日本一のエースと天才バッター 作:四つ葉
「……ふん。」
といいながらボールを投げてくる宮内先輩に俺は両手でとる。
「ナイスボールです宮内先輩。」
今は練習開始20分前だが部員がちらほら集まってきていた。
美帆はマネージャーで集まるらしく俺のアップをした後に去っていった
しかし宮内先輩は俺がアップしている途中に朝練に加えてほしいと言われたのでキャッチボールをしているのだが
……この人が控えってすげぇな
投げる球がどんな距離でも胸元に収まる。
肩もそこそこ強いし強豪校でも並大抵のところじゃスタメン取れるぞ。
少しずつ離れていって今は70mくらい離れてるがお互いにまだ暴投は0
……緊張感のあるキャッチボールになっていた
「……あれ?宮内と砂田じゃないか?」
「あっおはようございます。伊佐敷先輩。」
「あぁ。宮内ずりーぞ。俺も混ぜろや!!」
「……」
この人球高いんだよなぁと内心思いながら言い争っているのを見る
なんか思ってたよりも上下関係が楽でいいな
そう感じてしまう
なんかもっと堅苦しいイメージがあったんだけどな
「しかしいい球投げるな。砂田。」
「いや。キャッチボールは基本中の基本ですから。大門中はキャッチボール一度誰かがミスするとペナルティーで100mダッシュをその場で全員やらされましたから。」
「……それ本当か?」
「はい。キャッチボールは守備の基本だからってことで平日は一時間。休日は一時間半はとってましたから。」
どんな距離でも胸元に投げ込む
それが俺たちのポリシーであり鉄の掟だった
まぁ、俺も硬式慣れたきたばっかりで握り変えが少し遅いけどな
「……それに俺たちには頼れるエースがいたんで一点とれば守りきることができたんですよ。」
「あぁ、あの女性ピッチャーか。」
「知っているんですか?」
「知ってるも何もコーナーに投げるピッチングに緩急をつけた。変化球。ピッチャーのお手本みたいな投手って言われてたからな。」
「それで同じチームにいたお前はどう見るんだ?」
「……そうですね。一言で言うなら守りやすいっていった方がいいですかね。コーナーを突き無駄な四球をださず、守っている正面にボールが集まってくるんですよ。それにランナーを出しても図太く投げますしクイックも牽制もうまかったです。中学で打たれたホームランはたったの一本ですし。」
しかも春市に打たれた一本だけ
「それにエースとしての自覚がなによりありましたから。礼儀正しく文武両道。野球をやっているからって言葉が大嫌いなやつですからね。俺もかなりの影響を受けてます。」
今でも野球をしてるから、夜遅くどんだけ疲れていても宿題を忘れることは一度もないし成績はいつも上位を保っている
「結果を求めるなら日々の生活を見直せってなんども口すっぱく言われましたよ。……でもその姿は間違いなくエースでした。全世界選手権でエースナンバーをつけるくらいでしたから。」
世界大会は先発をやりたかっただろうがチーム事情を考え自分から中継ぎに回るなど本当に頭の上がらないやつだった
「正直言うなら男子だったら青道でも即戦力ですよ。俺と一緒に自主練してましたがあいつシンカーと縦スラとスライダー覚えましたし。急速も平均130kmは安定して出せるようになりましたから。」
「……おい。それシャレになってねぇぞ。」
「……それに変化量はそこまでないんですけどキレがすごくて、追い込まれたら当てるだけでも精一杯ですよ。あいつ今年入学する一年3人相手に3打席勝負して7奪三振しましたから。」
冬の合同練習で春市と信二と秀明が打席にたったのだが
信二と秀明を3打席3三振に抑え込んだのだ
あの時の球の勢いは今でも忘れることはできない
過去最高のピッチングだった
「……怪物だな。」
「ただ女子で今日からうちのマネージャーですけどね。」
「「「は?」」」
「……はって言いたいのは俺の方ですよ。今でさえまだもったいないって思っているんですから。」
それでもあいつが決めた道ですから仕方ないんですけどね。っと付け加える
「すいません。宮内先輩もう一旦区切りませんか。朝練10分前なんで。」
「分かった。」
でもやっぱ外野手だったら今のところは多分大丈夫だな
後は実践で慣れれば内野も問題なく元の硬い守備に戻れるはずだ
硬式ボールの握りを確認すると違和感がなくなったが送球がまだ少しシュート回転気味なんだよな
今週の課題はもっと低めにいい送球をかな?自主練でスローイングとキャッチボールの練習と内野手との中継プレイの確認。宮内先輩からサインも覚えないと。
やること覚えることが多すぎる
「……やっぱ楽しいな野球。」
俺はただ笑う。それに今から始まる練習に期待を高めながら
「……先輩たちは別のグラウンド集合なのかよ。」
俺はため息を吐くと肩を軽く伸ばす
「あれ?砂田くん?」
後ろから声をかけられる。
「おう。久しぶり春市。」
「うん。冬休み以来だよね。」
「……あぁ。あの後どうだ?硬式には慣れたか?」
俺と春市に信二と秀明は冬休みに全部を使って合宿を行っていた。
「う〜ん。やっぱり軟式と違って打球が速いのにはまだ苦戦してるかな?」
「俺は握り変えの速度がやっぱ落ちてるんだよな。まだ芝で硬式扱ってないから芝でも一度練習しておきたいし。でもバッティングは俺は硬式の方が手応えあるんだよな。」
「僕もバッティングには苦戦してないかな?後は軟式野球で見られなかったフォークとスプリットの対応はしたいけど…」
「同感。そういやお前ショートとセカンドどっち守るつもりなんだ?」
「セカンドにしようと思ってるけど砂田くんは?」
「俺は基本外野。足と肩を生かすには内野より外野の方がいいし。できるならセンターかライトがいいなって。」
「でも昨日金丸くんと東条くんにあったけどかなり振り込んできたみたいだった。」
「まぁ、あいつに3三振くらったのが相当悔しかったんだろ?あいつもまた小湊に2安打されてめっちゃ悔しがってたぞ。」
俺は東条から3打数3安打、美帆から3打数2安打だったけど
「そういえば汗かいてるけど……朝練してた?」
「あぁ、アップしてたしからな。これから体力測定だろ?それなら少しでもいい測定値に持っていけるようにしないと。……多分監督はこういったところを見てると思うし。」
「……なるほど。」
「春市もこれからやるか?今なら食堂の清掃券もついてるぞ?」
「……いらないよ!!」
と軽口を叩きながら
「お前も朝練と午後の素振り付き合え。お前ならもう理解してるだろ。ここでは結果だけが求められることを。そのためになるべくアドバンテージは多くとっておいた方がいい。」
「……まぁ、そうだね。うん。付き合うよ。」
「あぁ。後から連絡するわ。まぁ俺は昨日からもう監督にアピール済みだけど。」
「……そういうところはちゃっかりしてるよね。」
「まぁ、でも昨日はこの施設早く使いたくてちょっと素振りしてただけなんだけどな。」
「そういうところは砂田くんらしいよ。」
と軽口を言い合っている。
すると
「整列。」
と結城先輩の声で俺と小湊も整列する。
はっきりと聞こえる声は緊張感を出すには十分だった。
「「「おはようございます!!」」」
すると昨日見に来た片岡鉄心がいた。
「監督の片岡だ。これで入部希望者は全員か?」
「「「はい。」」」
「順番に自己紹介をしてもらおうか。」
「「「はい」」」
すると五十音順に始まる自己紹介に少し退屈に思う。
全部がテンプレートだと思う言葉に少し飽き飽きしてしまう
守備が得意とかそんなことはどうだっていい。
次と俺の番になると俺は息をすう
「大門中学校出身砂田健斗。希望ポジションは外野手。一年生の夏からスタメンを取りに行きますので先輩方は覚悟をお願いします。」
簡単で完結な挨拶に先輩から睨みつけられる。
生意気とかそんな声がかかるがそんなことは知らない。
でも俺は嘘もつかない
完全に宣戦布告をしたのだ。
「……アピールポイントは学校生活や日々の生活での態度です。以上。」
「ちょっと砂田くん。」
「……春市こういったのはインパクトが大事なんだよ。これで完全に先輩方も監督も名前を覚えてくれるだろ?」
「そうだけど、でも…」
「…悪いけどここに来た以上プレーや日頃の行いでアピールするしかないんだよ。そのことをわかってる先輩はあん中にも数人はいるぞ。」
監督なんか一瞬笑ったしな。
でも片岡監督が求めてるのは多分そういったことだ。
結城先輩もあぁ言った俺たちにとってもいい刺激になると
つまり俺の最初の役割は起爆剤だ
でも起爆剤程度で収まるわけがない
ダイナマイトになって周りを巻き込んでやる
「……まぁ宣戦布告だよ。先輩方には悪いけど本気で最初の夏からスタメンを奪いに行くからな。」
「……」
その後遅れてくるバカが一人いたがそいつはほっとこう
「一年はBグラウンドで体力測定二、三年はAグラウンドでシートノックの後フリーバッティングだ。それと砂田は体力測定終了後二、三年と合流。以上だ。」
するとグラウンドが騒めき始める
「……春市行くぞ。」
「えっ?ちょっと砂田くん。一体何をしたのさ。」
「……俺が素振りをしてたら監督に見られて一軍合流を言われた。以上。」
「……ちょっと意味がわからないんだけど。」
「……俺も正直なんで一軍に呼ばれたのかわからん。アップ行こうぜ。」
「あっうん。」
と小湊と一緒に俺は少し急ぎ足で向かう。
……そうして俺の高校野球は始まるのであった