グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ)   作:水郷アコホ

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12「図書館探検」

 ──図書館への全員入館を果たした一行にカレーニャが滔々と図書館について語る。

 

 

 

カレーニャ

「さて、よろしいですこと皆さん」

「このプラトニア中央図書館、上は地上8階、下は地下2階で構成された、プラトニアで最も高~い建物でもござあますわ」

「しかして、1階は受付と職員用の設備を(しつら)えた事務フロアとなっておりますの。基本、出入りの時以外でお客がこの階に留まる理由はござあません」

「書物は大半がここより上の階に所蔵されていますのでまずは──」

 

ドリイ

「カレーニャ。皆様なら既にあちらに」

 

カレーニャ

「んな!?」

 

 

 

 ──ドリイが指し示す遙か先。一行はカレーニャ達よりずっと先を賑やかに、かつうるさくならない程度に楽しく歩いていた。

 ──好奇心から足取りが早まるルリアとビィに、それに付きそう団長とカタリナ。最後尾ををひな鳥のように離れては追ってを繰り返すアンナという隊列だった。

 ──明確な目的を持って訪れたアンナも今は団長たちと知らない地を歩く事を優先し、純粋に楽しんでいるようだった。

 

 

 

カレーニャ

「……まあ、観光客らしいっちゃらしくて大変よろしい事ですけれども」

 

ドリイ

「時間はまだ余裕があります。まずは心ゆくまで堪能していただくのもよろしいかと」

 

カレーニャ

「はいはい。……全く、ああいうノリはよくわかりませんけれどもね」

 

 

 

 ──やや距離を開けながらのんびりと一行を追う二人。

 ──そうこうしている内、一行は1階をちょうど一回りする頃に、風変わりな設備を見つけた。

 ──鉄格子のような物で遮られた向こうに、大人数人分ほどのスペースの空間がぽっかりと空いている。

 

 

 

ビィ

「何だぁここ? 工事中か何かか?」

 

ルリア

「あ、ここに説明が書いてありますよ。えーと、『魔導グラス昇降機』……と、言うそうです」

 

カタリナ

「ふむ……説明を読む限り、その鉄格子の脇にある操作盤に触れるとゴンドラが移動してきて、客を乗せて各階を移動してくれる──という代物のようだな」

 

 

 

 ──要するにエレベーターである。格子状の出入り口の脇に、1メートル弱程の柱が立ち、その上面に魔導グラスが嵌め込まれている。このグラスが操作盤であると見て取れる。

 

 

 

アンナ

「す、すごい便利そう……! こ、こうかな……えい」

 

 

 

 ──図書館に来てからやや興奮気味のアンナが、話の流れに任せて操作盤に触れてみる。

 ──プラトニアの叡智を肌で感じてみたいという欲求もあるのだろう。

 ──が、特にこれと言って変化は見られない。

 

 

 

ビィ

「……ん? これで、ゴンドラってのが1階に向かってきてくれるのか?」

 

カタリナ

「妙だな。説明書きには操作盤に触れると、すぐに呼び出し中のサインとしてグラスが光るとあるのだが……」

 

ルリア

「もう一回、触り直してみたら動いたりしないでしょうか?」

 

アンナ

「や、やってみてるんだけど……あれぇ?」

 

 

 

 ──カタリナの話を聞いた時点から既に、アンナが操作盤にピタピタと触れなおしてみていたが、やはり操作盤はうんともすんとも言わない。

 ──そんな一行の背後まで追いついたカレーニャとドリイは、状況を理解すると何か小声で言葉を交わしている。

 

 

 

ビィ

「故障してんのか? ちょっと、オイラにも試させて──」

 

主人公(選択)

・「いやいや、ここは僕/私が──」

・「一応、人を呼んだ方が──」

 

→「いやいや、ここは僕/私が──」

 

カレーニャ

「ちょぉい待ち!」

 

 

 

 ──ビィが操作盤に触れようとすると、やや強引に割り込むようにして、カレーニャが自らの手を操作盤へ引っ叩き気味に貼り付けた。

 

 

 

ビィ

「おわっと、危ねえなあ。ぶつかる所だったじゃねえか」

 

カレーニャ

御免遊ばせ(ごぉめんあっさあせ)。ちょいとムダに勢い付きすぎましたわ。まあとにかく見ていなさいな」

 

 

 

 ──言われるままに待ってみると、数秒ほどして操作盤が黄色く点灯する。

 

 

 

ルリア

「あ、動いたみたいですよ」

 

ビィ

「さっきは触っても動かないし、今度は光るまで時間かかるし……やっぱどっか故障してんじゃねえか?」

 

カレーニャ

「故障じゃあござあませんわ。これは整備不良。”燃料切れ”ですわよ。おかげで手間が1つ省けましたわね」

 

ビィ

「燃料?」

 

カタリナ

「魔導グラスと言うくらいだ。恐らく魔力を動力にしているとは推測できるが……」

 

カレーニャ

「ドリイさん。長ったらしい説明お願いしますわ」

 

ドリイ

「畏まりました」

 

 

 

 ──エレベーターの到着を待つ間、ドリイが”燃料”について説明する。

 ──魔導グラスは起動する際に、内部に補充された魔力を消費して動く。これが切れている時はただの硝子とほぼ変わらない振る舞いをする。つまり、何の反応も返さない。

 ──基本的な性質が硝子と似ている事が「魔導グラス」と呼ばれる所以(ゆえん)である。

 ──魔導グラスがオブロンスカヤ家にしか造れない事は先だって説明済みだが、その燃料となる魔力もまた、オブロンスカヤ家の人間でなければ補給できない。

 ──厳密には手順を踏めば赤の他人の魔力でも強引に注ぎ込む事が可能だが、魔導グラスを製造できる人間以外の魔力で動作させると、思わぬ動作不良や暴走の危険があるという。

 ──グラスへの魔力補給は、グラス製造適性者なら、ただグラスに触れるだけで行える。逆に言えば、適性者がグラスを動作させようとしても、触れるだけでは補給が優先されて動作しない。

 ──適性者がグラスを触れる事で起動させる場合、まずグラスの内臓魔力を満タンまで充填させる必要がある。それでようやく起動プロセスが実行されるのだ。

 

 

 

カタリナ

「つまり……度重なる利用で昇降機がちょうど魔力切れを起こした所に我々が触れたから、何も起こらなかった」

「そこに製作者であるカレーニャが触れる事で魔力が補給され、魔力が最大まで溜まってようやく操作盤が動き出した──と、これが先程起きた出来事という事か」

 

カレーニャ

「はい大正解。ドリイさんから花丸進呈ですわ」

 

ドリイ

「優秀な後輩で私も鼻が高いですよ。”リーナ”」

 

ルリア

「わあ。いいなあカタリナ!」

 

カタリナ

「ル、ルリアまで……からかわないでくれ」

 

ビィ

「つー事は……この島の魔導グラス全部、造るだけじゃなくて魔力の入れ直しまでカレーニャ独りでやってるのか……うへえ」

 

 

 

 ──街を行き交い、吹き抜けの天井を覆い、日常的に酷使されるであろう昇降機に至るまで1つ1つ歩き回って手を当てて回るカレーニャを想像するビィ。

 

 

 

カレーニャ

「ちゃーんと我が家に補給用の魔導グラスも造ってありますから、トカゲさんが心配するような事にはなりませんわよ」

 

ビィ

「だからオイラはトカゲじゃねぇっ!」

 

ドリイ

「しかしいずれにせよ、現状はグラスの魔力切れが発覚してから補給用グラスかカレーニャ自身が出向く、後手の形を取っています」

「その意味では、こうして外出の傍らに補給が行えた事は、後々の手間を省く事ができたと考えられ、カレーニャとしては細やかな幸運だったと言えるかと」

 

カタリナ

「差し出がましいようだが、グラスに補給を任せられるなら、最初から消耗の激しい設備を持つ施設に補給用のグラスとやらを常駐させた方が良いのでは?」

 

ドリイ

「確かに公私両面からそういった要望は常に出されていますが、悪用防止のためにも許可していないのが現状です」

 

カタリナ

「悪用? 他の実用的なグラスでなく、補給用のグラスによって、という事か?」

 

ドリイ

「はい。具体的には──」

 

カレーニャ

「お話の途中すいませんけれど、ようやっと来ましたわよ。昇降機」

「しっかし、出入りする分にはあっという間に感じられても、待ってる身には長ったらしくてしょうがありませんわね……何とか改良できないかしら」

 

 

 

 ──カタリナが振り向くと、ゴンドラの下半分が姿を見せた所だった。ルリア達が見るからに到着を心待ちにしている。

 

 

 

ドリイ

「では、申し訳ありませんが続きは後ほどに」

 

カタリナ

「そうだな。……いや、その続きは愉快な話題でも無さそうだ。機会があったらにさせてもらおう」

 

 

 

 ──ゴンドラの中には大勢の客が乗っていた。到着に時間がかかったのは、各階で客を出し入れしていたためと推測できた。

 ──格子が開き、先にゴンドラの中の客が思い思いに語らないながら出てきた、その時に……。

 

 

 

ルリア

「……?」

 

 

 

 ──その場でルリアだけ、何か違和感を覚えた。原因はハッキリそれとわかるが、それの何がおかしいかまではわからない。

 ──それでも2つ。客たちが出てきたその瞬間に2つ気にかかった事がある。

 ──1つ。客たちが昇降機から出る瞬間、一斉に、カレーニャの方を見た気がした。しかし目立つ椅子で移動している上に、この島を支える有名人だ。何もおかしな事ではない。

 ──そしてもう1つ。昇降機から客が出てきたその時その場。今こうしている事自体に、何かを忘れたような間違えたような、落ち着きの無さを感じる。

 

 

 

カタリナ

「ルリア? どうした。乗らないのか?」

 

ビィ

「大丈夫だってルリア。何も怖い所なんかねーぞ!」

 

 

 

 ──しかし、それらの違和感は直ちに忘れ去られた。『昇降機が客を乗せて降りてきた』。客が降りた今、今度は自分達が乗る番だ。ゴンドラの中からルリアを呼ぶ一行。

 

 

 

ルリア

「あっ、ま、待って下さーい」

 

 

 

 ──心は再び昇降機への期待を取り戻し、軽やかに足を踏み出した。






※ここからあとがき

 お空の世界に、昇降機ってあるんでしょうかね。
 騎空艇なんてもの作れるからには多分、大昔の延々動き続けて乗客がタイミング見計らって出入りするタイプくらいはありそうですが……。

 とりあえず本作では昇降機の概念自体が団長達には無いものとして描写しています。
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