グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ)   作:水郷アコホ

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25「食後の一時」

 ──テンパり気味の「お友達劇場」と夕食を終えた一行は、それぞれの個室へ案内されていた。

 ──あの後、寝室の用意を整えた旨をドリイから聞いた一行は、カタリナがすっかり宿の事を忘れていた事を恥じるのをフォローしながら好意に甘える事にした。

 ──ドリイの積極的な要望により、カレーニャがアンナを、ドリイが他4名を案内する事になった。図書館と同じメンツである。

 ──カレーニャが渋ったがカタリナがドリイに加勢し、半ば勢いで押し切る形になった。

 ──カレーニャにアンナが優先的に宛てがわれている事にルリアが少しむくれてみせたが、どちらかと言えば「焼きもちを焼く」をやってみたかっただけで、そこまで気にしていないようだった。

 

 

 

 

ドリイ

「こちらが皆様の寝室です。各お部屋に一通りの設備を備えておりますので、ご自由にお使い下さい」

「テーブルの上に、室内の魔導グラスの配置と機能をまとめた説明書もご用意しましたので、必要の際はお役立て下さい」

 

カタリナ

「何から何まで、本当に感謝の言葉もない。それにしてもこれは──月並の宿では比べ物にならないな」

 

ルリア

「カタリナ! ベッドが、ベッドが3人くらい寝れそうなくらいおっきいです!」

 

カタリナ

「こ、こらルリア……」

 

ドリイ

「お気に召して頂けたなら何よりです。どうぞご遠慮無く」

「お1人あたり一部屋をご用意しましたが、どなたかと同室頂いても構いません。組み合わせは皆様の望むままに」

 

ビィ

「オ、オイラ用の部屋まで用意されてんのかぁ……」

「まあオイラには広すぎちまうし、悪ぃけどオイラは団長(コイツ)と──ん?」

「ひいふうみい……ドアは5つあるみてぇだけど、あの突き当りの部屋は何があるんだ?」

「アンナはこっち来てねぇからアンナの部屋って訳じゃなさそうだし……」

 

ドリイ

「そちらもお客様用のお部屋です。一際間取りが広いので、今回は空き部屋としました」

「もちろん、そちらもご自由にお使い頂いて構いません。皆様でお集まりになる時などにどうぞ」

 

ビィ

「お、そういえばゲームブック借りてたんだったな。後でアンナも呼ばねぇとな!」

「じゃあ、あの奥の部屋は集会用の部屋って事か?」

 

カタリナ

「貴族の家となれば、目上の客人が有った時に幾つもあるような部屋を充てがう訳にもいくまい。そのための部屋だろうな」

「逆に私達の場合、1人だけやたら良い部屋を使うのも気が引けてしまう。だからこの部屋だけ使わない事にしたと言った所か」

 

ドリイ

「勝手ながら、団長様は格式や序列と言ったものを好まれない方とお見受け致しましたので」

 

主人公(選択)

・「ありがとうございます」

・「あの部屋もちょっと興味あったなぁ」

 

→「ありがとうございます」

 

ドリイ

「こちらこそ。ご意向に添えたなら光栄です」

 

ビィ

「おーい、みんな見てくれよ! すっげぇ便利な魔導グラス見つけたぜ!」

 

 

 

 ──ビィの歓声に振り向く一同。先程のカタリナの説明から幾許も経たない内に、ビィは1人(?)で客室の散策を始めていた。

 ──見ると、ご機嫌なビィが宙に浮く魔導グラスに乗っかって悠々と団長達の方へと移動している。グラスの形状とビィの姿勢が相まって、まるでグラスがビィをおんぶしているように見える。

 

ルリア

「わあ、ビィさんすっごく可愛いです!」

 

ビィ

「こいつに乗って行きたい所考えるだけで連れてってくれるんだぜ。飛ばなくっても楽チンだぜ!」

 

カタリナ

「ビ、ビィくん。グラスの仕組みも確かめずにそんな愛らし……じゃなかった。勝手な使い方は……」

 

ドリイ

「そちらは手荷物などを載せて運搬するためのグラスですが、緊急時には複数基用いて、動けない方の搬送にもご利用頂けます。正常な用途の範疇と言えますので、存分にご堪能下さい」

 

ルリア

「じゃ、じゃあ……沢山あれば、あの……わ、私も、飛べますか!?」

 

 

 

 ──説明を聞くなり目を輝かせるルリア。

 ──流石にビィと同じような飛び方を期待している訳では無いだろうが、プレゼントをねだる子供のような姿勢で、今にも駆け出さんばかりだ。

 

 

 

ドリイ

「ルリア様の体格ですと、恐らく3基程で事足りるかと。グラスは各部屋に1つございますので、説明書を充分お読みの上で試される事をお勧めします」

 

ルリア

「!! ビィさん! このグラスさん、どこにありましたか!?」

 

ビィ

「おう、任しとけ! こっちだぜルリア」

 

 

 

 ──言うなりビィを乗せたグラスが旋回した。

 ──ビィの普段の飛行速度より幾らか緩慢だが、ルリアはワクワクしながらもグラスに合わせてゆっくりついて行った。

 

 

 

カタリナ

「あぁっ……ふ、2人とも、せめて程々になー!」

「ふぅ……やれやれ。アンナを呼びに行くのは少し先になりそうだな」

 

主人公(選択)

・「2人ともまだまだ子供だなあ」

・「2人を見張ってないとね!」

 

→「2人を見張ってないとね!」

 

カタリナ

「全く……そんな楽しそうな声で言われても説得力ないぞ?」

「まあいい。団長(キミ)もついていてあげてくれ。多分、あの2人では説明書なんて忘れてしまうかもしれないからな」

 

 

 

 ──我先にと別の客室へ突撃するルリアとビィ、それに団長がついていき、苦笑と共に見送るカタリナ。

 ──少なくとも、見守るドリイの笑顔が相変わらずな内は何とかなるだろうと考える事にした。

 

 

 

カタリナ

「さて──お恥ずかしながらこの有様だ。皆が落ち着くまで、私も一息入れる事にするよ」

 

ドリイ

「では、カタリナ様にはお茶をご用意致します」

 

カタリナ

「ありがとう。それと、先にアンナの部屋がどこか聞いておきたいのだが、構わないだろうか」

 

ドリイ

「はい。アンナ様のお部屋は──」

 

 

 

 ──アンナの部屋は、団長達の客室が並ぶ通路とは、廊下を挟んで反対側にあった。

 ──大通りが廊下、そこから伸びる脇道が各部屋の並ぶ通路と言った構図である。木の幹と枝の関係にも置き換えられる。

 ──アンナ側と団長達とでは通路の配置に若干ズレがあり、お互いが通路に立っても顔が見える造りでは無いが、会いに行くのは簡単で、迷うような距離でもない。

 ──そしてその頃、カレーニャの案内で客室に通されたアンナは……。

 

 

 

アンナ

「わぁ……こ、ここ……全部、ボクとカシマールだけで?」

 

カレーニャ

「ええもちろん」

「むしろドリイさんたら、『急拵えで至らない所があるかも知れない』とか『”キラシール”様の部屋も用意すべきだったか』とか物足りなそうにしてたくらいですわ」

 

カシマール

「”カシマール”ダ! ワザワザイイカエルナ!」

 

アンナ

「じゃ、じゃあ、ドリイさんにお礼と、大丈夫って……後で、伝えておいてあげて」

「で……でも……こんなに広いと……ボク……そ、ソワソワしちゃう……かも……」

 

 

 

 ──間取りや広さは、団長達に充てがわれた部屋と全く変わらない。

 ──しかし、日用品1つとて、うっかり使って汚すのを憚られるほどに手入れの行き届いた部屋は、アンナの目には最早、芸術品と言っても差し支えなかった。

 ──家具の一つ一つに使われる生地1つ取っても、上等なドレスの裾のように白く柔らかい。遠くから見ていると一瞬、束ねられたカーテンの下部のシルエットが、帽子を被った女の子のように見えてくる。

 ──カレーニャは構うこと無く、「やれやれ」といった態度で部屋の出入り口に手をかけている。

 

 

 

カレーニャ

「遠慮は結構。お客さんに気品だのマナーだの求めるのは成金のやる事でしてよ」

「どうしても解らないことあるようでしたら、この通路は私の寝室とドリイさんのお部屋も並んでますから好きにお呼びなさい」

「他の事はご自分で頑張ってくださいな。これを機に少しはそのびんぼ……ほげぁっ!?

 

 

 

 ──愉快な声を上げたカレーニャが床に尻餅をついていた。

 ──退室しようとドアを開いたカレーニャの前にドリイが待ち構えていたのだ。それもカレーニャの目線と正面で向き合うようにわざわざ屈んで待機していた。

 ──驚くと同時にグラスチェアーを後退させながら、椅子の上で自らも反射的に飛び退こうとしたためバランスを崩し、椅子からずり落ちてしまったのだった。

 

 

 

カレーニャ

「あっだだだだ……。ドリイさん、あなたやっぱり好きで脅かしてませんこと……」

 

ドリイ

「心外ですカレーニャ。ご用件をお伝えに参った所、扉のすぐ向こうからカレーニャの声が聞こえたものですから。こうしてお待ちしていただけです」

 

カレーニャ

「わざわざ私の真っ正面にお顔持ってくる謂れは無いでしょうが……」

「まあとにかく、用件って何ですの?」

 

ドリイ

「はい。まずはアンナ様にカタリナ様から。『ルリア達がはしゃいでしまっているので、落ち着いたら迎えに行く』……と。原文ママで失礼致します」

 

アンナ

「あ、うん。ありがとう、ドリイさん」

「フフッ……皆、いつも元気一杯だなあ」

 

ドリイ

「そしてカレーニャ。特別に今夜のお勉強は取り止め、自由時間とします。就寝まで、ごゆっくりどうぞ」

 

カレーニャ

「ぬぉ!? それは願ったり叶ったりですわね!」

「それじゃあ早速グラスの調整に──」

 

ドリイ

「いいえ。併せてカレーニャには、カタリナ様方がいらっしゃるまでアンナ様に付き添っていただきます」

 

アンナ&カレーニャ

「え?」

 

ドリイ

「先ほどお伝えしました通り、皆様がアンナ様をお迎えにいらっしゃるまで些か時間がございます」

「私はこの後、カタリナ様にお茶を届けに伺いますので、カレーニャにもアンナ様に部屋の説明やお話相手をお願いします」

「もちろん、アンナ様のご迷惑でなければ──ですが」

 

アンナ

「め、迷惑なんて、そ、そんな……あ、えと……カ、カレーニャは……?」

 

カレーニャ

「ふぅむ──まあ良いでしょう。そんな時間もかかりませんでしょうし、自由時間の対価なら安いモンですわ」

「心得ましたわ。そうとなりゃぁお茶だの何だのは私が用意しますから、手出し無用ですわよドリイさん」

 

ドリイ

「はい。くれぐれも丁重に。よろしく頼みましたよ」

 

カレーニャ

「ほらアンナさん、ついてらっしゃい」

「あなたにとってだだっ広いらしいこのお部屋、少しは手狭にして差し上げますわ」

 

アンナ

「あ、う、うん」

「あ……ド、ドリイさん」

 

ドリイ

「はい」

 

アンナ

「えと……す、すっごく、良いお部屋で……その……あ、ありがとうございます」

 

ドリイ

「──冥利に尽きます」

 

 

 

 ──パタパタとカレーニャを追うアンナを見送って、満面の笑みのドリイは静かに扉を閉じた。

 ──しばらくして、アンナの個室に団長達が訪れた。図書館で借りたゲームブックを皆で読み返すためだ。

 ──アンナ達の夜は、もう少しだけ続くのだった。

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