねぇな。」
「……仕方ないでしょ。」
「そだな。」
俺だってこいつに言われたら結構くるもんがある
そして駅の構内に入ると電車が来たところだった
「あ〜あ。じゃあ行くか。久しぶりに春市と信二と秀明に会えるしな。」
「あれ?松方シニアの二人と知り合いなの?」
「はい。一応帝東との試合を見た後に冬休みを使って合同練習することになったんですよ。あの時見学断ったのはそう言った理由だったんですよ。」
「……」
かなり驚いている高島さん。でもそれくらいしないと俺たちは一年からレギュラーになれない。
あの打線を考えると俺が入れるボジションはライトとレフトの二つ
「……俺は本気で一年の夏からレギュラー狙ってますから。」
先輩後輩関係なく背番号を取りに行く。
それが俺ができる最大のパフォーマンスだからだ