グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ) 作:水郷アコホ
──暴走グラス騒ぎも落着したその日の晩。一行はカレーニャの邸宅で夕食を振る舞われていた。
──図書館での出来事を思い返しながら、ビィがリンゴをパンパンの頬からポロポロ落としながら愚痴っている。
ビィ
「まったく、何だったんだよあの婆ちゃんはよぉ」
「自分の魔導グラスであんな事になったってのに、最後まで全部カレーニャが悪いみたいな態度でよぉ──ハグッ、ムゴムゴ、ムォッムムンモムモゴゴ……」
ルリア
「ビ、ビィさん、食べながら喋ったらお行儀悪いですよ」
アンナ
「魔法が誰にでも使えるもの……って言うのは……た、多分……間違ってなかった……と思う、けど……うーん……」
ドリイ
「魔法という側面から見れば、アンナ様の仰るとおりです」
「しかし魔導グラスは魔力を扱いながらも、いわゆる魔法の理論とは根本から異なる点ばかりです」
「例えるなら魔力一つ取っても、魔法の定説においては、魔力そのものに個人を特定する要素は無いとされています」
「例としては、一つの魔力機関に複数人の魔力を供給しても、均一な燃料として扱われるように」
ルリア
「あっ、前に私達の仲間や沢山の人から、艇の動力に魔力を入れてもらった事があります」
ドリイ
「とても明晰な理解力です、ルリア様。まさしく、そのような事例が該当します」
「この定説が真であるからこそ、魔力の供給も滞りなく行えると言えます」
「しかしながらそれ故に、オブロンスカヤの魔力でしか正常に動作しない魔導グラスは、この定説に適合しません」
「そのため、本来の魔法の在り方を良く知る方ほど、魔導グラスに懐疑的な意見があるのが現状です」
カタリナ
「……」
──あの後、グラス沈静化のお礼と老婦人騒ぎに巻き込んだお詫びを兼ねてカレーニャ邸に招かれた一行。
──ドリイから積極的に提案され、カレーニャも思う所があったのか消極的ながらも賛同したため、好意に甘える事にしたのだった。
──グラス球の一件で催された午前の茶会より遥かに豪勢に、魔導グラスが一流のホテルかレストランの如き非の打ち所のないサービスを徹底してくれている。
──しかし、一貫して正義は我にありと言わんばかりだった老婦人の態度に納得が行かなかったビィは、渦巻く不満の行方をまだ探し続けていた。
──ドリイからプラトニアの負の一面を聞いていたカタリナも、その一端を目の当たりにした気分で些か表情が晴れない。
ビィ
「ハグムグ──ゴックン」
「言われてみりゃあ爺ちゃん婆ちゃんって、新しいモノ嫌がったりする事もよくあるし……あの婆ちゃんもそんな感じだったのかもなあ」
「でもよお、それにしたってありゃ行き過ぎだと思うぜ。思い出してきたらまた──」
魔導グラス
「──」
──スッと魔導グラスがビィの横に立った。
ビィ
「お、悪ぃな。そうそう、丁度リンゴのおかわり欲しかったトコなんだよ」
──ビィが求める前から、グラスの持つ盆にはリンゴが幾つも乗っていた。途端に顔を綻ばせてリンゴに齧りつくビィ。
カレーニャ
「ハイハイ。言いたいことの残りはおかわりと一緒に飲み下しておしまいなさいな」
「その穴埋めのためのディナーですのよ。もてなされる側としてもスジくらい通していただきたいものですわ」
ドリイ
「でしたら、ビィ様のためにリンゴのお料理を新たにお持ち致しましょう」
主人公(選択)
・「食べてみたいかも!」
・「わざわざすいません」
→「わざわざすいません」
ビィ
「う……リンゴ料理も気になるけど、そういえば眼鏡の姉ちゃん、さっきから働いてばっかだよなぁ……」
ドリイ
「どうぞ、お気になさらずに。団長様、ビィ様」
「私が保護監査官に就いてから、このようにカレーニャがお客様をお招きした例は無かったもので。やり甲斐の余りに、舞い上がってしまいそうなくらいです」
「むしろ思いがけず干渉が過ぎてしまうような事がございましたら、遠慮なくお申し付け願います」
「それに……」
ルリア
「モゴ? ……(ゴックン)、あ、あの、どうかしました?」
──ドリイがちらりと目をやると、既にルリアの両脇にうず高く皿が積まれていた。
──魔導グラス達の給仕を上回る速度で、今も最後の一口を詰め終わってのおかわり待ちだったからこそ、ドリイの視線に気づいたようなものである。
──団長達の視線が集中している事を察したルリアは落ち着かない様子だが、その理由には見当がついていないようだ。
ドリイ
「今宵は、魔導グラスばかりに任せては手落ちを招きかねませんので」
──冗談交じりのドリイの言葉の端々には、心から楽しんでいる様子が伺えている。
──思わず吹き出す団長とビィに、訳が分からず戸惑うばかりのルリア。
──そしてそんな団長達とドリイの姿をカタリナは感慨深げに見つめていた。
カタリナ
「(カレーニャがドリイ殿以外と団欒を共にする事自体、久方ぶりという事か──)」
「(……そうだな。こんな時に、湿っぽい事を気にするのはよそう)」
カレーニャ
「
「ドリイさんのお料理、お茶と
ビィ
「うえぇ!? それって良い意味……じゃあ、なさそうだな……」
ルリア
「あ、あはは。でも、ドリイさん何でも出来そうなのにちょっと意外ですね」
ドリイ
「ご心配なく。お客様にお出しするお品で粗相は致しません」
「ですが普段は、レシピ通りに作るよりも新たな味への探究心が優ってしまい、つい──お恥ずかしい限りです」
カレーニャ
「それって普段の食卓で私を実験台になすってるって事!?」
ドリイ
「心外ですカレーニャ。カレーニャの安全を預かる身として、無体な食事を与える真似は致しません」
「味につきましても、私なりに新基軸の美味として一定の評価を下せる品をお出ししているつもりです」
ビィ
「そのつもりで作った料理でこんな事言われるって、もしかして……」
カレーニャ
「あなたのベロと循環器まで責任持てません事よ私……」
ルリア
「あはは……」
カタリナ
「ふむ。新たな味への探究心か──なるほどな」
主人公(選択)
・「(急に嫌な予感が──!)」
・「カタリナ……?」
→「(急に嫌な予感が──!)」
カタリナ
「私も常々、レシピに従うばかりの料理というものに一抹の疑問を覚えていたのだ」
「レシピ通りに作る──それ自体は良い事だ。先人が試行錯誤の末に見出した知恵の結晶。それに倣う事は何事においても大切だ」
「だが、しかしだ。甘んじてしまうようでは話は別だ。先人の知恵を修めたその次なる段階を、我々は常に目指すべきではないかと私は思う!」
カレーニャ
「──ドリイさん、お酒でも出しまして?」
ドリイ
「料理の香り付けになら少々。火は十分に通しておりますので、ルリア様はじめ、お体に障られる事は無いかと。──何か、お気に召さない所が?」
カレーニャ
「そうじゃなくって……」
──先ほどまでの憂鬱を振り払おうとしているせいか、些か演出過剰に自論を語るカタリナ。
──そして、おもむろに自らが腰掛ける椅子に手をかけるカタリナ……。
カタリナ
「そうだ、受け身でばかりというのも性に合わないな。ここは一品、私も腕を振るって──」
主人公(選択)
・「こっ、こっちの料理もすっごく美味しいよ!」
・「カ、カタリナ……ッ!!」
→「こっ、こっちの料理もすっごく美味しいよ!」
ビィ
「お、おお~! 本当にすっげえウマそうじゃねえか!」
「ほ、ほら姐さんも食ってみようぜ! こんなにウマそうなの沢山あるのに、キッチン篭ってて冷めちまったら損だぜ。な、なあ?」
カタリナ
「う、うむ? まあ、他ならぬビィ君の勧めなら一口──」
──すかさず誤魔化しに入る団長とビィ。
──カタリナは随分とやる気だったが、団長の勧めた皿をビィが運び、更にビィ手ずから「あ~ん」で食べさせる事でどうにかその場は有耶無耶に収まった。